恋・人間模様の歌(23歌)
公開 2023/09/04 00:30
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それを誰が問へばなう
よしなの問はず語りや
「誰かに尋ねられたわけでもないのに、ついついつまらない問わず語りをしてしまうのさ」
***
お茶の水が遅くなり候
まず放さいなう
また来うかと問われたよなう
なんぼこじれたい新発意心ぢや
「お茶の水をお持ちするのが遅くなってしまいますわ…ダメよ、もうお放しになってったら。『また来てくれるか』ですって?…あらあら…なんてじれったいお坊様かしら。『また来い』と仰ってよ」
***
扇の影で、目を蕩めかす
主ある俺を、何とかせうか
せうかせうか、せう
「扇で隠して、うっとり笑うの。あんなに熱の籠った目で私を見つめて…あの人、ダンナ様のいる私をどうしようというのかしら。どうする?ねぇ…ねぇ、どうしたい?」
***
誰そよお軽忽
主ある我を
締むるは
喰ひつくは
よしや戯るるとも
十七八の習ひよ、ゝ
そと喰ひついて給ふれなう
歯形のあれば顕はるる
「あらあら、だぁれ、粗忽な人ね。ダンナ様にのある私に抱きついて、そんなところに食いついてきて…まぁ、いいわ、許してあげる。ふふふ…十七、八の男の子ってみんなそんなものだからね。……でも痕は付けたらダメよ、ダンナ様にバレちゃうから」
─────
※ お軽忽(おきやうこつ)…軽忽は軽々しい、そそっかしいという意味らしいので、ウッカリさんみたいな意味でしょうか。
***
待つ宵は、更け行く鐘を悲しび
逢ふ夜は、別れの鳥を恨む
恋ほどの重荷あらじ
あら苦しや
「あの方の訪いを待つ宵は、鐘の音を聞くほどに無為に更けゆく夜を悲しみ。あの方と褥を共にした夜は、夜明けを告げる鶏の声を恨み。恋ほど私の心を苛む重荷はないわ。あぁ、苦しいったら…」
***
恋は、重し軽しとなる身かな、重し軽しとなる身かな
涙の淵に浮きぬ沈みぬ
「あの人のつれなさに沈み、真心に浮かれ…恋に溺れて、涙の淵に浮かびつ沈みつしているのさ」
***
恋風が
来ては袂に掻い縺れてなう
袖の重さよ
恋風は重いものかな
「思いがけず袂に飛び込んできた恋は、この胸をぐちゃぐちゃに掻き乱してさぁ…叶わぬ想いに涙して、ぐっしょり袖を重くするんだ。突然やって来る恋はなんてしんどいものだろう…」
***
思ひの種かや、人の情け
「優しくされたら、好きになってしまう…そして優しくされるたびに、焦がれて悩んで物思いの種になるんだ」
***
和御料思へば
安濃津より来たものを
俺振りごとはこりや何ごと
「アンタを想えばこそ、安濃津からこんなとこまで追いかけてきたのに…俺を振るたぁどういう了見だ!?」
※和御料…親しい男性または女性を呼ぶような二人称とのこと。
***
何を仰やるぞ、せはせはと
上の空とよなう
こなたも覚悟申した
「何を仰るかと思えば、いけしゃあしゃあと…あの女にぽーっと逆上せあがってたのはどなたでしたっけね?こっちはもう腹括ったんだ、さっさとあの女のところへ帰んな!」
※「〇年目の浮気」みたいなやり取りで面白いので、繋げてお読みください( *´艸`)
***
思へかし
いかに思はれん
思はぬをだにも思ふ世に
「あの人のことを想い続けるのよ。どんなにつれなくされたって、想い続ければきっと…きっといつか、つれないあの人とも想い合う仲になれるんだから…」
***
思ひやる心は君に添いながら
何の残りて恋しかるらん
「心は主君に寄り添いながら、何の心残りがあって貴方を恋しく思うのだろう…」
──────
時代が時代なので…主君と関係を持ちながらも、心のどこかに忘れられない人が…みたいなシチュエーションなのかと。
***
思ひ出すとは忘るるか
思ひ出さずや忘れねば
「思い出したってのは忘れてたってことさ。忘れていなけりゃ、思い出すなんてこともないはずだ…そうだろ、なぁ。」
***
思ひ出さぬ間なし
忘れてまどろむ夜もなし
「思い出さない時なんかなかったさ。アンタを忘れてまどろむ夜もなかったよ。」
***
何と鳴海の果てやらん
潮に寄り候、片し貝
「いったい俺はどうなってしまうのだろう…手が届くはずもない人に惹かれて、叶わぬ片想いをなぞしちまって」
─────
※何と鳴海の果て→何となる身の果て+鳴海の果て→遠い海→手の届かない人
潮に寄る=(前の文を踏まえて)遠い海の潮に惹かれる
片し貝=難し甲斐→思う甲斐が無い→叶う甲斐がない恋…て意味なのかと。
***
見ずは、ただ、よからう
見たりやこそ、物を思へ、ただ
「あの方と会わないのが一番だよ、うん。会っちゃったから、こんなに苦しいんだ…はぁ…。」
***
な見さいそ、な見さいそ
人の推ふる、な見さいそ
「あんまりこっちを見ないでよ、見ないでったら。怪しまれるわ、見ちゃダメだったら…もう」
***
思ふ方へこそ
目も行き、顔も振られる
「君を想っているからこそ、惹かれるし、目で追ってしまうんだよ…仕方ないじゃないか。」
***
身は近江舟かや
志那で漕がるる
「私は近江舟みたいなもの。…あの人に会いたくて死ぬほど焦がれているの」
─────
近江(あふみ)→会う身
志那で漕がるる→死なで、焦がるる
※身は舟、死なで、漕がるる(棹を指す)…だと死ぬほど愛してほしいて意味もあるのかも?
