短編小説っぽい何か(286~300)/それに関する説明つき
公開 2023/08/27 15:31
最終更新
2023/08/27 15:33
▽短編小説286(2023/5/4)/永遠の機械人形 降り続く雨にさす一筋の光
離れ離れの空、繋がりの糸は数年の記録。永遠の機械人形が覗いた世界は騒がしかった。一つの光がさした隠れた影の広がりをとらえた矢先、蔓延(はびこ)る闇が覆い尽くした記憶は封鎖された。
快晴が曇り、雷が落ちるほどの大雨が降り注ぐ空は、見えないものも侵食して広がった。暗く沈む淀(よど)んだ風景が見せた幻覚が死を予見させた。
永遠の機械人形は見続けていた。雨は止まず、氷が降り柱は心を刺した。見えない血が涙として流れ落ちて暗闇に溶ける。
希望の光が重なって束になると少しずつ広がった悲しみは解けていく。けれど戻る心は涙をためて沈む。それを繰り返して、時が満ちるのを待った。
『単なる出来事なのに 私にはわからない』
永遠の機械人形の使命は世界を消滅させること
それ以外の理由も感情も 少女だった記憶もない
『悲しみなどいつか忘れてしまうもの』
永遠の機械人形が剣を振り下ろし、断絶しようとした世界は弾かれ、その意味をすぐに理解した。
『私の使命は……この世界にはいらない』
永遠の機械人形は見るのをやめて次の世界へ足を進めた。未来は正常に機能して雨はやんでいた。光は束となり、不死鳥の如く蘇る。飛び立つ鳥が紡いだ奇跡は晴れ渡る空に舞い上がった。
▽短編小説287(2023/5/13)/古びた街の知らない物語 夢に生まれた風景
迷い込んだ少女 異空間
古き街 知らない地
しかし懐かしきガラクタの街がしてならず
その風景は瞬きの後に消えた
快晴の空 揺れる草花
失われた色が戻る現実 夢のような終わり
何も残されず 消え失せた過去の街
賑わう声は何処にもなく
錆びついた金属のにおいもなく
海岸沿いの道路でしかないその場所に
街の面影など残されていないはずなのに
その道すら少女が知る由もないのに
その声と風景だけは覚えている
転がるガムは手のひらに
おもちゃの音が聞こえるような そんな感じ
笑う顔の見えない人 おぼろげな暗闇に呑まれて
朝日とともにかすかな記憶を残して
途切れた風景は無意識を忘れて目覚めた
※短編小説287は実際に見た夢(2023/5/11~12)をもとに覚えている範囲で書いている。
▽短編小説288(2023/5/20)/輝く星に願う奇跡を探している旅人達
輝く星に手を伸ばして少年は空を見る
夜を照らす光が朝のような明るさに切り開いて
止まった時の歯車が動き出すけれど
未来を始めた世界は同じ道を歩んでいた
繰り返した真実は少年にとって無意味
救う一人のために多くを犠牲にしても
最後の欠片が足りずに流れ落ちる血の跡
そして切り開く空の光が始まりに合図
また同じ道を歩み続けて出口を探していた
あらゆる世界の能力の記憶は複数の手に
並行世界を渡る少年は空間に関する知識を持つ
それを覆う闇は取り込まれたら死ぬ毒
浄化の記憶だけがそれを取り除く
しかし所有者は未だ見つかっていなかった
伸ばした手が星の方を指していた
空を切り開く光が強くなっていた
変わらない未来が動き出していた
少年は一人を救っていたがその命は繋げなかった
輝く星に手を伸ばして少女は空を見る
空を切り開いた未来は輝きを失って藍色に染まる
闇が押し寄せて少女をのみこむ前に世界は変わる
▽短編小説289(2023/5/27)/世界に隠された記憶と意識に眠る鍵の音
眺めた空に降り注ぐ人の形
過去から落ちた未来の死を幻覚に閉じ込める
溢れた涙が照らす現実の夢
藍色の暗闇に沈む命を捨てて浮かぶ体は空を知る
生き違いを迷いの少女へ
流れた血は生贄に 生贄は砕け散る世界のために
悲鳴に上書きされた風景
認識を歪めた召喚物は世界から少女を消した
記憶から消える少女 偶然の産物
存在する風のように気配だけを残して見えない
無意識の思い込み 合わさる錠前と鍵
痛む頭が見せる過去と空白の時間が少年を導く
告げられた名前 悲鳴にかき消された最後の記憶
片腕に巻き付く黒い蛇は少女を消そうとする
しかしそれを許さず 少年はすぐさま手を取る
その姿をとらえた少年は少女の嬉し涙を見た
