読書記録 「ガストン・ルルーの恐怖夜話」
公開 2024/02/22 08:29
最終更新
2024/02/22 12:12
少し前に買った創元推理文庫「ガストン・ルルーの恐怖夜話」をようやく読み終えたので、せっかくだし感想を書きたいと思います。
昔はそこそこに読書はしていたつもりなのですが、ここ数年は読書量がめっきり減ってしまっていました。
長編小説は中々読みきれないし、読めて短編集の気になる話をいくつか摘み読みするのが精一杯…みたいな感じなのが情けない。
ここ最近、自分のメンタル回復のためにTwitter(現X)デトックスをなんとなく行っており、だらだらスマホを見る時間を読書に充てようと思い読みかけだったこちらに手を付けた次第です。
集中して、能動的に文字を追って想像することの難しさと楽しさを久しぶりに実感できました。そして読み終えたことがめちゃくちゃ嬉しい。もっと読むぞ!
ガストン・ルルーといえば「オペラ座の怪人」や「黄色い部屋の謎」が有名ですが、実は黄色い部屋の謎は未読でして……。積んであったと思うので、もう少し短編集などでリハビリをしたのち読みたいと思います。
オペラ座の怪人は今手元に無いのであやふやなんですが、「愛してくれたら善人になる」というような台詞(うろ覚え)をクリスティーヌに告げるファントムのどうしようもなさがとても好きです。やったことは確かに悪ではあるけれど、正しくあれる為の道なんて最初から閉ざされていたキャラクターの悲哀というものにとても惹かれます。
あと終盤の章タイトルの「怪人の愛の終わり」ってめちゃくちゃ美しくないですか?原文だとなんていうんだろうな〜。
ミュージカルでは「The Point of No Return」がめちゃくちゃ好き。あんな美しいメロディ何食ったら生まれるんだ???
まだ本題に入っていないぞ!
今作はルルーの短編集となっておりまして、当時の刊行形態などは存じ上げませんが八つの収録作品のうちいくつかは船乗り達が集まった酒場でそれぞれが体験した怪奇譚を語り合う、という形式になっています。
特にお気に入りの話について書きます。
「胸像たちの晩餐」
片腕を失くしたミシェル船長が語る、航海の合間の滞在先として借りた別荘での話です。
タイトルを最初に見たときはディズニーランドのホーンテッドマンションの喋る像みたいなのを想像しました。
船乗りが語るこわい話というと、船上で嵐に見舞われたとか、旅先の異国で恐ろしい出来事に…となりがちなイメージ。
この話は自国に戻った期間に起こったとのことでしたので、最初はちょっと肩透かし感がありました。
しかし空き家の筈の隣家にいる人物が判明してから物語は意外な方向へ転がっていきます。その人物はミシェル船長の旧い知人でしたが、彼の夫人は頑なに夫とミシェル船長を合わせようとしません。そして船長はついに旧友を訪ねることを決心します。
船上での話ではありませんでしたが、船乗りならではと言えるような話に収束していき非常に面白かったです!
本筋にはあまり関係ないのですが、特に人物を語る際に一言多いのがちょっと笑えるんですよね〜。この話でも家政婦のことを「一日二時間家を散らかしにくるだけ」とか、こういう悪口ギリギリの言い回しがなぜか心地良い。
「恐怖の館」
船乗りの一人が語る、新婚旅行先のスイスで巻き込まれた恐ろしい出来事。こちらは船乗りならではの話とは言えませんが、それでも面白かった。
かつての主人が宿泊客を次々殺していったという曰く付きの「血の宿」。今の主人はこの宿を観光名所として売り出している。
悪天候の為、その宿に急遽泊まることになってしまったという話です。ブラチスラヴァのホステルではありませんが、この手の殺人宿はどこにでもあるんですね。どこにでもあってたまるか。
道中、馬車の座席で一悶着あったイタリア人カップルがこれまた同じ「血の宿」に泊まることになり、その晩ある出来事がおこります。
体験談なのだから話者は無事という着地点は最初から解っているのだけれど、だからこそ芯がブレずにテンポよく読める。恐ろしい話ではありますが、キャラクターや言い回しの軽快さが良いアクセントになっている話でした。
「蝋人形館」
一番最後に収録されていた話です。これが一番好き!
