二つの世界の終着点 第二章(2/4)
公開 2023/12/17 14:57
最終更新 2023/12/17 15:02
(空白)

 翌日、クレハとエイルはあの街に訪れていた。彼が持つ時間操作の能力を使用しながら一日かかると言われていた道を数時間で突破するという方法を取り、朝に出発して現在の時刻は午後二時だった。しかしあの街を覆う塀のせいで中に入ることは出来ず、どこかしらにもキープアウトのテープが張られていたが、粘着力を失って剥がれているのもあった。剥がれている箇所から入ろうとしたが、透明な壁が張られているのか入ることすら出来なかった。
「辿り着いたのに……」
「一応……事故現場だからな」
「だからってもう何年も経ったよ」
「そうだけどさ。まだ決め手となる証拠が見つかってないらしいし、人々は皆死んでしまった。復興するとしても実験台にされた街に住もうとする人がいると思うか? そんな奴は変だと思うぞ」
「変って……あと私は生きているんだけど」
「今は違うだろうが」
「……」
「いや、黙られても困る……でこれからどうする? 中に入れねぇし」
「エイルはどこか行きたいところないの? 昨日も聞いたけど何も言ってくれなかったよね」
「僕は……実家がかなり遠い場所にあるから三日じゃ無理だ」
「それ以外なら……ほら」
「ほらって?」
「えっと」
「……ひとまずどっかでお茶でもするか?」
「う、うん。そうだね」
 封鎖されてしまった街を諦めて、何処か近くの喫茶店の中に入った。物静かで店長以外誰もいなかったが、そんなの気にせずエイルはクレハの手を引き、席に座った。エイルはコーヒーを、クレハはカフェオレを頼んだ。あの街が近いこともあって塀が良く見えて、それ以外殺風景というあまりにも酷いところだが、それでもエイルは窓からその風景を見ていた。
「……いい雰囲気のお店だね」
「そう思うか」
「……そうって」
「ガットから聞いたんだ。クレハ、君は心配し過ぎた」
「でも」
「確かに懐中時計のことを思い出せないのは苦でしかないけど……君が悩むことじゃない。それよりもそうさせてしまった僕に責任がある」
「違う……違うよ」
「……!」
「どうして、相談してくれなかったの。いつも一緒にいるのに……私はいろんなことを話したのに、エイルは何も言ってくれないじゃない!」
「……ならわかるのか」
「分からないから聞いているの」
「……さっき実家が遠いとか言ったよな」
「うん」
「あれは嘘だ。実家なんて存在しない」
「え? 親戚みんな亡くなったの?」
「そういう概念じゃない……僕はそもそも誰なのか最初わからなかった」
「それは記憶喪失だったからじゃないの?」
「確かに最初はそうだった。でも思い出す日常はあまりにも自分じゃないんだ。自分の記憶のはずなのに、なんだか別のものを見ているような気がして」
「もしかして懐中時計と何か関係があるの?」
「それまでは分からないけど、関係はありそうなんだよな」
「その話をスヌイ先生に言ったの?」
「記憶喪失から戻った際、それが自分の記憶であると嘘をついた。日常的なことはすべて思い出したと言ったよ。でもそれはまるっきり……ね」
「じゃあ、今は本当の記憶ってことだね」
「そう……かもしれないな」
「かもじゃなくてそうだよ。みんなと暮らしている今の時間はすべて本物だよ」
「ありがとう、クレハ」
「何もしてないよ。むしろエイルがいてくれたから今の私がいる。能力が暴走せずに制御できているのは」
「それは僕のおかげじゃなくて、クレハが努力したからだ。僕は見ていただけだ」
「そんなことないよ」
 そう言い合っているといつの間にかカップの中身はなくなっていた。それから二人はいろんなところに訪れて、多くの会話を交わして長いと思っていた時間はあっという間に終わっていた。エイルは少しずつ笑顔を取り戻し、クレハは楽しそうにしていた。


