しでの田長
公開 2023/08/28 13:31
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しでの田長
むかしむかし、あるところに貴人に仕える女がいたそうな。
桓武帝のご子息、賀陽の親王と仰る方があるとき身の回りの世話をする下女を所望された。その時お召しになったのがその女である。畏れ多いことに、親王様には随分目をかけていただいていたのだが…何を勘違いしたのか「親王様は何も仰らないけど…どうもアタシにお熱みたい!」と女はのぼせ上がってしまったらしい。
「お前の嫁さん、何だか様子がおかしいらしいよ。」だの、「自分こそ親王様の想い人だと言っていたってよ。」だの、人づてに聞かされた夫は
「ホトトギスにでもなったつもりか?あっちこっちで愛想を振りまいて…この浮気者め。」
とホトトギスの絵を書いて詠み送った。ホトトギスは田植えの時期を里に触れ回る鳥と言われている。あっちの里、こっちの里と飛び回って鳴く姿を、浮気な女になぞらえてヤキモチを焼いたのである。受け取った女は男のご機嫌を取ろうと、
「しでの田長じゃないけれど、悪い評判ばかり広まって嫌になっちゃう。ホトトギスもアタシもちゃんと仕事してるだけなのに嫌われるなんて、今朝は悲しくって泣いてるのよ…」
と返した。しでの田長…とはホトトギスの異名である。「死出の田長」と不吉な異名も持つ鳥を、広く流布した不吉な名前を浮名になぞらえて嘆いたのだ。
今は五月。田植えの時期である。
「ホトトギスも君のことも、頼もしいしアテにしているよ。ちゃんと俺の里へも来てくれるならね。」
と一応は納得しながらも、男は釘を刺したのだそうな。
むかしむかし、あるところに貴人に仕える女がいたそうな。
桓武帝のご子息、賀陽の親王と仰る方があるとき身の回りの世話をする下女を所望された。その時お召しになったのがその女である。畏れ多いことに、親王様には随分目をかけていただいていたのだが…何を勘違いしたのか「親王様は何も仰らないけど…どうもアタシにお熱みたい!」と女はのぼせ上がってしまったらしい。
「お前の嫁さん、何だか様子がおかしいらしいよ。」だの、「自分こそ親王様の想い人だと言っていたってよ。」だの、人づてに聞かされた夫は
「ホトトギスにでもなったつもりか?あっちこっちで愛想を振りまいて…この浮気者め。」
とホトトギスの絵を書いて詠み送った。ホトトギスは田植えの時期を里に触れ回る鳥と言われている。あっちの里、こっちの里と飛び回って鳴く姿を、浮気な女になぞらえてヤキモチを焼いたのである。受け取った女は男のご機嫌を取ろうと、
「しでの田長じゃないけれど、悪い評判ばかり広まって嫌になっちゃう。ホトトギスもアタシもちゃんと仕事してるだけなのに嫌われるなんて、今朝は悲しくって泣いてるのよ…」
と返した。しでの田長…とはホトトギスの異名である。「死出の田長」と不吉な異名も持つ鳥を、広く流布した不吉な名前を浮名になぞらえて嘆いたのだ。
今は五月。田植えの時期である。
「ホトトギスも君のことも、頼もしいしアテにしているよ。ちゃんと俺の里へも来てくれるならね。」
と一応は納得しながらも、男は釘を刺したのだそうな。
