深草の女
公開 2023/08/28 22:08
最終更新
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深草の女
むかしむかし、あるところに古女房に飽きてきた男がいたそうな。
伏見の深草というあたりに住む女と暮らしていたが、どうもそろそろ田舎暮らしにも女にも飽きてきた。しかし黙って出ていくのは、情もあるから気が引ける。とはいえ、どうせこの女も自分が去ったら早々に他の男と…と思うとそれも面白くない。そこで男は嫌味半分、試し半分に、
「長年ここに暮らしてきましたが…私がここを出ていったら、ここはいよいよ草深い荒れ野になってしまうのでしようね。」
もしも私が出ていったらあなたは他に通う男もなく、独りぼっちになってしまうのでしょうね?と詠むと、女は男の心が離れつつあるのを察した様子で
「もしもここが荒れ野になってしまったら…そうですね。きっとこの身を鶉に変えて鳴きながら待っていますわ。せめて狩りにでも、あなたがここにお見えにならないかと…」
きっと僅かな期待に縋って、泣き暮らしながらあなたを待ち続けますわ…。と悲しげに歌を返した。その健気な一途さに打たれた男は、出ていこうという気持ちもなくなったのだそうな。
むかしむかし、あるところに古女房に飽きてきた男がいたそうな。
伏見の深草というあたりに住む女と暮らしていたが、どうもそろそろ田舎暮らしにも女にも飽きてきた。しかし黙って出ていくのは、情もあるから気が引ける。とはいえ、どうせこの女も自分が去ったら早々に他の男と…と思うとそれも面白くない。そこで男は嫌味半分、試し半分に、
「長年ここに暮らしてきましたが…私がここを出ていったら、ここはいよいよ草深い荒れ野になってしまうのでしようね。」
もしも私が出ていったらあなたは他に通う男もなく、独りぼっちになってしまうのでしょうね?と詠むと、女は男の心が離れつつあるのを察した様子で
「もしもここが荒れ野になってしまったら…そうですね。きっとこの身を鶉に変えて鳴きながら待っていますわ。せめて狩りにでも、あなたがここにお見えにならないかと…」
きっと僅かな期待に縋って、泣き暮らしながらあなたを待ち続けますわ…。と悲しげに歌を返した。その健気な一途さに打たれた男は、出ていこうという気持ちもなくなったのだそうな。
