短編小説っぽい何か(361~370)/それに関する説明つき
公開 2024/12/29 14:38
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▽短編小説361(2024/10/12)/虚像に置いてきた現実の影
 一つの種を植えつける
 どんな花を咲かせるか予想しながら
 けれど水を与えても枯れ続ける
 与えすぎていないのに緑は茶に変わる

 塩水が一滴 種は葉を伸ばす
 枯れ葉は歪な形の枝となって
 澄んだ水を嫌うように
 花が咲く 感情の一部となって

 散る花びらが豊かな感情を奪う
 一つ また一つと咲き乱れ
 満たされない器に空気が漂う
 見知らぬうちに飛び去った死の香り

 押し込んだ心が当たり前と思うように
 異常だと誰も気づけないように
 壊れた生活が平穏だと認識しても
 正常を知らぬ心はまた檻の中に戻る

▽短編小説362(2024/10/19)/交わる奇跡が悲劇の再来とは知らず
 その暗闇は何も見えず 光は失われて果てる
 何者かの記憶は食い荒らされて空白の心
 頭の中に蠢く一つの影が笑っている
 天使の姿をした悪魔が笑っていた

 実験体に晒されたその姿 二つの心は分離する
 あらゆる薬の投了は人格を蝕み破壊した
 一つに融合した心は変異した新たな命
 目覚めた空は無人の研究所 透明な箱の中で

 受け継がれた魔法使いの末裔(まつえい)の子供達
 悲惨な環境で能力が覚醒した子供達
 危険視されたその力で救われたとある街
 旅の途中 彼はそこに立ち寄った

 ぶつかりかけのすれ違い
 靡く風が隠された二つの瞳を映す
 暗闇の奥に眠る何かを呼び起こし
 静かに「見つけた」と呟いていた

※『閉ざされた心の闇』に登場する謎の少年の話。

▽短編小説363(2024/10/25)/思惑が交差する放置された世界の未来
 世界の書庫 記録者が生まれない世界で
 「―――」の分身体の少女は目を覚ます
 あらゆる物語の記録を保持した状態で
 放置された世界を旅する“空白の記録者”として

 歪んだ本から溢れ出す嘆きも憎しみも
 漂う翆色の魂は与えられた姿も忘れ
 『不明』の称号だけがこびりつく謎の記憶に縋(すが)り
 変わった姿での再会を願い続けた

 感情が切り殺された記憶の中で
 繋ぎ止めた物語が流れ落ちる涙の中で
 遠くを見定める“水晶”の世界の観測者が
 分かつ未来に「―――」の影を重ねていた

 運命は切り裂かれ 希望は深き闇の中に沈む
 絶望の淵で動き出した現実が幻想を喰らう
 過去の予知夢が真実になりかわるように
 この世界を綴る道は永遠の時を要する

 白紙の本が示す終わりなき旅に
 空白の記録者が降り立つ最初の地は

※この話は『記録者』が生まれなかった世界で少女は“空白の記録者”として覚醒する。ほとんど「―――」の姿に近いものの、完全ではない。翆色の魂、後の『不明の記録者』はその姿を変えて少女の手助けをしようとするが……ってところ。
 “水晶”の世界の観測者は『光無くし水晶の謎』に登場する世界の観測者のことを指し、遠くの次元から空白の記録者を見届けている。この世界軸では彼が『氷柱の記録者』になることがないためにそうなっている。
 「分かつ」の意味=切り離す、別々にする

▽短編小説364(2024/11/2)/永遠を外れたもう一つの合わせ鏡
 神を殺すための兵器として生み落とされた子供達
 しかしその自覚はなく 死体だけが残る
 少女は浮遊する水の中で実験の材料にされた
 その結末は神も人も殺す機械人形へと化す

 別の分岐の夢を見た青年は実験を止めようとしたが、まともに取り合ってくれるはずもなかった。しかし実験の過程で異常な反応があり、正常な研究者の判断で別の選択肢を取ることとなる。実験が終わることを望んだ青年にとってはまだ気が休めなかった。

 少女の目覚めと式神システム
 それは能力を抑えるための制御装置
 魂が干渉するのは“呪い”の波長
 呼び起こされるのは“黒い影”の姿

 聖なる者は弾かれて邪なる者は棲みつく。溢れた呪いが悪意を感じ取って生きながら研究者を喰らい取り込んだ。ただ青年だけを残して黒い影は見ていた。
《いつかの自分自身 繰り返す悲劇》
 それが夢であれ現実であれ、どんな分岐を辿ろうとも収束する一点の出口。“この世界”は消滅する運命のもとにあった。

