遺物に侵食された世界(2/10)
公開 2024/02/24 13:43
最終更新 2024/02/24 14:13
(空白)
 時が止まっていたことを知らない少女は一瞬のうちにいなくなっていると感じるしかなかった。辺りを見渡すと遠くで座り込む、さっきの人がいて、転移でもしたのかと思っていた。深く影が重なった場所に踏み込むと少女の姿は消えて、足音だけが響いていた。
 少女がその人に近づいて肩を掴もうとしたが、瞬きもせずに消えてしまい、残されたガラスの破片だけが落ちていた。
「また……いなくなった」
「いや、後ろにいる」
 そう言われて少女が後ろを向くとその人はふらつきながらどこかに向かって歩いていた。それから何度も捕まえようとしたが、失敗してガラスの破片だけが大量に散乱していた。
「なんだこいつ」
「分からないけど……私じゃ殺せない……かも」
「転移かと思ったがなんか違うな」
「そう……なの」
「……にしても逃げるだけで何もしてこないのな」
「それは……そうだね」
 ご飯もろくに食べずお菓子だけで食いつないでいたために、少女は腹を空かせて動けなくなっていた。その人はというと同様に動けなくなって、完全に座り込んでいた。
「お菓子つきちゃった……」
「隠し飴玉も無いのか」
「うん……お兄さんはいいよね。さっき食べてたし」
「あれは……美味しくなかったから」
「美味しくないんだ」
「能力者というのはいろいろ混じっているから、不味くなるんだよ。なんならさっき貰ったお菓子の方が美味しかった」
「……」
「でも一番は風花(ふうか)が作る料理だけどな」
「え? 何も言わずに食べていたから感じないと思っていた」
「それは……悪かった」
「じゃあ、何か作ってあげるね。これが終わったら」
 少女は会話しながら休みつつ、元気にしていた雨夜は影をその人の方に少しずつ伸ばしていた。何の音もなく本来存在しない影がある位置も暗く侵食していた。

 その影が座り込んだ蒼徨の周辺を囲んでいたことは分かっていたが、完全に動けなくなって、自分は死ぬんだ、と思っていた。しかし大男達のように体が沈むことはなく、ただ持っていた鞄に黒い手が入り込んでいた。黒い手が掴んでいたのはコンビニで買ってきたおにぎりだった。
「……?」
 蒼徨がその手を追って体を動かすと、蠢く何かを背にして座り、黒い手からさっき取られたおにぎりを手にして食べようとしていた。それを見て「お腹空いているのか?」と呟いていて鞄を開こうとしたが、すぐに殺そうとして来た人だと思い出して、立ち上がろうとしたが、その行動はすでに縛られていた。それを知らずに動いて、頭をぶつけないように手が先に出たとはいえ、音が鳴るほどの衝撃があって痛かった。
 痛みに悶えていると足音が近づいていることに気づけず、無理やり立ち上がらされた。背を支えるように黒い壁が現れて、蒼徨はもたれかかっていた。目をそらすことは許されず、その視線は固定され、彼の目には二人が映っていた。
「あ……」
「おい」
「なんで……しゃべって」
「もしかして見えている?!」
「まさか……でもこっちを追えているってことは」
「今まであの子のおばあちゃんしか見えてなかったのに」
「『霊感』持ちか……それとも異様な体質なのか」
「僕は時を止めることしか」
「時を止める?」
「あっ」
「なるほどな……だから転移とは違うと感じたんだ」
「……殺してください」
「風花どうする……風花?」
「え、あっ……ちょっと待って……そもそもこの人は何もしてない」
「確かにそうだが、あいつらと同じだとすれば子供達が酷い目に合わないという保証がない」
「その……あいつらって何ですか?」
「能力調査隊の人間のことだが……知らないのか」
「……殺されていた」
「知っているじゃないか」
「でも僕は何の接点もないんだ……だから」
「……知らなそうだね。きっとこの人なら大丈夫」
「おい……心を許しすぎじゃねぇか」
