へだつる関
公開 2023/08/28 17:41
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へだつる関
むかしむかし、あるところに二条の后様にお仕えする男がいたそうな。
二条の后様は既に帝のご寵愛を受ける身であったが、主と臣下の分を超えたやり取りは止まず、男は多年にわたり想いを訴え続けていた。「御簾越しででも、どうにかお会いしたいのです。どうすることも出来ぬまま積もり続けるこの想いを、ほんの少しだけも……。どうか後生ですから…。」男の懇願に折れた女は、「ほんの少しだけなら…」とごく内密に、御簾を隔てて男と対面した。
主と臣下としてではなく、ひとりの男と女として。久方ぶりの逢瀬である。声も密やかにぽつり、ぽつりと話すうち、男は思い詰めた目をして
「…私の想いは彦星の恋にも勝りましょう。横たわる天の川のように隔てる関を、私たちを取り巻くしがらみを…今は取り払って頂きたい…!」
と切々と心を詠んだ。この歌に胸を打たれた二条の后様は、男を御簾の内へとお許しになったのだそうである。
むかしむかし、あるところに二条の后様にお仕えする男がいたそうな。
二条の后様は既に帝のご寵愛を受ける身であったが、主と臣下の分を超えたやり取りは止まず、男は多年にわたり想いを訴え続けていた。「御簾越しででも、どうにかお会いしたいのです。どうすることも出来ぬまま積もり続けるこの想いを、ほんの少しだけも……。どうか後生ですから…。」男の懇願に折れた女は、「ほんの少しだけなら…」とごく内密に、御簾を隔てて男と対面した。
主と臣下としてではなく、ひとりの男と女として。久方ぶりの逢瀬である。声も密やかにぽつり、ぽつりと話すうち、男は思い詰めた目をして
「…私の想いは彦星の恋にも勝りましょう。横たわる天の川のように隔てる関を、私たちを取り巻くしがらみを…今は取り払って頂きたい…!」
と切々と心を詠んだ。この歌に胸を打たれた二条の后様は、男を御簾の内へとお許しになったのだそうである。