※設定もろもろおかしい点はあるが、一応『永遠の機械人形』の少女が生まれた世界の別の分岐の話。どんな選択肢を取ろうとも“この世界”は消滅するので慈悲はない。
 また分岐によってその他の要素を取り込み、“呪い”と“黒い影”は『複雑な生き方をする少女』の要素になる。

▽短編小説365(2024/11/9)/星に消えたいつかの日々へ
 遠い空を眺めて重なる時計に問う
 「その輝きはいつの日も狂いはないか」と
 音が交わり放たれた声に模したものは
 「闇夜に穢れなき今はまだ」と途切れた

 明るく日照る空に問答はなく
 静かなる空気に漂うだけ
 動き出した夜の針に耳を傾け
 聞いた星の道標は光無くし閉じた瞳

 かつて煌びやかな蝶が舞う日々を
 今や古びた色が埋め尽くす虫の影
 錆びついた思い出が燃えつき捨てられ
 路地裏の入り口は怪しげな街に

 重なる温もりが一瞬冷たくなり
 白い息は凍りついた氷を増やした
 溶けた水は蒸発の彼方に消え
 澄んだ空気は新たな星の輝きとなる

 「闇夜に穢れた空は小さな命」と
 掠れた声は音に変わりて発せられた
 しかし壊れた時計の針はぶつかり
 問うことも答えることも出来なかった

▽短編小説366(2024/11/16)/あやふやな旅人は忘却の断片に少女を映す
 気づけば砂漠の真ん中に倒れていた。夜の冷たすぎる空気に晒されて何故この体は耐えているのか分からなかった。横に鞄が落ちていてそれを運んでいたのだろうか? 中身に関する記憶は抜け落ちて何も覚えていない。気になって鞄を開けてみると食糧などの必要物資とは別に一冊の本が入っていた。題名のないただの本だった。開くと文章が綴られていたが途切れ途切れになって読めるものではなかった。
「『終着点のその先で 見届けろ』……あれ? この三文字の伏字は何だろう」
 かろうじて読めた文も伏字が絡み合って首を傾げていた。

 寒暖差の激しい砂漠を越えるために歩き出した。しかし足が砂に沈むことなく、整った道を歩いているのと変わらなかった。ますますこの体も自分のことも分からなくなって不安を感じていた。そんな感情を抱えつつ、時間も分からない日々を繰り返して食料が尽きて砂漠はまだ広くとても越えられる距離じゃなかった。ふらつく体を透明な手が支えていた。疑問を持ちながら顔を上げると少女がいた。初めて見る姿のはずなのに懐かしいと思っていた。
〈大丈夫 もう少しで会えるから〉
 少女がそう呟くとその姿は消えて光に照らされた後、眩しさが落ち着くのを待っていると近くに街が見えていた。

※『あやふやな旅人』=『不明な旅人』のことで新しく生まれ変わった『不明の記録者』のことを指すが、その砂漠にあった体は元々別の魂が入っていた抜け殻となった体で、その中に『不明の記録者』の魂(翆色の魂)が入ったことで記憶が混濁し、最終的に何もわからない記憶喪失状態となっている。
 「伏字の三文字」は「記録者」のことで、その一冊の本を通じてこの世界のことを見届けろ、という意味。
 少女は『空白の記録者』になった後の少女≠「―――」のこと

▽短編小説367(2024/11/22)/夕闇の朝日に這い上がる彼らに祝福を
 別れの時は近く 離れた奇跡は遠く
 羽ばたく蝶が天へと消える
 流れゆく水に任せて 進んだ道が止まる
 おわりのはじまりが答えを導く

 染みついた姿を剥ぎ取るように
 新しい風が吹き荒れるように
 過ぎ去った年月から解き放たれるように
 魔法に縛られた彼らが笑っていられるように

 自然豊かな暮らしから離れて
 闇夜に照らされた街にひっそりと
 繋がりは途切れたはじまりの時まで
 けれど優しい声は安らぎを与えた

 未来を見届ける旅 揃わぬ音色
 バラバラでも進む道は変わらず
 言葉と笑顔は安心感の延長戦
 続く世界に彼らの幸福があらんことを

※蝶は『霊の話』に登場する蝶のことで、もう二度とその物語を書くことができないことを指している。
「――(彼ら)」は「―――――――――」のことであり、その幸せを願っている。

▽短編小説368(2024/11/30)/小さな灯火が消える一瞬の風
 逃げ出す作戦は最初からなかった
 漏れ出した情報は裏切り者の所業
 皆を巻き添えにしないよう少女は
 隠し続けて本当の想いは置き去りにした

