難波津を
公開 2023/08/28 19:08
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難波津を
むかしむかし、あるところに津の国に所領を持つ男がいたそうな。
「たまにはどうです、遊びに行きませか?」男の誘いに集まった男の兄、弟、親しい友達など、気心の知れた人達を連れて、男は難波のあたりへ出かけていった。入江に突き出した台地から渚を見下ろせば息も白く凍る寒さの中、漁の小舟が行き交い、粗末な着物を纏った者どもがあくせく働いている。
「さすがは難波津だ。あんなにたくさん舟が…」
「忙しいなぁ、あくせくと」
感嘆の声を上げ笑い合う仲間たちをよそに、黙って渚を行く舟を眺めていた男が
「今日初めて難波津を見たけれど、浦を行き交う舟を眺めていると…あぁ、これが辛い浮き世をおろおろ渡る人の姿…世間てものかなぁ…なんて思ってしまうね。」
とぽつりと詠んだ。すると先程までわいわい賑やかだった一行も、それぞれ思うところがあったのだろう。なんだかしんみりとしてしまって、誰ともなく「…帰ろう」と言い、みな京に帰っていったのだそうな。
むかしむかし、あるところに津の国に所領を持つ男がいたそうな。
「たまにはどうです、遊びに行きませか?」男の誘いに集まった男の兄、弟、親しい友達など、気心の知れた人達を連れて、男は難波のあたりへ出かけていった。入江に突き出した台地から渚を見下ろせば息も白く凍る寒さの中、漁の小舟が行き交い、粗末な着物を纏った者どもがあくせく働いている。
「さすがは難波津だ。あんなにたくさん舟が…」
「忙しいなぁ、あくせくと」
感嘆の声を上げ笑い合う仲間たちをよそに、黙って渚を行く舟を眺めていた男が
「今日初めて難波津を見たけれど、浦を行き交う舟を眺めていると…あぁ、これが辛い浮き世をおろおろ渡る人の姿…世間てものかなぁ…なんて思ってしまうね。」
とぽつりと詠んだ。すると先程までわいわい賑やかだった一行も、それぞれ思うところがあったのだろう。なんだかしんみりとしてしまって、誰ともなく「…帰ろう」と言い、みな京に帰っていったのだそうな。
