【古今著聞集】ある男、朱雀大路にて女狐の化かしたる美女に遭ひて契る事。
公開 2023/11/26 21:10
最終更新 2024/05/24 17:44
※まいたけがいい加減に訳して脳内補完をいれたものです。
***

ある男が日が暮れた頃に朱雀大路を歩いていると、えも言われぬ美しい女に出会った。そそくさ声をかけてみると、女は距離を取ろうとする素振りもなく愛想良く返事を返してくる。
(このまま別れては勿体ない、イケるぞ…!)
男はぐっと距離を詰め、どうにか同衾に持ち込もうとあれこれ語りかけ口説いた。しかし女は困ったように笑って、
「そんなに言うならお応えするのも吝かではありませんけれど…私と寝たらアナタ、死にますよ。」
と言ってきかないのである。しかし一度火のついた若い男というのは、ダメと言われても止まれないもの。なおも女に情けを強請ると、女もこれ以上言っても無駄とわかったのか、
「そんなに熱心に強請られたら、お断りもできません。えぇ、この身はアナタにお任せしますわ。……私が身代わりになりますから。私の決意を哀れと思ってくださるなら、私のために『法華経』を書いて供養して、後生を弔ってくださいな。」
そう言って男の胸に身を寄せた。死ぬのなんのと言っていたが、あっさりと帯を解くのだから「なんだ…単に勿体ぶっていただけか」と思ったのだろう。男は女を抱き寄せ、本意を遂げたのだった。
夜もすがら身を寄せあい、睦み合うほどに愛おしさは募り…そろそろ夜明けという頃。起き出して帰り支度を始めた女は、男に「扇を一本くださいな。」と乞うた。それは構わないが…と男が持ち物から扇を手渡すと、「…言ったでしょう。」と女は悲しげに笑った。
「私が言ったこと、嘘ではないのよ。アナタの身代わりになるって…確かめたかったら武徳殿の辺りを見にいらっしゃい。」
女はそう言って帰って行った。夜が明けて、女の言っていた武徳殿のあたりに行ってみると、
「…あれは、私がやった扇…!」
一匹の狐が例の扇で顔を覆って死んでいた。(お前は狐だったのか…あぁ、本当に私の身代わりになって…!)
自分の為に命を捧げた女…いや狐が堪らなく憐れで愛おしくて。男は七日ごとに「法華経」を書き足し、供養して狐の菩提を弔った。そうして「法華経」を一部書き終えた四十九日にあたる夜。男は夢を見た。あの女が天女に囲まれて現れ、
「私、アナタの書いた法華経の力で、今は須弥山の山頂に住んでいるのよ。」
ありがとう…そう言って女は去っていったという。この物語は「法華験記」にも記されている。
古典と怪談が好きな茸です。タイッツーに生息。
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