一歩近付く
公開 2026/01/25 22:59
最終更新
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ほんの些細な軽口だった。
かつての様に漂流者は「本当にびっくりしたよね、閣下」と言ったことぐらいしか思い浮かばなかった。
Roatheは短く「……あぁ」とだけ答えると自室に引き上げていった。一人で、だ。
談笑していたMarieが離れていくRoatheの背中と漂流者に何度も視線をやる。
そして漂流者に言外に大丈夫なの?というような視線を送ってきたが漂流者は曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。
自分の言葉足らずでRoatheに叱られた事は今までも何度かある。
しかしどの時もお互いに言葉を尽くして溝を埋めてきた。
なのに今のはどういう事なのか。
大切にすると誓ったのに傷付けてしまったのだろうか。
どうしたらいいのかわからない。
漂流者の目には涙が今にも溢れんばかりに溜まっていた。
「私の狼さん!あの悪魔が大切なのでしょ?ならすぐに追いかけなきゃ」
Marieは迷子のような顔で途方に暮れる漂流者に活を入れる。
ハンカチで優しく目元を拭ってやりそっと立たせると背中を押して「早く行きなさい!」ともう一度優しく、それでいて力強く送り出したのだった。
Roatheは部屋にいるだろうか。
いたとしても何て声を掛ければいいのか。
何も答えが出せないまま、漂流者はRoatheの部屋のドアを小さくノックした。
中からくぐもった声がしてドアが開く。
Roatheは長椅子に座ったまま、本を手にこちらを見ていた。
「なんだ」
決して冷たい声音ではなかった。
怒っているでもなく、強いていうなら戸惑っているようなそんな声音だった。
「Roathe、私Roatheがイヤだと思うことしちゃった、よね」
「……わからない。ただ、お前から『閣下』と呼ばれた時に説明しにくいが距離を感じた」
Roatheは自分の感情に名前をつけようとしてるのか目を瞑り、口元に手をやったまま動きを止めた。
漂流者は何も言わずにRoatheが口を開くのを待つ。
こうして思考の海に漂う事は恋人になってからよくあった。
Roatheにとっては親密な相手ができて新しい感情や理解が日々あったのだろうと解釈していた。本人に聞いたことはないが漂流者はそう考えていた。
「……イヤだったと言ったらお前はどう思う?我が愛よ」
「イヤだったのは私がRoatheを突き放したように聞こえたから?」
「ふむ、突き放す……。というよりMarieがいた事で他人行儀になっていた事がイヤだった、が感情としては近いかもしれんな……」
身の内に入れている距離感の僅かなズレ。
Roatheにとって漂流者は身内も身内、大切な宝物であるといえた。
当然漂流者も同じ気持ちでいると思っていたのに『閣下』と呼ばれたことでそうではなかったと感じてしまった事がほんの僅かではあるがズレに繋がったのだった。
「ごめんね、そんなつもりはなくともRoatheはそう思ってしまった。本当にごめんなさい」
漂流者はまた涙がこぼれそうになるのを感じたが目元に力を入れて耐える。
泣きたいのはRoatheで私じゃない。
「いや、すまない我が愛。我が神経質になっていたのだろう。いい、気にするな」
「気にする!Roatheにそんな顔させたくない!」
ツカツカと近寄り座ったままのRoatheに手を伸ばし抱き寄せる。
泣いたらRoatheを困らせるのにと思えば思うほど涙はせり上がり大粒の雫が目から溢れた。
「私ねすぐに間違えちゃうの、だから間違えたらすぐに教えて。Roatheとのことで間違えたくない……ごめんね」
嗚咽を飲み込みそう言うと抱き締める腕に僅かに力がこもる。
「馬鹿者、なぜお前が泣くのだ」
「Roatheのっ…代わりっに…」
言葉にはなからなかったが充分過ぎるほど漂流者の気持ちは伝わってきた。
漂流者の背中を優しく撫でて落ち着かせてやる。
しばらくするとしゃっくり上げていた体も静かになり、部屋の中はいつもの静寂に戻った。
「落ち着いたか?」
「……ん」
バツが悪いのか漂流者は短く返事をしてRoatheの膝に座る。
そこは二人でいる時の漂流者の指定席だった。
胸元に頭を寄せた漂流者をRoatheは何も言わず抱き寄せる。
もう言葉は要らなかった。
今日も静かに夜が更けていく。
終
かつての様に漂流者は「本当にびっくりしたよね、閣下」と言ったことぐらいしか思い浮かばなかった。
Roatheは短く「……あぁ」とだけ答えると自室に引き上げていった。一人で、だ。
談笑していたMarieが離れていくRoatheの背中と漂流者に何度も視線をやる。
