見慣れぬ土地の新たな始まりの道
公開 2024/11/10 10:41
最終更新
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(空白)
深い森の茂みに眠っていたが、いつのまにか真っ暗闇の箱の中にいた。謎の揺れに見舞われて、箱の狭さも相まってつらかった。箱の揺れが止まり、知らない言語が聞こえていた。突然、箱が開かれて光に眩むとすぐに覗き込む人間の顔がそこにあった。さっきまでの言語はどうやら人間達の言葉らしい。一人の人間が体を掴んで箱から取り、透明で少し広めの容器に入れられた。さっきよりはまだマシだが、早く森に返してくれと思った。
容器のふたは閉められて自力では脱出不可能になった。体を起こしてみるも上まで届かず、飛ぶことも出来ないのだから意味がないと元の定位置へと戻っていた。容器の外は完全な暗闇とは言えず、他の生き物達が見えるようにかすかな光が残っていた。
わからない時間が過ぎてその場所に人間の子供達が大量に入ってきた。興味津々でこちら側を見ているが、とある一人の少女は何も見ることなくこの場所から出て行った。それを引きとめるように少女を追いかけた者もいたが、彼女の目に光がなかった。それから時間を分けて子供達がこの場所、部屋に来るようになった。それでも少女は何も見なかった。いつの間にか子供達を置いて少女だけに目がいっていた。起き上がった様子に子供達は反応を見せるが、少女はその声に少し反応するだけで見るまでは至らなかった。
「……何の意味があるの?」
遠くで聞こえた少女の声は疑問を投げかけるものばかりだった。そういえば何のためにこんなことをしているのか、自分も分かっていなかった。珍しい生き物の鑑賞会なのかと思ったが、同じ子供達が何度も訪れることから少しずつ怪しく感じていた。帰りたいという思いは尽きることなく、未だに持ち合わせている正常なものだと信じていた。
とある子供が体に触れてきた。するとその手は形を失って血が噴き出していた。一瞬の出来事で子供の叫びは周囲の人間に恐怖を植えつけた。容器の中は子供の血で赤く染まって、騒がしい辺りの様子を見ることができない。多くの子供達が部屋の中からいなくなるが、少女は動じずその場に立ち尽くしていた。気がつくとふたが開いていた。子供が手を突っ込んで体に触れたのだからそう考えるのが自然な話だが、いきなりの悲劇で焦っていたのかもしれない。しかしふたが開いたとて届かない。それに血のせいでよく前が見えなかった。
「……どうして逃げないの? もしかして」
少女が自分の容器の方に近づいてきた。そう言いながら容器を動かしてゆっくりと横に倒した。衝撃があまりかからないようにしてくれたようだが、重たすぎて子供では持ち続けることが不可能だったらしく、大きな音が響いてしまった。けれどそのおかげで高かった壁は低くなり、なんとか容器からは出られた。少しの痛みを伴ったため、休んでから動き出した時には少女の姿はなかった。やはり毒を持つ種族である蛇の姿はあまりにも危険なのだ。
あの後は何事もなく外に出られたが、長い距離を移動する体力がなく、低い茂みの中で暮らしていた。いつの日か戻れる時を願っていたが、その敷地はまだ研究所と呼ばれるあの部屋が大量にある場所の一つでしかなかった。そしてそこには少女が暮らす孤児院があった。
茂みから少し出ていた時、ふと少女と目が合った。その他の子供達はあの日のことを覚えているのかいなくなってしまったが、少女は蛇に近づいてしゃがんだ。手には小さなお菓子が握られていた。蛇は頭を近づけて少女の手に乗せた。あの日の粉砕はなく、少女が持っていたお菓子の一つを口で掴んで取った。
少女の手の温もりは冷たい毒を溶かし、その力は彼女を傷つけることはなかった。
深い森の茂みに眠っていたが、いつのまにか真っ暗闇の箱の中にいた。謎の揺れに見舞われて、箱の狭さも相まってつらかった。箱の揺れが止まり、知らない言語が聞こえていた。突然、箱が開かれて光に眩むとすぐに覗き込む人間の顔がそこにあった。さっきまでの言語はどうやら人間達の言葉らしい。一人の人間が体を掴んで箱から取り、透明で少し広めの容器に入れられた。さっきよりはまだマシだが、早く森に返してくれと思った。
容器のふたは閉められて自力では脱出不可能になった。体を起こしてみるも上まで届かず、飛ぶことも出来ないのだから意味がないと元の定位置へと戻っていた。容器の外は完全な暗闇とは言えず、他の生き物達が見えるようにかすかな光が残っていた。
わからない時間が過ぎてその場所に人間の子供達が大量に入ってきた。興味津々でこちら側を見ているが、とある一人の少女は何も見ることなくこの場所から出て行った。それを引きとめるように少女を追いかけた者もいたが、彼女の目に光がなかった。それから時間を分けて子供達がこの場所、部屋に来るようになった。それでも少女は何も見なかった。いつの間にか子供達を置いて少女だけに目がいっていた。起き上がった様子に子供達は反応を見せるが、少女はその声に少し反応するだけで見るまでは至らなかった。
「……何の意味があるの?」
遠くで聞こえた少女の声は疑問を投げかけるものばかりだった。そういえば何のためにこんなことをしているのか、自分も分かっていなかった。珍しい生き物の鑑賞会なのかと思ったが、同じ子供達が何度も訪れることから少しずつ怪しく感じていた。帰りたいという思いは尽きることなく、未だに持ち合わせている正常なものだと信じていた。
とある子供が体に触れてきた。するとその手は形を失って血が噴き出していた。一瞬の出来事で子供の叫びは周囲の人間に恐怖を植えつけた。容器の中は子供の血で赤く染まって、騒がしい辺りの様子を見ることができない。多くの子供達が部屋の中からいなくなるが、少女は動じずその場に立ち尽くしていた。気がつくとふたが開いていた。子供が手を突っ込んで体に触れたのだからそう考えるのが自然な話だが、いきなりの悲劇で焦っていたのかもしれない。しかしふたが開いたとて届かない。それに血のせいでよく前が見えなかった。
「……どうして逃げないの? もしかして」
少女が自分の容器の方に近づいてきた。そう言いながら容器を動かしてゆっくりと横に倒した。衝撃があまりかからないようにしてくれたようだが、重たすぎて子供では持ち続けることが不可能だったらしく、大きな音が響いてしまった。けれどそのおかげで高かった壁は低くなり、なんとか容器からは出られた。少しの痛みを伴ったため、休んでから動き出した時には少女の姿はなかった。やはり毒を持つ種族である蛇の姿はあまりにも危険なのだ。
あの後は何事もなく外に出られたが、長い距離を移動する体力がなく、低い茂みの中で暮らしていた。いつの日か戻れる時を願っていたが、その敷地はまだ研究所と呼ばれるあの部屋が大量にある場所の一つでしかなかった。そしてそこには少女が暮らす孤児院があった。
茂みから少し出ていた時、ふと少女と目が合った。その他の子供達はあの日のことを覚えているのかいなくなってしまったが、少女は蛇に近づいてしゃがんだ。手には小さなお菓子が握られていた。蛇は頭を近づけて少女の手に乗せた。あの日の粉砕はなく、少女が持っていたお菓子の一つを口で掴んで取った。
少女の手の温もりは冷たい毒を溶かし、その力は彼女を傷つけることはなかった。