われさへもなく
公開 2023/08/28 13:32
最終更新
-
われさへもなく
むかしむかし、あるところに友人を見送るひとがいたそうな。
ある人が地方へ任官されるというので、それならば君の門出を祝おうじゃないか。と男は自宅に招いて酒宴を催した。遠慮するような間柄でもなかったので、友人も主の奥さんに勧められるまま盃を重ね、宴は大いに盛り上がった。さて、みな気持ちよく酔いが回って宴もたけなわという頃。
「あ、そうだ、そうだ…これを受け取ってくれ。私たちからの餞だよ。」
と言って主人の男は、女性が身につける裳を友人に差し出した。礼を言って受け取りつつも、色々してもらってばかりで悪いなぁ…と言う友人へ、男はその場で歌を詠み裳の腰紐に結わえ付けた。
「旅立つ君の為にと脱いだけれど、わたしのアンラッキーまで裳なくなったような気がするよ」
裳と喪(アンラッキー)を掛けた洒落である。歌そのものよりも、詠み手の心にこそ興があるので、これはさらりと腹で味わうということで…。
むかしむかし、あるところに友人を見送るひとがいたそうな。
ある人が地方へ任官されるというので、それならば君の門出を祝おうじゃないか。と男は自宅に招いて酒宴を催した。遠慮するような間柄でもなかったので、友人も主の奥さんに勧められるまま盃を重ね、宴は大いに盛り上がった。さて、みな気持ちよく酔いが回って宴もたけなわという頃。
「あ、そうだ、そうだ…これを受け取ってくれ。私たちからの餞だよ。」
と言って主人の男は、女性が身につける裳を友人に差し出した。礼を言って受け取りつつも、色々してもらってばかりで悪いなぁ…と言う友人へ、男はその場で歌を詠み裳の腰紐に結わえ付けた。
「旅立つ君の為にと脱いだけれど、わたしのアンラッキーまで裳なくなったような気がするよ」
裳と喪(アンラッキー)を掛けた洒落である。歌そのものよりも、詠み手の心にこそ興があるので、これはさらりと腹で味わうということで…。
