【風来山人】根南志具佐(茸)自序
公開 2025/05/11 21:26
最終更新 2025/05/11 21:33
自序

唐人の陳粉看(ちんぷんかん)、天竺のオンベラボウ、オランダのスッペラポン、朝鮮のムチャリクチャリ、京の男は「あのおしゃんすことわいな」と髭を食いそらし、江戸の女は紅を引いた口で「忌々しい、はっつけ野郎」…などと。言葉は違えど食ってクソして寝て起きて、死んでしまう命とは知りながらやたらと金を欲しがる人情は唐も大和も今も昔も変わることがない。いにしへの聖人も「学問を極めれば、蓄えた教養と知識がやがて禄となるのである。」などと旨く言って食いつかせ、仏は肌を黄金に変えて欲しがらせ、初穂料を納めねば神道加持も力無く。どいつもこいつもカネカネカネ…金のために狂ってしまった世の中である。
ある日、貸本屋の何某という者がやって来て私に「先生、ウチに書いてくださいよ」と言う。詰まるところが、やっぱりこいつも膏肓に入りたる欲張り病の親父であった。この病は、鍼を打っても灸を据えても薬を与えても到底治らぬ。戒めようと孔子の教えを以って諭せば、彼曰く「聖人てなぁ物を食わねぇんですか?」ときた。神道を以ってすればまた曰く、「素直に生きてりゃ神様が助けてくれる?貧しけりゃ心も捻くれさぁ」。仏法を以ってすればまた曰く、「来世よりも今日の食いモンですよ。そんじゃあ先生、まず鉤と縄とをくださいよ。かかあの口をアンコウよろしく天井に吊るしてきますから、それからじっくり教えを受けましょう」だと。さすがに私も返す言葉がなく、こうして筆を執って書き上げた。名付けて根南志具佐という。釈迦のインチキ説法、老子荘子の作り話、紫式部の嘘八百。彼らの口八丁とは比べ物にならないが、ただ人情をのみ論ずるならば彼らの話も私の話もほんの暇つぶしである。

安本元年 嘘月晦日
天竺浪人


* * *

自序と第一巻のとこだけ訳しました。
古典と怪談が好きな茸です。タイッツーに生息。
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