短編小説っぽい何か(251~270)/それに関する説明つき
公開 2023/08/27 15:10
最終更新 2023/08/27 15:23
▽短編小説251(2022/9/3)/遺物に歪んだ願い 愉快な音色と呪いの詩(うた)
 遺物に魅入られた者 その事実を理解できず
 動き出した裏世界 浮遊する粒子は体の中に
 研究者の事故 覚醒した悪魔と幼き少女

 同時期の館 生贄の妊婦は双子を抱えて死を待つ
 しかし現れた堕天使 歪な願いは双子を救う

 どんな楽器でも演奏出来てしまう天才の双子
 成長した兄妹は姿を隠して曲を流した
 その音色は感情を揺らして 回数を得て死に至る

 『詩の音色』と呼ばれるはずの能力は
 歪な願いの叶え方によって『死の音色』に変わる

 自殺者増える世界 平凡な能力者もただの人間も
 遺物に魅入られた者は皆 双子の演奏の虜になる

 強力な能力を持つ者に選ばれて危険視されても
 兄妹は演奏を楽しみ 代わりに大量死を生む
 変わりつつある世界 離れて閉じた箱
 何も知らないまま 無垢な心は鍵盤を鳴らす

▽短編小説252(2022/9/10)/灯(ひ)を失った心と救済の後悔
 冷たく傷ついた心を閉じ込めて、人形のふりをした少女は涙を流すことを忘れた。その心に与えられるはずの温かな愛は壊れてなくなって、幸福の意味を理解できずにいた。
 暗闇に沈んでいた道は悲しみや苦しみの思い出に固まり、楽しみや嬉しさはすぐに崩れ去る道になって何も残らない。そして悪いことばかり残り続けた脳は何も考えたくない。

 そばにいた何かの影も形のない温もりも、夢の中の幸せは現(うつつ)の中の不幸に上書きされて、壊れた世界は恐怖だけを置き去りにして引き裂いていく。体の自由を奪われて無様にバラバラになる。まるで本当の人形にされたかのように。

 苦しむ少女に触れる幽霊の目
 干渉を拒んだはずの過去を忘れて
 今だけを知る彼は少女のそばにいた

 取り残された想いは生前のなくした記憶
 夜に現れた彼の手は朝には消える光
 少女が目を覚ました時にはもういない

 暗闇に囁いた声を聞けなくても
 暗闇に響いた音を聞いていても
 見つめ合う目はすれ違う

▽短編小説253(2022/9/17)/遺物と贈り物 写身に奪われた私の世界
 吐き気する空気、荊棘(けいきょく)絡まる血の香り、止まらない流れはいつかの願い。覗いた鏡の中は反転の変わらぬ日常。けれどもう元には戻れない。
 あざだらけの偽物は綺麗な私を剥ぎ取り、写身の先で姿を取り換えた。一枚の鏡によって、私はドッペルゲンガーにされて表から消された。

 遺物が隕石のように落ちたあの日、ばら撒かれた能力とともに外界からの存在を認識した。彼らは人間の中から選ばれた者達へ、毒という名の贈り物をした。私は捨てられていた贈り物を拾い上げ、鏡を覗き込んだのが最後だった。

 それは私、けれどじゃない
 闇の古物商として覗くの目は囁く
 『綺麗な鏡』は光放つ最後の命
 『鏡の写身』に笑うと閉じ込められた私

 流れた血は何度も治癒されて、壊れても死ぬことはなかった。表に生きる私がいる限り、私は永遠の時間を過ごす。そして次々と出る被害と何も変わらない世界。

 誰も気づかず、馴染んだその姿に
 私は鏡の世界から見ることしか出来なかった

▽短編小説254(2022/9/24)/すれ違う君と僕の忘却と消去の世界
 遠くから覗いていた風景
 血塗れの影に置き去りの死体
 記憶の奥に仕舞い込んだ何処かの世界
 忘れることを許さない幽霊の涙

