雨に唄えば(リチャ正)
公開 2023/09/24 16:12
最終更新
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※旅館でヤってるだけ
雨に濡れた草木が雲の隙間から差す日差しに光って美しい。
それを眺めながら、天使の梯子ですね、と言った男こそ天使のような美しい姿をしていたのだが……俺は彼が、リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアンが天使なんかよりも苛烈で、情熱的な男であることを知っている。
──それこそ、身をもって、知っているのだ。
□ □ □
本日の訪問先である笹木様のお宅でデザイン画のすり合わせをしている最中のことだった。酷いゲリラ豪雨にその場にいた全員が驚いて暫し窓の外を眺めたのを覚えている。
それからしばらく後で、席を外していた奥様が「さっきの大雨で、道路がね」と小さなラジオを持っていらして、俺たちは交通情報を聞くこととなった。
「えっ、全面通行止めですか?」
「さっき凄い量の雨が降ったでしょう。2日前の台風で県道の一部が土砂崩れを起こしていたのだけれど、またその辺りがやられたみたいなの」
「迂回路は……?」
「あるにはあるけど、そっちは旧道だから……かなり距離も長くなってしまうし。明日には県道は復旧すると思いますよ」
「そう、ですか」
チラリ、と隣に座るリチャードを見れば、致し方なしという顔をして頷かれた。今日は帰るのを諦めるしかなさそうだ。
土地勘はあまりないが、ホテルの手配をしなくてはならないだろう。
「本当ならうちに泊まって頂きたいが……今から息子夫婦のところへ行く予定になっているのです。大変申し訳ない」
「お気になさらないでください、笹木様。天候不良は誰のせいでもございません」
「しかし……ああ、そうだ。身内が近くの旅館を経営しておりますのでそちらを手配します。どうか泊まって行ってください」
「いえ、それは」
「どうかそう言わずに。恐らくホテルは同じような状況に陥った方で混み合うでしょう。内湯のある部屋を取れますので、どうかゆっくりお休みになってください」
「……分かりました。ご厚意、感謝いたします」
そのリチャードの一言で、ホテルを探すのは取り止めになった。
その後笹木様が電話をかけ、旅館までの地図を頂き向かったわけだが……着いたところにあったのは「ただ古いだけの建物です」という言葉を見事に裏切る、立派な門構えの高級旅館だった。
来る途中で買った替えのシャツと下着類の入った袋を手にした俺たちを出迎えてくれたのはここの女将である笹木様の姪御さんだった。
「伯父から連絡は頂いております。災難でしたね。どうかごゆっくりお寛ぎください」
「突然のこととはいえ、申し訳ありません。お世話になります」
さすが一流というか、リチャードの美貌を前にしても女将は動じることなく挨拶し、部屋までの案内をしてくれた。
案内された部屋はいくつかあるらしい離れの一室で、檜の内湯の他にベランダには小さな露天風呂まであるという豪華な造りだった。
夕食の時間になりましたらまたお伺いいたします、と女将が出ていったところで、ふへぇと声が出てしまったのは仕方がないことだろう。
「なんです、情けない。しゃきっとなさい」
「いやだってこんな高そうな旅館だと思ってなかったし、離れって。離れだぞ」
「笹木様は私が英国人なので、大浴場に抵抗があるのではと考えられたのでしょう。後日改めて御礼をお伝えしなければ」
「それは俺の仕事だな。タスクの一番上に上げておく」
「よろしくお願いいたします、秘書さん」
ふふ、と笑うリチャードも少しは気を張り詰めていたのかもしれない。なんとなくだが疲れているように見える。
「リチャード、食事の前に風呂に入るか?」
「……誘っているのですか」
「さ、そ……っ!?」
「冗談です。そうですね、先に内湯で汗を軽く流してきます」
「……うぅ、わかった」
「露天風呂にはあとで一緒に入りましょうね」
「おまっ……バカ!」
こっそりと耳元で囁かれた最後の言葉は冗談じゃないのだと知っている。
