短編小説っぽい何か(301~310)/それに関する説明つき
公開 2023/10/29 15:30
最終更新
2023/10/29 15:35
▽短編小説301(2023/8/19)/包まれた夢が風に触れて飛び去るように
飛び跳ねて笑って、見失うことのない未来を見続けた。幸せな奇跡を願い、変わらぬ永遠を夢に見ていた。けれどその幻想は破綻して、閉じられた運命に抗う手段は残されていなかった。
少女が宿し始めた風の魔法が覚醒する前に、皆の命は赤色に染まり、金属音は不協和音を奏でて、深く傷ついた記憶は少女の頭の奥に封じ込めた。
数年後、唯一の風の魔法を扱う魔法使いとして覚醒した少女は笑うことを忘れて、過保護に皆が守ってくるのを嫌がった。静かな風に導かれて、一人でいたいのについてくる邪魔者を追い払い、それでも来る者は魂をくり抜いて黙らせた。
殺しを行おうとしたこともあったが、血を少し見ただけで過去の記憶が蘇って、嫌な気持ちになった。しかし皆を殺した犯人を少女は知っていた。魔法を嫌うなんの力も持たない人間の仕業であると分かっていた。
魔法を敬うとする愚かな人間に幻想を
幸せな夢の終点に 風の槍が突き刺さる
少女は人間を嫌い、すべての人間を殺そうとした
だが気まぐれの風はその現実を夢に書き換えた
▽短編小説302(2023/8/26)/不気味な世界に運命も現実もなく
飛び出すことも出来ない空に舞うはずの鳥が嘆いて、赤い糸に切られて命失う時、微かな灯りが天へ運ばれた。一瞬の出来事に蹲(うずくま)ることもできず、散らばった翼は赤く焦がれて炭となった。
暗闇の天使が見つめる世界が正常でないことを知りながら、それが正常であると認識を阻害されて洗脳を受けて、真実の悪魔は天使に裏返った。
リセットが出来ないほどにこの世界は失われていた。想像も破壊もないように生み出された形跡もなかった。だが存在し、認識はさらに歪み、真実という嘘が本物を作り出していた。
それを模(かたど)る少女には赤い糸が絡みついていた。滴る血は糸となり、この世界を繋ぎ止める役目を担っていたが、全ての原因を彼女が背負っているわけではなかった。少女はすでに死んでいた。
固定された世界から弾かれた謂わばバグの世界。いらないものと排除されて切り捨てるだけだった者達に吹き込まれた命は動き出し、その世界を正史とする未来を信じていた。
少女はこの世界に存在しないはずの人間だ。死んでいるはずだが、それも歪まされて不明なことになり、世界はさらに認識を阻害する。
『どうして彼女は存在する?』 通信は遮断……
▽短編小説303(2023/9/2)/水の花が示す否定の記憶と重なる喇叭(らっぱ)
取り残された心が水の花を照らす。溶けゆく記憶が白紙に変わるその時を見据えて、その理由も告げぬまま、何もない空間にひとりぼっち座り込んでいた。
氷の蝶が記憶を失い、消えた世界で失った何かも閉じた結晶も忘れて、空白を見つめることしか出来ず、流れる空気の冷たさを感じるだけだった。
床に落ちていた喇叭を拾い上げる時、微かに聞こえる音色が何もない空間に響いた。ゆっくりと近づいて耳を澄ませてみるが、むしろ聞こえなくなって遠ざかると聞こえた。不思議な何もない空間の仕組みを理解する前に、手にしていた喇叭を吹いたが、音色は止まり、彼の意識も切れた。
一連の流れを見ていた水の花が枯れることはなかった。手を伸ばして花びらに触れようとする彼の考えを否定の心が凍らせて、手は下ろされて彼はまた何も思わなくなった。
けれど喇叭の音色が増えるたびに、否定の心は揺らいで冷たさははらわれていた。しかし咲き誇る花は凍りつき始めていた。
※この話は『霊の話(第三部)』の水の霊としての記憶を失った彼の物語。本編で語られるかは現在不明。
▽短編小説304(2023/9/9)/眠る女神と幼き少年 争いの種が芽吹く時
千年以上前、女神を巡る戦争が起きてあらゆる種族が亡くなった。その力を手に入れようとして殺したが、死とともに放たれたのは世界の破滅だった。すべての種族は消去されて、女神の命が戻る頃に世界は再生した。
女神はその力の意味を知り、自ら封印されて眠りについた。その肉体が何度滅びようとも、人の形を作るたびに性格が変わろうとも、魂に刻まれた力が放たれることはなかった。
