短編小説っぽい何か(192~211)/それに関する説明つき
公開 2023/08/27 14:03
最終更新
2023/08/27 14:45
▽短編小説192(2021/7/18)/忘れられる夢の中で温もりを残して
暗闇の部屋で眠りにつく少女の夢。夜が終わり朝になる一瞬の出来事。目覚めに忘れる記憶が現実と繋がった時、それは夢だったのかと思い出す。
学校、校舎の中、もう受けることのない授業。何度も見たような風景にうんざりする。周りの人の口は動き、話し声は耳に届かない。
しかし砂嵐の雑音の後、授業は変わった。
呼ばれる出席番号と眠る生徒達。毛布に隠れた手は誰かに握られている。触れた指に温かさと感覚が本当にある。それは錯覚かわからない。
呼ばれて歩き出した教卓の上に寝かされる。そして電気が流され、ないはずの痛みは体に届く。背中に繋がれた機械から流れたのを確認した直後、さっきよりも強い電気が
けれどその痛みはなかった。
薄れていく感覚と剥がれ落ちていく風景。色は失われて白に染まる。夢は終わりを告げて目は開いた。
覚えている
それはあの日と同じ
触れた腕は目覚めと消えて
霊を信じた夢の記憶
▽短編小説193(2021/7/25)/凍える痛みと動き出す針
気付いた時には両親はいなくなった。取り残された赤ん坊は拾われて、召喚士として育てられるはずだった。だが少女にその力はなく怒りに任せて振った手が何度も叩き、赤く染まっても止まらず、外に追い出された。外は夜、それはまだ冬のことだった。
外に座り込んだ少女に手を差し出した謎の男は、彼女の怪我を治し、新しい召喚の杖をくれた。すると扉が開き、謎の男は家に招かれた。少女の悪口ばかりを話す偽家族達を聞き流していたのか、謎の男は召喚陣の方へ何故か急いでいた。
これは試験だ、と少女に向かって言い放ち、召喚陣の真ん中に蹴り飛ばされた。さっきくれた新しい杖も折れてしまった。
『サヨナラ』
生贄として捧げられた、と少女は思っていた。しかし目を覚ますと偽家族達は騒めき、ゆっくりと振り返ると砂嵐の如く移り変わる天使と悪魔の姿をした少年が目を閉じたまま、少女を抱えていた。
偽家族の一人が少女を引き離そうとした時、その心臓は貫かれ、その姿は消滅した。未だに少年は眠り血溜まりから現れた手は偽家族全てを食らい尽くして家は赤く染まった。
『いつか』
その声が聞こえた時、謎の男の姿はなかった。
▽短編小説194(2021/7/31)/あの日の目は語り続ける
それは忘れてはならない記憶。けれど落ちて消えていく。時計の針が錆びる前に灰になって、何もかも失くしたあの日の出来事。
あの日もこんな暑さだったのだろうか。紡がれた記憶は、人の声が伝えた悲劇は、あの鐘とともに思い出す。もう二度とないようにと願う。
亡くなった者の血は繋がり、呪いのように苦しめ、幼い頃に聞いた話は写真という名の映像とともに、頭の中で流れていく。
曇った空から落ちた黒い点が発した光は
直視した人の目を抉り捨て
体はドロドロに溶けて
形など最初からなかったかのように
すべてなくなった
誰も知りたくない話
誰も忘れたい話
きっとみんなが思っている
けれど残された白黒写真は
すべてを語り
人々が忘れようとも
その目は忘れないだろう
▽短編小説195(2021/8/7)/黒い雨と消えた街
空から降り注いだ黒い雨は人を醜い姿に変えていきました。一瞬の白い光に残された体から液体は失われて蒸発した。火傷を超えた痛みはもう意識がなく、ふらふらと動いた死体は赤い涙を流した。
朝が過ぎ去って昼ご飯の準備をしようとしていた時間、こんな心地よい天気が憎くなるなんて誰も思わなかった。晴れた空に白い雲の落書き、でもそれが落ち行く実体を隠して、地面が揺れた時全てが終わった。
晴れた空を覆い尽くした灰色の雲
吹き飛ばされて色を失った街
綺麗だった水は油が浮いて毒となり
乾いた喉を癒せずにそのまま
燃やされた死体は山積みに
体の一部を失いながら
歩き続けた人々の影さえ
見えない……何も
幼い頃に聞いた惨劇の記憶
黙祷と共に平和の鐘は鳴り
あの日の出来事を思い出す
▽短編小説196(2021/8/16)/雨の空の後に残る風の音
晴れた空の後には雨が降る。暖かい空気が空に昇ってできた雲は数を増やして暗くした。雲行きが悪くなって灰色に染まった空から降り出した雨は水溜りを作り出した。しかしその水の量は多すぎて、川のような道が生まれていた。
熱い墓の上で座っていた霊は突然の雨に驚いていた。雨に打たれながら雨宿りの場所を探して、何処でもいいからと家に入り込んだ。
