無知と狂気と少女の瞳 ~繋がった未来の欠片~
公開 2023/09/02 12:17
最終更新
2023/09/02 12:19
その運命は必然でした。生贄は捧げられて平穏な日々は少しずつ崩れていきました。
そして“あれ”は求めました。封印を解くための鍵を探しました。
むかしむかし、あるところに名も無き少女がいました。その子が生まれた時は何も問題はありませんでしたが、教会に訪れた際に神父が『呪われている』と発言し、その浄化を行おうとしました。しかしそれは叶いませんでした。浄化をしようとしてもその呪詛は少女から離れませんでした。
神父は少女の母親に対して、殺すように言いました。母親は拒みましたが、それが原因で街に住む人達から疎外されて、父親も早くに他界していたので一人では耐えきれなくなっていました。母親は殺すことは出来ないと、少女に嘘をついて森の方に捨てました。
かくれんぼをしてずっと待っていた。けれど誰も探しに来ることはありませんでした。おなかがすいた少女は街に戻ろうとしましたが、その道は複雑に絡み合った森の中ではわからなくなり、彷徨い続けて気を失いました。
それから街に住む人達は少女が戻ってこないことに安堵して、長い年月が経ちました。呪われた少女がいたという事実も忘れてしまった頃、森に入った人が見るも無残な姿で発見された。体は引き裂かれていましたが、その顔は何故か笑っていました。
それを生み出していた人物は分からないまま、その死体群は不気味な笑顔を残して増え続けました。そのせいで森は本来の色を忘れて、赤黒く染まり枯れていきました。その隙間から犯人を見つけ出すことに成功しましたが、その直後に不気味な笑顔として死体となり発見されました。誰もその姿を見た者はいなかったのでした。
しかしとある者はその姿を見ました。それは長い年月の後に忘れられていた少女だったのでした。少女の姿を正面からとらえたものは皆同じように死体になりかわりましたが、その者は遠くでそれも横から見ていたので、死ぬことなく生還しました。その者は街に住む人達に伝えましたが、少女に関することを覚えている者は誰一人いませんでした。
助けようと手を伸ばした愚か者は少女の瞳を見て死んでいきました。森は血によって枯れていき、大量に置かれた死体は腐敗して虫がたかっていました。笑っている顔を潰して最後まで血が地面に流れていくことに少女は何も思っていませんでした。
また誰かがやってきて、死体の山は増えていきました。少女の瞳は赤く染まっていました。その瞳を直視した者は瞬時に自らの意思で体を引き裂き、血が流れていることに幸福を覚えて死にました。少女はそれが何度起きようとも、返り血を浴びようとも何も感じませんでした。ただそれが当たり前なのだと思っていたからでした。
その言葉を理解することは出来ませんでした。その声を聞き取ることは出来ませんでした。人がその音を発音できませんでした。『呪われている』少女が生まれる遥か昔、それは信仰されていました。しかしいつしかその存在を否定されて薄れていきました。
そして信仰が完全に失われると美しいと言われていた姿はみるみるうちに醜くなり、神と崇められていた時代を置き去りにして、“あれ”として生贄を貪る存在となってしまいました。しかし長い年月が経ち、生贄を捧げることさえも忘れられて腹を空かせていました。
街に住む人達は少女を殺すために、懸賞金に目を眩ませて強い者達を集めていろんな作戦を打ち出して臨むことにしました。しかし多くの対策を組んで挑んでも少女を殺すことが出来ず、逆に殺されて全滅しました。
少女の周りには多くの人が群がりました。けれどすぐに倒れて死体となり果てました。屈強な者達が少女を囲んでいました。目を合わせないようにしていることに気づきましたが、少女はそれを見ていました。攻撃は繰り返されましたが、傷一つつかないまま、目が合って死体になりました。
最初は活気のある雰囲気でしたが、数が減っていくうちに戦意を喪失して逃げていきました。死体は転がり、地面の色も分からないほどに濁っていきました。
その音は拾われました。生気を失って森に捨てられていた生贄を見つけた“あれ”は一飲みしてやろうとしました。しかしその生贄は『呪われて』いました。体を覆い尽くすその『呪い』は死してなお機能していました。