 次の世界はもっと幸せに と願った

 海に流れ着いた頭の形
 人骨の偽物が笑い、奇跡の月は雲に消える
 大荒れの世界はたった一つの命だけを殺し
 救われることを拒んだ半霊の血

 次の世界は何もいらない と願った

 使い果たした奇跡
 人になりきれなかった幽霊の記憶の中
 夢のような現実は三度目の世界でやっと

 けれど君はすでに消えてしまった

 “次の世界はもう叶えなくていい と願った”

▽短編小説255(2022/10/1)/遺物と忘失の記録 少年に課された時間と運命
 失われた記憶、散り落ちて秋の葉
 時計の針が真実を示す時、解(ほど)ける糸
 分岐の未来と運命を知らぬ少年の中に
 純粋な天使は手を差し出した

 遺物に囚われた者と最後の贈り物
 あの事件で気づいた遺物の恐ろしさ
 目覚めた悪魔が暴れ始めた頃
 一人の研究員は悲惨な実験をやめた

 現れた天使と懐中時計、世界の運命
 遺物に侵食され続ける変わりゆく世界
 好奇心が生んだ取り返しの効かない過去
 時止める寿命、未来は少しずつ

『いつか奇跡を願うなら
 運命と引き換えに
 君は消える覚悟はあるかい?』

 それは神さえ欺く最後の奇跡
 それは大切な人を守る最後の願い
 『不完全な時計』が壊れる時、本当の姿
 終焉に傾く運命はまだ確定していない

▽短編小説256(2022/10/8)/遺物と能力 生まれた影は憎しみの果てに
 遺物に魅入られた支配された研究員と弾かれた者
 幼き少女は両親が連れてきた青年と出会う
 能力咲き誇る研究所、すべての元凶
 惨劇の道は二人を導き、光は失われていく

 幼き少女と孤児の青年、両親の約束
 操り人形は生にしがみつく人体を破壊して
 変わり果てた姿を置き去りに次の研究を開始する
 少女の両親は魅入られず、二人を遠ざけるが
 青年は救うために能力を手に入れると決意する

 膨れ上がる能力、欲望と無音の悲鳴
 両親は少女とともに遺物を盗み逃亡を図る
 しかし魅入られた者の妨害で命の灯火小さくなる
 最終実験、青年の死と少女への想い
 落ちゆく暗闇、憎しみと後悔、そして

『助けて……お兄さん』

命尽きる時、能力は青年と交わり覚醒する
共鳴した悪魔の贈り物、『影の守護者』
弱々しい少女の前に現れてその手を取る

 燃え盛る炎を吹き飛ばし
 辺り一面に広がった影はすべてを飲み込んだ

▽短編小説257(2022/10/15)/遺物と解放 変わる瞳は答えを知らず
 あの日の事件、解放された遺物の支配
 空想の世界が壊れた時、その命は死を覚悟した
 罪の重さと償うことの出来ない人型の肉塊
 研究員の瞳は濁り、何も映さなくなった

《お前はこの世界で何を見るか?》
 研究員の耳に届く知らない声は問いかける。研究員の一室に置かれた干からびた死体と薄く浮かび上がる何か。幽霊のような姿を取るそれは鎌を抱えていた。
《お前はこの世界で何をしたいか?》
 ガラスの一室を通り抜けて彼に近づいて問いかけた。答えを待たずに次の質問が投げられ、そして彼の首には冷たい感覚が伝わってきた。下がれば痛みを伴うと理解した。
「この命を捨てて、君が回収する」
《それは求めている答えではない》
「本心を否定するのか?」
《ならば……会わなくていいのか?》
 その問いに彼は黙っていた。あの事件の一番の被害者であり、あの子の両親を魅入られていたとはいえ、殺めた感覚が今も残っていた。
《もう一度問う、お前は何を探すか?》
 彼の答えが静寂の中に消えて瞳に光が戻った時、その姿を視認する。そして『死者の瞳』は新たな世界を映し出した。