認識の阻害は解かれたが
黒い蛇の制御は未だ進まず
少女を見ていたのは少年だけだった
▽短編小説290(2023/6/3)/分裂した二つの国と天使 記録者達と願い
平和な世界の記録を記した本
分裂した二つの国に舞い降りた天使
実験体にされた子供達 重なった能力と魔法
多くの死を悲しんだ神は彼らに生きる道を
天使は愛した心とともにその姿を捨てた
読み終えた空間の記録者は本を閉じる
音に気づいた時間の記録者は彼を見る
誰かが残した書庫に二人は立っていた
吹き飛ばされた人だったもの 衝撃波にやられて
明らかに転移の場所を間違ったが何事もなく去る
その世界は彼らが望まない結末を歩み続ける
何度繰り返そうがあと一歩足りない
一つの歯車が欠けた時点で詰み 彼らが死ぬ
分裂した二つの国は平和を保っていた
たとえ別れてしまっても国同士の仲が悪くても
彼らの友情はいつだって繋がっていた
しかし記録者となった二人にはわからない
けれど記録者として覚醒しても約束は残っていた
実験体にされた子供達 数年の時を得て
新たな世界で彼らの平和を願い 心を殺した
散った羽が黒く染まる墓に白き翼の天使
行方不明になった天使を探しに地上へ降り立つ
欠けた歯車が揃い 出口は導かれた
▽短編小説291(2023/6/10)/響いた音色はどこまでも続く世界の果てに咲く
記録の手紙 読まれりし 失われた心
ピアノの音色に弾かれた涙の数は人知れず
永遠の記憶が導く未来は闇の中
そう 世界は誰か一人のためだけに動いていた
光の槍 手にした者に裁きを
神の断罪人 動かぬ神殿に座り待ち続けた
長い月日が経って錆びついた奇跡
穢れた闇が蔓延る槍は神を貫く毒となる
響かせた声が届くはずもなく
遮った扉は固く閉じられたまま忘れられた
弾けた音色が知らせる希望は絶望に書き換えられ
真実は嘘に塗(まみ)れて消されていた
世界は回り 時だけが過ぎ 記録は燃やされた
誰かの記憶に当てられたすべての事象
思い出した色は嘘に塗れた世界に隠された真実
白き空が映す本物は壊れゆく世界を裏付けた
誰かが囁き 音色は届き 本に閉じられた
ひとりでに奏でるピアノに現した姿
虚(うつろ)な瞳は真実を映し その道を照らすことはない
神が示した現実は幻想の中に消えて光は弾けた
▽短編小説292(2023/6/17)/純粋な心に迷える瞳と白く包まれた足跡
怪我をした白狐に気づかない大人達に紛れていた少女は治療しなきゃ、と連れて帰りましたが、誰の目にもその白狐は見えませんでした。途方に暮れていると祖父がやってきて、包帯を持ってきてくれました。
『妖怪の目』と呼ばれるその瞳はその名の通り、妖怪を見ることができるのだが、見るだけでなく触れることもできる不可思議な力。つまりその白狐は妖怪だったが、治療を施して元気になった後も、少女と白狐は仲良く暮らしていました。しかし長くはありませんでした。白狐の母親が少女の前に現れて威嚇しました。長い年月の間に起きた人と妖怪の仲違いで人をよく思わない妖怪もいました。少女は幼く、そんなことは知りませんが、怖くなって白狐を渡すと逃げ出しました。
それから少女はお嬢様と呼ばれるようになりましたが、明るく元気な姿は暗く物静かな雰囲気になっていました。ある日、メイドの試験に来た人達の中に不思議な女性がいました。少女はその人ばかり目で追っていましたが、試験によってその女性は落とされて、違う人がメイドになりました。しかし少女は首を振り、女性の方へ歩きました。声をかけようとする少女に気づいた女性は遠ざかろうとしましたが、手を取られて止まりました。
交わされた言葉に涙を流す少女を抱き寄せる白狐
▽短編小説293(2023/6/24)/告げる言葉は『サヨナラ』と
遠い日に生まれたその命
星が輝く前に生まれた奇跡の花
梅雨に濡れる記憶のない少女の目に映る白
無音の映像が色づく前に閉じられた
遠い風に誘われて立った柵の先
理解不能の少女は飛び降り続ける
それを未遂で繰り返し 首は弱く締め付けた
無感情のあの子は何も言わずに黙っていた
暗い部屋に眠る少女と朝日に立つあの子
死を恐れて死を望み 血を流す刃は肌を切らず
引っ掻いた傷は失われた真実の記憶
あの子は静かに 嘘に囲まれた少女を見ていた
何を考えているのかわからない
