二つの世界の終着点 第一章(4/4)
公開 2023/12/17 14:35
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クレハの記憶が完全に戻っていた頃、能力研究所を襲った謎の化け物達は次々と倒れていった。まるで意思を失ったかのように、大量の死体に変わり果てた。しかし乗っ取った犯人は見つからず、機能はすべて正常に戻っていた。また職員の一部も化け物の一部と化していたため、化け物の意思が失われたのと同時に、それになり果てた職員達の命も失われた。
その現象に対応していたフォルトやアシビは変だと思いつつ、元に戻った安心でほっとしていた。本来このような作業はガットやスヌイが行っていたのだが、ガットは化け物達に捕まって能力が使用できなくなってしまい、スヌイというと病院と能力研究所の間で繋いでいた電話が繋がらなくなったせいで、気付いているかすらわからなかった。しかし化け物達が意思を失い倒れたことでガットは解放されて、今になって電話がかかり、スヌイはフォルトやアシビなど皆に感謝した。
治療を施さなければならない者は病院に運ばれ、そうでない者はカウンセリングを受けるということになった。カウンセリングは呼び出されたトランによって行うこととなり、かなりの行列が出来ていた。そして力尽きて眠ってしまったクレハをおんぶして、エイルは能力研究所に辿り着いた。フォルトが対応してくれて、クレハを一室のベッドに、エイルもフォルトから「休め」と言われて、クレハの近くのソファーで眠ることにした。
それから数時間後、エイルはアシビに起こされた。話したいことがあるらしいが、それはエイルだけではなく、クレハもいてほしいということだった。しかしよく眠っていたため、二人とも起こすのが億劫となっていたが、そこにスヌイまでやってきて少しばかり話をしていると、その声に気づいたのかクレハが目覚めた。
「……私は」
「あっ、うるさかっただろう」
「ううん……それよりもスヌイ先生がどうしてここに」
「うん? エイルから聞いてないか。記憶が戻ったらしいじゃないか」
「それに関して聞いておきたいことがありまして」
「あの……あなたは」
「アシビと言います。普段は検察官をしています」
「アシビ……さん。私は多くの人を殺しました。それは身を守るための行動だったかもしれません。ですが……う、」
「続けて、大丈夫。その記憶を見れば真実がわかるから」
「記憶?」
「アシビは頭の中を覗き込んで、その人の記憶を直接見ることが出来る能力を持つ」
「だから嘘をついていないことは分かっている。君はその力、その指輪のせいで暴走した疑似的能力者達に襲われた。そして記憶から察するにあの鎌は防衛システムなのだろう。だからこそ敵味方関係なく切り裂き、生きていたかもしれない家族さえも殺した」
「やっぱり私は」
「でも今回の事故に関しては君は悪くない。悪いのはあの街の研究者達だ。疑似的能力の実験としてあの街を使い、その制御さえもまともにせず、暴走した疑似的能力者の制止もしなかった。本当はその研究者達から話を聞きたかったのだが、爆発が起きた時にはすでに死亡していたらしい。それ以前に死んでいた可能性もあるがそこに関しての真偽は不明だ」
「だとしても私は人を殺したんです。だから罪を償わせて」
「……」
クレハの言い分はしっかりしている。だがあまりにも異例な事故にアシビとスヌイは黙ってしまった。エイルは話を聞いていることしか出来なかった。
「ならばこれはどうだろう」
「スヌイ?」
「我々の仲間になってくれないかい」
「それは……能力研究所の職員になれということですか?」
「少し違うね。確かに能力研究所の一人ではあるが……」
「待ってください! 同じような」
「エイルさん……私はやりたいから」
「……」
「罪を償うことが出来ないのなら、せめてこの能力で多くの人を救いたいから」
「エイル? クレハはそうしたいようだが」
「本当は嫌ですよ。同じような道に進ませるなんて」
「……そんなに心配ならば一緒にいるといい。クレハはどうだ?」
「むしろいてほしいです」
「だそうだ。そもそもクレハはエイルの患者、これからもそれは変わらない」
「患者ってもう完治しているじゃないですか!」
「エイルから見て完治しているというか」
「え?」
「能力に関して正常に動いていると思えない」
「それを見ろと」
「エイル……私の助手としては優秀だが、君はまだ未熟だ」
「……わかりました」
そう言い残しアシビとスヌイは部屋から出て行った。エイルは深く落ち込み、クレハはそれを慰めようとしたが、傷ついた心を癒すための言葉が出なかった。
「エイルさん」
「……」
「ごめんなさい」
「……」
「私は」
「いや大丈夫だ」
「でも……実験体にされたくなかったんでしょう? 疑似的能力を持つのは私だけ。だから何をされるか分からない。そんな状況でここに置いておきたくない」
「まぁそうだな。でも一緒にいてもいいというなら、まだ安心かな」
「エイルさん。一つだけ」
「どうした?」
「もし私の疑似的能力……この指輪が暴走状態になったら殺してくれますか?」
「何故そんなことを聞く? 暴走なんてさせないけど」
「もしもですよ」
「だから暴走させないって……」
そう言いエイルはクレハの頭を撫でた。「約束」とクレハは言い、二人はゆびきりをした。
クレハはすべての記憶を取り戻したが、まだ事故の全貌が見えたわけではなかった。後日、アシビはクレハからの話を聞いていたようだが、この事故に意図的なものが関わっているかもしれないという情報が出回り、クレハを犯人という者はいなくなった。
しかし化け物達が突如として現れた事件は未だ真相が分からない。この事故との関係性を考えつつも、繋がりが見えずに困難を極めていた。
