欠片も残さず
公開 2023/09/24 14:48
最終更新
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「私が恐ろしくはありませんか。
異種族の毛皮をかぶり本性を隠し続けた私のことが。
私の心の本質は獣。この耳の通りの獰猛で狡猾な、獣です。
貴方の身体を食い千切ることだって容易い。
ヒトの血肉は私に……私たちにとってはご馳走なのです。
私には、貴方は、ただのエサになり得るのですよ。
――私を、恐ろしいとは思いませんか」
真っ直ぐに見つめてくる瞳は月の光を背にしても翳ることなく妖しく輝く。
「……おそろしいよ」
小さな花をつけた枝が、俺の声に反応するかのように揺れる。
「……お前が、月よりも、夜よりも……この世のなによりも美しすぎて、おそろしい」
他でもないお前に食べられるなら本望だ、と本心から告げたのに、彼は数秒の逡巡のあとで口角を上げた。
「貴方は、本当に……本当に、愚か者ですね」
だけれど貴方のその愚かさも、すべてを愛しています、という言葉と共に与えられた激しい口づけは、甘い甘い血の味がした。
――喰らい尽くしてほしい。身体の奥の、奥深くまで、お前のものだと思い知らせてくれよ。
異種族の毛皮をかぶり本性を隠し続けた私のことが。
私の心の本質は獣。この耳の通りの獰猛で狡猾な、獣です。
貴方の身体を食い千切ることだって容易い。
ヒトの血肉は私に……私たちにとってはご馳走なのです。
私には、貴方は、ただのエサになり得るのですよ。
――私を、恐ろしいとは思いませんか」
真っ直ぐに見つめてくる瞳は月の光を背にしても翳ることなく妖しく輝く。
「……おそろしいよ」
小さな花をつけた枝が、俺の声に反応するかのように揺れる。
「……お前が、月よりも、夜よりも……この世のなによりも美しすぎて、おそろしい」
他でもないお前に食べられるなら本望だ、と本心から告げたのに、彼は数秒の逡巡のあとで口角を上げた。
「貴方は、本当に……本当に、愚か者ですね」
だけれど貴方のその愚かさも、すべてを愛しています、という言葉と共に与えられた激しい口づけは、甘い甘い血の味がした。
――喰らい尽くしてほしい。身体の奥の、奥深くまで、お前のものだと思い知らせてくれよ。