その呪いにあてられて、“あれ”は体を食わずして腹を満たしてしまいました。生贄の体から呪いが消えてやっと死体の形を示し、腐敗は始まりました。しかしその呪いを腹に満たしたことで、その生贄が今まで過ごしてきた記憶を知りました。
忘れられて捨てられて息絶えた生贄と自らを重ねて、この世界に住む全てのものに対しての復讐を考えましたが、“あれ”は封印されてその場から動くことが出来ませんでした。
“あれ”は腐敗する生贄の姿を元に戻して、その目を抉りました。目玉を取り出して喰らい、代わりに血の瞳を植え付けました。流れ落ちていた血を吸収して、その瞳は赤く染まりました。血の瞳は“あれ”となった時に、大量の血を集めて捧げることで封印を解くことが出来ると知るきっかけとなった力でした。しかし動けなければ意味がない、ならば生贄に集めさせればいいと考えました。
優しく頭をなでると生贄は目覚めました。“あれ”はすぐさま隠れようとしましたが、生贄に見つかりました。しかし一度死んだ代償か、感情が欠落していました。だから“あれ”を見ても何も思いませんでした。ただその赤く染まった瞳が“あれ”を見つめていただけでした。
それでも街に住む人達は諦めませんでした。もう誰でもいいからと片っ端から集めて少女の元へ行かせました。けれどそれはあまりにも無意味な行為であると分かっていましたが、そうするしか方法が思いつかなかったのでした。
死体の山を作りながら少女は森の奥へ進んでいきました。少女を追って派遣された者達も進んでいき、新たな死体となって取り残されていきました。血に染まった木がそこにいる人達めがけて倒れてきて、それに巻き込まれた人もいました。少女もまたその被害を受けると思いきや、木の方が避けているかのように当たることはありませんでした。
自然の匂いは腐乱臭に塗れて、死体に集まった虫によって視界も悪くなっていきました。少女は遠くへ行って、それを追う者達も少なくなってきた時、どこの誰かか知らないけれど一矢が放たれました。その矢は今まで攻撃が通らなかった少女の体に刺さっていました。
無意味と思われていた繰り返しの行動は少女にとって負担となっていたらしく、刺さった場所から血が流れ始めました。それを筆頭に阻害されていた攻撃も通るようになり、少女は倒れて息を引き取りました。
「これできっと」
死ぬ間際に少女の声が聞こえたような気がしましたが、倒したことへの喜びが強く、それはただの幻聴だと無視しました。
しかしそれはもう終わりの合図でした。少女が眠りについた後、大きな地震が起きました。立っているのも危険な状態で森から出ようとしましたが、その森も破壊されて姿を失っていき、現れたのは古びた遺跡でした。
突如として少女の体が浮かび上がったように見えたのは、巨大な黒い物体に抱えられていたものだったのでした。
少女の役目は大量の血を“あれ”に与えることでした。そのために“あれ”から与えられた血の瞳を使って殺しました。何故か死体は笑っていました。少女は何も気にせずにそれを繰り返しました。
“あれ”に呼ばれた気がしました。何かあったのかもしれないと体は反応して動き始めました。森の奥へ進むたびに体が少しずつ軽くなっていきました。木は少女を守るように追いかけてくる人達を塞いでいきました。しかし一矢が少女の体に刺さった時、血の瞳はすでに力を失っていました。
喜びの舞をする者達を背に少女の体から血が流れ落ちて、意識も少しずつ失われていきました。しかし“あれ”の声は聞こえて、それは嬉しそうでした。
少女が倒れたのは、封印を解くために必要な“あの血”を流すための古き印が彫られていた場所でした。そのことを少女は知りませんでしたが、少女もまた“あれ”を復活させるために必要だった生贄だったのでした。
巨大な黒い物体を目にした者達は動くことが出来ませんでした。悲鳴も恐怖も分からないほどに混乱して、逃げようとした足はすでに切られていました。一人、また一人と何も出来ないまま、巨大な黒い物体に体を潰されて肉塊となり果てました。
そして荒廃が広がっていく中、街にいた人達も異変に気付きましたがすでに遅く、逃げる場所などどこにもありませんでした。巨大な黒い物体の叫び声が聞こえた時、この地に存在した“あれ”を人々は思い出したのでした。
しかしそれが過ちだと気付いた時にはもう遅すぎました。誰一人生き残ることは出来ずに死体は新しい地面となりました。
