生駒の山
公開 2023/08/28 19:09
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生駒の山
むかしむかし、あるところに気の合う仲間と連れ立って遊覧に出かけた男がいたそうな。
季節は如月、梅が綻ぶ季節のこと。一行は和泉国を歩き、春の景色を楽しんでいた。隣の河内国の生駒山を臨んで、連れの仲間が「残念だなぁ、今朝も雲がかかっているよ」と言う。昨日も生駒山を見に出かけたが、一日曇ったり晴れたりで山には雲がかかり続けていた。今日こそはと出たものの、やはり今日もダメか…と残念がっていた面々であったが、昼頃になるとようよう雲が晴れはじめ、生駒山が姿を現した。ところが、
「…これじゃまるで冬に逆戻りじゃないか。」
仲間が嘆くのも無理は無い。花盛りというのに生駒山の木々には真っ白な雪が降り積もり、白い薄衣を被ったような姿である。
「……。」
落胆のため息が上がるなか、たったひとり。寂しげな笑みを浮かべた男が、
「昨日今日とひっきりなしに雲がかかって隠していたのは、私たちに花の装いを見せまいとしたからかもね。雪の衣まで被せて…」
あーあ…山にまでそっぽ向かれるなんて…まるであの人みたいじゃないか。と詠んだ。彼の辛さ、寂しさは皆の知るところである。一行はしんみりと雪の生駒山を眺めたのだそうな。
むかしむかし、あるところに気の合う仲間と連れ立って遊覧に出かけた男がいたそうな。
季節は如月、梅が綻ぶ季節のこと。一行は和泉国を歩き、春の景色を楽しんでいた。隣の河内国の生駒山を臨んで、連れの仲間が「残念だなぁ、今朝も雲がかかっているよ」と言う。昨日も生駒山を見に出かけたが、一日曇ったり晴れたりで山には雲がかかり続けていた。今日こそはと出たものの、やはり今日もダメか…と残念がっていた面々であったが、昼頃になるとようよう雲が晴れはじめ、生駒山が姿を現した。ところが、
「…これじゃまるで冬に逆戻りじゃないか。」
仲間が嘆くのも無理は無い。花盛りというのに生駒山の木々には真っ白な雪が降り積もり、白い薄衣を被ったような姿である。
「……。」
落胆のため息が上がるなか、たったひとり。寂しげな笑みを浮かべた男が、
「昨日今日とひっきりなしに雲がかかって隠していたのは、私たちに花の装いを見せまいとしたからかもね。雪の衣まで被せて…」
あーあ…山にまでそっぽ向かれるなんて…まるであの人みたいじゃないか。と詠んだ。彼の辛さ、寂しさは皆の知るところである。一行はしんみりと雪の生駒山を眺めたのだそうな。
