【宇治拾遺】業遠朝臣、蘇生の事。
公開 2024/01/01 12:12
最終更新
2024/01/29 17:39
むかしむかしのことである。重用していた家司の業遠殿が亡くなった折のこと。主人である御堂入道…藤原道長様が、
「あれも何か言い残すことがあっただろうに…可哀想なことだ。」
と仰せになり、解脱寺の観修僧正をお召になって加持をさせた。横たえられた業遠殿の亡骸に向かい僧正が加持を始めると、血の気が失せた瞼が震えてゆっくりと開いた。はっと息を飲んだ家族を、何か探すように見回していた目が捉える。続けて強ばった口元がモゴモゴと動き出し、微かな呻き声はやがて言葉になり名を呼んだ。
「……、……。」
「…はい、はい。……分かりました。」
僧正の加持に掻き消されそうなほどの声であったが、家族の者は口元に耳を近づけ何度も頷いた。そうしてあれこれ伝えると最後に「たのむ」と言い、業遠朝臣は目を閉じたのだという。
「あれも何か言い残すことがあっただろうに…可哀想なことだ。」
と仰せになり、解脱寺の観修僧正をお召になって加持をさせた。横たえられた業遠殿の亡骸に向かい僧正が加持を始めると、血の気が失せた瞼が震えてゆっくりと開いた。はっと息を飲んだ家族を、何か探すように見回していた目が捉える。続けて強ばった口元がモゴモゴと動き出し、微かな呻き声はやがて言葉になり名を呼んだ。
「……、……。」
「…はい、はい。……分かりました。」
僧正の加持に掻き消されそうなほどの声であったが、家族の者は口元に耳を近づけ何度も頷いた。そうしてあれこれ伝えると最後に「たのむ」と言い、業遠朝臣は目を閉じたのだという。