▽短編小説258(2022/10/22)/失われた幽霊の贈り物と色彩の影
 失われし命、置かれた記憶と色彩
 閉じられた世界が再び開いた時
 不可解なその目覚めを否定する

 世界の観測者が記した日誌はあらゆる世界を渡り歩いたすべての記録。永遠の機械人形とともに消去と再生を繰り返し、彼女は救われた。
 呪いに支配されていた世界から解放されたなら、彼女も不幸にならないと思っていたが、閉じられた日誌は何故か白紙になっていた。

 飛来した遺物、日誌から零れた呪いは、世界の観測者も永遠の機械人形も知らない誰かがばら撒いた悪意。二つの世界をまとめて閉じ込めた彼らを許さない誰かの笑い声。

 悪意から落ちた色彩、人型のそれは霊の記憶
 『色彩の霊』、かつて神を嫌った者達
 一つの記憶に集結して、彼女を求めて彷徨う
 死後の案内人、能力も人間も優しく包み込む

「最後にもう一度……君は何処に」
 魂に刻まれた呪いの欠片を追って歩いていた。その裏路地、暗く消えた『影の守護者』とすれ違っていた。

※彼女=『複雑な生き方をする少女』にて登場する「さくら」のことを指しているが、『遺物に侵食された世界』において「さくら」に似た魂を持つ『影の守護者』を同じ存在として『色彩の霊』は認識することが出来ない
 誰か=後に登場する神の贈り物の意思
 彼ら=世界の観測者と永遠の機械人形のことも指すし、『霊の話』にて登場する色つきの霊のことも指している節がある。
 また短編小説258に関しては幽霊の贈り物というものは存在していないので『遺物に侵食された世界』では外伝となる。

▽短編小説259(2022/10/29)/遺物と願い 無垢に取り憑(つ)いた見せかけの光
 その侵食は止まらず 変異した人型は狂う
 迷える子羊よ 神に祈りたまえ さすれば
 見習いの司祭の少女 その声に導かれ
 けれどそれは純粋な心につけ込んだ悪意

「どうか神様、この世界をお救い下さい」
 壊れた教会に残り、一人少女は祈り続けた。少女以外の司祭は皆、世界の糧となり侵食した体は神に認められないものとして自ら命を絶った。狂い暴走した司祭は赤い血を撒き散らして、教会の白を穢し腐敗臭と共に命尽きた。
「神様……。やっぱり私では、未熟な私では」
「どうすることも出来ない》
「! 神……様?」
《残された命 その願いは我にふさわしい》
 次ははっきり聞こえて、立ち上がり振り返ると光の靄に包まれて人の姿が浮かんでいた。
《そなたにこの杖を与えよう それは世界を浄化するもの そして》
 後の言葉を少女は聞き取れず、杖は渡された。

 少女が手にした杖 神が与えた贈り物
 『浄化の光』、世界を救済するための力
 しかし神は喜びの裏でニヤリとする
 『悪意の光』、『浄化の光』に隠された支配

▽短編小説260(2022/11/5)/失われた名と光、揺らぐ命は霊のもとに
 その道外れし 永遠(とわ)の風
 届かない手は通り抜けた死の香り
 修正の終わりに失われし 存在の影
 暗闇に弾かれた者と招かれた者

 変わった空は変わらない
 廃墟の建物は正常の その世界の形
 忘れられた世界に 招かれた少女
 呼ばれていた名を無くし その命の火は揺らぐ

 小雨降る空 枯れる草木
 歩く霊は悲しみに 死を纏いて沈む記憶
 細い線の水 掠めた色と近づく音
 しかし振り返りの道は 変わる空に消える

 交わりを知らぬ 忘れられた世界
 修正の終わり 感情の生贄に捧げられた者達
 霊となりて生前を失い 彷徨いの天気
 現れて消えるを繰り返し 他霊(たれい)を認知せず
 変わる空に答えなく 誰も知らない世界

