秋の夜は
公開 2023/08/28 21:01
最終更新
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秋の夜は
むかしむかし、あるところに元妻へ手紙を送る男がいたそうな。
元妻の家にはどういう訳か一緒に住んだことがなかったそうで、女は後に別の男と家庭を持ったのだうな。とはいえ女との間には子どもがあったので、心細やかにとはいかずとも折々手紙のやり取りはあったようである。
ある秋のこと。元妻は絵の心得がある人だったので、彼女の家へ「絵を描いて欲しい」と家人に持って行かせたが、「夫が来ているから終わったらね」とのことで絵が届いたのは一日二日経ってのことだった。
(………。私が頼んだ絵は後回し?そりゃ今の夫を優先するのは道理かもしれないけど…雑に扱われたみたいで感じ悪…。)
男も少しムッとしたらしい。
「秋の夜は春の陽射しなんて忘れてしまうものなのでしょうね。秋の霧なぞ、春の霞よりずっとずっとずーっと趣き深いものですからね。」
と秋を今の夫に、春を自分になぞらえて皮肉った歌を書き送った。すると女から、
「今の夫はアナタほど素敵な方ではないけれど…紅葉も桜もずっとずっとずーっと散り留まることなどあるとお思いなのかしら。」
今の夫も、どうせアナタみたいに心変わりするでしょう。どっちもアテになどしてません。と返ってきた。女の呆れ顔が浮かぶようで、男は居心地の悪い思いがしたことだろう。
むかしむかし、あるところに元妻へ手紙を送る男がいたそうな。
元妻の家にはどういう訳か一緒に住んだことがなかったそうで、女は後に別の男と家庭を持ったのだうな。とはいえ女との間には子どもがあったので、心細やかにとはいかずとも折々手紙のやり取りはあったようである。
ある秋のこと。元妻は絵の心得がある人だったので、彼女の家へ「絵を描いて欲しい」と家人に持って行かせたが、「夫が来ているから終わったらね」とのことで絵が届いたのは一日二日経ってのことだった。
(………。私が頼んだ絵は後回し?そりゃ今の夫を優先するのは道理かもしれないけど…雑に扱われたみたいで感じ悪…。)
男も少しムッとしたらしい。
「秋の夜は春の陽射しなんて忘れてしまうものなのでしょうね。秋の霧なぞ、春の霞よりずっとずっとずーっと趣き深いものですからね。」
と秋を今の夫に、春を自分になぞらえて皮肉った歌を書き送った。すると女から、
「今の夫はアナタほど素敵な方ではないけれど…紅葉も桜もずっとずっとずーっと散り留まることなどあるとお思いなのかしら。」
今の夫も、どうせアナタみたいに心変わりするでしょう。どっちもアテになどしてません。と返ってきた。女の呆れ顔が浮かぶようで、男は居心地の悪い思いがしたことだろう。