あの子の好きなことも何もかも
長い月日 同じ場所にいた それでも理解できず
少女は悩み これも無意味だとゴミ箱に捨てた
幸せな時間はとうに過ぎた
死んだ方がマシだと気付くのが遅すぎた
あの子が生まれた時からそうだったと
無意味な命は 空を舞った
▽短編小説294(2023/7/1)/二人の天使の祝福と消滅の分岐跡
祝福の天使 舞い降りた地上は血の海
穢れを知らぬ少年を染めた堕天の影
使命を忘れた彼の目は虚ろとなりて
不気味な笑いにかつての光はなかった
召喚者の願いは叶い 神の怒りを買い
新たな天使の少女は黒く散る羽根を見つけた
生きるための戦争に世界の破壊が起こるなら
平和な未来を願う少女は穢れを浄化する
二人の天使がもたらした祝福は
白き羽根は平和の国 黒き羽根は武力の国
血塗れの少年が少女を視認した時
一瞬の記憶蘇り だが洗脳は上書きされた
深く刻まれた洗脳に少年の人格はもはやなく
堕天の残り火は闇に染まる前の悪魔になりかける
けれどそれ以上の穢れは少女の浄化と共に死した
そして少年は戦争の終わりに人となった
世界の破壊は免れたが
代わりに少年は少女を失った
天使の力は能力と共に消え去った
しかしそれが正史にはならなかった
記録者の二人はやり直すことにした
▽短編小説295(2023/7/8)/凍りついたすべての理(ことわり)と心情の表れ
凍りついた心が溶けることも知らず
小さく頷いた形もその光景も何もかも見えない
永遠に記録した世界も壊れたという未来も
誰かが観測した出来事に過ぎない
かつてそうだったように見えた現実は
すぐさま過去に書き換えられて水晶に眠る
氷の答えに導く真実が何かを示すわけもなく
ずっと願う心が壊れた世界を再生する
訳もわからない文章だけが残り続けて
理解することを否定された未来は破綻している
どこに向かうわけでもなく
綴られた言葉の行く先は音に重なる水の中
不安定な世界に水晶の破片は刺さり
凍りついた地面から這い上がる人型の想い
何かを考えてたどり着いた先に白い雪が降り
何も見えなかった そう感じた何かが
やはりというばかりか壊れた心は
未来を映す鏡の代わりに感情を生み落とす
その結末がどうであれど もう戻れはしない
空っぽの砂時計しか残っていないのだから
※この話は『光無くし水晶の謎』と『空っぽの砂時計』を読み返した結果に生まれた意味不明な文章になり、意味は何もない。
▽短編小説296(2023/7/15)/交わる水晶に忘れた空を
未来を運ぶために動き出した少年は
幻想の境界に足をかけて飛び込んだ
その行く末を見届けた偽目(カメラ)が映す
時間と空間の狭間に移動する影があった
緩(ゆる)やかな進行の虹の空間に止まり
見上げた夜藍(よぞら)が世界の異変を知らせる
不慮な事故に巻き込まれた少年は
未来への荷物を届ける前に現実に叩き落される
透き通る水晶の塊がすべてを覆いつくした世界
不思議なくらい何も感じない気温は真っ白な空に
色を失ったと知らせる警告は少年の疑問を消した
『私はここにいるよ』
修復作業中に見つけた水晶の中の死体
血飛沫が凍る地面に残された悲鳴の顔と手足
しかしそれを記憶することは少年に叶わない
『私はここにいるよ 君は』
未来を繋ぐ空間を無理やり開くことで
ことなきを得た少年は荷物を持って歩き出す
背後から伸びる水晶の形は少女となり
少年の腕を掴むが振り払われて空間に消える
『さようなら 私の愛する人』
※私=『光無くし水晶の謎』の不明で登場する水晶の女性
少年=『光無くし水晶の謎』で登場する世界の観測者の生まれ変わりという設定
▽短編小説297(2023/7/22)/十字架と名も無きもの 傾く音色は破滅の道
少女の願いは一つだけ、そう記された十字架から生まれた名も無きものは鎌を振り続けた。偽りの少女達へ、紛い物の願いなど価値はない。生まれて十字架に出会うまでの人生を無意味だと知ればいい。名も無きものが望むのは幸せだけだった。
彼の名も失われて 血塗れの世界
十字架の輝きは失われず 呪いは蓄積する
未来を求めたその意味の答えは惨死、繰り返される出来事に終止符を打つことなく、人々は何も出来ない。突然現れた名も無きものに手を打とうなど、はっきり言って無理だと知れ。
蓄積された呪いの対抗策は 十字架の破壊