 しかしそんな時間と裏腹に能力研究所では大変なことが起きていた。一日だけ休みをもらっていたガットでさえ呼び出されてうんざりしていたが、それどころではないことが起きていた。能力研究所にある一つの実験室が大爆発を起こし、火災が発生した。花の研究を行っていた実験室が引火したことでその薬品やら成分やらが漏れ出して、何が何だか分からないほどに混乱していた。消火が行われて煙が収まった頃、やっとガットも辿り着いて、衝撃的なものを見た。白衣を着ていたと思われる研究者達、そしてそれを救おうとしたフォルトやラン、マウムにスヌイが子供の姿になっていた。
 それをエイルとクレハが知ったのは休暇が終わった後だった。なんで伝えなかった、とエイルはガットに怒鳴りつけたが、「やめて」とクレハに言われて「ごめん」と呟いた。
「ある程度聞いたけど……これからどうしたらいいんだ」
「本当に子供になっちゃったんですか」
「見ればわかるよ」
 そう言いガットは二人を連れて臨時で作られた『子供部屋』に入ると、あまりの衝撃に二人とも何も言えずに固まってしまった。それを見ていたランは遊んでいたおもちゃを放り投げて、クレハの方に近づいてきた。
「クレハ、遊んで」
「え? ……名前は覚えているの?」
「……それについては初耳だ。俺が彼らに会っても興味を示さなかったのに」
「じゃあ、私だけ……でもどうして?」
「心当たりがあるとすれば……クレハさんを救ったのはランさんとフォルトさんです。もしかしたらその記憶だけは残っているのかもしれません」
「それならフォルトが反応しないのは何故だ」
「そういうわけでもないみたいだ」
 ガットが言いながらフォルトの方に目をやるといつの間にかに近づいて、クレハの足を掴んでいた。ランとフォルトは遊んでほしそうにクレハを見続けていた。クレハは二人の目線を合わせるようにしゃがみ、「何がいい?」と問いかけていた。その答えを伝えようとクレハを引っ張っておもちゃの方に連れて行かれた。
「あっ……」
「連れて行かれちゃったね」
「なぁ」
「エイルが言いたいのは原因だろう? まだ分かっていない」
「花が原因じゃないのか?」
「確かに花が何か悪さをしているのは分かっている。だがそれだけではないと踏んでいる……ってトラン先生が言っていた」
「トラン先生は無事だったんだね」
「一応、あの人は精神科医だし、用がなければ能力研究所に来ないからね」
「そういえばそうだった」
「とはいえ……テレさんは資料からどうにかして元に戻せないか探してくれているし、アシビさんは原因を特定するために動いてくれている。リコレさんは……」
「リコレがどうした?」
「それが……『一つだけ心当たりがある』とか言ってそれっきり帰ってこなくなっちゃったんだ」
「原因あいつじゃねぇ―の?」
「職員達もそう思い始めている……でも信じたくはない」
「……ひとまずこの状況をどうにかしないといけないか」
「エイル、頼みたいことがある。ランさんとフォルトさんを預かってくれないか?」
「はぁ?」
「数日の間、ここに何人かの職員が泊って面倒を見ていたけれど、ランとフォルトに関してはその職員達を怖がったんだ。そして食事もろくに取らずに……」
「二人とも元気そうに見えるが」
「見えるだけだよ。クレハさんが来てくれたから無理している。おそらくすぐに……ほら」
 会話を切るようにガットがクレハの方に目をやると、ランとフォルトが倒れて彼女があたふたしていた。
「二人ともお腹空いているみたい」
「ほらな」
「ほらな……じゃないだろう! なんかねぇ―のかよ」
「そういうと思ってお菓子ならあるけど」
「クレハ」
「ちょっと、投げようとしないで持ってきて! 当たったら危ないでしょう」
「……おう」
 頬を少し膨らませながら怒るクレハに「ごめん」と言いながらエイルはガットが持ってきたお菓子を渡した。ランとフォルトはお菓子を見て嬉しそうに開けようとするが、開けられずに泣きかけていた。それをすぐにクレハが気づいて開けてあげると「わーい」と言って二人とも食べていた。食べ終わると眠たくなったのか、その場で寝てしまった。風邪を引かないように、と布団まで運んであげたが、ランはクレハの手を離さなかった。
「おい」
「ダメだよ。眠っているんだから」
「……」
「さっきから何に怒っているの? エイル」
「……なんでもない」
 そっぽ向くエイルに疑問を持つクレハとそれを見て少しにやけていたガットは気づいていたが、何も言わずにいた。離そうにない状態が続き、エイルは嫌気がさしたのか部屋から出て行ってしまった。それをガットはやれやれと思いつつ、クレハはランの頭を撫でていた。
