破損した砂時計と繋ぐ絆
公開 2023/09/09 14:13
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時の終わりに咲いた花は誰にも見つからず、通り過ぎた先で幽霊に見つかった。一人は花弁を触り、一人は葉に口付けをした。その様子を電柱に止まるカラスの目は映していた。
 時の終わりに枯れた花は誰にも見つからず、通り過ぎた先で幽霊に見つかった。一人は花弁を取り、一人は葉を切って殺した。その様子を傷を負った蝶は悲しく飛んでいた。

 砂が落ちきって頂点を戻すと、また繰り返す未来を再生する。同じ未来を見続けても足りない罪は誰かの心に響くこともなく、知らない時を過ごす。誰でもない誰かの命が途切れてなくなっていたとしても、誰かは気づかずに時間は過ぎていく。
 人の世はあまりにも残酷であり、正直な者は短命で、不純物の者は長命で、世界は動き出す。終わりを望むものほど死を受け入れることが出来ずに、誰かにすがり生きていく。ちっぽけな命が誰かのためになるような時間の中に暮らしていたのなら幸福だろうか。


 白に染まった空と境界線を失った地面は雪に覆われて沈む答えを誰も知らない。小さな雪は積もりに積って埋まっていくのに、誰もそれを受け入れはしない。
 空は消えたのだと誰かはいい、それを誰かは信じて、否定の答えを無視して誰かの心は遮断された。多数決の言動は誰にも抑えきれない暴力になる。
 雪は何処から降っているのか誰も知らない。空は消え、雲は何処から現れたのか誰も知らない。知らないまま、誰も考えを発信しないまま、埋もれていくのが正解だと言った。

 砂が落ちきって頂点に戻すと、また繰り返す未来を再生する。同じ未来を見続けても足りない罪は誰かの心に響くこともなく、知らない時を過ごす。誰でもない誰かの命が途切れてなくなっていたとしても、誰かは気づかずに時間は過ぎていく。
 罪なき者に幸福をと言いつつも、罪を犯したことがない人はいない。誰もが一度の罪を犯し、それがなかったことにされれば良かろうと隠すのだ。知らないうちにすれ違っていることもあり、信用できる相手が殺人鬼だってある。それだから人は怖く傷を負う。


 誰かの存在は人を幸せにした。誰かの存在は人を傷つけた。誰かの存在は死に追いやった。誰かの存在を人は他人と呼び、他人は誰かではなかった。
 人の汗は達成感を得ていた。人の涙は悲しみと苦しみを詠っていた。人の血は流れて地面は赤に染まった。人はどれだけ繰り返しても本当の意味を知ることはなかった。
 誰も信じようとしなかった一匹狼は誰かだけを信じていた。その人の笑顔だけが本物だと信じて、疑うことも忘れた。けれど誰だって裏の顔があり、それが真実だった。

 砂が落ちきって頂点に戻すと、また繰り返す未来を再生する。同じ未来を見続けても足りない罪は誰かの心に響くこともなく、知らない時を過ごす。誰でもない誰かの命が途切れてなくなっていたとしても、誰かは気づかずに時間は過ぎていく。
 愚かな人の存在を砂時計を繰り返しながら変わりゆく世界の中で、けれど変わらぬ世界の中で、その存在にふるいを掛けても、時間が解決しようとしてまた元に戻っていく。そして砂時計は本来の姿を取り戻して、また全てをやり直そうと繰り返すだけだった。

 生きゆく人の、誰かの存在を認識する者へ それは―――

 白い空間に一つの砂時計が置かれていた。目を覚ました彼はそれに向かって立ち上がり、歩き始めたが届きはしなかった。近くにあるはずの砂時計は遠くに行って、彼の手に触れることは叶わなかった。砂は落ちきってまた彼は目を覚ました。
 幾度となく繰り返された出来事は彼の頭に時計が落ちてきて止まった。白い地面に落ちた時計は小さな懐中時計が開いた姿をしていた。短針の先は赤く染まり、その赤は誰かを刺したナイフのような血の色をしていた。長針には何もなく、それは止まっていた。

