ボーはおそれている 感想&コラボカクテルレポ −母の愛は用法用量を守れ
公開 2024/03/06 12:21
最終更新 2024/03/06 12:22
アリ・アスター監督最新作、「ボーはおそれている」を観てきました。二回




一度目は昨年12月のジャパンプレミアです。割と本気で何が起こったのかわからない三時間で、でもある一点でとてもわかる部分もあり、自分の中でどう消化したら良いか検討もつかなかったのですがようやくもう一度観てなんとか消化できそうな気がする(完全に理解できたわけではない)ので感想を残しておこうと思います。

その前に多分この作品、三時間という長さがハードル高いと感じる方が多いと思いますので個人的に行った対策を書いておきます。

一回目(ジャパンプレミア時)
お手洗いがとにかく不安だったのですが、調べてみたらが有効とのこと。開始時間の大体一時間半前くらいに食べて出掛けました。
結果途中お手洗いに立つということは無く鑑賞できたのですが、三時間ずっと座りっぱなしはお尻がめちゃくちゃ痛くなる
前日にムカデ人間2 カラー版を観ていたので、最悪のマリアージュが誕生しました。
いや厳密には尾てい骨だと思うんですが、まぁそれはそれ。

二回目(今年2月)
長い映画を観るときはお尻対策も不可欠だとわかりましたので観劇用クッション等を探してはいたのですが、基本観る映画は90分がデフォルトなものでそんなに使用頻度は高くないよなぁと値段を見つつ二の足を踏む。
結局いつも自宅で使っているニトリのクッションを洗って持っていきました。今のところ痛みは出てきていません。
(そんなに厚みはないクッションですが、一応後ろの席にしました)

とりあえずサボりがちなリングフィットをなるべくやって足腰鍛えます……。

まだ本題に入っていないぞ!


極度の不安障害を持つボーが狂いきったアメリカン・スラム街での暮らす中、彼の母親の訃報を意外な形で知ることになる。否応がない出来事が起き、住んでいたアパートを飛び出したボーは母親の葬儀の為に帰省を決意する。

一応導入はこんな感じですが100分の1も伝えられてないからさっさと本篇を観たほうがいいです。
三時間で2,000円、私は普段90分前後の映画ばかり観ているので実質半額です(TCGやサービスデーで基本もっと安く観てますが…)。

この映画の凄い好きなポイントなのですが、ボーの「不安」の解像度が個人的にピントに合いまくっていてスッッッゲェリアルに感じられるところなんですよね。
私今オートロックのところに一人暮らししているんですけど、一階のエントランス出る前にかならず鞄の中の鍵を確認するんですよ(当然部屋を出る時鍵をかけていて、そのうえで確認する)。忘れて出たら戻るすべがないのが怖くて。
鍵を盗まれたボーが向かいの売店に水を買いに行く為にマンションの扉に本を挟んだやつ、自分も絶対する
あまりにもわかりみ過ぎてお前…私か……?ってなる。違えよ。

前後しますがすぐ検索するのもわかりすぎる。この前も会社行って仕事しているときにいきなり「燃えるゴミ出したっけ?」って不安になって、休憩時間に「ゴミ 出し忘れたら」とか調べまくってました。ちなみにちゃんとゴミは出してました。無意識に出してて記憶がなかったみたい。それはそれでどうなんだ。

あとある事を説明するのに、最初から順を追って話す
こいつ、おるわ……ってなりません?うちの弟とかめちゃめちゃこれで、結局何が言いたいんだ?!ってなる。あと前職の新入社員にもいた。
そこらへんにめっちゃいるよ、ボー。

ミッドサマーやヘレディタリーでもそうでしたが、アリ・アスター監督の作品の極悪人ではないけれどかといって善人でもなく、でもどこか気まずくてちょっと駄目な人たちの描写が凄く好みです。ミッドサマーでクリスチャンがダニをホルガ村へ連れて行かざるを得なくなった(恐らく無意識の)駆け引きとか気まずさの極み過ぎる。

そしてこれは何故かは解らないんですが、ストレス感じそうな人物設定なのに(個人的に)ほとんど苛つかない。
私は映画を観ていてもこいつもう少し要領を押さえた言動できんのか…?とか普通に思ってしまうたちなので計算された何かがあるのだろうなぁと思います。ボー、凄い好きなキャラクターです。


そしてそのボーが暮らす街がやべえとしか言いようがないスラム街。全裸中年殺人鬼、絶対インターネットの皆が好きなやつでしょ。私もだよ。
今作は大きく四つのパートに分かれるのですが、何だかんだ最初のスラム街パートが一番好きかもしれない(勿論このあとに続くパートもとても面白くて好きなのですが)。
まるで玉が転げ落ちるかのようにあり得ない出来事が連鎖して起こるさまが観ていて本当に面白いです。

最初に観たときはポー(ボーではない)の「不条理の天使」を思い出しました。ややこしいな!
こちらは不条理を信じない、自分を過信しきっている男が主人公ですがあるミスからとんでもない運命の連鎖に巻き込まれるコメディでなんとなく通じるところがあると思います。そういやこいつも寝過ごすんだよな。

不安って生きている限りどうしても無くならないもので、うまく対処し続けることが人生の大きなタスクの一つなのだと思います。
そして親なら子どもの不安をできる限り取り除いてあげたいということも必然なのだろうなぁとも思うし、それは愛という名前でラベリングできるものなのでしょう。私は親ではないので想像ですが。
しかしどんなに取り除いても不安は0%にはならない。だから親の愛は適度にとどめなければならない。用法用量を超えたらきっと愛とは呼べなくなってしまうから。そんな作品だと感じました。

あとドストレートにネタバレを含むのですがめちゃくちゃ好きなシーンがあるのでふせったーのリンクを貼ります。

https://fse.tw/VuwPiwXu#all


ゴア表現とかは前二作に比べると殆ど無くて、ホラー映画だと思って観ると確かに肩透かしだったんだけどコメディ映画としてはめちゃくちゃ面白かったな〜〜〜!!!
でも次回作はせめて二時間半位に…収まらない?

後日銀座のライブラリカフェ&バー「十誡」でのコラボカクテルも飲んできました。
https://www.zikkai.com/


ゴッドマザーというカクテルのアレンジで、ゼリーがお酒で白いのがココナッツミルクだったかな?

刺さっている飴は作中の梯子や木々を表していて、ミルクにとけるとボーのパジャマみたいな色になります、とのこと。

※ちょっと飲み進めたらこうなりました。加工してるけどたしかにボーのパジャマっぽかったです。

度数は確認しなかったのですが本を眺めながらゆっくり飲むのに丁度良かったです。

十誡は蔵書を読みながら飲食が出来るカフェバーで、アングラ、サブカル、ゴシック&ロリータに少しでもかする方は非常に刺さると思います。
首無し女学生表紙で有名な三一書房の夢野久作全集( https://amzn.asia/d/1TOGZxX )などもありますが、店内が薄暗いので活字のものよりは画集や写真集を眺めているのが良いと個人的に思います。
かえるくん
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怖い話、特にホラー寄りの映画が好きです。
映画をよく観るようになったのがここ数年からなので、古い有名なものとかあまり観られていなかったりします。
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