その願いは叶わない 何故なら死の前に勝てない
少女達が殺された後の世界は意思関係なく破壊された。名も無きものの通る道に変色した大地や空がガラスのように砕け散る様に何も思わず、それでいいと切り捨てた。
十字架の意思は 『少女』を喰らい
名も無きものは 白紙の未来で“少女”を見た
※『少女』=『優しい光と繋がる鎖』で登場する最初の少女
“少女”=『複雑な生き方をする少女 学園編』で登場する「さくら」
▽短編小説298(2023/7/29)/遅めの思考は戻らぬ日常の流れた道
少女は考えていた。何かに囚われた感覚を意味のないものだと捉えた時、誰かの言葉を奪った。動き出した足が人の形を失っていると気づいた者は少女の視界から消えた。それを嫌悪しないように行動しても、心は怯えて真実は少女に伝わっていたから逃げられなかった。
「そういうもの……なんで、みんな壊れるの」
疑問に似た感覚が少女の思考を支配する時、複数の足は動かなくなった。洞窟の暗闇に香る血が住み心地良いと考える少女の瞳は笑っていた。
入り口からこぼれ落ちて染み込んだ赤い血が、草木枯れることなく伸び続けて隠れた食事の間。少女は待ち続けてその命を待っていた。その姿を見たすべてにおいて、誰も肯定しなかった。だから少女はみんなを招いて閉じ込めて、でも望んでなくて分からなくなるその意味を封じた。
「私を……なんで……私はそう願ったのに」
ずっと待っていた。人や生き物は餌となって、暗闇に光る赤い結晶が少女を包み込んでいた。
黙って従っていたなら、と少女は残された青き鳥に問いかけて、少年を思い出す。その記憶にはもう戻れはしないのに、少女は待ち続ける。
「どうして……やっと理解できたのに」
動かなくなった少年を見て、少女は目を閉じた。
▽短編小説299(2023/8/5)/刻まれた悲劇の記憶と曇らぬ幼き夢
晴れ渡る空に鮮やかな花が添えられた墓
熱さに流れる汗は地面の影に曇る
鬼灯(ホオズキ)が灯籠の代わりを果たし
幽霊達は集まっていたその場所で
紅い霊に映る風景は色を失っていた。墓参りに訪れる人々を正常に認識できない一瞬の時、彼の目にはあの日の悲劇が映っていた。爛(ただ)れ崩れていく人の形、影のみ残して消えた人、虹が見える水に苦しむ人。眩しい光の後に降る黒い雨がもたらしたものは紅い霊になる前の彼が見た記憶。
見たくない記憶は深く刻まれた心の中に
その色が白黒で良かったのを感謝するように
その目に映る過去が繰り返されないことを願い
紅い霊は眠っていた。誰もいなくなった墓の近くで、煌(きら)めく星達が見守っていた。夜の涼しさに惹かれて集まる幽霊達は彼を見て驚いていた。
泣いているね そうだね どうしたの?
幽霊達は小さく呟いて紅い霊を見ていた。
幼き頃の記憶 母の描く絵 読み聞かせの夜
心地よい眠りとともに彼は子供の夢を見る
※この物語は『霊の話 絵描きの空』と少し文章が似ている箇所があり、本文として登場する可能性がある。
▽短編小説300(2023/8/12)/刻まれた歴史に終止符と再生の命を
暑さに怪我する水の音 墓石の日照り
快晴の空に舞う雲が映す記憶
夕暮れ時に弾く爆竹の火が
線香の煙が上がっているのを見ていた
じっと墓石に座る幽霊は一点を見続けた
灰色の空に降り注いだ黒い雨がもたらした悲劇
虹色の水は毒を撒き 光は剥(は)がれた皮膚を
血は焦がして炭となった
それは過去の記憶 いや現在の記憶
この世界になく 別の世界へ渡った悲劇
たとえ原子爆弾が落ちなくとも繰り返す戦争
許された平和は何処にもなかった
「何を見ているの?」
幽霊は問いかけられたことに驚かない。あの日首を絞めようとした少女がそこにいた。
『終わらない未来を見ている』
「きっと終わるよ。はじまりと終わりはいつも一緒だから」
意味の分からない言葉を投げかけたはずが、少女には理解できた。その答えを聞いた幽霊は墓石を降りて、少女の手を握っていた。
『そうだといいが』
幽霊の声に少女は握られた手を握り返した。
※「首を絞めようとした」の件? は短編小説196から。「霊の話」以外で戦争関連の話として出てくる、幽霊と少女である。
離れ離れの空、繋がりの糸は数年の記録。永遠の機械人形が覗いた世界は騒がしかった。一つの光がさした隠れた影の広がりをとらえた矢先、蔓延(はびこ)る闇が覆い尽くした記憶は封鎖された。
