濡れつつぞ
公開 2023/08/28 20:46
最終更新
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濡れつつぞ
むかしむかし、あるところに家運の衰えた家があったそうな。
かつては高貴な血筋であったが、今は宮中で権勢を奮う藤原氏の顔色を伺うばかりである。その家の庭には藤の木が植えられているが、時は弥生のつごもり。そぼ降る雨の中、花盛りの藤は重たげに薄紫色の花房を提げて、うっとりするような香りを漂わせていた。「色香も良いうちに…」と家人に特に美しい藤の枝を切らせ、歌と共に藤原何某殿へ贈った。
「雨に濡れながら、無理をして幾枝か折って参りました。藤の花咲く春も、そう長くありませんので…」
贈られた藤の花枝と歌をご覧になった藤原某殿は、果たしてどうご覧になったことだろう。
むかしむかし、あるところに家運の衰えた家があったそうな。
かつては高貴な血筋であったが、今は宮中で権勢を奮う藤原氏の顔色を伺うばかりである。その家の庭には藤の木が植えられているが、時は弥生のつごもり。そぼ降る雨の中、花盛りの藤は重たげに薄紫色の花房を提げて、うっとりするような香りを漂わせていた。「色香も良いうちに…」と家人に特に美しい藤の枝を切らせ、歌と共に藤原何某殿へ贈った。
「雨に濡れながら、無理をして幾枝か折って参りました。藤の花咲く春も、そう長くありませんので…」
贈られた藤の花枝と歌をご覧になった藤原某殿は、果たしてどうご覧になったことだろう。