コロコロと笑いながら内湯に向かったリチャードを見送りつつ、火照った頬をどうやって落ち着かせるかを考え続けた。
□ □ □
「ふぁ、ん、リチャード……りちゃ、どぉ。あぁん、いぃ……っ!」
豪勢な夕食を終え、寝室に布団を敷かれたあとはもう俺たち2人だけの時間になった。
緑茶しかないけど飲むか、と聞いた口を口で塞がれ、抵抗する間もなく舌を絡めあえばもうほぼ自動的にお互いスイッチが入る。
夕食前の約束通り一緒に露天風呂に入ったのだが、湯船に入る前にお互いのものを擦り合わせながら一度達した。ペースがいつもよりかなり早い。
それからキスをしながら湯に浸かり、中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられでドライでいかされ、逆上せそうになる直前。
露天風呂の縁に俺を座らせたチャードは宣言もなく俺のモノを口に含んで、思い切り吸い上げた。思わず腰が引けそうになるものの、座っているので数センチしか動けない。
せめてとリチャードを離そうと頭に沿わせた手は、吸い上げられ舌で嬲られる感覚に力をなくし、リチャードの髪を梳いているだけになっている。
「まって、でる、でるぅ……! リチャード、くちはなし、やだ、や、あぁぁあ!!」
ささやかな抵抗も虚しく吐き出された白濁を目の前で飲まれて、しかも飲んだ相手は宗教画の中から出てきたような美しい男で……それに頭を抱えないやつがいるなら会ってみたいものだ。
「やだって、飲むなって言ったのに……!」
「ごちそうさまでした」
「あぁぁもう……お前のもあとで飲むからな……」
「ええ、それはあとでのお楽しみにしましょう。今は、こちらで」
早いペースで2度吐き出し、ドライでも1度イった身体はもう準備万端だった。ローションを使ってないのに指だけでじゅくじゅくと音を立てるようになった後孔に、リチャードの熱いものが押し当てられ。
──そのまま、最奥まで一気に突き刺した。
□ □ □
「……ん」
冷たいシーツの感触に目を覚ますと、まだ朝の5時だった。隣に僅かな温もりはあるものの、リチャードの姿はない。
露天風呂で中に2回出され、掻き出したあと寝室に戻ってゴムを3回消費したところまでは覚えている。恐らく俺は気絶してしまったのだろう。後始末を任せてしまったことが心苦しい。
……原因は分からないが、とにかく、ものすごく、盛り上がってしまった。
昨夜のリチャードの表情や自分の痴態を思い出すだけでゴロゴロと転げ回りたくなる。
あんなに激しく、静かに求めて、求められて……溶け合うのではないかと錯覚するくらい心も身体も近付いていたのは初めてだった。
「なんか、すごかった……」
「概ね同意します」
独り言に返答があったことに驚いて思わず飛び起きそうになり、腰の鈍い痛みにすぐに呻き声を上げてうつ伏せた。
冷蔵庫から持ってきたのか、ミネラルウォーターを2本枕元に置いたリチャードが布団の中に戻り、俺の身体を腕に閉じ込める。
「何をやっているのです」
「それはこっちのセリフだ。珍しいな、こんな時間に起きてるなんて」
「喉が渇いたもので。それから、先程また少し雨が降ったようで……音で起きました」
「また豪雨か?」
「いえ。通り雨だったようです。もう止んでいますよ」
ほら、とリチャードが指差した先には庭があり、雨に濡れた草木が雲の隙間から差す日差しに光って美しい。
「天使の梯子ですね」
俺の頭を柔らかく撫でながら言うリチャードこそ、天使のように美しい。もしかしたら天使よりも美しく、悪魔よりも妖しく、人を欲望の中へと突き落とす存在かもしれない。
「なぁ、さっきの」
「さっき?」
「……すごかったってやつ」
「ああ……。昨夜のあなたは、こちらのすべてを暴きつつ包み込むようでした」
「お前も、俺の知らない一番奥まで触られそうで怖いくらいだった」
「……素敵でした」
「……最高だった」
目を開けながら軽いキスを一度だけ交わして、額を合わせながら、そっと目を閉じる。
お互いに目の奥と胸に種火を残したままにしたのは、またあの深い繋がりを味わうために、今は眠るのが先決だと知っているからだ。