 小雨も止み 揺れる霊の姿
 死の香りが捉えた視線 止まる時の空
 色を無くした少女と悲しみに染まる雨の霊
 その出会いが世界を紐解く鍵となる

▽短編小説261(2022/11/11)/囚われの世界 英雄と時間と運命と
 封印の遺跡 眠る英雄の力
 五つの力 破壊の闇 失われた盾
 浄化の弓 遡行の剣 治癒と魔法

 残された四つの力は闇を封印し
 何千年の果てに消し去ることを約束し眠りにつく
 しかしその願いは時間とともに忘れられ
 そして闇は盾のみならず魔法も食い散らかした

 掘り起こされた遺跡 解き放たれた四つの力
 能力を悪とする世界 異物は忌み嫌われた
 生まれた赤子に英雄の印 捨てられた弓の子

 少しの時が進んだ頃、少女は討伐の依頼を受け
 弓を能力の偽装として使い、人に紛れていた
 ある討伐の集団の遠距離として行動した矢先
 少年は少女の射る矢が分裂したのを見た

 一方その頃、食い散らかした闇は
 魔法の魂のまま浮遊して体を求めていた

 世界の支配 飛び散った三つの力
 しかし現実は二つ 浄化の弓に融合した治癒
 遡行の剣振られる時 運命は再び動き出す

▽短編小説262(2022/11/18)/修正の終焉と生まれる記録者の残酷な運命
 分たれた二つの物語 修正の終わり
 誰かの願いは叶えられて十字架は眠りにつく
 記録された世界は数知れず
 白紙のノートはすべて埋まった

 その物語に終止符を 別世界の扉が開く
 “あれ”と渡り歩く少女は世界を血に染めて
 天界から眺める少女は精霊の声を聞いて
 星に守られた少女は遥か昔の夢を見る

 永遠の機械人形 役目を終えて止まり
 世界の観測者 最後の頁に祈りを描く
 すべてが完遂した世界はもう開くことはない
 誰もがそう信じていた

 迷い込む少年 知らない図書館
 並べられた本棚に詰められた書籍
 一冊の本が床に落ちて静寂を破る

 目合う少女 その姿あやふやに
 触れゆく本 砂嵐の後に変わる人型
 そして最後の本触れし時 それは消えた

 少年は最後の本に触れて 姿取り込まれる
 それは次の世界への入り口
 そして次の記録者となる

▽短編小説263(2022/11/26)/偽りの想いが届くことなく奪われていく
 その祈りはいつかの願い
 その世界は切り裂く未来
 永遠の死は目覚めを阻害して
 二人の運命が重なることはない

 その手に握られた紐が解(ほど)けたように
 爆弾の炭が跡を作ったように
 影を残して去った騎士は
 その名を捨てて かわる毒を飲んだ

 かつて世界を支配した魔王は
 勇者に世界の意味を問うた
 しかし返答なく ただ痛みだけを与えられて
 その死を嘆いた幹部は彼を捕らえて殺した

 勇者の目に映る囚われの姫
 魔王の目に映る救済の少女
 求めた本当の意味を人間達は理解しない
 魔王の死後 少女は魔王城にて自害する

 誰かの祈りは希望という名の絶望へ
 誰かの願いは叶うことなく消える儚きもの
 そして悲しみというわがままの後に残ったのは
 この世界の 遡行 再生 破壊 だった

※彼=勇者

▽短編小説264(2022/12/3)/女神の呪いと騎士の祈り 箱庭の光から
 箱庭に眠る二つの願い
 一つに不穏を、一つに平穏を
 重なることのない二つの祈り
 女神と騎士の繰り返す世界

