後涼殿のはざま
公開 2023/08/28 17:44
最終更新
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後涼殿のはざま
むかしむかし、あるところに宮仕えの男がいたそうな。
後涼殿の馬道を渡っていたときのこと。ある高貴な方の御局の前を通りかかると、「もし、」とそこへ仕える女房に呼び止められた。
「あなたはこれも『しのぶ草』と仰るのかしら。」
するりと御簾の下から差し出されたのは、忘れ草である。それを丁寧に賜った男は、
「在原の原を忘れ草が生い茂る野辺とご覧になったのでしょうが、とんでもない。そこにあるのはしのぶ草でございますよ。これからもあなたのお心を…頼みにしております。」
と返した。
あなたは心変わりを『遠慮しているだけ』と仰るのかしら。と疑う女へ、薄情者とお疑いに?まさか…こんなにもあなたに逢えない辛さに耐え忍んでいるのですよ…。と返した歌であるが。果たして男の見つめる先は御簾の奥だと、御局の主の外に誰が気づいただろうか。
むかしむかし、あるところに宮仕えの男がいたそうな。
後涼殿の馬道を渡っていたときのこと。ある高貴な方の御局の前を通りかかると、「もし、」とそこへ仕える女房に呼び止められた。
「あなたはこれも『しのぶ草』と仰るのかしら。」
するりと御簾の下から差し出されたのは、忘れ草である。それを丁寧に賜った男は、
「在原の原を忘れ草が生い茂る野辺とご覧になったのでしょうが、とんでもない。そこにあるのはしのぶ草でございますよ。これからもあなたのお心を…頼みにしております。」
と返した。
あなたは心変わりを『遠慮しているだけ』と仰るのかしら。と疑う女へ、薄情者とお疑いに?まさか…こんなにもあなたに逢えない辛さに耐え忍んでいるのですよ…。と返した歌であるが。果たして男の見つめる先は御簾の奥だと、御局の主の外に誰が気づいただろうか。