そしてその地にいたのは“あれ”と生贄の少女だけでした。
そして“あれ”は求めました。封印を解くための鍵を探しました。
むかしむかし、あるところに名も無き少女がいました。その子が生まれた時は何も問題はありませんでしたが、教会に訪れた際に神父が『呪われている』と発言し、その浄化を行おうとしました。しかしそれは叶いませんでした。浄化をしようとしてもその呪詛は少女から離れませんでした。
神父は少女の母親に対して、殺すように言いました。母親は拒みましたが、それが原因で街に住む人達から疎外されて、父親も早くに他界していたので一人では耐えきれなくなっていました。母親は殺すことは出来ないと、少女に嘘をついて森の方に捨てました。
かくれんぼをしてずっと待っていた。けれど誰も探しに来ることはありませんでした。おなかがすいた少女は街に戻ろうとしましたが、その道は複雑に絡み合った森の中ではわからなくなり、彷徨い続けて気を失いました。
それから街に住む人達は少女が戻ってこないことに安堵して、長い年月が経ちました。呪われた少女がいたという事実も忘れてしまった頃、森に入った人が見るも無残な姿で発見された。体は引き裂かれていましたが、その顔は何故か笑っていました。
それを生み出していた人物は分からないまま、その死体群は不気味な笑顔を残して増え続けました。そのせいで森は本来の色を忘れて、赤黒く染まり枯れていきました。その隙間から犯人を見つけ出すことに成功しましたが、その直後に不気味な笑顔として死体となり発見されました。誰もその姿を見た者はいなかったのでした。
しかしとある者はその姿を見ました。それは長い年月の後に忘れられていた少女だったのでした。少女の姿を正面からとらえたものは皆同じように死体になりかわりましたが、その者は遠くでそれも横から見ていたので、死ぬことなく生還しました。その者は街に住む人達に伝えましたが、少女に関することを覚えている者は誰一人いませんでした。
助けようと手を伸ばした愚か者は少女の瞳を見て死んでいきました。森は血によって枯れていき、大量に置かれた死体は腐敗して虫がたかっていました。笑っている顔を潰して最後まで血が地面に流れていくことに少女は何も思っていませんでした。
また誰かがやってきて、死体の山は増えていきました。少女の瞳は赤く染まっていました。その瞳を直視した者は瞬時に自らの意思で体を引き裂き、血が流れていることに幸福を覚えて死にました。少女はそれが何度起きようとも、返り血を浴びようとも何も感じませんでした。ただそれが当たり前なのだと思っていたからでした。
その言葉を理解することは出来ませんでした。その声を聞き取ることは出来ませんでした。人がその音を発音できませんでした。『呪われている』少女が生まれる遥か昔、それは信仰されていました。しかしいつしかその存在を否定されて薄れていきました。
そして信仰が完全に失われると美しいと言われていた姿はみるみるうちに醜くなり、神と崇められていた時代を置き去りにして、“あれ”として生贄を貪る存在となってしまいました。しかし長い年月が経ち、生贄を捧げることさえも忘れられて腹を空かせていました。
街に住む人達は少女を殺すために、懸賞金に目を眩ませて強い者達を集めていろんな作戦を打ち出して臨むことにしました。しかし多くの対策を組んで挑んでも少女を殺すことが出来ず、逆に殺されて全滅しました。
少女の周りには多くの人が群がりました。けれどすぐに倒れて死体となり果てました。屈強な者達が少女を囲んでいました。目を合わせないようにしていることに気づきましたが、少女はそれを見ていました。攻撃は繰り返されましたが、傷一つつかないまま、目が合って死体になりました。
最初は活気のある雰囲気でしたが、数が減っていくうちに戦意を喪失して逃げていきました。死体は転がり、地面の色も分からないほどに濁っていきました。
その音は拾われました。生気を失って森に捨てられていた生贄を見つけた“あれ”は一飲みしてやろうとしました。しかしその生贄は『呪われて』いました。体を覆い尽くすその『呪い』は死してなお機能していました。
その呪いにあてられて、“あれ”は体を食わずして腹を満たしてしまいました。生贄の体から呪いが消えてやっと死体の形を示し、腐敗は始まりました。しかしその呪いを腹に満たしたことで、その生贄が今まで過ごしてきた記憶を知りました。