 女神にされた少女は幼き化け物の怪我を癒して
 人を嫌う化け物は癒しを受けて少女を信じた

 しかし女神の死は突然に、少女は息を引き取る

 残された化け物の騎士
 女神を救う方法は一つ
 世界を渡り、はじめからやり直す
 だがそれが途方でないことを彼は後悔する

 何度繰り返したことか
 すでに女神の力を宿した少女では救えないと知る
 ならばその力を少女へ渡る前の世界にと
 彼は次の世界へと願い続けた

 暗闇と痛み 幼子と血の香り
 人が彼をいじめ殺そうとしている
 騎士の力は失われて反撃も出来ない
 朦朧とする意識の中、聞き覚えのある声が響く

▽短編小説265(2022/12/9)/空が壊れた後 水晶と分たれた世界
 その昔、空が開いて得体の知れないものが降り注ぎ、人々を襲いました。魔界の扉と言われた災害は増えすぎた人々に対する試練でしたが、一部の異種族は人々に興味を持ち、攻撃するのをやめて契約という名を用いて力を与えました。
 しかし世界に住み着いた厄災は人々を嫌い、仲良く暮らすなど論外で、契約を結んだ愚かな異種族を殺そうとしましたが、後に英雄と呼ばれた者と契約した異種族の力によって厄災、そして魔界の扉は閉じました。

 ただその終わりは英雄の死をもって
 異種族は魔界の扉の封印となったのでした

 しかし時が経ち、封印の力は弱まっていました。魔法の森と呼ばれる地に一人の男が立っていました。彼は平和すぎる世界を嫌い、かつて起きた厄災を手に入れようとして錆びついた扉に触れると少し開いて黒い液体が流れて、それは男の体を飲み込み、次の瞬間には目が赤く光っていました。
『厄災に必要な魔女の体を探さなければ』
 その声とともに男の背中から黒い翼が生えて飛び去りました。

 そして再びの試練は新たな破壊と
 ここに眠る英雄の血を引く者に託されたのでした

※水晶=『光無くし水晶の謎』の世界のことを指す。

▽短編小説266(2022/12/17)/悲しみに消える雨の霊と儚い夢の欠片
 静かな雨が降り注ぐ空、忘れられた世界に流れ落ちた涙。晴れを失った天気に靡(なび)く風もなく、繰り返される日常に死の道だけが続いていた。
 重い枷(かせ)を引き摺(ず)るような足取りで、かろうじて残された色をすべて灰に変える死の音。雨の霊に取り憑(つ)く悲しみの感情が心満たす時、その死は重くのしかかり、歩き続けている理由も忘れるほど壊れていく。

 知らない夢を見る 誰かが泣いている夢
 開いた口に発されるはずの音は聞こえない
 赤く熱く それ以外は見えない

 失われた生前の記憶、残された夢は儚く散って消えていく。雨は酷くなり荒く音を立てていた。水の線が重なって白く靄がかかり始めた頃、その音に混じって光が見えた。歩く度に弾く雫が足音に消されて、その音も一瞬の光の後に無くなる。

 空が変わろうとしている 雨はますます酷くなり
 その音は物体に当たり 激しい音を響かせていた
 その目は閉じられて暗闇に 雨の声は消える

 静かな雨が降り始めて、雨の霊は目を覚ました。そして光の後に残された影を彼は見ていた。

▽短編小説267(2022/12/24)/寂しさに忘れる雪の霊と浮かぶ氷の影
 その手を離した空の影に誘われて、水の香りを失わせた冷気が結晶を作る。その結晶に色を乗せて白くなり、溶けゆく前に積もり始めた雪の中、彼の姿は少しずつ鮮明になっていく。
 寂しさの感情とともに生前の記憶を奪われて目覚めた彼は雪景色に佇(たたず)んでいた。かすかに残った最後の雨の雫が凍り、氷柱となり彼の手に落ちることなく止まった。

 分たれた道の夢を見る 誰かが待っている夢
 伸ばした手は否定されて その言葉はわからない
 雪降る空に骨の形 知らない恐怖が残った

 目覚めははっきりしているのに、雪景色が辺り一面を覆い尽くす頃には忘れてしまう。知らない夢を忘れている生前の記憶に当てはめることもその考えも叶わず、感情はすべてを上書きする。

