猫を飼う男、犬に拾われた男
公開 2023/09/24 12:29
最終更新
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※山田さんが殺し屋なパロ。
とんでもなく美しくて、毛並みのいい猫を見つけた。
対象の殺害依頼は、隠し撮りすら出来なかったのか書類のみだった。えらく雑な依頼の仕方だなぁと考えながらも詳細を聞けば「金髪碧眼の男、見ればすぐ分かる」としか返ってこない。
いやいやさすがに適当すぎるだろ! と思ってたけど、依頼主の言葉は間違いじゃなかった。確かにあれは見ればすぐ分かる。というか、一度見たら忘れられない類のものだろう。
美しくて、しなやかで、気高くて、壊れそうなのに獰猛な気配のする猫……というより獅子みたいな、不思議な存在。
──殺すなんて勿体ないと思った。
もっとこいつのことが知りたい。話もしたいし食事もしてみたい。仲良くなりたい、というのとはちょっと違うような気もしたけれど。
とにかく。
こいつが俺のものになるんなら、報酬なんかどうでもいい。契約違反だと怒られたら依頼主の方を殺せばいいんだ。どうせ相手が知っている俺の情報なんて、仕事用の偽名と、いつでも捨てられるメールアドレスくらいなのだから。
□ □ □
「名前は?」
「誠司。苗字は……クソ親父のだから言いたくない。仕事の時は適当に名乗ってたよ。読んだ本や映画の登場人物だったり、色の名前だったり」
「私に本名を名乗っていいのですか? 私があなたを売らないという保証もないでしょうに」
「そしたらその時はアンタを殺すだけだよ、バクスチャー。さっきも、今もさ、三秒もあればアンタをただの肉の塊に出来る。でも勿体ないからしたくないだけ」
「……そうですね。私はあなたにはどうやっても勝てないでしょう」
「そういうこと。ところでさぁ」
オムライスを食べていたスプーンをくるりと振って指し示せば、バクスチャーは行儀が悪いとでも言いたそうに顔を顰めた。でもそういう顔も綺麗で、すごく好きだ。
「夕飯がパフェとケーキ三個ってさすがにヤバくない?」
「ヤバくありません。好きなものを食べてよいといったのはあなたでしょう、誠司」
「……もっかい言って」
「誠司」
「いやそっちじゃなくて、『ヤバくありません』のほう」
「……いいから黙って食べなさい。冷めますよ」
「そーですね。まあ話は食べてからでも出来るし」
ファミレスのテーブルで、親戚にも友人にも見えない二人が向かい合わせで食事をしている様はそれなりに目立つ。しかもそのうちの一人は宗教画から出てきたとかパリコレに出演予定のモデルだとか言われても納得してしまいそうな美貌の持ち主で、しかも大きなパフェとケーキをご機嫌で食べているというアンバランスさなのだ。
(ああ、本当にいい猫を見つけた)
にんまりと笑いそうになるのを何とか堪えながら、俺はオムライスを再び食べ始めた。
とんでもなく美しくて、毛並みのいい猫を見つけた。
対象の殺害依頼は、隠し撮りすら出来なかったのか書類のみだった。えらく雑な依頼の仕方だなぁと考えながらも詳細を聞けば「金髪碧眼の男、見ればすぐ分かる」としか返ってこない。
いやいやさすがに適当すぎるだろ! と思ってたけど、依頼主の言葉は間違いじゃなかった。確かにあれは見ればすぐ分かる。というか、一度見たら忘れられない類のものだろう。
美しくて、しなやかで、気高くて、壊れそうなのに獰猛な気配のする猫……というより獅子みたいな、不思議な存在。
──殺すなんて勿体ないと思った。
もっとこいつのことが知りたい。話もしたいし食事もしてみたい。仲良くなりたい、というのとはちょっと違うような気もしたけれど。
とにかく。
こいつが俺のものになるんなら、報酬なんかどうでもいい。契約違反だと怒られたら依頼主の方を殺せばいいんだ。どうせ相手が知っている俺の情報なんて、仕事用の偽名と、いつでも捨てられるメールアドレスくらいなのだから。
□ □ □
「名前は?」
「誠司。苗字は……クソ親父のだから言いたくない。仕事の時は適当に名乗ってたよ。読んだ本や映画の登場人物だったり、色の名前だったり」
「私に本名を名乗っていいのですか? 私があなたを売らないという保証もないでしょうに」
「そしたらその時はアンタを殺すだけだよ、バクスチャー。さっきも、今もさ、三秒もあればアンタをただの肉の塊に出来る。でも勿体ないからしたくないだけ」
「……そうですね。私はあなたにはどうやっても勝てないでしょう」
「そういうこと。ところでさぁ」
オムライスを食べていたスプーンをくるりと振って指し示せば、バクスチャーは行儀が悪いとでも言いたそうに顔を顰めた。でもそういう顔も綺麗で、すごく好きだ。
「夕飯がパフェとケーキ三個ってさすがにヤバくない?」
「ヤバくありません。好きなものを食べてよいといったのはあなたでしょう、誠司」
「……もっかい言って」
「誠司」
「いやそっちじゃなくて、『ヤバくありません』のほう」
「……いいから黙って食べなさい。冷めますよ」
「そーですね。まあ話は食べてからでも出来るし」
ファミレスのテーブルで、親戚にも友人にも見えない二人が向かい合わせで食事をしている様はそれなりに目立つ。しかもそのうちの一人は宗教画から出てきたとかパリコレに出演予定のモデルだとか言われても納得してしまいそうな美貌の持ち主で、しかも大きなパフェとケーキをご機嫌で食べているというアンバランスさなのだ。
(ああ、本当にいい猫を見つけた)
にんまりと笑いそうになるのを何とか堪えながら、俺はオムライスを再び食べ始めた。