この続きはまた明日、使い慣れたベッドの上で──。
雨に濡れた草木が雲の隙間から差す日差しに光って美しい。
それを眺めながら、天使の梯子ですね、と言った男こそ天使のような美しい姿をしていたのだが……俺は彼が、リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアンが天使なんかよりも苛烈で、情熱的な男であることを知っている。
──それこそ、身をもって、知っているのだ。
□ □ □
本日の訪問先である笹木様のお宅でデザイン画のすり合わせをしている最中のことだった。酷いゲリラ豪雨にその場にいた全員が驚いて暫し窓の外を眺めたのを覚えている。
それからしばらく後で、席を外していた奥様が「さっきの大雨で、道路がね」と小さなラジオを持っていらして、俺たちは交通情報を聞くこととなった。
「えっ、全面通行止めですか?」
「さっき凄い量の雨が降ったでしょう。2日前の台風で県道の一部が土砂崩れを起こしていたのだけれど、またその辺りがやられたみたいなの」
「迂回路は……?」
「あるにはあるけど、そっちは旧道だから……かなり距離も長くなってしまうし。明日には県道は復旧すると思いますよ」
「そう、ですか」
チラリ、と隣に座るリチャードを見れば、致し方なしという顔をして頷かれた。今日は帰るのを諦めるしかなさそうだ。
土地勘はあまりないが、ホテルの手配をしなくてはならないだろう。
「本当ならうちに泊まって頂きたいが……今から息子夫婦のところへ行く予定になっているのです。大変申し訳ない」
「お気になさらないでください、笹木様。天候不良は誰のせいでもございません」
「しかし……ああ、そうだ。身内が近くの旅館を経営しておりますのでそちらを手配します。どうか泊まって行ってください」
「いえ、それは」
「どうかそう言わずに。恐らくホテルは同じような状況に陥った方で混み合うでしょう。内湯のある部屋を取れますので、どうかゆっくりお休みになってください」
「……分かりました。ご厚意、感謝いたします」
そのリチャードの一言で、ホテルを探すのは取り止めになった。
その後笹木様が電話をかけ、旅館までの地図を頂き向かったわけだが……着いたところにあったのは「ただ古いだけの建物です」という言葉を見事に裏切る、立派な門構えの高級旅館だった。
来る途中で買った替えのシャツと下着類の入った袋を手にした俺たちを出迎えてくれたのはここの女将である笹木様の姪御さんだった。
「伯父から連絡は頂いております。災難でしたね。どうかごゆっくりお寛ぎください」
「突然のこととはいえ、申し訳ありません。お世話になります」
さすが一流というか、リチャードの美貌を前にしても女将は動じることなく挨拶し、部屋までの案内をしてくれた。
案内された部屋はいくつかあるらしい離れの一室で、檜の内湯の他にベランダには小さな露天風呂まであるという豪華な造りだった。
夕食の時間になりましたらまたお伺いいたします、と女将が出ていったところで、ふへぇと声が出てしまったのは仕方がないことだろう。
「なんです、情けない。しゃきっとなさい」
「いやだってこんな高そうな旅館だと思ってなかったし、離れって。離れだぞ」
「笹木様は私が英国人なので、大浴場に抵抗があるのではと考えられたのでしょう。後日改めて御礼をお伝えしなければ」
「それは俺の仕事だな。タスクの一番上に上げておく」
「よろしくお願いいたします、秘書さん」
ふふ、と笑うリチャードも少しは気を張り詰めていたのかもしれない。なんとなくだが疲れているように見える。
「リチャード、食事の前に風呂に入るか?」
「……誘っているのですか」
「さ、そ……っ!?」
「冗談です。そうですね、先に内湯で汗を軽く流してきます」
「……うぅ、わかった」
「露天風呂にはあとで一緒に入りましょうね」
「おまっ……バカ!」
こっそりと耳元で囁かれた最後の言葉は冗談じゃないのだと知っている。
コロコロと笑いながら内湯に向かったリチャードを見送りつつ、火照った頬をどうやって落ち着かせるかを考え続けた。