「そうかもしれない……むしろ私は興味がある」
「興味?」
「私の攻撃というかお兄さんの攻撃を避けられたのはあなたが初めてだから」
「そういえばそうか……不意打ちも何も効かねぇからな」
「……僕は」
「一つだけ約束してくれる?」
「は、はい!」
「ここには子供達がたくさんいるの。あの子達に危害を加えるようなことはしないで」
「わ、わかりました……あの……お願いがあって」
「何?」
「写真撮ってもいいですか」
「なんで?」
「それは……必要だから」
「あいつらが残していった鞄に入っていた紙に書いてあった任務か」
「……やっぱり僕は死ぬ」
「撮らないといけないの? 別の方法はないの?」
「別の……」
「『小型録音機での声の録音も可とする』……これか」
「……文字読めるんだ」
「馬鹿にしてんのか」
「い、いや」
「喧嘩吹っ掛けなくていいから……早く貸して」
 鞄から取り出した小型録音機を渡し、風花は一つのボタンを押してみるが、首を傾げてまた別のボタンと色々押していた。使い方がわからないのかと思って、蒼徨が奪って録音するためのボタンを押した。
 ある程度の声を録音して再生してみたが、蒼徨と風花の声は聞こえるが、雨夜の話している声は入っていなかった。
「俺の声、入ってねぇ」
「他の人にお兄さんの姿が映らないから」
「それに関しては僕が説明しておきますよ」
「説明はしないで……実験に回されそうなことされたくない。ただ静かに暮らしていたいだけ」
「それを阻害するならば誰であろうと殺す。お前も本来なら対象だが」
「……だからもうここには来ないで」
 その声の重さに蒼徨は言葉を続けることが出来なかった。危険区域と呼ばれているとはいえ、彼女達の住処を荒らすようなら今度こそ殺されるかもしれないと思った。


 誰かの声が響く その声に覚えはなく けれど時計は知っている


 不思議な夢を見た。暗く何も見えないが、声だけが響いていた。その声に聞き覚えはないはずなのに懐かしく感じるのは何故か分からない。そんな夢を繰り返し見ていた不快感で、蒼徨は寝不足に陥ることが多かった。だから電話がかかってきていたことに気づけず、遅刻することはよくあった。
 あの日の報告を済ませてから数日が経って、正式に合格をもらったが、かわりなのか彼女の担当になっていた。干渉する者すべてを殺しつくした彼女と唯一話して帰還した彼はある意味英雄的な扱いを受けても仕方がなかった。
「それでね、蒼徨くん」
「……」
「おーい」
「……あっ、ぼーっとしてました」
「大丈夫かい? 君しか頼れる人がいないんだから……」
「……はい」
「蒼徨くんの活躍のおかげで、彼女が何者であるかの正確性が出た」
「約束は守ってもらえますか?」
「分かっているとも、実験のことは。正直言うと研究者達が残念がっていたけど、これに関しては君がいなくなると困るからね」
「ありがとうございます」
「……彼女について話そうか」
「ある程度は見たから知っています」
「ならば彼女が何と呼ばれているか分かるか? 『影の守護者』だ」
「『影の守護者』?」
「そう……彼女の周りにはいつも影がある。それに触れた者は何であろうと飲み込まれる。彼女に危害を加えた者は問答無用で殺され、その血は残らない。まるで彼女を守るかのように影はすべてを見ている」
「僕の前に行った能力者達は皆殺されていました。かろうじて残ったけど……殺されそうになったのは事実です」
「その後でよく録音ができたもんだが……」
「彼女は僕に興味があると言いました」
「そうかい……君が属性能力ではなく、時を止めるという能力だからだろうか。なるほど……ならばこの任務も大丈夫だろう」
「え? これチケット?」
 話の途中で渡されたチケットには演奏会の題名と「初公開」という文字が大きく表示されていた。それとその会場が能力調査隊の近くのコンサートホールで行われることがわかった。ただ蒼徨はその演奏者の名前をまったく聞いたことがなかった。
