不器用な君の、これからを(ジェフ誕)
公開 2023/09/24 01:23
最終更新 2023/09/24 11:56
「ジェフリー・クレアモント誕生祭2022」お祝いSS

「実はさ」
「うん」
「誕生日がずっと嫌いだったんだ」
「あら、そうなの」
「まあ正確には『誕生日を祝われること』が嫌いだったんだけど」
「へぇ、どうして?」
「……大した理由じゃないよ。聞いたら君は『下らない』って笑うかも」
「笑わなかったら?」
「それもまた君らしいかな」
「ふぅん。まあ話してごらんなさいよ。笑うかどうかは私が決めるから」
「……本当に、下らない理由だよ?」
「どうぞ」
「……兄弟の中で、僕だけだったんだよ」
「何が?」
「誕生日を『普通に祝われる』のが」
「普通じゃないお祝いの仕方があるのね」
「あるある。たとえば我が愛する兄、ヘンリー・クレアモント。生まれた時から次期伯爵として以降の人生を定められていた彼の誕生日は、ハリー個人を祝うと言うより『次期伯爵のご機嫌取り』の意味合いが強かったんだよ。まあ、途中でいろいろあって一時期は減ったけどね」
「それはまあ、普通じゃないわね」
「次は天使のように可愛らしい顔を持って末っ子だ。リッキーはよりにもよってクリスマスに生まれてしまったばっかりに……まあ、あとは言わなくても大体の想像はつくだろう? その通りだと言っておくよ」
「で、あなたは普通に祝われた?」
「二人に比べればぜんぜん普通。僕はハリーのスペアの立場ではあったけれど、あくまで仮の状態だった。ハリーは少し出来が悪かろうと、父の教えを問題なく受けていたし、病気や怪我で死なない限り僕の出番はなかった。あの遺言状でリッキーが選ばれるまでは」
「……続けて?」
「リッキーが失踪してからは、僕の立場もまた変わったよ。正式な継承権を持つわけじゃないのに、次代に一番近いと思う人もいたよ。父はともかく、ハリーは生きてるのにね。そんな輩が僕の誕生日を祝うんだ。昔ハリーにしていたように」
「だから、誕生日が嫌いになったの?」
「僕は『普通の誕生日』を知ってるから、誰かが突然僕のことを特別扱いしても適当にやり過ごせるけど、二人は違うんだよ。そんなの……ズルいだろ」
「馬鹿ねぇ」
「あれ、『下らない』じゃなかった」
「それも思ったけど、わざと言わなかったの。あのねぇジェッフィ、あなただけ普通の……何が普通かは今は置いておくけど、普通の誕生日を過ごしたからって、あの二人があなたをズルいと思うわけないでしょ」
「それはまあ、僕も思うけど」
「分かってるのにウジウジするなんて馬鹿で可愛くて泣けてきちゃうわ。特別にキスしてあげる。でもまだおでこにだけね」
「ありがとう、うん、口紅ついてない? これ。だけどさぁ」
「だけどじゃないの。考えてみなさいよ。あのお兄さんとベイビーちゃんがただ黙って自分の状況を受け入れてると思う?」
「ベイビーちゃんてリッキーのこと? 受け入れると言うか、そうするしか」
「オーゥ、あなた自分の兄弟のこと分かってないのねぇ……。大丈夫、大丈夫。絶対やられたまま黙ってるタマじゃないから」
「……まあそれはわかる」
「そもそも今はそれぞれ好きに過ごしてるでしょ。イギーがいるのよ? あの子もし十二月二十四日が何の日か、って聞かれたらシスターや神父様や十字架の前だろうと『リチャードの誕生日ですね』って答えるわよ」
「想像できちゃうとこが怖いなぁ」
「それにお兄さんだって新しい友達が出来たでしょ。あのギタリストの。それに今はオクタヴィアちゃんだっているのよ? 昔の誕生日なんかより、大切なのはこれからどう過ごしていくかじゃない」
「……君のそういうところ、尊敬してるよ」
「あらありがとう。ほっぺにキスしてあげる」
「だからこれキスマークついてない? 大丈夫?」
「で? そんな話を今日したってことは、これからは心を入れ替えて、思う存分誕生日を楽しむことにしたってことなのよね?」
「……ポジティブだなぁ」
「ただでさえ彼氏がネガティブ気味なのに私までネガティブになってどうするの。しかも誕生日なのに。馬鹿ねぇジェッフィ。お誕生日おめでとう」
「罵るのか祝うのかどっちかにしてよキム」
「でも嫌いじゃないって顔してるの知ってるんだから。まったくまだまだ幸せになり足りてないわね。仕上げにちゃんとキスしてあげる」
「ははっ、ようやく? でも……うん、素敵なプレゼントをありがとう、キム」
「どういたしまして。ああそうだ、あと五分で通話繋ぐことになってるのよね」
「……………………誰と?」
「イギリスとスリランカ」
「ちょっと待って、今、僕の顔すごいことになってるよね? わざと!? しかも五分とかじゃなくもう繋がっ、あ、あーーーー!」
活きの良い腐った鮭です。
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