暗闇に光る手に導かれて
触れた木の柵に浮かび上がる透明の手
温かな空気が冷たく変わり
霊の手は光に溶けていく
音が鳴り、風が吹き
止まった手の中に少女の首があった
▽短編小説197(2021/8/21)/繋がれた願いと終わりを告げる桜
白い雪が舞う夜に見えていた満月の光。二人は一緒に春を待っていた。桜の木が満開になるその日、やっと見れるはずだった。
それは誰かが願った想い。二人の知らない罪。彼らは巻き込まれて引き離された。少女は闇に飲まれて、少年は彼女の手を取る事が出来なかった。
桜散る空の快晴に見えていた太陽の光。少年は一人何も出来ないまま終わりの時を待っていた。少女がいなくなってから彼の時間は止まっていた。
神樹とも呼ばれていた桜の木は満開を迎えずに散り始めて腐敗していった。少女がいなくなったあの日から既に神樹は世界の終わりを告げていた。
少女が生まれた時、今まで咲くことがなかった神樹の桜が満開になった。奇跡ともいわれた少女は皆に祀られていたが、少年はそうしなかった。
外に出ることも叶わない少女のために少年は忍び込んでは話をした。いつか見たいと願った桜の約束もしたが、その願いは叶わなかった。
見るも無残な姿となった神樹の前に立ち、少年はそれに触れていた。揺らぐ視界の中、幻影の桜を眺めて瞼は落ちていく。
少女を思う気持ちと記憶を引き換えに、彼は
▽短編小説198(2021/8/29)/終わりたい跡の灯火
遠く離れた道、小さな幽霊は夜に漂う。見えない月を追って、星の輝きは繋ぐ。ぼんやり浮かぶ光の目は鳴いて、何処かへ消えた。
きっと忘れた日の跡
夜道の冷えた地面の
手に覚えた最後の感覚
暗く何も見えない空間に小さな灯。近づいた先に赤いベッド。形を失いバラバラとなった部品が散らかっていた。
凍った記憶の跡
迷いと悲しみと憎しみと
赤い糸は既に切られた
灯は壊されて繋がれていた綱の輪は首を絞めた。もがく哀れな人形が息絶える前に包丁は振り下ろされた。足を、手を、と分解して、白いベッドは赤く染まっていた。
朝日とアルコールの匂い、白い天井と点滴。窓に映る首に巻かれた包帯。
許されざる過ちの跡
死に遅れた少女は
▽短編小説199(2021/9/5)/新しい幽霊の形 音無し様と影の道
音無し様、過去の歴史人が手記に綴っていた真実の記録。厄災とされており、それを鎮める方法は確立していない。ただ引き起こすことが簡単故に予想不可能の事情が発生する。
巫女の舞い、厄災を起こさないために行われる。しかし次代に引き継ぐ年、浄化の儀式は巫女の犠牲により成り立ち、生きたまま埋められる。ただあの巫女は裏切り、厄災は起こった。
半人半霊、忘れられた巫女の生き残りと従者の間に生まれた子供。厄災を知らない世界に引き合わせた過去の土地。二つの心は傾き、一方に固執して幸福を求めて切り裂いた。
長い時間の中で忘れられた厄災は蘇る
しかしその姿は人型に封じたままだった
音の感情、音無し様と名を変える前に呼ばれていた。名の通り感情を音に変換して聞くことが可能になる。しかしその力を酷使した為に、人の闇に触れて所有者は壊れて影をばらまいた。
そして生まれた音無し様は
記憶を影の中に流して、未来を捨てた
繰り返し積もった影は伸びて
少しずつ彼らに侵食して奪っていた
▽短編小説200(2021/9/11)/感情の音と闇の子
いつからその音が聞こえていたのか知らない。生まれた時からでも事故に巻き込まれたからでもない。多くの感情の音が彼の耳に届いていた。
ほっとけずに拾い上げた音に関わったせいで、色んなことに巻き込まれたが、それでも力になりたいと願って道を外して怪我を繰り返した。
降り続ける雨と流れ落ちた涙の音。生者と死者の間に漂う霊。天才と呼ばれた少女は道具としか見られておらず、愛されていないことを知り、病院から逃げ出した。その音は拾われた。彼は助けたいと願い、霊体となった少女を追った。
静かな空間にピアノの音は響いていた。それを聞いて幸せだと思っていた。だが人間は姿が見えない故に何度も邪魔をされた。その度に彼女は消えそうになっていた。だから彼は壊した。
『お前も邪魔をするのか』
曲が終わりを告げる前に、最後の音が鳴る前に、やっと掴んだ幸せを破壊する愚か者に制裁する。
▽短編小説201(2021/9/18)/間違いと嘘と終着
遠く離れた命の欠片を探して落とした体(がらくた)は砕け散って閉じた。心にヒビが入って形は最初からなかった、と伝えた。
それを掃除して片付ける人(にんぎょう)は繰り返して何もなかった、と動く口は何度目の話?