 生きゆく人の 誰かの存在を―――――― ――――――

 白い空間に一つの砂時計が置かれていた。目を覚ました彼の近くにそれはあった。手に持った懐中時計を砂時計に向けると、砂時計の硝子にひびが入り、音を立てて壊れてしまった。砂は白い地面に落ちて沈んでいき、また彼は目を覚ました。
 幾度となく繰り返された出来事は――の声を彼が聞いて止まった。けれどその声を理解する力は彼にはなかった。ただ何かを伝えようとしていることはわかったが、それだけだった。懐中時計は砂時計を壊さずにいる方法が時の流れに遮断されてまた繰り返す。

 生きゆく人の ―――――――――――― ――――――

白い空間に一つの砂時計が置かれていた。目を覚ました彼の前に声の主は立っていた。その手は冷たく、つかまれた腕は凍っていくような感覚に襲われて離した。悲しそうな声の主は消えて、かわりに砂時計が現れて、懐中時計は破壊して、また彼は目を覚ました。
 幾度となく繰り返された出来事は――の手を彼が受け入れて止まった。凍り付く腕は――が止まって元に戻った。そこには一枚の絵があった。拾い上げると二人の誰かがいた。そして――は指差して、彼は色を失った花を見た。

 生きゆく―― ―――――――――――― ――――――

 白い空間に一つの砂時計が置かれていた。目を覚ました彼は絵を手にしていた。――は彼の横に立って絵を見ているようだった。彼がその絵に触れようとすれば、――はその手を止めた。首を振って、けれど悲しそうな表情に困惑し、疑問が浮かんでいた。
 幾度となく繰り返された出来事は彼が無理やりその絵に触れたことだった。――は止めようとしたが、彼の指は花に触れていた。色を失っていた花は色を取り戻し、絵は彼の手から離れて、白い空間そのものを変えて、――は安心した表情をして消えていった。

 ―――――― ―――――――――――― ――――――

 太陽の光に目が眩み、瞼は一時的に落ちていた。それに慣れて彼の目は覚めた。あの出来事は朝日を浴びて、夢だったのだと実感する。けれどその手には知らない懐中時計が握られて、サラサラと何かが落ちる音がした。
 起き上がって机の方を見ると、詰まって落ちなくなっていた砂時計の砂が流れていた。そしてその砂が全て落ちきった時、彼はそれが夢でなかったと実感し、――の声の主を思い出す。

 君は――だったんだね

 時の終わりに咲いた花は誰にも見つからず、通り過ぎた先で幽霊に見つかった。一人は花弁を触り、一人は葉に口付けをした。その様子を電柱に止まるカラスの目は映していた。
 時の終わりに枯れた花は誰にも見つからず、通り過ぎた先で幽霊に見つかった。一人は花弁を取り、一人は葉を切って殺した。その様子を傷を負った蝶は悲しく飛んでいた。

 咲いた花を見た彼らは最後の希望をかけて願った。そしてそれは叶わなかった。
 枯れた花を見た――は最後の――をかけて願った。そしてそれは叶った。

 カラスは本物を知り、蝶は偽物を知った。そして選ばれたのは蝶の方だった。
 カラスという真実の世界は繰り返すだけの未来を作り、そこに植え付けられた蝶という虚偽の世界は生まれた。
 人は終わりのない苦しみの中、強制的に生まれて、幸せのない世界で死を迎える。

 けれど終わる、そしてまた繰り返す日々が始まる。


 空は青く、風に吹かれた白い雲がいろんな形に変わって流れていく。彼は今はなき花の地面を見ていた。その近くの電柱にカラスが止まる。そして口を開く。
「会いたかった」
 それは最初から分かっていたことかもしれない。けれどそれが必然だったとは思わない。幽霊は涙を流し、消えた花を彼に差し出した。触れることのできないはずの花を彼が触れた。

 その瞬間、砂時計は消えて、懐中時計の短針は色を失い動き出した。
桜詩凛の読みは「さくらしりん」で、由来は二つ。一つは元から使っていた桜子凛花が長いと思ったため、短くするために「桜」と「凛」を取り、その間に当時から書いていた「詩」をいれたもの。もう一つは『複雑な生き方をする少女』に登場する「さくら、黒蛇、シラ、理夏(りか)、ラナン」の頭文字を取ったものとなってい…
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