快晴が曇り、雷が落ちるほどの大雨が降り注ぐ空は、見えないものも侵食して広がった。暗く沈む淀(よど)んだ風景が見せた幻覚が死を予見させた。
永遠の機械人形は見続けていた。雨は止まず、氷が降り柱は心を刺した。見えない血が涙として流れ落ちて暗闇に溶ける。
希望の光が重なって束になると少しずつ広がった悲しみは解けていく。けれど戻る心は涙をためて沈む。それを繰り返して、時が満ちるのを待った。
『単なる出来事なのに 私にはわからない』
永遠の機械人形の使命は世界を消滅させること
それ以外の理由も感情も 少女だった記憶もない
『悲しみなどいつか忘れてしまうもの』
永遠の機械人形が剣を振り下ろし、断絶しようとした世界は弾かれ、その意味をすぐに理解した。
『私の使命は……この世界にはいらない』
永遠の機械人形は見るのをやめて次の世界へ足を進めた。未来は正常に機能して雨はやんでいた。光は束となり、不死鳥の如く蘇る。飛び立つ鳥が紡いだ奇跡は晴れ渡る空に舞い上がった。
▽短編小説287(2023/5/13)/古びた街の知らない物語 夢に生まれた風景
迷い込んだ少女 異空間
古き街 知らない地
しかし懐かしきガラクタの街がしてならず
その風景は瞬きの後に消えた
快晴の空 揺れる草花
失われた色が戻る現実 夢のような終わり
何も残されず 消え失せた過去の街
賑わう声は何処にもなく
錆びついた金属のにおいもなく
海岸沿いの道路でしかないその場所に
街の面影など残されていないはずなのに
その道すら少女が知る由もないのに
その声と風景だけは覚えている
転がるガムは手のひらに
おもちゃの音が聞こえるような そんな感じ
笑う顔の見えない人 おぼろげな暗闇に呑まれて
朝日とともにかすかな記憶を残して
途切れた風景は無意識を忘れて目覚めた
※短編小説287は実際に見た夢(2023/5/11~12)をもとに覚えている範囲で書いている。
▽短編小説288(2023/5/20)/輝く星に願う奇跡を探している旅人達
輝く星に手を伸ばして少年は空を見る
夜を照らす光が朝のような明るさに切り開いて
止まった時の歯車が動き出すけれど
未来を始めた世界は同じ道を歩んでいた
繰り返した真実は少年にとって無意味
救う一人のために多くを犠牲にしても
最後の欠片が足りずに流れ落ちる血の跡
そして切り開く空の光が始まりに合図
また同じ道を歩み続けて出口を探していた
あらゆる世界の能力の記憶は複数の手に
並行世界を渡る少年は空間に関する知識を持つ
それを覆う闇は取り込まれたら死ぬ毒
浄化の記憶だけがそれを取り除く
しかし所有者は未だ見つかっていなかった
伸ばした手が星の方を指していた
空を切り開く光が強くなっていた
変わらない未来が動き出していた
少年は一人を救っていたがその命は繋げなかった
輝く星に手を伸ばして少女は空を見る
空を切り開いた未来は輝きを失って藍色に染まる
闇が押し寄せて少女をのみこむ前に世界は変わる
▽短編小説289(2023/5/27)/世界に隠された記憶と意識に眠る鍵の音
眺めた空に降り注ぐ人の形
過去から落ちた未来の死を幻覚に閉じ込める
溢れた涙が照らす現実の夢
藍色の暗闇に沈む命を捨てて浮かぶ体は空を知る
生き違いを迷いの少女へ
流れた血は生贄に 生贄は砕け散る世界のために
悲鳴に上書きされた風景
認識を歪めた召喚物は世界から少女を消した
記憶から消える少女 偶然の産物
存在する風のように気配だけを残して見えない
無意識の思い込み 合わさる錠前と鍵
痛む頭が見せる過去と空白の時間が少年を導く
告げられた名前 悲鳴にかき消された最後の記憶
片腕に巻き付く黒い蛇は少女を消そうとする
しかしそれを許さず 少年はすぐさま手を取る
その姿をとらえた少年は少女の嬉し涙を見た
認識の阻害は解かれたが
黒い蛇の制御は未だ進まず
少女を見ていたのは少年だけだった
▽短編小説290(2023/6/3)/分裂した二つの国と天使 記録者達と願い
平和な世界の記録を記した本
分裂した二つの国に舞い降りた天使
実験体にされた子供達 重なった能力と魔法
多くの死を悲しんだ神は彼らに生きる道を
天使は愛した心とともにその姿を捨てた