封印の遺跡が風化しようと、女神に関する伝承が廃(すた)れることはなく、誰もがその場所を恐れていたが、この世界をよく知らない幼き少年は迷い込んでしまった。厳重な大人達の警備や即死級の罠を避けて、鎖に繋がれた幼き少女を見た。それが女神だと知らずに、助けようと鎖に触れた。
揺れる振動に目覚める女神は幼き少年の瞳を見ていたが、光り輝く鎖は女神の意志で一時的に解かれて、女神の手は幼き少年の顔に触れた。
『これはきっと必然……なのかもしれない』
幼き少年の額に口付けをした女神の姿を目にした後、夢のように揺らいで目を覚ますと家にいた。
▽短編小説305(2023/9/16)/欠陥少女は夢の中で選択肢を掴む
とうに果てた未来もこぼれ落ちた悲しみも
あなたの語る話はつまらない
バグだらけの世界は不完全な世界の端となりて
その意味を問う
光も鏡も闇も失われて残された影が見る少女は
血だらけの痛々しい姿
一瞬の日常が赤く染まる時 笑う顔は歪む
正常な風景は嘘の中に沈んだ記録の外にあった
鶯(うぐいす)の声が金切り音のように耳を穢すなら
悪夢の中の真実に嘘を混ぜ込む一つの欠片
素敵な未来を壊したい悪霊の我儘は
繰り返し辿り着いた死のナイフを渡す
ひとりぼっちの記憶は見届ける者になく
引かれた手に温かさと神秘の空を重ねて
旅立つ彼らに幸せを与える本当の意味は
嘘に溺れる現実逃避という名の小さな箱
不完全な世界に望みを叶えた者
居座る未来を少女は許し けれど許しはしない
少女の願いを穢すなら砂のように消える模造品
『だからあなたの話はつまらないの』
※鶯=鶯の霊=風の霊の悪霊の姿
温かさ=橙色の言い換えで橙の霊のイメージ
神秘=紫色の言い換えで紫の霊のイメージ
▽短編小説306(2023/9/21)/黄の花が示す静寂の夜空と消える想い
何も知らない瞳が黄の花を照らす。閉ざされた記憶、感じたであろう出来事、すべてにおいて無知のまま、見上げる空は止まっていた。
菊の蝶が記憶を失い、消えた世界で彼はそれを良しとはしなかったが、分からない思考は混乱を招き、空に止まる天使はそれを吸い上げた。そして何も変わらない日々だけを繰り返した。
何処からか聞こえる音色に合わせて握っていた笛を鳴らす。その笛はいつも心地よいものとなり、けれど何故吹けているのか分からなかった。その記憶を紐解く前にその想いは消されて、何もない空間に佇むだけだった。
永遠の夜空に包まれた空間であっても黄の花が枯れることはなかった。光が徐々に奪われても花の色が失われることはなく、彼の瞳に映り続けた。
たとえそれが嘘に塗れた世界で気付いた時には遅かったとしても彼はこの悪戯を
その思考を天使は許し始めていた
※この話は『霊の話(第三部)』の黄の霊としての記憶を失った彼の物語。本編で語られるかは現在不明。
▽短編小説307(2023/9/30)/終わりを告げた未来から溢れた願いを
遺物に侵食された世界がある少年の手によって、正常に戻ったことを記録した世界の観測者と永遠の機械人形は手記を閉じて終わりを告げた。
二つの世界の旅路にあらゆる物語を残して、記録と消去を繰り返した終焉の端、橙の霊は皆がいる写真を本に閉じて深い眠りについた。
しかし終わりを告げた世界から漏れ出した悪戯が溢れて、バグだらけの不完全な世界が生み出された時、誰も気づくことができなかった。
ただ書庫に佇んでいた少女は干渉し飲み込まれ、世界を支配するための核として捕らえられ、形を模倣されて偽りの記憶とともに動き出した。
一冊の本が記録者の手に渡り、干渉するたびに亡き者にしていた。記録も消去も不可能な世界に新たな記録者は訪れた。
彼の存在を少女は知っていた。かつてあの世界から消えた存在と同じ魂を持つ彼はこの不完全な世界が偽りであるとすぐに気づいた。
絡まる鎖のせいで伸ばした手が彼に届かずとも
彼は記録の中で『もう一度』という言葉に辿り着く
異なる姿をしていても二人は無意識に願っていた
※遺物に侵食された世界=あの世界
あの少年(運命を変える能力によって存在ごと消滅した)=橙の霊=時間の記録者(この話では記録者)が同じ魂
