染河
公開 2023/08/28 19:02
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染河
むかしむかし、奉幣の勅使がいたそうな。
都から豊前へ向かう途中、筑紫にて歓待を受けることになったときのことである。勅使の一行を見ようと、この屋敷の女たちが御簾の向こうから伺っているようだった。そのとき小さな声で、
「…ほら、この方よ…色好みの好き者って噂の…」
と聞こえてきた。やれやれ…元妻との話がおかしな伝わり方をしているらしい…と辟易した男は、
「一度渡ったきりの私でさえそうなのですから、染河を渡る筑紫の人々はその名の通り『色』に染められてしまうのでしょうね。とりわけ『名器』と名高い筑紫の方はさぞ……、」
と御簾に背を向けたまま言い放った。『筑紫国はビ〇チしかいないってマジ!?(笑)』と言っているのである。御簾の向こうは一瞬黙り込んだがすぐに、
「肥後のたはれ島は名前の通り波と戯れる浮気な島なのかもしれませんが…本当にそうでしょうか?波の『濡れ衣』を着せられてるだけでは?」
『筑紫の女はビ〇チですって?事実無根の濡れ衣だわ!』と言い返してきた。しかし自分も根も葉もない話を鵜呑みにしてヒソヒソ噂していたことを思い出したのだろう。バツが悪そうにそそくさと奥へ引っ込んでしまったのだそうな。
***
※訳者注
『名器』と名高い筑紫の方…古今著聞集 巻十六「外宮権禰宜度会盛広、妻に筑紫女を懐抱したしと請ふ事」を参考にしました。
むかしむかし、奉幣の勅使がいたそうな。
都から豊前へ向かう途中、筑紫にて歓待を受けることになったときのことである。勅使の一行を見ようと、この屋敷の女たちが御簾の向こうから伺っているようだった。そのとき小さな声で、
「…ほら、この方よ…色好みの好き者って噂の…」
と聞こえてきた。やれやれ…元妻との話がおかしな伝わり方をしているらしい…と辟易した男は、
「一度渡ったきりの私でさえそうなのですから、染河を渡る筑紫の人々はその名の通り『色』に染められてしまうのでしょうね。とりわけ『名器』と名高い筑紫の方はさぞ……、」
と御簾に背を向けたまま言い放った。『筑紫国はビ〇チしかいないってマジ!?(笑)』と言っているのである。御簾の向こうは一瞬黙り込んだがすぐに、
「肥後のたはれ島は名前の通り波と戯れる浮気な島なのかもしれませんが…本当にそうでしょうか?波の『濡れ衣』を着せられてるだけでは?」
『筑紫の女はビ〇チですって?事実無根の濡れ衣だわ!』と言い返してきた。しかし自分も根も葉もない話を鵜呑みにしてヒソヒソ噂していたことを思い出したのだろう。バツが悪そうにそそくさと奥へ引っ込んでしまったのだそうな。
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※訳者注
『名器』と名高い筑紫の方…古今著聞集 巻十六「外宮権禰宜度会盛広、妻に筑紫女を懐抱したしと請ふ事」を参考にしました。