「近々、有名な演奏家が来るらしくてね。その演奏を聞きに行ってもらいたい」
「なんで?」
「最近、動画サイトで賑わせている双子の兄妹。一度触ってしまえば、どんな楽器でも奏でることが出来る才能があって、それもその曲達はかなりの再生数を誇っているようだ。ただ顔は一度も見せたことはなく、演奏風景を見るに明らかに子供なんだよ」
「そんな二人? が来るんですか。でも今のところ能力との関係が見えないんですが?」
「双子が作るその曲達はいわくつきでね。何度も聞いた者は死ぬと言われている」
「は?」
「単なる噂だが……それが能力であるかもしれないという希望的観測で……」
「嫌ですよ。そもそも死ぬって言ったじゃないですか」
「……この任務は一人ではない」
「一人じゃなくても死ぬ可能性があるなら行かないですよ」
「『影の守護者』とともに行ってもらう」
「彼女と?」
「そうだ」
「無理ですよ! 今度こそ殺されますって」
「そうなれば一人で行くしかない。あ……また人材を失うことになるのか」
「……聞くだけ聞きます。無理だったら行きませんからね」
 強きで言い放ったとはいえ、何故か優遇続けている身であったため、その他の者から若干忌み嫌われ始めていた。言い争う声も聞こえていたはずだから、彼の立場はあまりにも悪い方向へ傾いていた。

 一方、子供達の治療のために、お金を集めて大量の薬品を買っていた。お金の出所はすべて殺した人間が来ていた服や持っていた財布などで、そこからお金を抜き取っては、自分含めた子供達の食料調達や生活用品のために使用されていた。売り飛ばすことが出来ない服は加工して雑巾にすることが多いが、ほとんどは捨てられていた。
「……これで足りるかな」
「足りなかったらまた買い足すしかねぇ」
「そうだけどもうお金がつきそう」
「……ひとまず子供達の元に戻ろう」
「うん……」
 かなりの量を買ってもすぐになくなってしまう状況で、病院に連れて行きたいのは山々であったが、危険区域の子供達は保険の対象外になっており、かなりの金額がかかるとして容易に行けるようなものではなかった。普通に生きている人から見れば、そこはすでに廃墟として扱われても仕方のない場所だったからだ。
 やけどの症状は軽いものから重いものまでさまざまで、一番酷くて肉がはがれて骨が見えている状態の子供が、それも複数人存在していた。風花は慣れた手つきで処置を施していたが、包帯を巻くくらいは動ける子供達に任せたとしても、そもそも衰弱してしまっている子供達もいて、ご飯も作ってあげるなどして治療と食事を同時並行でしていた。その疲労で倒れかけるものの、無意識に存在する不安感が体を動かして無理をしていると脳が警報を鳴らすことを阻止していた。
 しかし最後の患者である子供を診終わった後、立ち上がった衝撃で流石に視界が揺らいで倒れそうになったのを雨夜は受け止めた。子供達に見える場所では人型で現れることを彼女は禁止していた。見えないとはいえ、子供達の中にも能力者はいて、気配を感じて恐怖の対象になりかねなかったため、人がいるところでは影のまま潜んでいた。
「……お兄さん」
「寝てろ」
「でも」
「終わったんだろう」
「……ここじゃ」
「影の中を移動して……ここから出ればいい」
「……そっか……なんで」
「それだけ疲れているから思いつかなかっただけだ。むしろ影の中で寝るか?」
「……それは」
「分かっているよ。目を閉じておけ」
 風花は目を閉じて雨夜に重さをかけた。彼は彼女を取り込み、小さくなると他の影に伝って部屋を出て、すぐ外の木の影に移動した。子供達が眠る病室もどきの建物を平坦な影でゆっくりと移動して、誰も見えなくなった暗い路地に入ったところで形を変えて人になり、お姫様抱っこの要領で彼女を抱きかかえ、歩いていると何かが落ちる音がした。手が離せない状況だったので、影を器用に動かして彼女の体の上に置いた。それは彼女が使用しているスマホだった。元は殺した人間から奪ったもので、闇の古物商によって改造されて使えるようにしてもらった代物だった。ただ彼女は電話しか知らず、他の用途で使ったことはなかった。その電話が鳴り始め、画面を覗き込むとそれは蒼徨だった。