▽短編小説308(2023/10/7)/生まれて終わりの残酷な世界
秋の陽気に照らされた朝の日に
泣き叫ぶ赤ん坊は水の流れを忘れて
見知らぬ空は快晴に
おぼろげな記憶は白い部屋と薬の匂い
永遠(とわ)の願い果たせずとも
生きる意味を失いながら
その命は生まれてきた
だがそれは不幸で最もつらい呪いだった
人の感性を被った化け物
真似事でしか生きることの出来ない感情
本当の心は見せずに嘘だけが浮かび上がる
人に嫌われた子は嘘に隠れて戻れない
不安定な精神も壊れた海の中に落ち
空っぽの器はすでに割れた硝子
分たれた分身は夢という創作に消え
独りぼっちの現実は目を閉じて赤い涙を流す
新しい目覚めは死を招き
その運命は光を失った暗闇のよう
明るい未来に切り裂いた傷は
生き続ける彼女を苦しめる
※私≠作者自身を書いたもの
▽短編小説309(2023/10/14)/指輪に込められた彼らが見た失う前の記憶
掘り起こされた魔法の儀式と二つの世界の記録。平和な世界に邪悪な心は強さを求めて、必要のない力を研究して行使し始めた。しかし強き力は破壊を生み、溺れた者はその姿を失い化け物になり果てて、封印という名の消去で自然に還(かえ)った。
だがそれで終わりを迎えず、人々は過ちを繰り返し、破壊と創造の封印と消去を得て、疑似的に能力を発動させることに成功した。外敵がいるわけではないのに、数々の失敗と世界の傷の記録のせいで、人々は怯える必要のないものに支配されていた。
疑似的能力はアクセサリーとして配られたが、それらはすべてネットワークという形で制御されていた。またそれぞれの街の中心となる位置に核と呼ばれる能力を配置していた。本来ならば疑似的能力は一つに対して一つの能力なのだが、核となったアクセサリーは一つに対して複数の能力が入っていた。ランダムに配られ、誰の手にどの能力が振り分けられたのか知らず、人々は安心感に縛られていた。
しかし完全に管理したとは言えず、少しの綻(ほころ)びがすべてを狂わせた。一つの暴走が街を消すくらい、多発した事故はかつての出来事と変わらなかった。
※この話は『疑似的能力(仮)』が始まる前の「疑似的能力というものが生まれた時から街での暴走事故が起きて少女が記憶を失うまでの話」となっているが、それを見ているのは疑似的に生み出された「守護者達の人格」(=「複雑な生き方をする少女」の十字架の守護者達)という設定。
▽短編小説310(2023/10/21)/破棄された終幕と繰り返される始まりの果実
神の悪意は取り除かれ、運命の天使とともに消滅した。神のいない世界となった未来に残されたあの世界の記録が人々を狂わせた。空の森で眺める神の模造品であった少女は一つの果実を地へ落とし、芽吹き、新たな実を熟した。それは人々の興味を引き、目の色を変えてもっと求めた。しかしそれ以上実ることなく木は枯れ果てた。その実を口にした者達に禁断症状が出て、その者達は他者を襲う化け物に姿を変えて、次々と汚染して一つの街が消えるほどに増殖した。
『面白くない あれはどこにある』
化け物達に告げられた少女の声はある一点を目指すもの。それは新たな創造と破滅を生み出す、すでに終わった選択肢。
『神は死に 天使は生まれ変わる それは何故
紛い物はここに 観測者はいない
彼を殺し 蘇るのは神だけ もう一度始める』
宣言は終わらせた遺物の脅威のように、それ以上の支配のように封印された歴史は動き出す。
《始めましょう 新たな世界へ
進まなければならない “私達”のためには》
※この話は短編小説309の直前に起きたもので、神の紛い物として作り出された天界の脅威である少女が消えた神の意思を読み取り、人々を消す目的で果実を落とし、化け物達によって掘り起こされたあの世界(二つの世界)の記録を元に創造の果てに破滅させようとしている。
彼=遺物に侵食された世界で天使の贈り物を受け取っていた少年のことを指し、神とともに消滅した彼だったが、この世界において世界の切り札として蘇っており、少女に取って敵視している存在である。
飛び跳ねて笑って、見失うことのない未来を見続けた。幸せな奇跡を願い、変わらぬ永遠を夢に見ていた。けれどその幻想は破綻して、閉じられた運命に抗う手段は残されていなかった。