***
身は鳴門舟かや
阿波で漕がるる
「私は鳴門舟みたいなもの。戸の鳴る音を待ちわびて、来ないあの人を待ち焦がれているの」
─────
鳴門→鳴る戸
阿波で→会はで→来ない、接触がない
漕がるる→待ち焦がれる
***
あまりの見たさに
そと隠れて走て来た
まづ放さいなう
放して物を言はさいなう
そぞろいとほしうて、何とせうぞなう
「どうしても会いたくて、こっそり隠れて走ってきたの。…っ…あらあら。まず放してちょうだいよ。そんなにギューギューされたんじゃ、話しもできないわ。もう…愛おしくて愛おしくて、どうしたらいいのかしらね」
***
めぐる外山に鳴く鹿は
逢うた別れか
逢はぬ恨みか
「ぐるりと巡る里山に、切なげな鹿の鳴く声がこだましている。あれは後朝の嘆きか、それともつれない番への恨み言か」
***
赤きは酒の咎ぞ
鬼とな思しそよ
恐れ給はで、我に相馴れ給はば
興がる友と思すべし
我もそなたの御姿
うち見には、うち見には
恐ろしげなれど
馴れてつぼいは山伏
「肌が赤いのは酒のせいさ、鬼だからなんて思ってくれるなよ。怖がらないでおくれ仲良くしてみりゃ、きっと『おもしれー奴』だとわかるだろ。アンタだって、チラチラッと見ただけじゃあ、おっかなく見えるけどさ…仲良くなってみりゃ可愛いって言うじゃねぇか、山伏は」
─────
鬼が山伏に、おう!仲良くしようぜー!て言ってるみたいで可愛いなーと思いました。
※つぼい=可愛い
よしなの問はず語りや
「誰かに尋ねられたわけでもないのに、ついついつまらない問わず語りをしてしまうのさ」
***
お茶の水が遅くなり候
まず放さいなう
また来うかと問われたよなう
なんぼこじれたい新発意心ぢや
「お茶の水をお持ちするのが遅くなってしまいますわ…ダメよ、もうお放しになってったら。『また来てくれるか』ですって?…あらあら…なんてじれったいお坊様かしら。『また来い』と仰ってよ」
***
扇の影で、目を蕩めかす
主ある俺を、何とかせうか
せうかせうか、せう
「扇で隠して、うっとり笑うの。あんなに熱の籠った目で私を見つめて…あの人、ダンナ様のいる私をどうしようというのかしら。どうする?ねぇ…ねぇ、どうしたい?」
***
誰そよお軽忽
主ある我を
締むるは
喰ひつくは
よしや戯るるとも
十七八の習ひよ、ゝ
そと喰ひついて給ふれなう
歯形のあれば顕はるる
「あらあら、だぁれ、粗忽な人ね。ダンナ様にのある私に抱きついて、そんなところに食いついてきて…まぁ、いいわ、許してあげる。ふふふ…十七、八の男の子ってみんなそんなものだからね。……でも痕は付けたらダメよ、ダンナ様にバレちゃうから」
─────
※ お軽忽(おきやうこつ)…軽忽は軽々しい、そそっかしいという意味らしいので、ウッカリさんみたいな意味でしょうか。
***
待つ宵は、更け行く鐘を悲しび
逢ふ夜は、別れの鳥を恨む
恋ほどの重荷あらじ
あら苦しや
「あの方の訪いを待つ宵は、鐘の音を聞くほどに無為に更けゆく夜を悲しみ。あの方と褥を共にした夜は、夜明けを告げる鶏の声を恨み。恋ほど私の心を苛む重荷はないわ。あぁ、苦しいったら…」
***
恋は、重し軽しとなる身かな、重し軽しとなる身かな
涙の淵に浮きぬ沈みぬ
「あの人のつれなさに沈み、真心に浮かれ…恋に溺れて、涙の淵に浮かびつ沈みつしているのさ」
***
恋風が
来ては袂に掻い縺れてなう
袖の重さよ
恋風は重いものかな
「思いがけず袂に飛び込んできた恋は、この胸をぐちゃぐちゃに掻き乱してさぁ…叶わぬ想いに涙して、ぐっしょり袖を重くするんだ。突然やって来る恋はなんてしんどいものだろう…」
***
思ひの種かや、人の情け
「優しくされたら、好きになってしまう…そして優しくされるたびに、焦がれて悩んで物思いの種になるんだ」
***
和御料思へば
安濃津より来たものを
俺振りごとはこりや何ごと
「アンタを想えばこそ、安濃津からこんなとこまで追いかけてきたのに…俺を振るたぁどういう了見だ!?」