こちらは船乗りが語る話ではなく、怖いものが無いと言い張る男が度胸試しで蝋人形館に一人で一晩過ごすという話です。
フランス版饅頭怖いと思いきや、全っ然笑い話じゃあなかった。
誰もいないはずの真夜中の蝋人形館というシチュエーションがもうめちゃくちゃ良い。人の形をした人ではないものたち(そして大抵恐ろしい姿をしている)に囲まれて過ごす男の様子が、余裕のあるそれからだんだん恐怖の色に変わっていくさまがとてつもなく面白いです。
オチは日本の怪談を思い出しました。
(確か八雲も書いていたな〜と思って青空文庫を見てみたら、肝心のくだりは違っていたのでこの部分は後世の脚色なのかな?)
これはぜひ映像で観てみたいですね〜。真夜中の蝋人形館でどんどん男の表情がヤバくなっていくところがもう容易に想像できますもん。
以前NHKで乱歩や横溝の短編を30分位のドラマにしたシリーズが不定期でやっていたと思うんですが、そういうテイストでどこかやってくれないかな…。他のも合わせてネトフリオリジナルあたりでどうでしょう。全八話ですし、ちょうどワンシーズン位じゃあない?
全体的にミステリー、サスペンス色が強く超常的・神秘的な存在が明確に描かれているのは一作のみです。解説にルルーの生い立ちがさっくり書かれていましたが、新聞記者としてソ連や中東など色々なところに派遣されたらしい。時には変装もしたとか。
オペラ座の怪人もガルニエ宮で起きた様々な不思議なことは実は一人の人間が起こした事だという想像(仮説?)を元に描かれていますし、そういった点が怪奇趣味ではあるけれどどこか地に足のついた作風に繋がっているのかな?と勝手に思いました。
他の作品も読んでみたい。シェリ=ビビとか気になるけどまずは黄色い部屋かな。
私はTwitter(現X)で愛書家日誌さんをフォローしているのですが、毎年ガストン・ルルーの誕生日になるとルルーの名言を投稿されていて、まぁ私は物書きでは無いのですがこの言葉がずっと刺さっています。
https://twitter.com/aishokyo/status/993065350601338880?t=uTGeiYgTDTTXrlpRes5hTA&s=19
多分ルルーはTwitterとかやらない(偏見)。
昔はそこそこに読書はしていたつもりなのですが、ここ数年は読書量がめっきり減ってしまっていました。
長編小説は中々読みきれないし、読めて短編集の気になる話をいくつか摘み読みするのが精一杯…みたいな感じなのが情けない。
ここ最近、自分のメンタル回復のためにTwitter(現X)デトックスをなんとなく行っており、だらだらスマホを見る時間を読書に充てようと思い読みかけだったこちらに手を付けた次第です。
集中して、能動的に文字を追って想像することの難しさと楽しさを久しぶりに実感できました。そして読み終えたことがめちゃくちゃ嬉しい。もっと読むぞ!
ガストン・ルルーといえば「オペラ座の怪人」や「黄色い部屋の謎」が有名ですが、実は黄色い部屋の謎は未読でして……。積んであったと思うので、もう少し短編集などでリハビリをしたのち読みたいと思います。
オペラ座の怪人は今手元に無いのであやふやなんですが、「愛してくれたら善人になる」というような台詞(うろ覚え)をクリスティーヌに告げるファントムのどうしようもなさがとても好きです。やったことは確かに悪ではあるけれど、正しくあれる為の道なんて最初から閉ざされていたキャラクターの悲哀というものにとても惹かれます。
あと終盤の章タイトルの「怪人の愛の終わり」ってめちゃくちゃ美しくないですか?原文だとなんていうんだろうな〜。
ミュージカルでは「The Point of No Return」がめちゃくちゃ好き。あんな美しいメロディ何食ったら生まれるんだ???
まだ本題に入っていないぞ!
今作はルルーの短編集となっておりまして、当時の刊行形態などは存じ上げませんが八つの収録作品のうちいくつかは船乗り達が集まった酒場でそれぞれが体験した怪奇譚を語り合う、という形式になっています。
特にお気に入りの話について書きます。
「胸像たちの晩餐」
片腕を失くしたミシェル船長が語る、航海の合間の滞在先として借りた別荘での話です。
タイトルを最初に見たときはディズニーランドのホーンテッドマンションの喋る像みたいなのを想像しました。
船乗りが語るこわい話というと、船上で嵐に見舞われたとか、旅先の異国で恐ろしい出来事に…となりがちなイメージ。
この話は自国に戻った期間に起こったとのことでしたので、最初はちょっと肩透かし感がありました。
しかし空き家の筈の隣家にいる人物が判明してから物語は意外な方向へ転がっていきます。その人物はミシェル船長の旧い知人でしたが、彼の夫人は頑なに夫とミシェル船長を合わせようとしません。そして船長はついに旧友を訪ねることを決心します。
船上での話ではありませんでしたが、船乗りならではと言えるような話に収束していき非常に面白かったです!