「ガットさん」
「どうした?」
「当分動けそうにないので……その、さっき言っていた預かりの件」
「あー、聞こえてはいたんだ」
「少しだけですが……私は引き受けてもいいけど」
「エイルは嫌がっているみたいだからな」
「そうですか……こんなにかわいいのに」
「……え?」
「分かってますよ! だからこそ守らないとって思うんです。何の目的があってこんなことになったのか分かりませんが、二人は命の恩人だから、次は私が恩返しをする番だと思って」
「そう気負わなくていいよ。みんな守ろうとはしているんだ。ただ身内に敵がいるかもしれないという疑心暗鬼のせいで、信じられるものも信じ切れていない状態で」
 会話を続けているとその声でランは目を覚ましたが、寝ぼけて掴んでいたクレハの手を口にくわえようとした。しかしとっさにクレハが気づいて離してしまったが、それではっきりと目を覚ましたようで、起き上がってクレハの方に飛び込んできた。それに驚きはしたが、ちゃんと捕まえてふとももに乗せて座らせた。
「よしよし」
「……さっきの話の続きだけど、リコレさんがいなくなっていて」
「行方不明なんですか?」
「うん……今のところ分かっていなくて」
「こういったら失礼かもしれないけど、行動する人だったんですね」
「研究所がああいう組織みたいになる前なら結構、外に行っていた人なんだよ。能力を駆使して敵を欺くことが出来ていたらしいから」
「らしいってことは」
「実際に見たことはないんだ。でもそう考えると敵のアジトなんかを見つけたのかもしれない」
「……無事に帰ってくるといいですが」
「今はそう願うしかないね」
「……クレハ、お菓子」
「ちょっと待ってね……はい」
「開けて」
「あっ……よいしょっと」
「……おいしい」
「それで……ガットさん?」
「……大丈夫。詳しいことはテレさんの調べものが終わってから会議を開く予定でね。それで子供になってしまった人達を元に戻す方法が分かればいいんだけど。それにやっぱりランさんとフォルトさんの預かりをクレハさんに頼みたいな。ランさんに至ってはきっと離れてくれないと思うし」
「わかった。エイルが嫌がっていても私が面倒を見るから」
 クレハがそう決意するとランが嬉しそうに喜んでいた。その声に他の子供達やフォルトも目を覚まし、ランはフォルトの手を取って強制的に起き上がらせて、クレハの所に連れてきた。フォルトがクレハの目をじっと見ている中、子供達の中にマウムが混じっていた。
「ほら行きますよ、マウムさん」
「……」
「ガットさんはマウムさんを預かっていたんですね」
「あー、一応……でもなぜか無口なんだよ。原因がわからなくてさ」
「記憶が関係しているなら何も覚えていないのかも?」
「俺もそれは思っている。だから何かきっかけになるものがあればいいんだけど」
「……」
「クレハさんも」
「え? あっ」
 会話を中断してクレハに問いかける視線はランやフォルトの方に向いていた。それに気づいたクレハの服を掴んで、頬を膨らませて邪魔しないで、と言わんばかりにランとフォルトはガットを見ていた。
「長く話し過ぎましたね」
「もう夕方……」
「エイルはきっと……いえ、何かわかり次第、連絡は入ると思いますが」
「う、うん」
 ガットはマウムを連れて部屋から出て行き、クレハも立ち上がってランを前に、フォルトを後ろに抱えた。フォルトは安心したのか眠りについて、ランはまだ遊び足らないと言った感じで、動き回るから捕まえるまで時間がかかった。けれどどうにか捕まえることが出来て、ため息をついて部屋から出た。

 家に辿り着くとエイルが扉を開けてくれた。しかしランとフォルトがいることがわかると何も言わずに奥の部屋に行ってしまった。夕食を作るために二人をソファーの上に避難させようとした。フォルトは眠っていて気づいていないようだったが、ランは足を掴んで離れないようにしていた。仕方ないと思ってゆっくりしながら料理を作っていると、エイルが匂いにつられて部屋から出てきた。しかし二人の世話に追われてクレハはそれに気づかなかった。