壊れた世界は同じ未来を繰り返して、それらはきっと幸せを知らないまま死ぬ。刺されたナイフから溢れた血が流れる場所を失い涙は落とされた。
消えた心はそれさえも認識できずに、伸ばした手は空を掴み、その先は真っ黒な血の海。
生きる理由を
ここにいる意味を
誰も知らないのに
どうして
このまま死を
そうすれば
誰もが幸福に
でもきっと
何も変わらない
そして
何も終わらない
▽短編小説202(2021/9/26)/願いと心とすれ違い
少女は願う。生きる問いを捨てた。誰かの思いのままに動く人形。背後に乗っかる重さに折れた首は元には戻らない。外側の建前は内側の本音さえ貫通した刃物。塞がった傷は新たな傷を生む。
バラバラに砕けた体
意志なき心は機械のように
理由を失って
首吊る肌はあざだらけ
幽霊は願う。死ぬ問いを見つけた。誰かの想いを尊重する人間。気づかない視線に落ちた目は元には戻らない。風の音色は優しさを忘れた冷たい痛み。無意識な心は本当の意味を知らない。
暗闇に浮遊の影
意思なき声は響かずに
理由を失って
導いた手は赤に染まる
▽短編小説203(2021/10/3)/夢見の予知と真実の記録
神社に囚われていた少女は夢の中で願っていた。いつか出逢う少年に手を伸ばして助けを求めた。代々続く巫女の血を濃く受け継いだ少女は舞いを行えば災いを振りまくと言われていた。しかし祭りでは巫女の舞を披露しなければならなかった。
いろんな世界を歩く少年は旅をしていた。立ち寄ったその世界は祭りの準備に追われていた。その祭りは有名らしく他の旅人達もいて会話した。しかし彼は人力車で通り過ぎる巫女の姿を見た。
その夜、部屋で眠りについた少年は夢を見た。あの巫女が神社に囚われて座って口を動かした。
「たすけて』
答える少年の手は虚しく闇に呑まれて目覚めた。
少年の見る予知夢は 一欠片足りずに
巫女の救済を妨げる影は 紙を破いた
本を開いて一枚の紙を破いた彼はそれを手から離した。自らその紙は燃えて消えた。その本は未来を記した記憶、そして消滅した最後の結末。
例え運命を変えようとも、存在しない事柄を変えたところでそれは全て嘘になる。
『最初から記録は終わっているから』
吐き捨てた彼の声は二人に届かないまま消えた。
▽短編小説204(2021/10/9)/奇跡の歌と死の鐘
失われた光を求めて少年は手を引こうとした。けれどその手は既に崩れて砂となり、地へと帰る。
少女の死を受け入れられない彼は片目を抉り、その血は視界を歪ませて未来を見る瞳は奪われた。
奇跡の歌が響いていた世界に不運の死
少女は十字架の願いのままに
少年は何も知らないままに
傷ついた体と心は地へと落ちていく
それは未来の話。不運の死を知らない世界。過去へ引きずり込まれる少年の前に、夢に度々現れる少女の姿があった。少女の先は深い闇の中。
そして繰り返される世界。それが現実か夢か判断できなくなった時、彼は“あの日”をもう一度、願う。手を引いて遠くへ逃げ出すために。
引かれた手は少女の為に
離された手は少年の為に
いつかの夢、いつかの現実に
繰り返す世界は牙を剥く
▽短編小説205(2021/10/16)/暗闇に映った交差の影
冷気を纏った不思議な風、霊の這い寄る氷の砕けた音。首に当たった痛みと流れ落ちる液体。暗闇の中、慣れない目はまだ全てを映しはしない。
ぼやけた光が薄っすらと現れて目を覆った時、蠢(うごめ)く影が見えて消えた。視界から消えたそれの気配はまだあって、けれど何もかも闇に沈んでいた。
眠気のような瞼が落ち
意識は少しずつ遠のく
嫌な匂いが充満しても
体はもう動かない
上から覗いた苦しみの涙、人の這い寄る木の軋(きし)んだ音。不幸に結ばれた手と招く死への結末。暗闇の中、慣れた目は全てを見通し近づいた。
ぼやけた光が薄っすらと瞳に映って反射した時、その影の手は顔に触れていた。瞼は落ちて、霊もまた眠りにつく。そして同じ時を待った。
苦痛に歪んだ顔を
見続けた霊は刃を持ち
安らかな眠りと共に
その血は流れ続けた
▽短編小説206(2021/10/24)/流れ着いた死の後に繰り返す夢
暗い雨の夜、頬に伝う涙の跡。滴る血の香りと動かない人の形。返り血に気づいた彼は叫ぶ声を失って、手から落ちた金属音が響いていた。
巫女の力を抜き取って“人間”として生きてほしいと願い彼は刺した。少女の手にしていた勾玉は光をなくし、かわりに現れた闇は彼を貫いた。
それは不思議な夢。何度も繰り返されて少しずつ鮮明に、そして変わりゆく夢。それは単なる夢。しかし目覚める度に涙を流していた。
