本当のことも、大切なことも。
公開 2026/02/11 11:11
最終更新
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それでも今の心境を残そう。 #
率直に言えば「まだ言葉にしたくないな」が今の心境。『捨てられないおばあちゃんの捨て方』が1日に千秋楽を迎え、配信では14日まで観られるが故なのか、終わりにしたくないような気持ちでいる。
公演を終えて、配信の映像を観てみると、人と喋って過ぎて、笑ってしまった。良かった、と思った。この作品を創り始めた時には、果たして本当に自分に出来るのだろうかと疑っていたから。
一人で話す一人芝居から、誰か一人と対話する一人芝居へと歩みを進め、意図して複数人と会話する一人芝居を創ろうと思っていた訳ではない。けれども、今回の作品を創るならば相手が複数いなければ成立しないとわかってはいて、それがハードルの高いことだということもわかってはいて、越えなければならないハードルだということもわかってはいて。
創作の過程は、想像を遥かに超えるくらい大変だったし、上演時間40分の一人芝居なんて書いたことないし、13000字の台詞を覚えるなんて意味が分からなかったし、終わった後は「もう二度と一人芝居なんてやりたくない」と本気で思ったし、いや、それは今も思い続けているし、例え1ページの脚本だったとしても、絶対にやりたくないと思っているし。
でもやっぱり、この公演が終わってしまうのが、寂しいのだと思う。普段の脚本は、あれだけ日常を描き続けている割に、自分の実情や身の回りのことを、基本的には書かないようにしている。ただ今回は、大部分は創作だけれども、コーヒーの微糖くらいは本当のことを書いていて、だとするとそれが結構大切だったりもして。
それでも、やって良かったなと思っている。折角閉じ込めておいた本当のことが、日々を送る中でそうじゃなくなっていくのが、手のひらいっぱいに包んだ大切なことが、隙間から零れ落ちてしまうのが、どうしたって時は止められないから、もどかしくて悔しくて切ないけれども。それでも、やって良かったなと、心底思っている。
「お芝居だから虚構だし、だけど虚構から見える現実もあると思う」というようなことを、人生で初めて作った当日パンフレットに書いた。本当のことも、大切なことも、舞台の上で演じている以上は嘘でしかない。ただ、勿論きっと変わっていってしまうだろうけど、本当だったことで、大切だったことなのは、変わらないから。それがあれば、この先の未来も信じていけると、『捨てられないおばあちゃんの捨て方』を終えた今、そんな風に思うのだ。
今日のエッセイの最後には、今回の当日パンフレットの文章を載せておこうと思う。4作品目にして、初めて当日パンフレットを作った。そんな未来が待っていたことが、何だかとても嬉しいのである。
ご観劇いただいた皆様、応援して下さった皆様、改めまして、本当にありがとうございました。
当日パンフレットより。 #
思い起こせば、人生で初めての一人芝居は、2021年のコロナ禍真っ只中、無観客で、収録した動画を編集して、YouTubeでの配信でした。作品に関わる全てのセクションを一人で担い、劇場のスタッフさんにも、上演中はマスクを外すため、客席扉を隔てた所に移ってもらい、誰一人いない中で、他人と繋がっていると唯一頼れたのは、カメラの録画中に光る赤いランプだけだったことを今でもよく覚えています。
今日、劇場ではお客様に直接お会いすることが出来て、配信では生配信にアーカイブ配信とご覧いただくことが出来て、スタッフワークではプロの皆様にお力添えをいただくことが出来て、一人芝居なのに全然一人じゃなくて、ただただそれがこの上なく嬉しくて仕方がありません。
一人芝居を一人じゃなくしてくれて、本当に、本当に、ありがとうございます。
この公演が、どうか無事に終えられますように。お客様もスタッフの皆様も、どうぞ安全にご帰宅できますように。そしていつの日か、劇場で、配信で、またお会いできますように。
改めまして、ご観劇いただき誠にありがとうございます。最後までごゆっくりとお楽しみください。
中西崇将
【次回は3月11日(水)に公開予定です】
中西崇将 エッセイ『ハチミツはまだ早い』
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