少女が宿し始めた風の魔法が覚醒する前に、皆の命は赤色に染まり、金属音は不協和音を奏でて、深く傷ついた記憶は少女の頭の奥に封じ込めた。
数年後、唯一の風の魔法を扱う魔法使いとして覚醒した少女は笑うことを忘れて、過保護に皆が守ってくるのを嫌がった。静かな風に導かれて、一人でいたいのについてくる邪魔者を追い払い、それでも来る者は魂をくり抜いて黙らせた。
殺しを行おうとしたこともあったが、血を少し見ただけで過去の記憶が蘇って、嫌な気持ちになった。しかし皆を殺した犯人を少女は知っていた。魔法を嫌うなんの力も持たない人間の仕業であると分かっていた。
魔法を敬うとする愚かな人間に幻想を
幸せな夢の終点に 風の槍が突き刺さる
少女は人間を嫌い、すべての人間を殺そうとした
だが気まぐれの風はその現実を夢に書き換えた
▽短編小説302(2023/8/26)/不気味な世界に運命も現実もなく
飛び出すことも出来ない空に舞うはずの鳥が嘆いて、赤い糸に切られて命失う時、微かな灯りが天へ運ばれた。一瞬の出来事に蹲(うずくま)ることもできず、散らばった翼は赤く焦がれて炭となった。
暗闇の天使が見つめる世界が正常でないことを知りながら、それが正常であると認識を阻害されて洗脳を受けて、真実の悪魔は天使に裏返った。
リセットが出来ないほどにこの世界は失われていた。想像も破壊もないように生み出された形跡もなかった。だが存在し、認識はさらに歪み、真実という嘘が本物を作り出していた。
それを模(かたど)る少女には赤い糸が絡みついていた。滴る血は糸となり、この世界を繋ぎ止める役目を担っていたが、全ての原因を彼女が背負っているわけではなかった。少女はすでに死んでいた。
固定された世界から弾かれた謂わばバグの世界。いらないものと排除されて切り捨てるだけだった者達に吹き込まれた命は動き出し、その世界を正史とする未来を信じていた。
少女はこの世界に存在しないはずの人間だ。死んでいるはずだが、それも歪まされて不明なことになり、世界はさらに認識を阻害する。
『どうして彼女は存在する?』 通信は遮断……
▽短編小説303(2023/9/2)/水の花が示す否定の記憶と重なる喇叭(らっぱ)
取り残された心が水の花を照らす。溶けゆく記憶が白紙に変わるその時を見据えて、その理由も告げぬまま、何もない空間にひとりぼっち座り込んでいた。
氷の蝶が記憶を失い、消えた世界で失った何かも閉じた結晶も忘れて、空白を見つめることしか出来ず、流れる空気の冷たさを感じるだけだった。
床に落ちていた喇叭を拾い上げる時、微かに聞こえる音色が何もない空間に響いた。ゆっくりと近づいて耳を澄ませてみるが、むしろ聞こえなくなって遠ざかると聞こえた。不思議な何もない空間の仕組みを理解する前に、手にしていた喇叭を吹いたが、音色は止まり、彼の意識も切れた。
一連の流れを見ていた水の花が枯れることはなかった。手を伸ばして花びらに触れようとする彼の考えを否定の心が凍らせて、手は下ろされて彼はまた何も思わなくなった。
けれど喇叭の音色が増えるたびに、否定の心は揺らいで冷たさははらわれていた。しかし咲き誇る花は凍りつき始めていた。
※この話は『霊の話(第三部)』の水の霊としての記憶を失った彼の物語。本編で語られるかは現在不明。
▽短編小説304(2023/9/9)/眠る女神と幼き少年 争いの種が芽吹く時
千年以上前、女神を巡る戦争が起きてあらゆる種族が亡くなった。その力を手に入れようとして殺したが、死とともに放たれたのは世界の破滅だった。すべての種族は消去されて、女神の命が戻る頃に世界は再生した。
女神はその力の意味を知り、自ら封印されて眠りについた。その肉体が何度滅びようとも、人の形を作るたびに性格が変わろうとも、魂に刻まれた力が放たれることはなかった。
封印の遺跡が風化しようと、女神に関する伝承が廃(すた)れることはなく、誰もがその場所を恐れていたが、この世界をよく知らない幼き少年は迷い込んでしまった。厳重な大人達の警備や即死級の罠を避けて、鎖に繋がれた幼き少女を見た。それが女神だと知らずに、助けようと鎖に触れた。
