千夜を一夜に
公開 2023/08/28 21:02
最終更新
2023/08/31 21:27
千夜を一夜に
むかしむかし、あるところに、復縁を望む女と男がいたそうな。
たわいもないことで別れてしまったが、別れてもなお忘れられなかったのだろう。
「何を今さらと思いつつも、貴方を忘れることも出来ず…つれなさを恨みながら、なお恋しく想い続けていますのよ。」
と女からこのような歌が送られてきた。男は手紙に「あぁ、私も同じ気持ちでした」と綴ったものの、
「もし恋仲に戻れば、きっとまたあの時のように些細なことで関係が絶えてしまうことでしょう。こうして互いの気持ちを確かめ合った…それで終わりといたしましょう。」
と書いて送った。しかしその夜、どういう心境の変化か男は女の許へ出かけて行っただそうな。
対面したふたりは、初めこそぽつりぽつりとぎこちない語らいであったが。言葉を交わすうち、かつて恋人だった頃のこと、さらにはこの先のことまで、堰を切ったように話題が溢れてくる。久しぶりの楽しい語らいは、まるで恋人だった頃に戻ったようであった。しかし男はふと笑みを引っ込めて、「こんな楽しい夜は久しぶりです。だが…」と女に言う。
「例えば秋の長夜を千夜、それを一夜にしたとして…そんな長い長い夜をまた八千夜。こんな楽しい逢瀬でも、それほど年月を重ねればいつかお互い疎ましくなることもありましょう。」
ですから、やはりこうして逢うのはこれきりに…。言いかけた男の手に、女の手が重なる。
「秋の長夜を千夜、それを一夜にしたとして…そんな長い夜でさえ、きっと話し足りないうちに鶏が鳴いてしまいますわ。」
どうか、これきりなんて仰らないで…。引き留めるように女が重ねた手を握る。男は女の手を取り、そっと抱き寄せ……。
この一夜以降、かつてよりも深く女を愛し、通うようになったのだそうな。
むかしむかし、あるところに、復縁を望む女と男がいたそうな。
たわいもないことで別れてしまったが、別れてもなお忘れられなかったのだろう。
「何を今さらと思いつつも、貴方を忘れることも出来ず…つれなさを恨みながら、なお恋しく想い続けていますのよ。」
と女からこのような歌が送られてきた。男は手紙に「あぁ、私も同じ気持ちでした」と綴ったものの、
「もし恋仲に戻れば、きっとまたあの時のように些細なことで関係が絶えてしまうことでしょう。こうして互いの気持ちを確かめ合った…それで終わりといたしましょう。」
と書いて送った。しかしその夜、どういう心境の変化か男は女の許へ出かけて行っただそうな。
対面したふたりは、初めこそぽつりぽつりとぎこちない語らいであったが。言葉を交わすうち、かつて恋人だった頃のこと、さらにはこの先のことまで、堰を切ったように話題が溢れてくる。久しぶりの楽しい語らいは、まるで恋人だった頃に戻ったようであった。しかし男はふと笑みを引っ込めて、「こんな楽しい夜は久しぶりです。だが…」と女に言う。
「例えば秋の長夜を千夜、それを一夜にしたとして…そんな長い長い夜をまた八千夜。こんな楽しい逢瀬でも、それほど年月を重ねればいつかお互い疎ましくなることもありましょう。」
ですから、やはりこうして逢うのはこれきりに…。言いかけた男の手に、女の手が重なる。
「秋の長夜を千夜、それを一夜にしたとして…そんな長い夜でさえ、きっと話し足りないうちに鶏が鳴いてしまいますわ。」
どうか、これきりなんて仰らないで…。引き留めるように女が重ねた手を握る。男は女の手を取り、そっと抱き寄せ……。
この一夜以降、かつてよりも深く女を愛し、通うようになったのだそうな。