「……風花……流石に寝たか……俺が出てやるか」
 彼女の体に置いたスマホを細い影で操作して、彼の耳元に当てた。あの日、別れ際に何かあった時のために電話番号を交換しましょう、と提案してきた蒼徨に風花は少し嫌そうな顔をしていた。もう来ないという約束をしたにもかかわらず、また会おうとするやり方に疑問を持っていたが、風花自身、蒼徨に対して興味があったため仕方なく交換することにした。
『え?』
「悪かったな、影の方で」
『風花さんは?』
「疲れて寝ているから……起こせと言っても起こさん」
『……そうですか。またかけ直し……』
「かけ直されても困る……今は」
『……ならどうしたら』
「用は何だ」
『それは風花さんじゃないと』
「一方通行か……お前、今どこにいる」
『えっと、危険区域の門の……近くの……路地』
「ちょっと待ってろ」
 そう言って影は勝手に電話を切り、スマホを風花のもとに返した。封かを休ませなければならないという想いが、蒼徨と出会う行動を一瞬阻害して完全に足が止まっていたが、影は危険区域の門の方へ歩き出した。しかし揺れ動く影のせいで風花はゆっくりと目を覚ましていた。
「お兄さん?」
「あっ、起きたか」
「どこに行くの? 家はこっちじゃない」
「……さっき電話があった」
「へ? 誰から」
「蒼徨から風花に会いたいって」
「もしかして承諾しちゃったの?」
「まぁ……」
「起こしてくれたらよかったのに」
「疲れてよく眠っているのに起こせるか」
「勝手に承諾するよりはましでしょ……それにおろして」
「ダメだ。またいつ倒れるか分かったもんじゃないのに」
「せめてお姫様抱っこはやめてよ」
「……わかった、おろす」
 風花に言われて雨夜はゆっくりと彼女の足を地面につけて立ち上がらせた。一瞬ふらつく体に彼は彼女を受け止めたが、「ただの立ちくらみ」と言われた。

 電話が切られて言われた通り危険区域の門にやってきた蒼徨は一人待っていた。電話をしたのは今回が初めてではなく、何度か電話したことはあったが、毎回ざわざわとした音が入り込み、彼女の声が聞き取りにくい状況にあった。子供達の治療に追われていることは知っていたものの、そもそも入ることを許されていない彼では何も出来なかった。それに関する相談も行ってみたが、風花は蒼徨以外の能力調査隊の人間を信用したわけではなかったため、他の人間が危険区域に入ってくることを拒んでいた。
「来たよ」
「風花さん……起きていたんですね」
「お前のせいだがな」
「蒼徨のせいじゃないよ……それより早く入って」
「え、でも」
「いいから……子供達に見つかった方がもっと厄介」
 門は雨夜によって開けられ、風花は蒼徨の手を握っていた。いきなりのことで彼は驚いたが、彼女に従い危険区域の中に入った。風花曰く、治療に追われて子供達に蒼徨のことを何も話していないということだった。だから見つかると厄介というのは説明もなしに彼を招き入れたことに怒る子供に対しての意味だった。
 暗すぎて通ったかそうでないかさえ分からない道を歩き続けていたが、突然の光に目がやられて蒼徨が止まると、風花は彼の動きの反動で少し後ろに下がった。
「大丈夫?」
「眩しくて……今は大丈夫。風花さんは平気なんですね」
「お兄さんが光の調整をしてくれるから眩しいって感じることはないの」
「……便利」
「風花」
「あっ、そうだった。ここなら誰も来ないから」
「ここは?」
「休憩所……だった場所。今はただの空き地だよ」
「休憩所?」
「うん……ただ壊れかけているから子供達には近寄らないで、って言っている。だから誰も来ない」
「早く……」