揺れる振動に目覚める女神は幼き少年の瞳を見ていたが、光り輝く鎖は女神の意志で一時的に解かれて、女神の手は幼き少年の顔に触れた。
『これはきっと必然……なのかもしれない』
幼き少年の額に口付けをした女神の姿を目にした後、夢のように揺らいで目を覚ますと家にいた。
▽短編小説305(2023/9/16)/欠陥少女は夢の中で選択肢を掴む
とうに果てた未来もこぼれ落ちた悲しみも
あなたの語る話はつまらない
バグだらけの世界は不完全な世界の端となりて
その意味を問う
光も鏡も闇も失われて残された影が見る少女は
血だらけの痛々しい姿
一瞬の日常が赤く染まる時 笑う顔は歪む
正常な風景は嘘の中に沈んだ記録の外にあった
鶯(うぐいす)の声が金切り音のように耳を穢すなら
悪夢の中の真実に嘘を混ぜ込む一つの欠片
素敵な未来を壊したい悪霊の我儘は
繰り返し辿り着いた死のナイフを渡す
ひとりぼっちの記憶は見届ける者になく
引かれた手に温かさと神秘の空を重ねて
旅立つ彼らに幸せを与える本当の意味は
嘘に溺れる現実逃避という名の小さな箱
不完全な世界に望みを叶えた者
居座る未来を少女は許し けれど許しはしない
少女の願いを穢すなら砂のように消える模造品
『だからあなたの話はつまらないの』
※鶯=鶯の霊=風の霊の悪霊の姿
温かさ=橙色の言い換えで橙の霊のイメージ
神秘=紫色の言い換えで紫の霊のイメージ
▽短編小説306(2023/9/21)/黄の花が示す静寂の夜空と消える想い
何も知らない瞳が黄の花を照らす。閉ざされた記憶、感じたであろう出来事、すべてにおいて無知のまま、見上げる空は止まっていた。
菊の蝶が記憶を失い、消えた世界で彼はそれを良しとはしなかったが、分からない思考は混乱を招き、空に止まる天使はそれを吸い上げた。そして何も変わらない日々だけを繰り返した。
何処からか聞こえる音色に合わせて握っていた笛を鳴らす。その笛はいつも心地よいものとなり、けれど何故吹けているのか分からなかった。その記憶を紐解く前にその想いは消されて、何もない空間に佇むだけだった。
永遠の夜空に包まれた空間であっても黄の花が枯れることはなかった。光が徐々に奪われても花の色が失われることはなく、彼の瞳に映り続けた。
たとえそれが嘘に塗れた世界で気付いた時には遅かったとしても彼はこの悪戯を
その思考を天使は許し始めていた
※この話は『霊の話(第三部)』の黄の霊としての記憶を失った彼の物語。本編で語られるかは現在不明。
▽短編小説307(2023/9/30)/終わりを告げた未来から溢れた願いを
遺物に侵食された世界がある少年の手によって、正常に戻ったことを記録した世界の観測者と永遠の機械人形は手記を閉じて終わりを告げた。
二つの世界の旅路にあらゆる物語を残して、記録と消去を繰り返した終焉の端、橙の霊は皆がいる写真を本に閉じて深い眠りについた。
しかし終わりを告げた世界から漏れ出した悪戯が溢れて、バグだらけの不完全な世界が生み出された時、誰も気づくことができなかった。
ただ書庫に佇んでいた少女は干渉し飲み込まれ、世界を支配するための核として捕らえられ、形を模倣されて偽りの記憶とともに動き出した。
一冊の本が記録者の手に渡り、干渉するたびに亡き者にしていた。記録も消去も不可能な世界に新たな記録者は訪れた。
彼の存在を少女は知っていた。かつてあの世界から消えた存在と同じ魂を持つ彼はこの不完全な世界が偽りであるとすぐに気づいた。
絡まる鎖のせいで伸ばした手が彼に届かずとも
彼は記録の中で『もう一度』という言葉に辿り着く
異なる姿をしていても二人は無意識に願っていた
※遺物に侵食された世界=あの世界
あの少年(運命を変える能力によって存在ごと消滅した)=橙の霊=時間の記録者(この話では記録者)が同じ魂
▽短編小説308(2023/10/7)/生まれて終わりの残酷な世界
秋の陽気に照らされた朝の日に
泣き叫ぶ赤ん坊は水の流れを忘れて
見知らぬ空は快晴に
おぼろげな記憶は白い部屋と薬の匂い
永遠(とわ)の願い果たせずとも
生きる意味を失いながら
その命は生まれてきた
だがそれは不幸で最もつらい呪いだった