『こっちは』
 無意識に手を伸ばす雪の霊
『その道は』
 けれどその言葉の意味を理解できない
『あなたは』

 一瞬、空が揺らぎ、灰一色になると
 聞こえないはずのその声が

▽短編小説268(2022/12/30・31)/否定の世界と硝子玉 橙の霊に託された未来
 神に与えられた一撃は自由のために
 だがそれは巻き戻り 再び『氷の扉』の前に
 あの世界の記憶を封じられた霊達は
 かつての色を失い 神の操り人形となる

 しかし橙の霊はあの日の出来事を記憶し
 そして菘の霊はその世界の在り方を否定した

 樒(しきみ)の花 露草(つゆくさ) 弟切草(おとぎりそう) 菜の花
 あの世界を記録した蝶が残した硝子玉
 けれど橙の霊の手には一つ足りなかった

 風の霊が持っていた硝子玉 蕗櫻(ふきざくら)
 その意味を橙の霊は理解していた
 《彼はどこかで生きている……?》

 天界から地上に落とされて
 その名が世界から消されたとしても
 橙の霊は諦めることをせず 神に抗い続けた

 これは『消去された世界』を取り戻す物語

※短編小説268は『霊の話(第三部)』の最初部分を改めて書いたものとなります。

▽短編小説269(2023/1/7)/汚染広がる世界と浄化の巫女
 数百年に一度 目覚める巫女の力
 神に選ばれた者だけが巫女となり
 それ以外の候補の少女は殺される
 だが神は裏切り 見捨てた紛い者
 新たに選ばれた少女は狙われる

 巫女候補を殺す処刑人 一人の少女にて
 死して怨念に憑りつかれて動き出し
 闇の巫女として覚醒する少女は処刑人を求める
 『あなたは私達を知っている』
 怨念達の質問に処刑人は黙っていた

 先代の巫女と幼き処刑人 それは遠い過去の記憶
 原初の卵にかけられた呪いを解く浄化の力
 しかしその力と引き換えに巫女は死ぬ
 浄化は成功したかに見えたが
 卵は割れて 世界は 人は 壊れた

 壊れる間のその命 生贄となった処刑人
 その化け物は彼の魂を穢し
 死ぬことも老いることも失わせて
 永遠の時を過ごす体に生まれ変わった
 『その想いと世界を見届けて 知れ』

 原初の卵は浄化出来ずに多くの巫女が死んでいた
 そして世界は繰り返し 探していた出口を

 ※新たに選ばれた少女と闇の巫女になった少女は別人

▽短編小説270(2023/1/14)/彼らが見据えた未来と崩れゆく平穏な世界
 二つの世界に分たれるその未来はなく
 別宇宙に広がった様々な物語
 血の瞳の少女と“あれ”が渡り歩いた世界
 異なる選択は枝分かれの悲劇を生む

 原初の卵が世界を破壊するならば
 浄化の巫女が現れては死体を増やし
 能力を忌み嫌うならば
 異端者はすぐに殺されて血を流す

 世界の観測者も永遠の機械人形も
 別宇宙の概念から弾かれて
 辿り着くことを許さない
 そこはすでに化け物達の楽園なのだから

 最後の頁(ページ)が記されてから未来は止まっていた
 しかし筆は取られて新たな世界は生み出された

 干渉は許されず
 多世界の記録は本だけに
 だがその魂辿り着き
 一度の交差は混乱をもたらす
桜詩凛の読みは「さくらしりん」で、由来は二つ。一つは元から使っていた桜子凛花が長いと思ったため、短くするために「桜」と「凛」を取り、その間に当時から書いていた「詩」をいれたもの。もう一つは『複雑な生き方をする少女』に登場する「さくら、黒蛇、シラ、理夏(りか)、ラナン」の頭文字を取ったものとなってい…
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