□ □ □
「ふぁ、ん、リチャード……りちゃ、どぉ。あぁん、いぃ……っ!」
豪勢な夕食を終え、寝室に布団を敷かれたあとはもう俺たち2人だけの時間になった。
緑茶しかないけど飲むか、と聞いた口を口で塞がれ、抵抗する間もなく舌を絡めあえばもうほぼ自動的にお互いスイッチが入る。
夕食前の約束通り一緒に露天風呂に入ったのだが、湯船に入る前にお互いのものを擦り合わせながら一度達した。ペースがいつもよりかなり早い。
それからキスをしながら湯に浸かり、中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられでドライでいかされ、逆上せそうになる直前。
露天風呂の縁に俺を座らせたチャードは宣言もなく俺のモノを口に含んで、思い切り吸い上げた。思わず腰が引けそうになるものの、座っているので数センチしか動けない。
せめてとリチャードを離そうと頭に沿わせた手は、吸い上げられ舌で嬲られる感覚に力をなくし、リチャードの髪を梳いているだけになっている。
「まって、でる、でるぅ……! リチャード、くちはなし、やだ、や、あぁぁあ!!」
ささやかな抵抗も虚しく吐き出された白濁を目の前で飲まれて、しかも飲んだ相手は宗教画の中から出てきたような美しい男で……それに頭を抱えないやつがいるなら会ってみたいものだ。
「やだって、飲むなって言ったのに……!」
「ごちそうさまでした」
「あぁぁもう……お前のもあとで飲むからな……」
「ええ、それはあとでのお楽しみにしましょう。今は、こちらで」
早いペースで2度吐き出し、ドライでも1度イった身体はもう準備万端だった。ローションを使ってないのに指だけでじゅくじゅくと音を立てるようになった後孔に、リチャードの熱いものが押し当てられ。
──そのまま、最奥まで一気に突き刺した。
□ □ □
「……ん」
冷たいシーツの感触に目を覚ますと、まだ朝の5時だった。隣に僅かな温もりはあるものの、リチャードの姿はない。
露天風呂で中に2回出され、掻き出したあと寝室に戻ってゴムを3回消費したところまでは覚えている。恐らく俺は気絶してしまったのだろう。後始末を任せてしまったことが心苦しい。
……原因は分からないが、とにかく、ものすごく、盛り上がってしまった。
昨夜のリチャードの表情や自分の痴態を思い出すだけでゴロゴロと転げ回りたくなる。
あんなに激しく、静かに求めて、求められて……溶け合うのではないかと錯覚するくらい心も身体も近付いていたのは初めてだった。
「なんか、すごかった……」
「概ね同意します」
独り言に返答があったことに驚いて思わず飛び起きそうになり、腰の鈍い痛みにすぐに呻き声を上げてうつ伏せた。
冷蔵庫から持ってきたのか、ミネラルウォーターを2本枕元に置いたリチャードが布団の中に戻り、俺の身体を腕に閉じ込める。
「何をやっているのです」
「それはこっちのセリフだ。珍しいな、こんな時間に起きてるなんて」
「喉が渇いたもので。それから、先程また少し雨が降ったようで……音で起きました」
「また豪雨か?」
「いえ。通り雨だったようです。もう止んでいますよ」
ほら、とリチャードが指差した先には庭があり、雨に濡れた草木が雲の隙間から差す日差しに光って美しい。
「天使の梯子ですね」
俺の頭を柔らかく撫でながら言うリチャードこそ、天使のように美しい。もしかしたら天使よりも美しく、悪魔よりも妖しく、人を欲望の中へと突き落とす存在かもしれない。
「なぁ、さっきの」
「さっき?」
「……すごかったってやつ」
「ああ……。昨夜のあなたは、こちらのすべてを暴きつつ包み込むようでした」
「お前も、俺の知らない一番奥まで触られそうで怖いくらいだった」
「……素敵でした」
「……最高だった」
目を開けながら軽いキスを一度だけ交わして、額を合わせながら、そっと目を閉じる。
お互いに目の奥と胸に種火を残したままにしたのは、またあの深い繋がりを味わうために、今は眠るのが先決だと知っているからだ。
この続きはまた明日、使い慣れたベッドの上で──。
