長岡
公開 2023/08/28 19:07
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長岡
むかしむかし、長岡というところに好事家の男がいたそうな。
たまには都会を離れて田舎暮らしでも…と思ったのかもしれない。風流人で好事家の男が、かつて都が置かれた長岡という田舎に別荘を建てて滞在していた。男の屋敷の隣には宮様がたの別荘があったのだが、田舎のことである。きちんとした女房はいないようで、使用人の女たちは田に出て働いていた。
あるとき稲刈りをする女たちを見て、好奇心を起こした男は自分も稲刈りをしてみようと思い立った。しかし如何せん野良仕事の「の」の字も知らない男である。肌の白い京男が上等な着物の袖や裾を括り、鎌を持っておっかなびっくりのへっぴり腰…賎しい者達の目にはさぞ珍奇に映ったことだろう。何事か見ていた女どもが「ちょ、見てアレ!あれが風流なんだってよマジウケんだけど(笑」と男の田んぼにピーチクパーチク集まってきた。男は顔から火が出る思いで家の奥に引っ込んだが、田舎女どもは遠慮も何もない。はしゃぎながらどやどや男の家に入り込んで、
「やっば!超荒れてんじゃん!何十年放ったらかしにしてたの?酷すぎて葎生えるんだけど(笑)」
と勝手にあちこち眺めて回して、言いたい放題である。女どもの無礼な振る舞いに男はいい加減頭に来て、
「あーあー全く嫌になっちゃうなぁ!こんな草だらけの荒屋だから鬼の溜まり場になっちゃたなぁ!」
と嫌味全開の歌を家の奥から投げつけた。さすがに揶揄いすぎたかな…?顔を見合せた女どもは、声のした方へそろそろ進み「機嫌直してくださいよぉー落ち穂拾うくらいなら貴族サンにも出来ますって」と声をかけたが、男はなおむっすりと唇を尖らせた。落ち穂を拾うのは、困窮した寡婦のすることである。
「……私に寡婦の真似をしろと?冗談は顔だけにしてくれないか。ま、私は優しいし?哀れな君らが落ち穂を拾うほど落ちぶれてるってんなら手伝ってやらんでもないけどね?」
とこれまた喧嘩腰の歌を投げつけて、女どもを追い返したのだそうな。
むかしむかし、長岡というところに好事家の男がいたそうな。
たまには都会を離れて田舎暮らしでも…と思ったのかもしれない。風流人で好事家の男が、かつて都が置かれた長岡という田舎に別荘を建てて滞在していた。男の屋敷の隣には宮様がたの別荘があったのだが、田舎のことである。きちんとした女房はいないようで、使用人の女たちは田に出て働いていた。
あるとき稲刈りをする女たちを見て、好奇心を起こした男は自分も稲刈りをしてみようと思い立った。しかし如何せん野良仕事の「の」の字も知らない男である。肌の白い京男が上等な着物の袖や裾を括り、鎌を持っておっかなびっくりのへっぴり腰…賎しい者達の目にはさぞ珍奇に映ったことだろう。何事か見ていた女どもが「ちょ、見てアレ!あれが風流なんだってよマジウケんだけど(笑」と男の田んぼにピーチクパーチク集まってきた。男は顔から火が出る思いで家の奥に引っ込んだが、田舎女どもは遠慮も何もない。はしゃぎながらどやどや男の家に入り込んで、
「やっば!超荒れてんじゃん!何十年放ったらかしにしてたの?酷すぎて葎生えるんだけど(笑)」
と勝手にあちこち眺めて回して、言いたい放題である。女どもの無礼な振る舞いに男はいい加減頭に来て、
「あーあー全く嫌になっちゃうなぁ!こんな草だらけの荒屋だから鬼の溜まり場になっちゃたなぁ!」
と嫌味全開の歌を家の奥から投げつけた。さすがに揶揄いすぎたかな…?顔を見合せた女どもは、声のした方へそろそろ進み「機嫌直してくださいよぉー落ち穂拾うくらいなら貴族サンにも出来ますって」と声をかけたが、男はなおむっすりと唇を尖らせた。落ち穂を拾うのは、困窮した寡婦のすることである。
「……私に寡婦の真似をしろと?冗談は顔だけにしてくれないか。ま、私は優しいし?哀れな君らが落ち穂を拾うほど落ちぶれてるってんなら手伝ってやらんでもないけどね?」
とこれまた喧嘩腰の歌を投げつけて、女どもを追い返したのだそうな。
