【古今著聞集】仁和三年八月、武徳殿の東の松原に変化の者出る事。
公開 2023/11/21 13:24
最終更新 2024/05/24 17:55
※まいたけがいい加減に訳して脳内補完をいれたものです。
***

仁和三年八月十七日、夜も更けた亥の刻ごろ。青い顔の男が慌てた様子で、道行く人を掴まえて何やら言い募っていた。
武徳殿の東…宴の松原と呼ばれる松林の西のあたりを、見目のいい女房が三人、東へ向かって歩いてたという。何気なく眺めていると、松の下に何とも美しい色男が現れた。色男は例の三人のうち一人の女の手を取って話しながら松の林へ入っていく…なんだかいい雰囲気である。
「いえ、聞き耳立ててたわけじゃないんですが…」
男は少し目を泳がせたが、直ぐに誤魔化すように「そんなことよりもその女が…!」と続きを語り始めた。
おや、と男は首を傾げたという。ふと気付くと、何事か話していた声がぴたりと止んでいるのである。妙だと思って彼らが入っていったあたりに行ってみると、なんと手足がおかしな方向に折れ曲がった女が土の上に転がってたのだという。
「それも…な、無かったんです…首が…!周りを見回したけど、どこにもないんです!」
そうしてここまで慌てて駆けて来たのだという。右兵衛府の右衛門の陣に宿直していた男がこれを聞きつけ、遺体が転がっているという辺りに行ってみたものの……首どころか、女の屍そのものが見当たらなかったという。このようなことは鬼の仕業に違いなかろう。

次の日、諸寺の僧侶を呼び集めて読経を上げる法要が行われた。法要に参加する僧たちは朝堂院の東西の廊に泊まったのだが、月も真上に登る頃、外からワーワーガヤガヤと大勢が騒ぐ声が聞こえてきた。こんな時間に小競り合いでもしているのか、いったい何の騒ぎだと僧達が坊の外へ出ると…しん…と。まるで何事もなかったように静まり返り、辺りには誰の影もなかったという。
「…これはいったいどういう訳だ?さっきの騒ぎの元は何だったんだ?」
僧達は互いに顔を見合せたが、誰もその出来事を説明出来る者はいなかった。物の怪の類いに幻を見せられたに違いない。この月に宮中、京中でこのような不可思議な出来事が数多く聞かれたという。
古典と怪談が好きな茸です。タイッツーに生息。
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