本筋にはあまり関係ないのですが、特に人物を語る際に一言多いのがちょっと笑えるんですよね〜。この話でも家政婦のことを「一日二時間家を散らかしにくるだけ」とか、こういう悪口ギリギリの言い回しがなぜか心地良い。
「恐怖の館」
船乗りの一人が語る、新婚旅行先のスイスで巻き込まれた恐ろしい出来事。こちらは船乗りならではの話とは言えませんが、それでも面白かった。
かつての主人が宿泊客を次々殺していったという曰く付きの「血の宿」。今の主人はこの宿を観光名所として売り出している。
悪天候の為、その宿に急遽泊まることになってしまったという話です。ブラチスラヴァのホステルではありませんが、この手の殺人宿はどこにでもあるんですね。どこにでもあってたまるか。
道中、馬車の座席で一悶着あったイタリア人カップルがこれまた同じ「血の宿」に泊まることになり、その晩ある出来事がおこります。
体験談なのだから話者は無事という着地点は最初から解っているのだけれど、だからこそ芯がブレずにテンポよく読める。恐ろしい話ではありますが、キャラクターや言い回しの軽快さが良いアクセントになっている話でした。
「蝋人形館」
一番最後に収録されていた話です。これが一番好き!
こちらは船乗りが語る話ではなく、怖いものが無いと言い張る男が度胸試しで蝋人形館に一人で一晩過ごすという話です。
フランス版饅頭怖いと思いきや、全っ然笑い話じゃあなかった。
誰もいないはずの真夜中の蝋人形館というシチュエーションがもうめちゃくちゃ良い。人の形をした人ではないものたち(そして大抵恐ろしい姿をしている)に囲まれて過ごす男の様子が、余裕のあるそれからだんだん恐怖の色に変わっていくさまがとてつもなく面白いです。
オチは日本の怪談を思い出しました。
(確か八雲も書いていたな〜と思って青空文庫を見てみたら、肝心のくだりは違っていたのでこの部分は後世の脚色なのかな?)
これはぜひ映像で観てみたいですね〜。真夜中の蝋人形館でどんどん男の表情がヤバくなっていくところがもう容易に想像できますもん。
以前NHKで乱歩や横溝の短編を30分位のドラマにしたシリーズが不定期でやっていたと思うんですが、そういうテイストでどこかやってくれないかな…。他のも合わせてネトフリオリジナルあたりでどうでしょう。全八話ですし、ちょうどワンシーズン位じゃあない?
全体的にミステリー、サスペンス色が強く超常的・神秘的な存在が明確に描かれているのは一作のみです。解説にルルーの生い立ちがさっくり書かれていましたが、新聞記者としてソ連や中東など色々なところに派遣されたらしい。時には変装もしたとか。
オペラ座の怪人もガルニエ宮で起きた様々な不思議なことは実は一人の人間が起こした事だという想像(仮説?)を元に描かれていますし、そういった点が怪奇趣味ではあるけれどどこか地に足のついた作風に繋がっているのかな?と勝手に思いました。
他の作品も読んでみたい。シェリ=ビビとか気になるけどまずは黄色い部屋かな。
私はTwitter(現X)で愛書家日誌さんをフォローしているのですが、毎年ガストン・ルルーの誕生日になるとルルーの名言を投稿されていて、まぁ私は物書きでは無いのですがこの言葉がずっと刺さっています。
https://twitter.com/aishokyo/status/993065350601338880?t=uTGeiYgTDTTXrlpRes5hTA&s=19
作家が仕事部屋に必要なのは花以外にありえない。
多分ルルーはTwitterとかやらない(偏見)。
怖い話、特にホラー寄りの映画が好きです。
映画をよく観るようになったのがここ数年からなので、古い有名なものとかあまり観られていなかったりします。
映画をよく観るようになったのがここ数年からなので、古い有名なものとかあまり観られていなかったりします。
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