知らない男に憑依(ひょうい)した形で目にする夢は、まるで現実のような感触を得て気持ち悪い。整理された記憶とは思えない夢をまた見ていた。
そんな日々に一冊の本。あの方が探す鍵となるもの。錠に守られた本は鍵無くして開いた。それと同時に車椅子の少女が現れて彼を見ていた。
記憶をなくした彼と十字架の少女
修正される前のあの子の代わりとなる勾玉
忘れた外の世界の記憶
血の香りは続き、涙はもう枯れて
あの日愛した過去は戻らない
▽短編小説207(2021/10/30)/複雑な未来は過去へ戻る前に壊れている
誰かの存在を否定して、肯定して、反転し正常に動いた世界で全ては巻き戻り始めていた。終わりに進むはずの未来は始まりの過去へと、時計の針は元の形を忘れて動いていた。
残された記憶から分岐したこの世界は修正されないまま進み、偽物に似た本物の出来事が記されていた。本来存在しない彼らもまた巻き込まれて、暗く深い闇の世界で目を覚ました。
外の世界から流れ着いた者、彼らはそう呼ばれていた。修正される前の世界の過去、現在、未来における“少女”との関わりにより引き寄せられた。
しかし流れ着いた衝撃から記憶を失い、自分が何者なのか分からないが、気がつけば彼らはこの闇の世界の長となっていた。
本軸から切り離された分岐による衝撃と
それを修正しようとした破損と記憶の上書き
かつてあったものは消えて
動き出した魂はたださくらの死を望んでいた
※短編小説206、207は『複雑な生き方をする少女 学園編 分岐A』の闇の世界側の話。
▽短編小説208(2021/11/7)/交わした約束は夢の中で
どこかに消えた水色の空、暗闇に沈む日の光
私は生きていた、記憶がない
あなたは死んでいた、記憶が存在、して
未来を見据えた世界はどこへ
その場を離れた現実は夢に落ちて
笑顔を見せた彼の姿だけが
目の奥の脳に、覚えていた
二人は並んで、少女は、姿を消した
彼は一瞬の時を捉えられずに名前を叫んだ
思い出した幻想に残された彼は
現実の世界を知らないまま、再びの夢を待つ
夜と朝の境目の空、明日に進む眩しい光
私は死んでいた、記憶が
あなたは生きていた、記憶が存在、して
▽短編小説209(2021/11/13)/触れる四つの世界の境界線で
その日は静かな雨が降っていた。消えゆく体を透過することなく、雫は肌を濡らしていた。
もう何も思い出せない。何もわからない。けれど悲しみのその雨は心に染み渡った。
死に近づいたその霊は雨に触れて変わっていた
その日は激しい雷が鳴っていた。音は近く、電磁波は視線を掠めて、山は赤に染まっていた。
もう何も知らない。何もわからない。けれど怒りのその雷は心を侵食した。
無知に近づいたその霊は雷に触れて変わっていた
その日は流れた雲が覆っていた。心地よい風が吹いて、ずっと空を見上げて、音は消えていた。
もう何も見えない。何もわからない。けれど不安のその雲は心を包み込んだ。
闇に近づいたその霊は雲に触れて変わっていた
その日は冷たい雪が積(つも)っていた。ふわりと溶けた指先に残る寒さは少しずつ体を凍らせた。
もう何も聞こえない。何もわからない。けれど孤独のその雪は心に種を植え付けた。
空虚に近づいたその霊は触れて変わっていた
※短編小説209は『二つの世界を行き来する幽霊達』の仮設定。
▽短編小説210(2021/11/20)/届かず落ちていく小さな声
現実に生きる私と夢に生きる少女の姿
誰かが繋いだ儚き感覚の幻想は
その二つの境目を無くして
失った区別は目覚めた視界を混乱させた
黒く影となった蛇のように
白く光となった幽霊のように
赤く鏡となった写身(うつしみ)のように
失われた感情は少しずつ死に向かっていく
本音を語る場所はどこにもなく
闇に沈んだ本当の答えは流した涙の数
現実の体と物語の姿は日をかけて離れていき
いつの間にか、私は私を失い、私は死んでいた
▽短編小説211(2021/11/27)/寒暖の勾玉、生死の記憶
繰り返された夢は鮮明に枯れていた心を呼び戻した。愛した記憶は忘れたまま、人を殺した感覚だけが頭の中を駆け巡り、それは嘘だと思いながらもその夢を信じようと少し傾いていた。
寒くなった暗闇の中、冬の勾玉は光っていた
呪う力は流れ出して、魂は回収された
小さな頃の悲惨な出来事は純粋な心を怒りに染め上げた。復讐の記憶は眠ったまま、師匠の背中を追いながらその力はいつかのために残されて、その矢は今日も標的を貫いた。