忘れられて捨てられて息絶えた生贄と自らを重ねて、この世界に住む全てのものに対しての復讐を考えましたが、“あれ”は封印されてその場から動くことが出来ませんでした。
“あれ”は腐敗する生贄の姿を元に戻して、その目を抉りました。目玉を取り出して喰らい、代わりに血の瞳を植え付けました。流れ落ちていた血を吸収して、その瞳は赤く染まりました。血の瞳は“あれ”となった時に、大量の血を集めて捧げることで封印を解くことが出来ると知るきっかけとなった力でした。しかし動けなければ意味がない、ならば生贄に集めさせればいいと考えました。
優しく頭をなでると生贄は目覚めました。“あれ”はすぐさま隠れようとしましたが、生贄に見つかりました。しかし一度死んだ代償か、感情が欠落していました。だから“あれ”を見ても何も思いませんでした。ただその赤く染まった瞳が“あれ”を見つめていただけでした。
それでも街に住む人達は諦めませんでした。もう誰でもいいからと片っ端から集めて少女の元へ行かせました。けれどそれはあまりにも無意味な行為であると分かっていましたが、そうするしか方法が思いつかなかったのでした。
死体の山を作りながら少女は森の奥へ進んでいきました。少女を追って派遣された者達も進んでいき、新たな死体となって取り残されていきました。血に染まった木がそこにいる人達めがけて倒れてきて、それに巻き込まれた人もいました。少女もまたその被害を受けると思いきや、木の方が避けているかのように当たることはありませんでした。
自然の匂いは腐乱臭に塗れて、死体に集まった虫によって視界も悪くなっていきました。少女は遠くへ行って、それを追う者達も少なくなってきた時、どこの誰かか知らないけれど一矢が放たれました。その矢は今まで攻撃が通らなかった少女の体に刺さっていました。
無意味と思われていた繰り返しの行動は少女にとって負担となっていたらしく、刺さった場所から血が流れ始めました。それを筆頭に阻害されていた攻撃も通るようになり、少女は倒れて息を引き取りました。
「これできっと」
死ぬ間際に少女の声が聞こえたような気がしましたが、倒したことへの喜びが強く、それはただの幻聴だと無視しました。
しかしそれはもう終わりの合図でした。少女が眠りについた後、大きな地震が起きました。立っているのも危険な状態で森から出ようとしましたが、その森も破壊されて姿を失っていき、現れたのは古びた遺跡でした。
突如として少女の体が浮かび上がったように見えたのは、巨大な黒い物体に抱えられていたものだったのでした。
少女の役目は大量の血を“あれ”に与えることでした。そのために“あれ”から与えられた血の瞳を使って殺しました。何故か死体は笑っていました。少女は何も気にせずにそれを繰り返しました。
“あれ”に呼ばれた気がしました。何かあったのかもしれないと体は反応して動き始めました。森の奥へ進むたびに体が少しずつ軽くなっていきました。木は少女を守るように追いかけてくる人達を塞いでいきました。しかし一矢が少女の体に刺さった時、血の瞳はすでに力を失っていました。
喜びの舞をする者達を背に少女の体から血が流れ落ちて、意識も少しずつ失われていきました。しかし“あれ”の声は聞こえて、それは嬉しそうでした。
少女が倒れたのは、封印を解くために必要な“あの血”を流すための古き印が彫られていた場所でした。そのことを少女は知りませんでしたが、少女もまた“あれ”を復活させるために必要だった生贄だったのでした。
巨大な黒い物体を目にした者達は動くことが出来ませんでした。悲鳴も恐怖も分からないほどに混乱して、逃げようとした足はすでに切られていました。一人、また一人と何も出来ないまま、巨大な黒い物体に体を潰されて肉塊となり果てました。
そして荒廃が広がっていく中、街にいた人達も異変に気付きましたがすでに遅く、逃げる場所などどこにもありませんでした。巨大な黒い物体の叫び声が聞こえた時、この地に存在した“あれ”を人々は思い出したのでした。
しかしそれが過ちだと気付いた時にはもう遅すぎました。誰一人生き残ることは出来ずに死体は新しい地面となりました。
そしてその地にいたのは“あれ”と生贄の少女だけでした。
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