人の感性を被った化け物
真似事でしか生きることの出来ない感情
本当の心は見せずに嘘だけが浮かび上がる
人に嫌われた子は嘘に隠れて戻れない
不安定な精神も壊れた海の中に落ち
空っぽの器はすでに割れた硝子
分たれた分身は夢という創作に消え
独りぼっちの現実は目を閉じて赤い涙を流す
新しい目覚めは死を招き
その運命は光を失った暗闇のよう
明るい未来に切り裂いた傷は
生き続ける彼女を苦しめる
※私≠作者自身を書いたもの
▽短編小説309(2023/10/14)/指輪に込められた彼らが見た失う前の記憶
掘り起こされた魔法の儀式と二つの世界の記録。平和な世界に邪悪な心は強さを求めて、必要のない力を研究して行使し始めた。しかし強き力は破壊を生み、溺れた者はその姿を失い化け物になり果てて、封印という名の消去で自然に還(かえ)った。
だがそれで終わりを迎えず、人々は過ちを繰り返し、破壊と創造の封印と消去を得て、疑似的に能力を発動させることに成功した。外敵がいるわけではないのに、数々の失敗と世界の傷の記録のせいで、人々は怯える必要のないものに支配されていた。
疑似的能力はアクセサリーとして配られたが、それらはすべてネットワークという形で制御されていた。またそれぞれの街の中心となる位置に核と呼ばれる能力を配置していた。本来ならば疑似的能力は一つに対して一つの能力なのだが、核となったアクセサリーは一つに対して複数の能力が入っていた。ランダムに配られ、誰の手にどの能力が振り分けられたのか知らず、人々は安心感に縛られていた。
しかし完全に管理したとは言えず、少しの綻(ほころ)びがすべてを狂わせた。一つの暴走が街を消すくらい、多発した事故はかつての出来事と変わらなかった。
※この話は『疑似的能力(仮)』が始まる前の「疑似的能力というものが生まれた時から街での暴走事故が起きて少女が記憶を失うまでの話」となっているが、それを見ているのは疑似的に生み出された「守護者達の人格」(=「複雑な生き方をする少女」の十字架の守護者達)という設定。
▽短編小説310(2023/10/21)/破棄された終幕と繰り返される始まりの果実
神の悪意は取り除かれ、運命の天使とともに消滅した。神のいない世界となった未来に残されたあの世界の記録が人々を狂わせた。空の森で眺める神の模造品であった少女は一つの果実を地へ落とし、芽吹き、新たな実を熟した。それは人々の興味を引き、目の色を変えてもっと求めた。しかしそれ以上実ることなく木は枯れ果てた。その実を口にした者達に禁断症状が出て、その者達は他者を襲う化け物に姿を変えて、次々と汚染して一つの街が消えるほどに増殖した。
『面白くない あれはどこにある』
化け物達に告げられた少女の声はある一点を目指すもの。それは新たな創造と破滅を生み出す、すでに終わった選択肢。
『神は死に 天使は生まれ変わる それは何故
紛い物はここに 観測者はいない
彼を殺し 蘇るのは神だけ もう一度始める』
宣言は終わらせた遺物の脅威のように、それ以上の支配のように封印された歴史は動き出す。
《始めましょう 新たな世界へ
進まなければならない “私達”のためには》
※この話は短編小説309の直前に起きたもので、神の紛い物として作り出された天界の脅威である少女が消えた神の意思を読み取り、人々を消す目的で果実を落とし、化け物達によって掘り起こされたあの世界(二つの世界)の記録を元に創造の果てに破滅させようとしている。
彼=遺物に侵食された世界で天使の贈り物を受け取っていた少年のことを指し、神とともに消滅した彼だったが、この世界において世界の切り札として蘇っており、少女に取って敵視している存在である。
桜詩凛の読みは「さくらしりん」で、由来は二つ。一つは元から使っていた桜子凛花が長いと思ったため、短くするために「桜」と「凛」を取り、その間に当時から書いていた「詩」をいれたもの。もう一つは『複雑な生き方をする少女』に登場する「さくら、黒蛇、シラ、理夏(りか)、ラナン」の頭文字を取ったものとなってい…
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