築地の崩れ
公開 2023/08/27 18:12
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築地の崩れ
むかしむかし、京の東、五条あたりに忍んで通う男がいたそうな。
その家の者に見つかってはまずいので、表から堂々と…という訳にはいかない。どうしたものかと家の周りを見て回った際に、近所の悪童が蹴って壊したらしい築地の崩れた穴を見つけた。以来男は、その穴を潜ってこっそり女の元へ通っていたのだそうな。しかし人通りがさほど多くないとは言え、度重なれば主の耳にも入るものである。しばらくしてこの家の主人が「通い路」に毎晩監視の者を置いて警備にあたらせたので、その穴は使えなくしてしまった。
何とか通れないものかと幾度か行ってみたものの、監視の目が光っていてとてもかなわない。行っては会えずに帰る日が続いた男は、萎れて次のように詠み送った。
「秘密の通い路の関守殿は、ちょっとくらい居眠りしていてくれないものか。私が出入りするほんの少しの間だけでいいから…」
その歌を受け取った女は大層心を痛めて憔悴してしまったので、家の主は仕方なく警護を解いたのだった。
これは業平殿が高子様の許へ忍んで通っている。との噂を耳にした高子様の兄君たちが、警護の者を置いて守らせたというエピソードである。
むかしむかし、京の東、五条あたりに忍んで通う男がいたそうな。
その家の者に見つかってはまずいので、表から堂々と…という訳にはいかない。どうしたものかと家の周りを見て回った際に、近所の悪童が蹴って壊したらしい築地の崩れた穴を見つけた。以来男は、その穴を潜ってこっそり女の元へ通っていたのだそうな。しかし人通りがさほど多くないとは言え、度重なれば主の耳にも入るものである。しばらくしてこの家の主人が「通い路」に毎晩監視の者を置いて警備にあたらせたので、その穴は使えなくしてしまった。
何とか通れないものかと幾度か行ってみたものの、監視の目が光っていてとてもかなわない。行っては会えずに帰る日が続いた男は、萎れて次のように詠み送った。
「秘密の通い路の関守殿は、ちょっとくらい居眠りしていてくれないものか。私が出入りするほんの少しの間だけでいいから…」
その歌を受け取った女は大層心を痛めて憔悴してしまったので、家の主は仕方なく警護を解いたのだった。
これは業平殿が高子様の許へ忍んで通っている。との噂を耳にした高子様の兄君たちが、警護の者を置いて守らせたというエピソードである。