読み終えた空間の記録者は本を閉じる
音に気づいた時間の記録者は彼を見る
誰かが残した書庫に二人は立っていた
吹き飛ばされた人だったもの 衝撃波にやられて
明らかに転移の場所を間違ったが何事もなく去る
その世界は彼らが望まない結末を歩み続ける
何度繰り返そうがあと一歩足りない
一つの歯車が欠けた時点で詰み 彼らが死ぬ
分裂した二つの国は平和を保っていた
たとえ別れてしまっても国同士の仲が悪くても
彼らの友情はいつだって繋がっていた
しかし記録者となった二人にはわからない
けれど記録者として覚醒しても約束は残っていた
実験体にされた子供達 数年の時を得て
新たな世界で彼らの平和を願い 心を殺した
散った羽が黒く染まる墓に白き翼の天使
行方不明になった天使を探しに地上へ降り立つ
欠けた歯車が揃い 出口は導かれた
▽短編小説291(2023/6/10)/響いた音色はどこまでも続く世界の果てに咲く
記録の手紙 読まれりし 失われた心
ピアノの音色に弾かれた涙の数は人知れず
永遠の記憶が導く未来は闇の中
そう 世界は誰か一人のためだけに動いていた
光の槍 手にした者に裁きを
神の断罪人 動かぬ神殿に座り待ち続けた
長い月日が経って錆びついた奇跡
穢れた闇が蔓延る槍は神を貫く毒となる
響かせた声が届くはずもなく
遮った扉は固く閉じられたまま忘れられた
弾けた音色が知らせる希望は絶望に書き換えられ
真実は嘘に塗(まみ)れて消されていた
世界は回り 時だけが過ぎ 記録は燃やされた
誰かの記憶に当てられたすべての事象
思い出した色は嘘に塗れた世界に隠された真実
白き空が映す本物は壊れゆく世界を裏付けた
誰かが囁き 音色は届き 本に閉じられた
ひとりでに奏でるピアノに現した姿
虚(うつろ)な瞳は真実を映し その道を照らすことはない
神が示した現実は幻想の中に消えて光は弾けた
▽短編小説292(2023/6/17)/純粋な心に迷える瞳と白く包まれた足跡
怪我をした白狐に気づかない大人達に紛れていた少女は治療しなきゃ、と連れて帰りましたが、誰の目にもその白狐は見えませんでした。途方に暮れていると祖父がやってきて、包帯を持ってきてくれました。
『妖怪の目』と呼ばれるその瞳はその名の通り、妖怪を見ることができるのだが、見るだけでなく触れることもできる不可思議な力。つまりその白狐は妖怪だったが、治療を施して元気になった後も、少女と白狐は仲良く暮らしていました。しかし長くはありませんでした。白狐の母親が少女の前に現れて威嚇しました。長い年月の間に起きた人と妖怪の仲違いで人をよく思わない妖怪もいました。少女は幼く、そんなことは知りませんが、怖くなって白狐を渡すと逃げ出しました。
それから少女はお嬢様と呼ばれるようになりましたが、明るく元気な姿は暗く物静かな雰囲気になっていました。ある日、メイドの試験に来た人達の中に不思議な女性がいました。少女はその人ばかり目で追っていましたが、試験によってその女性は落とされて、違う人がメイドになりました。しかし少女は首を振り、女性の方へ歩きました。声をかけようとする少女に気づいた女性は遠ざかろうとしましたが、手を取られて止まりました。
交わされた言葉に涙を流す少女を抱き寄せる白狐
▽短編小説293(2023/6/24)/告げる言葉は『サヨナラ』と
遠い日に生まれたその命
星が輝く前に生まれた奇跡の花
梅雨に濡れる記憶のない少女の目に映る白
無音の映像が色づく前に閉じられた
遠い風に誘われて立った柵の先
理解不能の少女は飛び降り続ける
それを未遂で繰り返し 首は弱く締め付けた
無感情のあの子は何も言わずに黙っていた
暗い部屋に眠る少女と朝日に立つあの子
死を恐れて死を望み 血を流す刃は肌を切らず
引っ掻いた傷は失われた真実の記憶
あの子は静かに 嘘に囲まれた少女を見ていた
何を考えているのかわからない
あの子の好きなことも何もかも
長い月日 同じ場所にいた それでも理解できず
少女は悩み これも無意味だとゴミ箱に捨てた
幸せな時間はとうに過ぎた
死んだ方がマシだと気付くのが遅すぎた
あの子が生まれた時からそうだったと
無意味な命は 空を舞った
▽短編小説294(2023/7/1)/二人の天使の祝福と消滅の分岐跡