暖かくなった陽気の中、春の勾玉は光っていた
遮る力は流れ出して、魂は回収された
暗闇の部屋で眠りにつく少女の夢。夜が終わり朝になる一瞬の出来事。目覚めに忘れる記憶が現実と繋がった時、それは夢だったのかと思い出す。
学校、校舎の中、もう受けることのない授業。何度も見たような風景にうんざりする。周りの人の口は動き、話し声は耳に届かない。
しかし砂嵐の雑音の後、授業は変わった。
呼ばれる出席番号と眠る生徒達。毛布に隠れた手は誰かに握られている。触れた指に温かさと感覚が本当にある。それは錯覚かわからない。
呼ばれて歩き出した教卓の上に寝かされる。そして電気が流され、ないはずの痛みは体に届く。背中に繋がれた機械から流れたのを確認した直後、さっきよりも強い電気が
けれどその痛みはなかった。
薄れていく感覚と剥がれ落ちていく風景。色は失われて白に染まる。夢は終わりを告げて目は開いた。
覚えている
それはあの日と同じ
触れた腕は目覚めと消えて
霊を信じた夢の記憶
▽短編小説193(2021/7/25)/凍える痛みと動き出す針
気付いた時には両親はいなくなった。取り残された赤ん坊は拾われて、召喚士として育てられるはずだった。だが少女にその力はなく怒りに任せて振った手が何度も叩き、赤く染まっても止まらず、外に追い出された。外は夜、それはまだ冬のことだった。
外に座り込んだ少女に手を差し出した謎の男は、彼女の怪我を治し、新しい召喚の杖をくれた。すると扉が開き、謎の男は家に招かれた。少女の悪口ばかりを話す偽家族達を聞き流していたのか、謎の男は召喚陣の方へ何故か急いでいた。
これは試験だ、と少女に向かって言い放ち、召喚陣の真ん中に蹴り飛ばされた。さっきくれた新しい杖も折れてしまった。
『サヨナラ』
生贄として捧げられた、と少女は思っていた。しかし目を覚ますと偽家族達は騒めき、ゆっくりと振り返ると砂嵐の如く移り変わる天使と悪魔の姿をした少年が目を閉じたまま、少女を抱えていた。
偽家族の一人が少女を引き離そうとした時、その心臓は貫かれ、その姿は消滅した。未だに少年は眠り血溜まりから現れた手は偽家族全てを食らい尽くして家は赤く染まった。
『いつか』
その声が聞こえた時、謎の男の姿はなかった。
▽短編小説194(2021/7/31)/あの日の目は語り続ける
それは忘れてはならない記憶。けれど落ちて消えていく。時計の針が錆びる前に灰になって、何もかも失くしたあの日の出来事。
あの日もこんな暑さだったのだろうか。紡がれた記憶は、人の声が伝えた悲劇は、あの鐘とともに思い出す。もう二度とないようにと願う。
亡くなった者の血は繋がり、呪いのように苦しめ、幼い頃に聞いた話は写真という名の映像とともに、頭の中で流れていく。
曇った空から落ちた黒い点が発した光は
直視した人の目を抉り捨て
体はドロドロに溶けて
形など最初からなかったかのように
すべてなくなった
誰も知りたくない話
誰も忘れたい話
きっとみんなが思っている
けれど残された白黒写真は
すべてを語り
人々が忘れようとも
その目は忘れないだろう
▽短編小説195(2021/8/7)/黒い雨と消えた街
空から降り注いだ黒い雨は人を醜い姿に変えていきました。一瞬の白い光に残された体から液体は失われて蒸発した。火傷を超えた痛みはもう意識がなく、ふらふらと動いた死体は赤い涙を流した。
朝が過ぎ去って昼ご飯の準備をしようとしていた時間、こんな心地よい天気が憎くなるなんて誰も思わなかった。晴れた空に白い雲の落書き、でもそれが落ち行く実体を隠して、地面が揺れた時全てが終わった。
晴れた空を覆い尽くした灰色の雲
吹き飛ばされて色を失った街
綺麗だった水は油が浮いて毒となり
乾いた喉を癒せずにそのまま
燃やされた死体は山積みに
体の一部を失いながら
歩き続けた人々の影さえ
見えない……何も
幼い頃に聞いた惨劇の記憶
黙祷と共に平和の鐘は鳴り
あの日の出来事を思い出す
▽短編小説196(2021/8/16)/雨の空の後に残る風の音
晴れた空の後には雨が降る。暖かい空気が空に昇ってできた雲は数を増やして暗くした。雲行きが悪くなって灰色に染まった空から降り出した雨は水溜りを作り出した。しかしその水の量は多すぎて、川のような道が生まれていた。
熱い墓の上で座っていた霊は突然の雨に驚いていた。雨に打たれながら雨宿りの場所を探して、何処でもいいからと家に入り込んだ。
暗闇に光る手に導かれて
触れた木の柵に浮かび上がる透明の手
