さらぬ別れ
公開 2023/08/28 20:36
最終更新
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さらぬ別れ
むかしむかし、あるところに母と離れて暮らす男がいたそうな。
男自身は大した身分ではないものの母は皇族の血を引いており、母はかつて都が置かれた長岡という場所に住んでいた。男はひとりっ子だったので、母君はそれはもう大事に可愛がっていたのだと言う。男の方も今は実家を離れて京で宮仕えしているが、母君を気にかけてたまには帰って顔を見せたい…と思っていた。しかしそうは言っても仕事が忙しく、中々機会に恵まずに日々を過ごしていたそうである。
そんな師走のある日のこと。母から至急の文が届いた。至急とはいったい何があったのか、と驚いて文を開くと一首の歌が書かれていた。
「私も歳を取りましたから、急にバッタリ…なんてこともあるかもしれません。そう思うと、いよいよあなたのお顔を見ておきたいのです…いつお迎えが来てもいいように」
老母の寂しいお願いに、男はぼろぼろと涙をこぼして
「この世に急なお別れなんてなければいいのに…子供は、親には千年だって生きて欲しいと願っているのですから…」
と歌を詠み、上役にしばしの暇乞いを願い出たのだそうな。
むかしむかし、あるところに母と離れて暮らす男がいたそうな。
男自身は大した身分ではないものの母は皇族の血を引いており、母はかつて都が置かれた長岡という場所に住んでいた。男はひとりっ子だったので、母君はそれはもう大事に可愛がっていたのだと言う。男の方も今は実家を離れて京で宮仕えしているが、母君を気にかけてたまには帰って顔を見せたい…と思っていた。しかしそうは言っても仕事が忙しく、中々機会に恵まずに日々を過ごしていたそうである。
そんな師走のある日のこと。母から至急の文が届いた。至急とはいったい何があったのか、と驚いて文を開くと一首の歌が書かれていた。
「私も歳を取りましたから、急にバッタリ…なんてこともあるかもしれません。そう思うと、いよいよあなたのお顔を見ておきたいのです…いつお迎えが来てもいいように」
老母の寂しいお願いに、男はぼろぼろと涙をこぼして
「この世に急なお別れなんてなければいいのに…子供は、親には千年だって生きて欲しいと願っているのですから…」
と歌を詠み、上役にしばしの暇乞いを願い出たのだそうな。