「ごめんね、お兄さん。今入るから」
 太陽の光が強すぎたのか、いつも突っかかってくるはずの影が弱々しくなっていた。風花は言われてはっとして、古びた休憩所もどきに入り、蒼徨もついて行った。風花以外の人間が使っていないとなるとかなり埃っぽくなっているのかと思われていたが、壊れかけといいつつ、完全に誰かの手が加えられている綺麗さを誇り、蛇口をひねると水が出てきた。何処か座っていいよ、と風花に言われて蒼徨はちょうど三人の椅子がある小さな机がある場所に座った。そうしていると彼女はどこからかケトルを持ってきて、水を入れてコンセントが繋がった台に置いた。
「お兄さんはいらないとして……」
「お茶」
「え? 珍しい……蒼徨さんはお茶かコーヒーかどちらがいい? それ以外も一応あるけど……このスティックってやつになるけど」
「お茶で大丈夫です」
 蒼徨が答えると風花は頷いて、棚からコップを三つと急須、お茶の葉が入った箱を取り出した。慣れた手つきでお茶の葉を計り、急須に入れているとケトルのお湯が沸いた。少し離れた場所にあったため、ケトルを影が取り、風花がゆっくりと急須にお湯を入れていた。急須をコップ三つをお盆にのせて、蒼徨が座っていた机に置いた。
「もう少し……。待っている間に話を聞いてもいい?」
「あっ、そうでした。これを」
「何? これって」
「とある演奏家のチケットらしいんですが……風花さん?」
「どうして持っているの!? あの人も手に入れられなかったのに」
「え? 知っているんですか」
「あ……うん、知っている。これでよく聞いている」
「音楽プレイヤー?」
「そう……いつか生演奏を聞いてみたいと思っていたの……そろそろ入れてもいい頃かな」
 一度話を遮断して、急須のお茶をコップに入れた。静かにしていた影がコップに触れようとしたが、暑さに負けて手は引っ込んでいた。
「切ってごめんなさい」
「いや、苦くなるよりはましだと。それでさっき聞いているって言ってましたけど……死ぬって噂知ってます?」
「知っているよ。何度も聞いたら死んじゃうって話。私は平気なんだけどな」
「それでここからが本題で……一緒に行ってくれませんか?」
「行きたい。あっ、えっと……」
「……即答で返されるとは思ってなかった。一応、調査の目的で行くように言われていて……その死を起こしている原因が能力かもしれないって話で」
「ふーん……私には関係ないけど。でも双子の演奏は聞いてみたいし、それにめったにない機会だから……次いつ聞けるか分からないし」
「風花さんは聞いているだけでいいんです。僕は」
「蒼徨さんも聞くんでしょ?」
「聞きはしますけど噂通りだと怖いので……」
「その噂が悪名をつけようとして流した噂ならその人を罰しないと……だから私は信じていない。良い曲を聞かずしてそういうことするやつらが許せない」
「……そ、そうですよね。単なる噂……」
「それに何かあったらお兄さんが守ってくれる」
 突然振られてお茶を飲んでいた雨夜は吹き出しそうになっていた。少し冷めたコップを持っていた手が小刻みに震えていたが、どうにか飲み干して机に置いた。
「……ふふ」
「風花のせいだからな」
「話は聞いていたでしょ」
「だから……簡単に承諾しすぎだって」
「今回のは分かるでしょ! あのチケット見せられて行かない人なんていないでしょうが」
「それは風花だけだよ」
「あの……」
「お前は」
「はい」
「……何かあれば守ってやらんこともない。だが今回だけだ。風花の身に危険が及ぶのは困るからな」
「あ、ありがとうございます。じゃあ……集合場所を決めましょうか」
 それから場所決めをしようとしたが、最後には蒼徨が風花を迎えに行くことになった。お茶をちゃんと飲み干した蒼徨は深々と礼をして、風花は手を振って別れた。
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