祝福の天使 舞い降りた地上は血の海
穢れを知らぬ少年を染めた堕天の影
使命を忘れた彼の目は虚ろとなりて
不気味な笑いにかつての光はなかった
召喚者の願いは叶い 神の怒りを買い
新たな天使の少女は黒く散る羽根を見つけた
生きるための戦争に世界の破壊が起こるなら
平和な未来を願う少女は穢れを浄化する
二人の天使がもたらした祝福は
白き羽根は平和の国 黒き羽根は武力の国
血塗れの少年が少女を視認した時
一瞬の記憶蘇り だが洗脳は上書きされた
深く刻まれた洗脳に少年の人格はもはやなく
堕天の残り火は闇に染まる前の悪魔になりかける
けれどそれ以上の穢れは少女の浄化と共に死した
そして少年は戦争の終わりに人となった
世界の破壊は免れたが
代わりに少年は少女を失った
天使の力は能力と共に消え去った
しかしそれが正史にはならなかった
記録者の二人はやり直すことにした
▽短編小説295(2023/7/8)/凍りついたすべての理(ことわり)と心情の表れ
凍りついた心が溶けることも知らず
小さく頷いた形もその光景も何もかも見えない
永遠に記録した世界も壊れたという未来も
誰かが観測した出来事に過ぎない
かつてそうだったように見えた現実は
すぐさま過去に書き換えられて水晶に眠る
氷の答えに導く真実が何かを示すわけもなく
ずっと願う心が壊れた世界を再生する
訳もわからない文章だけが残り続けて
理解することを否定された未来は破綻している
どこに向かうわけでもなく
綴られた言葉の行く先は音に重なる水の中
不安定な世界に水晶の破片は刺さり
凍りついた地面から這い上がる人型の想い
何かを考えてたどり着いた先に白い雪が降り
何も見えなかった そう感じた何かが
やはりというばかりか壊れた心は
未来を映す鏡の代わりに感情を生み落とす
その結末がどうであれど もう戻れはしない
空っぽの砂時計しか残っていないのだから
※この話は『光無くし水晶の謎』と『空っぽの砂時計』を読み返した結果に生まれた意味不明な文章になり、意味は何もない。
▽短編小説296(2023/7/15)/交わる水晶に忘れた空を
未来を運ぶために動き出した少年は
幻想の境界に足をかけて飛び込んだ
その行く末を見届けた偽目(カメラ)が映す
時間と空間の狭間に移動する影があった
緩(ゆる)やかな進行の虹の空間に止まり
見上げた夜藍(よぞら)が世界の異変を知らせる
不慮な事故に巻き込まれた少年は
未来への荷物を届ける前に現実に叩き落される
透き通る水晶の塊がすべてを覆いつくした世界
不思議なくらい何も感じない気温は真っ白な空に
色を失ったと知らせる警告は少年の疑問を消した
『私はここにいるよ』
修復作業中に見つけた水晶の中の死体
血飛沫が凍る地面に残された悲鳴の顔と手足
しかしそれを記憶することは少年に叶わない
『私はここにいるよ 君は』
未来を繋ぐ空間を無理やり開くことで
ことなきを得た少年は荷物を持って歩き出す
背後から伸びる水晶の形は少女となり
少年の腕を掴むが振り払われて空間に消える
『さようなら 私の愛する人』
※私=『光無くし水晶の謎』の不明で登場する水晶の女性
少年=『光無くし水晶の謎』で登場する世界の観測者の生まれ変わりという設定
▽短編小説297(2023/7/22)/十字架と名も無きもの 傾く音色は破滅の道
少女の願いは一つだけ、そう記された十字架から生まれた名も無きものは鎌を振り続けた。偽りの少女達へ、紛い物の願いなど価値はない。生まれて十字架に出会うまでの人生を無意味だと知ればいい。名も無きものが望むのは幸せだけだった。
彼の名も失われて 血塗れの世界
十字架の輝きは失われず 呪いは蓄積する
未来を求めたその意味の答えは惨死、繰り返される出来事に終止符を打つことなく、人々は何も出来ない。突然現れた名も無きものに手を打とうなど、はっきり言って無理だと知れ。
蓄積された呪いの対抗策は 十字架の破壊
その願いは叶わない 何故なら死の前に勝てない
少女達が殺された後の世界は意思関係なく破壊された。名も無きものの通る道に変色した大地や空がガラスのように砕け散る様に何も思わず、それでいいと切り捨てた。
十字架の意思は 『少女』を喰らい
名も無きものは 白紙の未来で“少女”を見た