そして漂流者に言外に大丈夫なの?というような視線を送ってきたが漂流者は曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。
自分の言葉足らずでRoatheに叱られた事は今までも何度かある。
しかしどの時もお互いに言葉を尽くして溝を埋めてきた。
なのに今のはどういう事なのか。
大切にすると誓ったのに傷付けてしまったのだろうか。
どうしたらいいのかわからない。
漂流者の目には涙が今にも溢れんばかりに溜まっていた。
「私の狼さん!あの悪魔が大切なのでしょ?ならすぐに追いかけなきゃ」
Marieは迷子のような顔で途方に暮れる漂流者に活を入れる。
ハンカチで優しく目元を拭ってやりそっと立たせると背中を押して「早く行きなさい!」ともう一度優しく、それでいて力強く送り出したのだった。
Roatheは部屋にいるだろうか。
いたとしても何て声を掛ければいいのか。
何も答えが出せないまま、漂流者はRoatheの部屋のドアを小さくノックした。
中からくぐもった声がしてドアが開く。
Roatheは長椅子に座ったまま、本を手にこちらを見ていた。
「なんだ」
決して冷たい声音ではなかった。
怒っているでもなく、強いていうなら戸惑っているようなそんな声音だった。
「Roathe、私Roatheがイヤだと思うことしちゃった、よね」
「……わからない。ただ、お前から『閣下』と呼ばれた時に説明しにくいが距離を感じた」
Roatheは自分の感情に名前をつけようとしてるのか目を瞑り、口元に手をやったまま動きを止めた。
漂流者は何も言わずにRoatheが口を開くのを待つ。
こうして思考の海に漂う事は恋人になってからよくあった。
Roatheにとっては親密な相手ができて新しい感情や理解が日々あったのだろうと解釈していた。本人に聞いたことはないが漂流者はそう考えていた。
「……イヤだったと言ったらお前はどう思う?我が愛よ」
「イヤだったのは私がRoatheを突き放したように聞こえたから?」
「ふむ、突き放す……。というよりMarieがいた事で他人行儀になっていた事がイヤだった、が感情としては近いかもしれんな……」
身の内に入れている距離感の僅かなズレ。
Roatheにとって漂流者は身内も身内、大切な宝物であるといえた。
当然漂流者も同じ気持ちでいると思っていたのに『閣下』と呼ばれたことでそうではなかったと感じてしまった事がほんの僅かではあるがズレに繋がったのだった。
「ごめんね、そんなつもりはなくともRoatheはそう思ってしまった。本当にごめんなさい」
漂流者はまた涙がこぼれそうになるのを感じたが目元に力を入れて耐える。
泣きたいのはRoatheで私じゃない。
「いや、すまない我が愛。我が神経質になっていたのだろう。いい、気にするな」
「気にする!Roatheにそんな顔させたくない!」
ツカツカと近寄り座ったままのRoatheに手を伸ばし抱き寄せる。
泣いたらRoatheを困らせるのにと思えば思うほど涙はせり上がり大粒の雫が目から溢れた。
「私ねすぐに間違えちゃうの、だから間違えたらすぐに教えて。Roatheとのことで間違えたくない……ごめんね」
嗚咽を飲み込みそう言うと抱き締める腕に僅かに力がこもる。
「馬鹿者、なぜお前が泣くのだ」
「Roatheのっ…代わりっに…」
言葉にはなからなかったが充分過ぎるほど漂流者の気持ちは伝わってきた。
漂流者の背中を優しく撫でて落ち着かせてやる。
しばらくするとしゃっくり上げていた体も静かになり、部屋の中はいつもの静寂に戻った。
「落ち着いたか?」
「……ん」
バツが悪いのか漂流者は短く返事をしてRoatheの膝に座る。
そこは二人でいる時の漂流者の指定席だった。
胸元に頭を寄せた漂流者をRoatheは何も言わず抱き寄せる。
もう言葉は要らなかった。
今日も静かに夜が更けていく。
終
Warframeで遊んでたらうっかりRoathe沼にハマったテンノ。
Roatheのお陰でようやくWarframeの世界観とか諸々が理解できたので「わぁ、Roatheってすごいなぁ」って尊敬から愛情に変わるのに秒でしたよ。
なおLyon神父の事も心配しながら見守ってます。
Marieは……自由にするがよい(*ᵕᴗᵕ)⁾⁾ゥンゥン
夢の世界在住。
Roatheのお陰でようやくWarframeの世界観とか諸々が理解できたので「わぁ、Roatheってすごいなぁ」って尊敬から愛情に変わるのに秒でしたよ。
なおLyon神父の事も心配しながら見守ってます。
Marieは……自由にするがよい(*ᵕᴗᵕ)⁾⁾ゥンゥン
夢の世界在住。
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