温かな空気が冷たく変わり
霊の手は光に溶けていく
音が鳴り、風が吹き
止まった手の中に少女の首があった
▽短編小説197(2021/8/21)/繋がれた願いと終わりを告げる桜
白い雪が舞う夜に見えていた満月の光。二人は一緒に春を待っていた。桜の木が満開になるその日、やっと見れるはずだった。
それは誰かが願った想い。二人の知らない罪。彼らは巻き込まれて引き離された。少女は闇に飲まれて、少年は彼女の手を取る事が出来なかった。
桜散る空の快晴に見えていた太陽の光。少年は一人何も出来ないまま終わりの時を待っていた。少女がいなくなってから彼の時間は止まっていた。
神樹とも呼ばれていた桜の木は満開を迎えずに散り始めて腐敗していった。少女がいなくなったあの日から既に神樹は世界の終わりを告げていた。
少女が生まれた時、今まで咲くことがなかった神樹の桜が満開になった。奇跡ともいわれた少女は皆に祀られていたが、少年はそうしなかった。
外に出ることも叶わない少女のために少年は忍び込んでは話をした。いつか見たいと願った桜の約束もしたが、その願いは叶わなかった。
見るも無残な姿となった神樹の前に立ち、少年はそれに触れていた。揺らぐ視界の中、幻影の桜を眺めて瞼は落ちていく。
少女を思う気持ちと記憶を引き換えに、彼は
▽短編小説198(2021/8/29)/終わりたい跡の灯火
遠く離れた道、小さな幽霊は夜に漂う。見えない月を追って、星の輝きは繋ぐ。ぼんやり浮かぶ光の目は鳴いて、何処かへ消えた。
きっと忘れた日の跡
夜道の冷えた地面の
手に覚えた最後の感覚
暗く何も見えない空間に小さな灯。近づいた先に赤いベッド。形を失いバラバラとなった部品が散らかっていた。
凍った記憶の跡
迷いと悲しみと憎しみと
赤い糸は既に切られた
灯は壊されて繋がれていた綱の輪は首を絞めた。もがく哀れな人形が息絶える前に包丁は振り下ろされた。足を、手を、と分解して、白いベッドは赤く染まっていた。
朝日とアルコールの匂い、白い天井と点滴。窓に映る首に巻かれた包帯。
許されざる過ちの跡
死に遅れた少女は
▽短編小説199(2021/9/5)/新しい幽霊の形 音無し様と影の道
音無し様、過去の歴史人が手記に綴っていた真実の記録。厄災とされており、それを鎮める方法は確立していない。ただ引き起こすことが簡単故に予想不可能の事情が発生する。
巫女の舞い、厄災を起こさないために行われる。しかし次代に引き継ぐ年、浄化の儀式は巫女の犠牲により成り立ち、生きたまま埋められる。ただあの巫女は裏切り、厄災は起こった。
半人半霊、忘れられた巫女の生き残りと従者の間に生まれた子供。厄災を知らない世界に引き合わせた過去の土地。二つの心は傾き、一方に固執して幸福を求めて切り裂いた。
長い時間の中で忘れられた厄災は蘇る
しかしその姿は人型に封じたままだった
音の感情、音無し様と名を変える前に呼ばれていた。名の通り感情を音に変換して聞くことが可能になる。しかしその力を酷使した為に、人の闇に触れて所有者は壊れて影をばらまいた。
そして生まれた音無し様は
記憶を影の中に流して、未来を捨てた
繰り返し積もった影は伸びて
少しずつ彼らに侵食して奪っていた
▽短編小説200(2021/9/11)/感情の音と闇の子
いつからその音が聞こえていたのか知らない。生まれた時からでも事故に巻き込まれたからでもない。多くの感情の音が彼の耳に届いていた。
ほっとけずに拾い上げた音に関わったせいで、色んなことに巻き込まれたが、それでも力になりたいと願って道を外して怪我を繰り返した。
降り続ける雨と流れ落ちた涙の音。生者と死者の間に漂う霊。天才と呼ばれた少女は道具としか見られておらず、愛されていないことを知り、病院から逃げ出した。その音は拾われた。彼は助けたいと願い、霊体となった少女を追った。
静かな空間にピアノの音は響いていた。それを聞いて幸せだと思っていた。だが人間は姿が見えない故に何度も邪魔をされた。その度に彼女は消えそうになっていた。だから彼は壊した。
『お前も邪魔をするのか』
曲が終わりを告げる前に、最後の音が鳴る前に、やっと掴んだ幸せを破壊する愚か者に制裁する。
▽短編小説201(2021/9/18)/間違いと嘘と終着
遠く離れた命の欠片を探して落とした体(がらくた)は砕け散って閉じた。心にヒビが入って形は最初からなかった、と伝えた。
それを掃除して片付ける人(にんぎょう)は繰り返して何もなかった、と動く口は何度目の話?