※『少女』=『優しい光と繋がる鎖』で登場する最初の少女
“少女”=『複雑な生き方をする少女 学園編』で登場する「さくら」
▽短編小説298(2023/7/29)/遅めの思考は戻らぬ日常の流れた道
少女は考えていた。何かに囚われた感覚を意味のないものだと捉えた時、誰かの言葉を奪った。動き出した足が人の形を失っていると気づいた者は少女の視界から消えた。それを嫌悪しないように行動しても、心は怯えて真実は少女に伝わっていたから逃げられなかった。
「そういうもの……なんで、みんな壊れるの」
疑問に似た感覚が少女の思考を支配する時、複数の足は動かなくなった。洞窟の暗闇に香る血が住み心地良いと考える少女の瞳は笑っていた。
入り口からこぼれ落ちて染み込んだ赤い血が、草木枯れることなく伸び続けて隠れた食事の間。少女は待ち続けてその命を待っていた。その姿を見たすべてにおいて、誰も肯定しなかった。だから少女はみんなを招いて閉じ込めて、でも望んでなくて分からなくなるその意味を封じた。
「私を……なんで……私はそう願ったのに」
ずっと待っていた。人や生き物は餌となって、暗闇に光る赤い結晶が少女を包み込んでいた。
黙って従っていたなら、と少女は残された青き鳥に問いかけて、少年を思い出す。その記憶にはもう戻れはしないのに、少女は待ち続ける。
「どうして……やっと理解できたのに」
動かなくなった少年を見て、少女は目を閉じた。
▽短編小説299(2023/8/5)/刻まれた悲劇の記憶と曇らぬ幼き夢
晴れ渡る空に鮮やかな花が添えられた墓
熱さに流れる汗は地面の影に曇る
鬼灯(ホオズキ)が灯籠の代わりを果たし
幽霊達は集まっていたその場所で
紅い霊に映る風景は色を失っていた。墓参りに訪れる人々を正常に認識できない一瞬の時、彼の目にはあの日の悲劇が映っていた。爛(ただ)れ崩れていく人の形、影のみ残して消えた人、虹が見える水に苦しむ人。眩しい光の後に降る黒い雨がもたらしたものは紅い霊になる前の彼が見た記憶。
見たくない記憶は深く刻まれた心の中に
その色が白黒で良かったのを感謝するように
その目に映る過去が繰り返されないことを願い
紅い霊は眠っていた。誰もいなくなった墓の近くで、煌(きら)めく星達が見守っていた。夜の涼しさに惹かれて集まる幽霊達は彼を見て驚いていた。
泣いているね そうだね どうしたの?
幽霊達は小さく呟いて紅い霊を見ていた。
幼き頃の記憶 母の描く絵 読み聞かせの夜
心地よい眠りとともに彼は子供の夢を見る
※この物語は『霊の話 絵描きの空』と少し文章が似ている箇所があり、本文として登場する可能性がある。
▽短編小説300(2023/8/12)/刻まれた歴史に終止符と再生の命を
暑さに怪我する水の音 墓石の日照り
快晴の空に舞う雲が映す記憶
夕暮れ時に弾く爆竹の火が
線香の煙が上がっているのを見ていた
じっと墓石に座る幽霊は一点を見続けた
灰色の空に降り注いだ黒い雨がもたらした悲劇
虹色の水は毒を撒き 光は剥(は)がれた皮膚を
血は焦がして炭となった
それは過去の記憶 いや現在の記憶
この世界になく 別の世界へ渡った悲劇
たとえ原子爆弾が落ちなくとも繰り返す戦争
許された平和は何処にもなかった
「何を見ているの?」
幽霊は問いかけられたことに驚かない。あの日首を絞めようとした少女がそこにいた。
『終わらない未来を見ている』
「きっと終わるよ。はじまりと終わりはいつも一緒だから」
意味の分からない言葉を投げかけたはずが、少女には理解できた。その答えを聞いた幽霊は墓石を降りて、少女の手を握っていた。
『そうだといいが』
幽霊の声に少女は握られた手を握り返した。
※「首を絞めようとした」の件? は短編小説196から。「霊の話」以外で戦争関連の話として出てくる、幽霊と少女である。
桜詩凛の読みは「さくらしりん」で、由来は二つ。一つは元から使っていた桜子凛花が長いと思ったため、短くするために「桜」と「凛」を取り、その間に当時から書いていた「詩」をいれたもの。もう一つは『複雑な生き方をする少女』に登場する「さくら、黒蛇、シラ、理夏(りか)、ラナン」の頭文字を取ったものとなってい…
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