クレハの記憶が完全に戻っていた頃、能力研究所を襲った謎の化け物達は次々と倒れていった。まるで意思を失ったかのように、大量の死体に変わり果てた。しかし乗っ取った犯人は見つからず、機能はすべて正常に戻っていた。また職員の一部も化け物の一部と化していたため、化け物の意思が失われたのと同時に、それになり果てた職員達の命も失われた。
その現象に対応していたフォルトやアシビは変だと思いつつ、元に戻った安心でほっとしていた。本来このような作業はガットやスヌイが行っていたのだが、ガットは化け物達に捕まって能力が使用できなくなってしまい、スヌイというと病院と能力研究所の間で繋いでいた電話が繋がらなくなったせいで、気付いているかすらわからなかった。しかし化け物達が意思を失い倒れたことでガットは解放されて、今になって電話がかかり、スヌイはフォルトやアシビなど皆に感謝した。
治療を施さなければならない者は病院に運ばれ、そうでない者はカウンセリングを受けるということになった。カウンセリングは呼び出されたトランによって行うこととなり、かなりの行列が出来ていた。そして力尽きて眠ってしまったクレハをおんぶして、エイルは能力研究所に辿り着いた。フォルトが対応してくれて、クレハを一室のベッドに、エイルもフォルトから「休め」と言われて、クレハの近くのソファーで眠ることにした。
それから数時間後、エイルはアシビに起こされた。話したいことがあるらしいが、それはエイルだけではなく、クレハもいてほしいということだった。しかしよく眠っていたため、二人とも起こすのが億劫となっていたが、そこにスヌイまでやってきて少しばかり話をしていると、その声に気づいたのかクレハが目覚めた。
「……私は」
「あっ、うるさかっただろう」
「ううん……それよりもスヌイ先生がどうしてここに」
「うん? エイルから聞いてないか。記憶が戻ったらしいじゃないか」
「それに関して聞いておきたいことがありまして」
「あの……あなたは」
「アシビと言います。普段は検察官をしています」
「アシビ……さん。私は多くの人を殺しました。それは身を守るための行動だったかもしれません。ですが……う、」
「続けて、大丈夫。その記憶を見れば真実がわかるから」
「記憶?」
「アシビは頭の中を覗き込んで、その人の記憶を直接見ることが出来る能力を持つ」
「だから嘘をついていないことは分かっている。君はその力、その指輪のせいで暴走した疑似的能力者達に襲われた。そして記憶から察するにあの鎌は防衛システムなのだろう。だからこそ敵味方関係なく切り裂き、生きていたかもしれない家族さえも殺した」
「やっぱり私は」
「でも今回の事故に関しては君は悪くない。悪いのはあの街の研究者達だ。疑似的能力の実験としてあの街を使い、その制御さえもまともにせず、暴走した疑似的能力者の制止もしなかった。本当はその研究者達から話を聞きたかったのだが、爆発が起きた時にはすでに死亡していたらしい。それ以前に死んでいた可能性もあるがそこに関しての真偽は不明だ」
「だとしても私は人を殺したんです。だから罪を償わせて」
「……」
クレハの言い分はしっかりしている。だがあまりにも異例な事故にアシビとスヌイは黙ってしまった。エイルは話を聞いていることしか出来なかった。
「ならばこれはどうだろう」
「スヌイ?」
「我々の仲間になってくれないかい」
「それは……能力研究所の職員になれということですか?」
「少し違うね。確かに能力研究所の一人ではあるが……」
「待ってください! 同じような」
「エイルさん……私はやりたいから」
「……」
「罪を償うことが出来ないのなら、せめてこの能力で多くの人を救いたいから」
「エイル? クレハはそうしたいようだが」
「本当は嫌ですよ。同じような道に進ませるなんて」
「……そんなに心配ならば一緒にいるといい。クレハはどうだ?」
「むしろいてほしいです」
「だそうだ。そもそもクレハはエイルの患者、これからもそれは変わらない」
「患者ってもう完治しているじゃないですか!」
「エイルから見て完治しているというか」
「え?」
「能力に関して正常に動いていると思えない」
「それを見ろと」
「エイル……私の助手としては優秀だが、君はまだ未熟だ」
「……わかりました」
そう言い残しアシビとスヌイは部屋から出て行った。エイルは深く落ち込み、クレハはそれを慰めようとしたが、傷ついた心を癒すための言葉が出なかった。
「エイルさん」
「……」
「ごめんなさい」
「……」
「私は」
「いや大丈夫だ」
「でも……実験体にされたくなかったんでしょう? 疑似的能力を持つのは私だけ。だから何をされるか分からない。そんな状況でここに置いておきたくない」
「まぁそうだな。でも一緒にいてもいいというなら、まだ安心かな」
「エイルさん。一つだけ」
「どうした?」
「もし私の疑似的能力……この指輪が暴走状態になったら殺してくれますか?」
「何故そんなことを聞く? 暴走なんてさせないけど」
「もしもですよ」
「だから暴走させないって……」
そう言いエイルはクレハの頭を撫でた。「約束」とクレハは言い、二人はゆびきりをした。
クレハはすべての記憶を取り戻したが、まだ事故の全貌が見えたわけではなかった。後日、アシビはクレハからの話を聞いていたようだが、この事故に意図的なものが関わっているかもしれないという情報が出回り、クレハを犯人という者はいなくなった。
しかし化け物達が突如として現れた事件は未だ真相が分からない。この事故との関係性を考えつつも、繋がりが見えずに困難を極めていた。
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