壊れた世界は同じ未来を繰り返して、それらはきっと幸せを知らないまま死ぬ。刺されたナイフから溢れた血が流れる場所を失い涙は落とされた。
消えた心はそれさえも認識できずに、伸ばした手は空を掴み、その先は真っ黒な血の海。
生きる理由を
ここにいる意味を
誰も知らないのに
どうして
このまま死を
そうすれば
誰もが幸福に
でもきっと
何も変わらない
そして
何も終わらない
▽短編小説202(2021/9/26)/願いと心とすれ違い
少女は願う。生きる問いを捨てた。誰かの思いのままに動く人形。背後に乗っかる重さに折れた首は元には戻らない。外側の建前は内側の本音さえ貫通した刃物。塞がった傷は新たな傷を生む。
バラバラに砕けた体
意志なき心は機械のように
理由を失って
首吊る肌はあざだらけ
幽霊は願う。死ぬ問いを見つけた。誰かの想いを尊重する人間。気づかない視線に落ちた目は元には戻らない。風の音色は優しさを忘れた冷たい痛み。無意識な心は本当の意味を知らない。
暗闇に浮遊の影
意思なき声は響かずに
理由を失って
導いた手は赤に染まる
▽短編小説203(2021/10/3)/夢見の予知と真実の記録
神社に囚われていた少女は夢の中で願っていた。いつか出逢う少年に手を伸ばして助けを求めた。代々続く巫女の血を濃く受け継いだ少女は舞いを行えば災いを振りまくと言われていた。しかし祭りでは巫女の舞を披露しなければならなかった。
いろんな世界を歩く少年は旅をしていた。立ち寄ったその世界は祭りの準備に追われていた。その祭りは有名らしく他の旅人達もいて会話した。しかし彼は人力車で通り過ぎる巫女の姿を見た。
その夜、部屋で眠りについた少年は夢を見た。あの巫女が神社に囚われて座って口を動かした。
「たすけて』
答える少年の手は虚しく闇に呑まれて目覚めた。
少年の見る予知夢は 一欠片足りずに
巫女の救済を妨げる影は 紙を破いた
本を開いて一枚の紙を破いた彼はそれを手から離した。自らその紙は燃えて消えた。その本は未来を記した記憶、そして消滅した最後の結末。
例え運命を変えようとも、存在しない事柄を変えたところでそれは全て嘘になる。
『最初から記録は終わっているから』
吐き捨てた彼の声は二人に届かないまま消えた。
▽短編小説204(2021/10/9)/奇跡の歌と死の鐘
失われた光を求めて少年は手を引こうとした。けれどその手は既に崩れて砂となり、地へと帰る。
少女の死を受け入れられない彼は片目を抉り、その血は視界を歪ませて未来を見る瞳は奪われた。
奇跡の歌が響いていた世界に不運の死
少女は十字架の願いのままに
少年は何も知らないままに
傷ついた体と心は地へと落ちていく
それは未来の話。不運の死を知らない世界。過去へ引きずり込まれる少年の前に、夢に度々現れる少女の姿があった。少女の先は深い闇の中。
そして繰り返される世界。それが現実か夢か判断できなくなった時、彼は“あの日”をもう一度、願う。手を引いて遠くへ逃げ出すために。
引かれた手は少女の為に
離された手は少年の為に
いつかの夢、いつかの現実に
繰り返す世界は牙を剥く
▽短編小説205(2021/10/16)/暗闇に映った交差の影
冷気を纏った不思議な風、霊の這い寄る氷の砕けた音。首に当たった痛みと流れ落ちる液体。暗闇の中、慣れない目はまだ全てを映しはしない。
ぼやけた光が薄っすらと現れて目を覆った時、蠢(うごめ)く影が見えて消えた。視界から消えたそれの気配はまだあって、けれど何もかも闇に沈んでいた。
眠気のような瞼が落ち
意識は少しずつ遠のく
嫌な匂いが充満しても
体はもう動かない
上から覗いた苦しみの涙、人の這い寄る木の軋(きし)んだ音。不幸に結ばれた手と招く死への結末。暗闇の中、慣れた目は全てを見通し近づいた。
ぼやけた光が薄っすらと瞳に映って反射した時、その影の手は顔に触れていた。瞼は落ちて、霊もまた眠りにつく。そして同じ時を待った。
苦痛に歪んだ顔を
見続けた霊は刃を持ち
安らかな眠りと共に
その血は流れ続けた
▽短編小説206(2021/10/24)/流れ着いた死の後に繰り返す夢
暗い雨の夜、頬に伝う涙の跡。滴る血の香りと動かない人の形。返り血に気づいた彼は叫ぶ声を失って、手から落ちた金属音が響いていた。
巫女の力を抜き取って“人間”として生きてほしいと願い彼は刺した。少女の手にしていた勾玉は光をなくし、かわりに現れた闇は彼を貫いた。
それは不思議な夢。何度も繰り返されて少しずつ鮮明に、そして変わりゆく夢。それは単なる夢。しかし目覚める度に涙を流していた。
知らない男に憑依(ひょうい)した形で目にする夢は、まるで現実のような感触を得て気持ち悪い。整理された記憶とは思えない夢をまた見ていた。
