よりぬき*宗安小歌集(12歌)
公開 2023/09/04 18:56
最終更新 2023/09/05 21:22
梅と寝うとて鶯が鳴く
北野の神に叱られうとて

「斎垣の梅へ『どうか一夜の情けを』としきりに鶯が鳴いている。北野の天神様に叱られようとも」

***

そと締めて給ふれなう
手跡の終に顕るる

「あんまり強く抱き締めないで…着物に痕がついたらバレちゃうから。」

***

夢よ夢よ、逢ふとな見せそ
夢は覚むるに

「夢よ、夢…あの人と逢う夢なんて見せないで。覚めてひまう夢なんて」

***

合わせけん人こそ憂けれ薫物の
独り伏籠に燻ゆる思ひを

「待てども来ない人を想って、香を焚きしめるほど虚しいことはないわ…伏籠の中にゆらゆらと立つ煙は、独り泣き伏す私の胸に悶々と燻る恨みそのもの。」

***

人は兎も言へ角も言へ
立ちしその名が帰らばや

「世間様は言いたい放題言ったらいいわ…ウワサのその人がお帰りになったらね」

***

月を踏んでは世の常候よ
風雨の来にこそ尽期よの

「明るい月夜に来るのは当たり前。風に吹き上げられて、雨に打たれても来る人こそホンモノよ」

***

雲の果てまで波の底まで
ともに立つ名に

「どこまでも、どこに行っても、あなたの傍にいる私でありたい。」

***

いとど名の立つ折節に
何ぞそなたのお目もとは

「どうして誰かとウワサになるたびに、やたらこちらをチラチラ伺うのでしょう。……知ったことじゃないわ勝手にしたら。」

─────
嫉妬して欲しい馬鹿みたいな男心…?

***

切りたけれども、いや、切られぬは
月隠す花の枝、恋の道

「手折ってあの人に贈りたいけれど…いや、ダメだ。あの枝がなけりゃ、月明かりに恋の通い路が丸見えだ。もどかしいなぁ…。」

***

目もとに迷ふに、弓矢八幡
ずんど勝れた、ほろり迷うた

「誘うような眦に、あっ…しまった!思う間もなく、すとんっ…と心を射止められてしまった。恋をするつもりなどなかったのに…あぁ、矢を番える手も覚束無い。」

────
※弓矢八幡…弓矢の神・八幡菩薩に武士などが誓いを立てる時に使う言葉。神に誓って〇〇致します。または、失敗や驚いた時に使う言葉。ここでは「じーざすくらいすと!」的な意味かと思われます。