 ご飯を食べている間、何の会話も起きずに静かだった。何かを話さないとと思いながら、エイルの嫌そうな顔を見ているのがつらかった。しかしそれ以上にランとフォルトの行動が多くて、エイルの気持ちを聞いてあげることが出来なかった。
 すべてが落ち着いてクレハが台所で立っていると、後ろからエイルに抱きしめられた。少し驚きながら首だけで後ろを見ようとしたが、エイルは背中に顔をうずめて見えなかった。
「……エイル?」
「どうして引き受けた」
「ガットさんが困っていたから……あと」
「あと?」
「えっと……」
「正直に言ってくれ」
「……守らないとって思ったから」
「……」
「嫌がっていたのは知っていたんだよ。ガットさんから聞いたから……でもどうしても」
「そうか」
 その声は暗く、抱きしめていた手は離れていた。そしてその姿は色を失ったかのように消えていった。


 それからクレハはランとフォルトのお世話に加えて、今までの家事をすべて行っていた。エイルはあの日以降、部屋から出てこなくなり、ご飯も寝静まった頃に取っているようだった。疲労で倒れかけたこともあったが、自由過ぎる二人を野放しにすることも出来ず、ふらふらになりながら、日々を過ごしていた。
 そんな毎日が繰り返されていたある日、ガットからの連絡が入ってランとフォルトを連れて、能力研究所の簡易的に子供が遊べるような遊具が置かれた場所に呼ばれた。そこで待っているとガットがマウムを連れてやってきた。
「……! 大丈夫?」
「大……丈夫」
「いやいや、大丈夫じゃないでしょう! エイルはどうした?」
「彼は部屋から出てこなくなっちゃって」
「あいつ馬鹿か」
「無理強いするわけにもいかないよ」
「だからって……」
「大丈夫です。ここなら他の職員さんもいますから……少し休もうかと思っているし」
「それならいいが」
「……今から会議ですよね」
「ああ、リコレさんが戻ってきたんだ」
「よかった……」
「それで一応、テレさんも来るって言っていたから三人の話し合いになるかな」
「そうなんですね……」
「それで」
「マウムさんのことは任せてください」
「あ……頼んでいいか」
「はい……それに一つ思いついたことがあって。マウムさんって生き物達の声を聞くことが出来るんですよね。なら犬とか猫とか動物に会わせることは出来ませんか?」
「記憶を解くためにもいい考えかもしれないな」
 ガットはそう言い、他の職員と話し始めて、マウムとよくいたチワワを連れて来ることになった。
「それじゃ、マウムさんを頼みました」
「はい! いってらっしゃい」
 そしてクレハは手を振り、ガットは空間転移で一瞬にして集合場所に辿り着いた。扉を開けるとテレイとリコレが椅子に座って待っていた。
「遅いぞ」
「リコレさん……まだ時間は」
「はい、ちょうど時間になったよ」
「あっ、はい……」
「遅くなったのはすみません。マウムを預けに行っていたら……」
「まだ子供状態なのか」
「ランさんやフォルトさんもです」
「うん? クレハもいるのか」
「一応、話し合った内容を伝えられればと思って連絡しました」
「なるほどな……だがかなり長くなるぞ」
「私も調べて分かったことがありまして……ただリコレさんの話が気になるのでそちらからで構いません」
「分かった。最初に俺が何処に行っていたかって話をしよう。それはだな……敵のアジトってところだ。声を欺き、情報を盗んできた感じだ。ランやフォルトが動けない今、行動できるのが俺かガット、アシビくらいだろか。アシビは研究所の爆発に関与した人間を探すために今も動いているから無理として、ガット……お前は子供達を任せっきりですまないな」
「いえ、クレハさんや他の職員さんにも手伝ってもらっていますから」
「それで続きだ。敵から盗んできた情報によるとあの花は神が落とした種らしい」
「神! それはあり得ません」
「テレさん?」
「神はこの世界から消えた存在です。それは今も語り継がれている真実のはず」
「確かに……だがあいつらが言っていたことを正とすると、神は蘇った可能性が高い。なんせ数千年前の出来事だ。何かが起きてもおかしくはない」
「……魔法が、能力が解き放たれたことと関係あるのでしょうか」