 血飛沫と肉塊が散る『破壊』の末路に
 計り知れない能力の反動が蝕む
 黒い蛇が白い蛇に変わらないほどに
 無意識が限界の時を迎えても

 かろうじて取り戻した意識も
 自分を表すには不十分な感覚だった
 繋がれた鎖と点滴台 血塗れの包帯が
 地下の洞窟に響く声が苦しむのを聞いていた

 《呪われた血》 異世界から渡ったもの
 生まれ不明の少女だけが持つ血
 その血を摂取した者は何かしらの能力を得るが
 必然的に暴走状態となって最後には終了される

 この血を求めて包帯まみれになっても
 傷つき虚無の瞳が光を失っても
 研究者という名の闇に生きる者達は止めない
 高値で売れる《呪われた血》で稼ぐだけだった

※この話は『破壊』と『封印』の能力を持つ少女が囚われて《呪われた血》を採取するだけに生きながらえている状態になった期間のこと。本編で書かれるか不明だったため、短編小説(掌編小説)として書き出している。

▽短編小説369(2024/12/7)/寒空に輝く星と夢見る願望
 遠い星を見上げる少年の赤い瞳
 置き去りにした姿を思い出し
 散りゆく桃の花弁が手のひらに
 季節外れの春が雪に溶ける

 探し物を求めて渡る星の数
 《呪われた血》と呼ばれる能力の原石
 それを自分の星に持ち帰るため
 少年の姿に擬態した人ならざる者

 多くの人に夢を見させる『幻覚』と
 多くの人を引き寄せる『虹声(なないろのこえ)』
 それを能力として少年は『幻虹(げんこう)』と呼び
 触れ合う奇跡は情報を集めた

 閉ざされた扉は開かれるが
 あと一歩が届かず立ち止まる
 厳重に守られた少女まですぐなのに
 他の能力者が邪魔をする

 今宵は夢を広げて街を混乱状態に
 「君に会いに来たよ」
 遠くの星を見上げる少女に
 少年は本当の姿を現した

※この話は第二章で登場する人物で、《呪われた血》を持つ少女に出会うため、地震が持つ能力『幻虹』を使って情報を集めていく。しかし厳重な状況に近づくことが出来ず、最終手段として街を混乱状態に起こさせるほどの放送を行い、病院の屋上にいた少女に会った。

▽短編小説370(2024/12/14)/最期に記した時間の記録 進む針は何処(いずこ)へ
 壊れた未来と再生不能の世界
 『永遠』が神殺しの命令に背(そむ)き
 旅立ちの彼方に消える
 消滅の呪いが近づく時計の針に

 解き放たれた呪いの塵が
 分岐した世界に『式神』の概念を生む
 危険を排除した能力達は呪(まじな)いの子に
 神に支配されたこの世界の未来を変えるために

 流れ着く意識 呪いの片割れ
 『破壊』と『封印』が結びつく蛇の命
 運命の時は近く 正常と異常が混ざり合う
 差し伸べられた手が希望と絶望の間を切り裂く

 紆余曲折ありつつも託された能力達
 悪しき者には必然な暴走を
 選ばれ託された者には必然の『式神』を与え
 流れ落ちた《呪われた血》は効果を失った

 外側で見る自分の姿に嫌気がさして
 進み始めた新たな姿を羨ましく思う
 閉ざされた『記録』が最期の干渉に託した懐中時計
 白紙の変わるその時まで“彼”は存在していた

※この話は『永遠の機械人形』が生まれた世界から分岐したもう一つの世界。そこで生み出された『式神システム』とそれを用いた能力を赤子に託し、神に支配された未来にならぬよう見知らぬ地へと送った。その後、第一章での出来事が起き、最終的に《呪われた血》は能力を託し終わったので効果を失っている。
 これを記録しているのは『時間の記録者』であり、“彼”の正体である。最後の干渉と書かれているものの、この世界の位置づけが現在(2024/12/14時点)曖昧であるため、最後にならない可能性の方が高い。

 「呪い」の読み方については、ふり仮名がふってある場所を除き、すべて「のろい」と読みます。
桜詩凛の読みは「さくらしりん」で、由来は二つ。一つは元から使っていた桜子凛花が長いと思ったため、短くするために「桜」と「凛」を取り、その間に当時から書いていた「詩」をいれたもの。もう一つは『複雑な生き方をする少女』に登場する「さくら、黒蛇、シラ、理夏(りか)、ラナン」の頭文字を取ったものとなってい…
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