***

衣の移り香、ただ添ふ心

「ふとしたときに香る、あの人の移り香。あの人の想いが寄り添うように…」

***

笑うたもよいが
くすんだもよいよ
どう取り廻せども、憎いとは思はぬ

「笑った顔も可愛いけど、真面目くさった顔もいいね。どうしたって、アンタのことを憎らしいとは思えないんだ。」
古典と怪談が好きな茸です。タイッツーに生息。
最近の記事
【風来山人】根南志具佐 二之巻(茸)後
さてそんな有象無象が入り混じるドブの中にも、蓮葉(はちすば)の濁りに染まぬ玉の姿…瀬川菊之丞と呼ばれる若女形がいた。この…
2026/02/03 00:06
【風来山人】根南志具佐 二之巻(茸)中
さてまた同じく神代には山幸彦こと彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)が興行主となり、兄の海幸彦こと火酢芹命(ほのすそり…
2026/02/03 00:04
【風来山人】根南志具佐 二之巻(茸)前
そもそも芝居のはじまりを紐解いてみれば、地神五代の始めまで遡る。そのころ日の本は高天原から天下りたもうた天照大御神が治…
2026/02/03 00:01
徒然草(茸) 序〜10
序段 退屈で物寂しい日々の手慰みに、硯に向かい、心に浮かんでは消えるあれこれをつらつら書きつけていると、自分でも驚くほ…
2025/09/11 00:37
【風来山人】根南志具佐(茸)後
聞きしに勝る路考の姿、昔も今もこれほど美しい人は見たことがない…と十王をはじめとして、閻魔王の傍らに侍る人頭幢の見目とい…
2025/05/11 21:38
【風来山人】根南志具佐(茸)中
亡者を裁く本業に加え、様々な申請や事業計画を捌く閻魔大王には少しの暇もない。そんな折節、獄卒どもが地獄の地の字をつけた…
2025/05/11 21:35
【風来山人】根南志具佐(茸)前
根南志具佐一之巻 「公河を渡ることなかれ、公ついに河を渡る。河に堕ちて死す、まさに公をいかんすべき」と詩に詠まれたの…
2025/05/11 21:33
【風来山人】根南志具佐(茸)自序
自序 唐人の陳粉看(ちんぷんかん)、天竺のオンベラボウ、オランダのスッペラポン、朝鮮のムチャリクチャリ、京の男は「あ…
2025/05/11 21:26
おしながき(古典文学)
現在、公開している現代語訳の一覧です。 ※現代語訳して小説化しているものです。かなり私の主観が強い解釈ですので、ご了承く…
2025/04/06 12:02
おしながき(文語体)
文語体を口語訳したもの *** ●妖怪報告…井上円了の「妖怪報告」よりアヤシイ話を抜粋。 【妖怪報告】霊魂は幽明の間…
2025/04/06 12:02
【撰集抄】西行於高野奥造人事
これは同じ頃、高野山の奥に住んでいた西行法師の話である。 西行には懇意にしている友がいた。月が美しい夜には橋の上で落ち…
2025/04/06 00:53
椒圖志異/魔魅及天狗 編②
22. 桜町天皇が元文五年に比叡山の西塔釈迦堂の御修理をなされたが、修理の指揮を取る奉行は江川信楽の代官・多羅尾四郎左衛…
2025/01/19 20:24
椒圖志異/魔魅及天狗 編①
魔魅及天狗 1.異形の顔 堀田何某公の家中に何とかの久兵衛という者がいた。久兵衛は役所へ出仕して政務を行っていたが、一…
2025/01/19 20:18
【平家公達草紙】かたのまもり
高倉院の御代では、中宮様に仕える女房たちは折々風流を凝らしたかたのまもりを競って仕立て、身に付けていました。近習の女房…
2025/01/01 13:37
【雑談】崇徳院の御遺詠
讃岐で崩御された後、藤原俊成へ届けられた崇徳院の御宸筆。雨月物語「白峯」を読むにあたり、この長歌がベースにあると思い解…
2024/12/31 16:47
【平家公達草紙】内裏近き火
安元の御賀の華やかさは、今さら言うまでもありませんね。またあのころ内裏で開かれた宴の数々、些細な出来事につけても、心惹…
2024/12/31 16:46
【平家公達草紙】花影の鞠
治承二年の三月ごろだったでしょうか。少将であった私…隆房は内裏を辞した夕方、内大臣の小松殿…重盛殿の御屋敷へ伺いました。 …
2024/11/27 21:39
【平家公達草紙】青海波
安元二年、法住寺殿で行われた安元の御賀でのことでした。三日に渡って行われた祝賀の後宴にて、当時、右大将であられた重盛殿…
2024/11/24 12:55
椒圖志異/怪例及妖異 編
芥川龍之介の怪談集「椒圖志異」を口語訳したものです。まだ続きます。 *** 1.上杉家の怪例 桜田屋敷と呼ばれた上杉…
2024/10/18 17:26
【妖怪報告】霊魂は幽明の間に通ずるものか【井上円了】
※井上円了「妖怪報告」https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49274.html より、奇妙な夢の話を抜粋し、まいたけがいい加…
2024/10/08 22:47
もっと見る
タグ
伊勢物語(茸)(125)
古今著聞集(茸)(35)
宇治拾遺物語(茸)(15)
閑吟集(茸)(8)
ごぉるでんでぇもん(7)
今昔物語集(茸)(7)
北越雪譜(茸)(7)
平家公達草紙(茸)(7)
江談抄(茸)(5)
堤中納言物語(茸)(4)
根南志具佐(茸)(4)
宗安小歌集(茸)(3)
根南志具佐(3)
椒圖志異(茸)(3)
風来山人(3)
中外抄(茸)(2)
徒然草(茸)(2)
篁物語(茸)(2)
雑談(2)
オカルト(1)
おしながき(1)
メモ(1)
富家語(茸)(1)
崇徳院御遺詠(1)
撰集抄(茸)(1)
紫式部集(茸)(1)
雨月物語(茸)(1)
もっと見る