「それはちょっとわからないな。ただあいつら曰く、神の目的は人々を消すことと天使を殺すことらしい」
「天使?」
「ああ、天使だ。かつて遺物が飛来した時、天使の贈り物と呼ばれるものがあった。その力のことを言っているんだろうと思われる」
「何故、殺す必要がある?」
「その天使の贈り物……その力は運命を変えるもの」
「運命? まさかその力で神が消えたのか」
「厳密に言うと《能力》が消えたんだよ。その過程で神の悪意が消えたのさ」
「じゃあ……神が消えたのは嘘の話」
「嘘とは言い切れない。その力によって世界は一度作り替えられたはずなのに、変える前の記憶をどうして俺らが知っているのかって……普通覚えていないはずだ。《能力》が解き放たれ、変えたはずの運命が壊れてしまった。だからないはずの記憶が戻り、神の悪意は再び目覚めてしまった……のかもしれない」
「……難しい話になってきた」
「まぁ、簡単に言うと今の子供化現象に関して何もわからなかったってわけさ」
「……次は私ですね。あの花に関して分かったことがありまして……かつて魔法の儀式と『二つの世界』の資料が見つかってから、多くの研究者が動き、ある街では『疑似的能力』が生まれました。その過程である事件が起きていたみたいで、謎の果実が実る木があったそうです。それを口にした者は強力な力を得る。そう言われていました。しかしそういうものには代償がつきもので、一度でも口にしてしまった者は副作用で化け物になったようです」
「ちょっと待て」
「はい……リコレさんの言いたいことはわかります。あの街に現れた化け物と同じかって話ですよね」
「そうだ」
「同じかどうかは定かではありません。ただあの花がもしその果実と相互性があったとしたら、神が関与している可能性があります」
「でも果実では化け物となり、花では子供になった。それなら相互性がないのでは?」
「そうとも言い切れないかもしれません。スヌイさんが子供から元に戻ったという話は聞きましたか?」
「俺は知っているが……たぶんガットは知らないよな」
「はい、今初めて知りました」
「病院で預かってもらっていたスヌイさんですが、何の前触れもなく元に戻ったそうです。ただ戻ってすぐにとある言葉を発したそうです。それを彼に聞いたところ、無意識だったそうで覚えてらっしゃらないようで……。その言葉が『神の仰せのままに 天使はすぐそばに』ということです」
「さっきの天使」
「はい、天使の話が出た際、少し驚きましたが、繋がっているのかもしれません」
「テレさん……花の話は?」
「あっ、病院の方でも花の研究はなされていました。それによると子供を死に至らしめ、大人を子供にする……魔法的というか能力的成分が含まれていたようです」
「記憶がなくなり能力が使えなくなったのは」
「それも含まれていたかもしれないという見解でした。それで戻す方法ですが、今のところ何もわかっていなくて」
「テレさんの方もダメだったんですね」
「でもある程度のことは分かった。まとめると神が与えた試練というわけだ」
「リコレさん、まとめすぎです。それにこれは試練じゃないかもしれないんですよ。神が人を消すための事前準備だとしたら」
「誰が神のいいなりになると言ったか?」
「へっ?」
「自分の道は自分で切り開く。神なんかに潰されてたまるかって話だ」
「それはそうですが……」
「……ひとまずガット、クレハに伝えて来い」
「え? あっ、はい」
 困惑するガットの肩をがしっと掴んでリコレは圧をかけていた。何も返せずに軽く笑うとその場から姿を消した。
「……無茶苦茶ですよ」
「だがまだ調べなければならない。俺はまた行くから」
「えっ」
「えっ、じゃないだろうが。天使の贈り物があるとすれば……他の贈り物の情報があってもおかしくない」
「あまり深く踏み込まないでくださいよ」
「声を欺くとしても限界があるからそんなに深くはいけないよ」
 そう言いリコレはテレイを置いて部屋から出て行った。テレイは深いため息をついて、机に散らばった資料をまとめていた。
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