緑衫の上の衣
公開 2023/08/28 13:30
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緑衫の上の衣
むかしむかし、あるところに姉妹がいたそうな。
ひとりは貧しく低い身分の男を、もうひとりは裕福な身分の高い男を夫に持った。ある年の年の暮れのこと。身分の低い夫を持つ女が、夫のために束帯の表着を手ずから洗い張りしたのだが…何せ元々がお嬢様である。洗い物など習ったこともやったこともない。夫の為と一生懸命頑張ってみたものの、肩の辺りを張り破いてしまった。直そうにもどうにもならず、大変なことをしてしまったと青ざめて泣いていたそうな。
このことを聞いた例の裕福な方の男は大変心苦しく思い、
「紫草が美しく咲くときは、紫草が生える野の草木さえ皆愛おしく思えるものでしょう?…妻の親族とて同じです。私には皆、大切な人たちなのですから。」
と歌を添えて、とても美しい緑衫の表着を見繕って贈ったのだそうな。古今集に見える「紫のひともとゆゑに武蔵野の…」という歌の心なのだろう。
むかしむかし、あるところに姉妹がいたそうな。
ひとりは貧しく低い身分の男を、もうひとりは裕福な身分の高い男を夫に持った。ある年の年の暮れのこと。身分の低い夫を持つ女が、夫のために束帯の表着を手ずから洗い張りしたのだが…何せ元々がお嬢様である。洗い物など習ったこともやったこともない。夫の為と一生懸命頑張ってみたものの、肩の辺りを張り破いてしまった。直そうにもどうにもならず、大変なことをしてしまったと青ざめて泣いていたそうな。
このことを聞いた例の裕福な方の男は大変心苦しく思い、
「紫草が美しく咲くときは、紫草が生える野の草木さえ皆愛おしく思えるものでしょう?…妻の親族とて同じです。私には皆、大切な人たちなのですから。」
と歌を添えて、とても美しい緑衫の表着を見繕って贈ったのだそうな。古今集に見える「紫のひともとゆゑに武蔵野の…」という歌の心なのだろう。