そんな日々に一冊の本。あの方が探す鍵となるもの。錠に守られた本は鍵無くして開いた。それと同時に車椅子の少女が現れて彼を見ていた。
記憶をなくした彼と十字架の少女
修正される前のあの子の代わりとなる勾玉
忘れた外の世界の記憶
血の香りは続き、涙はもう枯れて
あの日愛した過去は戻らない
▽短編小説207(2021/10/30)/複雑な未来は過去へ戻る前に壊れている
誰かの存在を否定して、肯定して、反転し正常に動いた世界で全ては巻き戻り始めていた。終わりに進むはずの未来は始まりの過去へと、時計の針は元の形を忘れて動いていた。
残された記憶から分岐したこの世界は修正されないまま進み、偽物に似た本物の出来事が記されていた。本来存在しない彼らもまた巻き込まれて、暗く深い闇の世界で目を覚ました。
外の世界から流れ着いた者、彼らはそう呼ばれていた。修正される前の世界の過去、現在、未来における“少女”との関わりにより引き寄せられた。
しかし流れ着いた衝撃から記憶を失い、自分が何者なのか分からないが、気がつけば彼らはこの闇の世界の長となっていた。
本軸から切り離された分岐による衝撃と
それを修正しようとした破損と記憶の上書き
かつてあったものは消えて
動き出した魂はたださくらの死を望んでいた
※短編小説206、207は『複雑な生き方をする少女 学園編 分岐A』の闇の世界側の話。
▽短編小説208(2021/11/7)/交わした約束は夢の中で
どこかに消えた水色の空、暗闇に沈む日の光
私は生きていた、記憶がない
あなたは死んでいた、記憶が存在、して
未来を見据えた世界はどこへ
その場を離れた現実は夢に落ちて
笑顔を見せた彼の姿だけが
目の奥の脳に、覚えていた
二人は並んで、少女は、姿を消した
彼は一瞬の時を捉えられずに名前を叫んだ
思い出した幻想に残された彼は
現実の世界を知らないまま、再びの夢を待つ
夜と朝の境目の空、明日に進む眩しい光
私は死んでいた、記憶が
あなたは生きていた、記憶が存在、して
▽短編小説209(2021/11/13)/触れる四つの世界の境界線で
その日は静かな雨が降っていた。消えゆく体を透過することなく、雫は肌を濡らしていた。
もう何も思い出せない。何もわからない。けれど悲しみのその雨は心に染み渡った。
死に近づいたその霊は雨に触れて変わっていた
その日は激しい雷が鳴っていた。音は近く、電磁波は視線を掠めて、山は赤に染まっていた。
もう何も知らない。何もわからない。けれど怒りのその雷は心を侵食した。
無知に近づいたその霊は雷に触れて変わっていた
その日は流れた雲が覆っていた。心地よい風が吹いて、ずっと空を見上げて、音は消えていた。
もう何も見えない。何もわからない。けれど不安のその雲は心を包み込んだ。
闇に近づいたその霊は雲に触れて変わっていた
その日は冷たい雪が積(つも)っていた。ふわりと溶けた指先に残る寒さは少しずつ体を凍らせた。
もう何も聞こえない。何もわからない。けれど孤独のその雪は心に種を植え付けた。
空虚に近づいたその霊は触れて変わっていた
※短編小説209は『二つの世界を行き来する幽霊達』の仮設定。
▽短編小説210(2021/11/20)/届かず落ちていく小さな声
現実に生きる私と夢に生きる少女の姿
誰かが繋いだ儚き感覚の幻想は
その二つの境目を無くして
失った区別は目覚めた視界を混乱させた
黒く影となった蛇のように
白く光となった幽霊のように
赤く鏡となった写身(うつしみ)のように
失われた感情は少しずつ死に向かっていく
本音を語る場所はどこにもなく
闇に沈んだ本当の答えは流した涙の数
現実の体と物語の姿は日をかけて離れていき
いつの間にか、私は私を失い、私は死んでいた
▽短編小説211(2021/11/27)/寒暖の勾玉、生死の記憶
繰り返された夢は鮮明に枯れていた心を呼び戻した。愛した記憶は忘れたまま、人を殺した感覚だけが頭の中を駆け巡り、それは嘘だと思いながらもその夢を信じようと少し傾いていた。
寒くなった暗闇の中、冬の勾玉は光っていた
呪う力は流れ出して、魂は回収された
小さな頃の悲惨な出来事は純粋な心を怒りに染め上げた。復讐の記憶は眠ったまま、師匠の背中を追いながらその力はいつかのために残されて、その矢は今日も標的を貫いた。
暖かくなった陽気の中、春の勾玉は光っていた
遮る力は流れ出して、魂は回収された
桜詩凛の読みは「さくらしりん」で、由来は二つ。一つは元から使っていた桜子凛花が長いと思ったため、短くするために「桜」と「凛」を取り、その間に当時から書いていた「詩」をいれたもの。もう一つは『複雑な生き方をする少女』に登場する「さくら、黒蛇、シラ、理夏(りか)、ラナン」の頭文字を取ったものとなってい…
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