【富家語】御璽の筥
公開 2024/02/01 22:45
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※江談抄 二巻「冷泉天皇、御璽の結緒を解き開かんとし給ふ事」の出来事。
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「故・小野宮右大臣…藤原実資殿がこんな話をされていた。「冷泉院が御在位の時、院の伯父にあたる蔵人頭・藤原兼家殿が突然、内裏へ単騎で馳せ参じたことがあった。参内して早々、女房に院の御在所を尋ねると、女房は『御寝所にいらっしゃいます。今、御璽の筥の結緒を解いて開けようとしておられます。』と言う。驚いて御寝所の扉を開けると、女房の言葉通りちょうど冷泉帝が筥の緒を解こうとしていらっしゃるところであった。すぐにお傍に寄って筥を奪い取り、元の如くに結んだのだ。」と云々、忠実様は仰っていた。
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忠実様が「神璽とは筥の中に納めた印である。その鍵は筥ではなく宝剣の平緒の中に納められているのだ。…件の鍵は関白本門の鍵だろうか。献上したという体なのだろうか。」と仰いますので、私が「その筥を開けることはあるのでしょうか。」とお聞きしますと、
「一切開けることは無い。かつて陽成院が神璽の筥を開けようとしたところ、筥から白雲が湧き出たという。帝はそれに恐れ戦いて筥を打ち捨ててしまったが、紀氏の内侍をお召になってもう一度緒を結び直させたとか。…紀氏の内侍は神璽の筥の緒を結ぶ役の者なのだ。近年ではそのようなことはないがな。また陽成帝が宝剣を抜こうとした時には、宝剣はまるで帝の手を操るように御寝所の中、ヒラヒラ閃かせ振るわせたのだという。帝が驚いてバッと宝剣を打ち捨てると、 宝剣はかたりと鳴ってひとりでに鞘に納まったのだとか。それより以降は聞いたことがない。」と忠実様は仰いました。
またその後の保管については「それこそ戒厳令でも敷かれたような有様だ。」とも。
※神璽と宝剣は帝の御寝所に安置されていた。
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「故・小野宮右大臣…藤原実資殿がこんな話をされていた。「冷泉院が御在位の時、院の伯父にあたる蔵人頭・藤原兼家殿が突然、内裏へ単騎で馳せ参じたことがあった。参内して早々、女房に院の御在所を尋ねると、女房は『御寝所にいらっしゃいます。今、御璽の筥の結緒を解いて開けようとしておられます。』と言う。驚いて御寝所の扉を開けると、女房の言葉通りちょうど冷泉帝が筥の緒を解こうとしていらっしゃるところであった。すぐにお傍に寄って筥を奪い取り、元の如くに結んだのだ。」と云々、忠実様は仰っていた。
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忠実様が「神璽とは筥の中に納めた印である。その鍵は筥ではなく宝剣の平緒の中に納められているのだ。…件の鍵は関白本門の鍵だろうか。献上したという体なのだろうか。」と仰いますので、私が「その筥を開けることはあるのでしょうか。」とお聞きしますと、
「一切開けることは無い。かつて陽成院が神璽の筥を開けようとしたところ、筥から白雲が湧き出たという。帝はそれに恐れ戦いて筥を打ち捨ててしまったが、紀氏の内侍をお召になってもう一度緒を結び直させたとか。…紀氏の内侍は神璽の筥の緒を結ぶ役の者なのだ。近年ではそのようなことはないがな。また陽成帝が宝剣を抜こうとした時には、宝剣はまるで帝の手を操るように御寝所の中、ヒラヒラ閃かせ振るわせたのだという。帝が驚いてバッと宝剣を打ち捨てると、 宝剣はかたりと鳴ってひとりでに鞘に納まったのだとか。それより以降は聞いたことがない。」と忠実様は仰いました。
またその後の保管については「それこそ戒厳令でも敷かれたような有様だ。」とも。
※神璽と宝剣は帝の御寝所に安置されていた。