※和御料…親しい男性または女性を呼ぶような二人称とのこと。
***
何を仰やるぞ、せはせはと
上の空とよなう
こなたも覚悟申した
「何を仰るかと思えば、いけしゃあしゃあと…あの女にぽーっと逆上せあがってたのはどなたでしたっけね?こっちはもう腹括ったんだ、さっさとあの女のところへ帰んな!」
※「〇年目の浮気」みたいなやり取りで面白いので、繋げてお読みください( *´艸`)
***
思へかし
いかに思はれん
思はぬをだにも思ふ世に
「あの人のことを想い続けるのよ。どんなにつれなくされたって、想い続ければきっと…きっといつか、つれないあの人とも想い合う仲になれるんだから…」
***
思ひやる心は君に添いながら
何の残りて恋しかるらん
「心は主君に寄り添いながら、何の心残りがあって貴方を恋しく思うのだろう…」
──────
時代が時代なので…主君と関係を持ちながらも、心のどこかに忘れられない人が…みたいなシチュエーションなのかと。
***
思ひ出すとは忘るるか
思ひ出さずや忘れねば
「思い出したってのは忘れてたってことさ。忘れていなけりゃ、思い出すなんてこともないはずだ…そうだろ、なぁ。」
***
思ひ出さぬ間なし
忘れてまどろむ夜もなし
「思い出さない時なんかなかったさ。アンタを忘れてまどろむ夜もなかったよ。」
***
何と鳴海の果てやらん
潮に寄り候、片し貝
「いったい俺はどうなってしまうのだろう…手が届くはずもない人に惹かれて、叶わぬ片想いをなぞしちまって」
─────
※何と鳴海の果て→何となる身の果て+鳴海の果て→遠い海→手の届かない人
潮に寄る=(前の文を踏まえて)遠い海の潮に惹かれる
片し貝=難し甲斐→思う甲斐が無い→叶う甲斐がない恋…て意味なのかと。
***
見ずは、ただ、よからう
見たりやこそ、物を思へ、ただ
「あの方と会わないのが一番だよ、うん。会っちゃったから、こんなに苦しいんだ…はぁ…。」
***
な見さいそ、な見さいそ
人の推ふる、な見さいそ
「あんまりこっちを見ないでよ、見ないでったら。怪しまれるわ、見ちゃダメだったら…もう」
***
思ふ方へこそ
目も行き、顔も振られる
「君を想っているからこそ、惹かれるし、目で追ってしまうんだよ…仕方ないじゃないか。」
***
身は近江舟かや
志那で漕がるる
「私は近江舟みたいなもの。…あの人に会いたくて死ぬほど焦がれているの」
─────
近江(あふみ)→会う身
志那で漕がるる→死なで、焦がるる
※身は舟、死なで、漕がるる(棹を指す)…だと死ぬほど愛してほしいて意味もあるのかも?
***
身は鳴門舟かや
阿波で漕がるる
「私は鳴門舟みたいなもの。戸の鳴る音を待ちわびて、来ないあの人を待ち焦がれているの」
─────
鳴門→鳴る戸
阿波で→会はで→来ない、接触がない
漕がるる→待ち焦がれる
***
あまりの見たさに
そと隠れて走て来た
まづ放さいなう
放して物を言はさいなう
そぞろいとほしうて、何とせうぞなう
「どうしても会いたくて、こっそり隠れて走ってきたの。…っ…あらあら。まず放してちょうだいよ。そんなにギューギューされたんじゃ、話しもできないわ。もう…愛おしくて愛おしくて、どうしたらいいのかしらね」
***
めぐる外山に鳴く鹿は
逢うた別れか
逢はぬ恨みか
「ぐるりと巡る里山に、切なげな鹿の鳴く声がこだましている。あれは後朝の嘆きか、それともつれない番への恨み言か」
***
赤きは酒の咎ぞ
鬼とな思しそよ
恐れ給はで、我に相馴れ給はば
興がる友と思すべし
我もそなたの御姿
うち見には、うち見には
恐ろしげなれど
馴れてつぼいは山伏
「肌が赤いのは酒のせいさ、鬼だからなんて思ってくれるなよ。怖がらないでおくれ仲良くしてみりゃ、きっと『おもしれー奴』だとわかるだろ。アンタだって、チラチラッと見ただけじゃあ、おっかなく見えるけどさ…仲良くなってみりゃ可愛いって言うじゃねぇか、山伏は」
─────
鬼が山伏に、おう!仲良くしようぜー!て言ってるみたいで可愛いなーと思いました。
※つぼい=可愛い
