通学路はいつだってランウェイ。
公開 2024/09/11 11:11
最終更新 -


今日は水曜日。 #

 平日。休日。土日祝休みの働き方をしている訳ではないため、近所の小学校の下校のタイミングで小学生に出くわすと、色鮮やかなランドセルには目を見張るものがあるなと、いつも感心してしまう。

 黒と赤だけなんてことは全く無くて、桃、青、紫、緑、等々、戦隊モノが20隊は作れそうなくらいにはカラフルなランドセルを身にまとって登下校をしているなと思う。反面、自分自身の小学校入学前には黒しか選びようがなかったなと、時代を振り返ってしまう。

 今でも大型ショッピングセンターで色とりどりのランドセルが並んでいる光景を目にする度にいつだって心が躍る。そして小学生の自分がこの色のランドセルを背負ったらどんなことを思っただろうかとひとしきり思いを巡らせてその場を後にする。そう、わかりやすく一言で言えば「ランドセルをこじらせている」のである。


レインボー。 #

 当時、今からもう四半世紀は前だろうか。四半世紀も前と書いて驚愕してしまうけれども、今は学習机の引き出しの中にそれは仕舞っておいて。家族総出でデパートのランドセル売り場に出向いた時に、今となっては詳しく覚えていないが、恐らくかなりごねたような記憶がある。

 「黒は嫌だ。」と。

 付け加えると、今となっては舞台のスタッフとして呼んでいただくこともあるため、黒い服も用意してはいるが、昔から何となく、あくまでも何となく、黒が好きではなかった。だって黒って何塗り重ねても黒いままだし、そもそも一色より虹色の方がお得じゃない?みたいなことを本気で思う、そんなタイプの生まれ持っての自由人6歳児、この発言である。

 「○○レンジャーのリーダーは赤じゃん。」と。

 きっと困らせたんだろうなと思う。でもしょうがない。だって嫌だったんだから。

 しかしながらその当時、黒以外の色と言えば基本的に赤しかなく、だからといって赤いランドセルを選ぶことは、時代背景も考えてみていただきたい。容易ではなかった。入学してみたら茶色のランドセルを使っている同級生も中には片手で数えられるくらいにはいたが、今ほどに選択肢が増えたのは、ここ10年くらいの話ではないだろうか。

 結果、その売り場にある黒いランドセルを全て見渡して、唯一留め具部分が黄色いプラスチックのタイプの物を選んだ。他のランドセルより少し高かったような気もする。それでももうそこで折り合いを付けるしかなかったのだろう、親も、自分も。


6年。 #

 ランドセルで小学校生活が変わる訳ではないし、人生が決まる訳ではない。でも毎日身に付ける、ましてや基本は6年間、一緒に過ごすものを選ぶのならば、親だって慎重になるのは当たり前で、だからこそ子どもだって真剣なのだ。例え黒いランドセルだとしても、自分で選んだ黄色いプラスチックの留め具が最後の砦として、色彩の一角を担っていてくれていたことは、自分自身大きな支えになっていた。それは色がどうこうという話だけでもなくて、自分で選んだという経験が、自分の支えになっていたんじゃないかと、今は思う。

 もし今自分で好きにランドセルを選んで良いのならば、絶対にこうしたいというのがある。色は黄緑。金具は当時と違って逆にシンプルに銀。装飾は極力少なく、あくまでも色の派手さで勝負。数年前に本気で購入を検討したことがあるが、サイズや実際の使い勝手を考えてしまって結局買わないまま今日に至る。

 だけれども、やっぱりこの先黄緑のランドセルを購入することがあるかもしれない。可能性の話ではあるけれども、結構全然普通に、80%くらいの感じで買いそうな気がする。背負った私を想像すると、これまた愉快で滑稽で最高に似合っている気がする。今度は時代にとやかく言われることもない。別にもう小学生でもないし、欲しくて買っているだけだし、黄緑のランドセルを選び取ったのは他でもない自分自身なのだから。

 だからこそ、誰がどんな色のランドセルを背負っていたとしても、素敵な色だねと、心の中で褒めてあげたい。その色を選んだのはその子かもしれないし、保護者の方かもしれないし、別の誰かかもしれない。その上で、その選択をしたのがその子なのだとしたら、自分で選べたんだねと、心の底から讃えてあげたい。あんなにもたくさんの色がある中から、あんなにもたくさんの種類がある中から、自分にとって大切で特別なアイテムを選ぶ経験なんて、少なくとも人生一桁時代にはそうそうあることではない。あなたが決めた素敵なアクセサリーで自分自身を着飾って、どこまでも好きなだけ歩き続けて欲しい。そしてもし、自分で選べなかったとしても、それを恥じたり悔いたりすることはないと伝えたい。大人になってからでも好きな色のランドセルは手に入れられることがあることも。もっとたくさんのあれこれを、自分で選んで、自分で決めて、切り拓いていく権利があることも。

 いつの時代も、誰にとっても、通学路はいつだってランウェイ。何を着たって、何を身に付けたって、全てが自由。給食着振り回しても、プールバッグ投げ捨てても、上履きで外に出ちゃっても、何だってオシャレ。ランドセルが何色でも、全ての道はメットガラに通ず。


【次回は10月11日(金)に公開予定です】

中西崇将 エッセイ『ハチミツはまだ早い』
https://simblo.net/u/Ti6HDX

その他のコンテンツはこちらから
YouTube https://www.youtube.com/@takanobu_info
タイッツー https://taittsuu.com/users/takanobu_info
Twitter/X https://twitter.com/takanobu_info
お問い合わせ https://forms.gle/v4368g5b2FFWJp4p7
中西崇将 (なかにしたかのぶ)
プロフィールページ
お芝居やYouTubeをしています!タイッツー系YouTuberです!
エッセイを書いてみたくてシンプルブログに載せることにしました!
最近の記事
エッセイなんて書いてる場合じゃない、んじゃない。
今日もエッセイを書くこと。 #  今日が、エッセイを出す日だということはずっとわかっていたし、きっと公演に向けての…
2026/01/11 18:13
『捨てられない おばあちゃんの 捨て方』
―――年末。祖父母宅の二階、おばあちゃんの部屋。祖父母共に老人ホームへ入居が決まり、春からは姉が家族と共に引っ越して、…
2025/12/11 11:11
【名前】、【中西】、【私】。
デフリンピックとは。 #  耳の聞こえないアスリートのためのオリンピックとして4年に一度行われているデフリンピック。…
2025/11/11 11:11
17年。
2008年。 #  まだ実家暮らしの頃。まだ眠れるなと思いながら家でダラダラと過ごしていた土曜日の午前中。テレビでは「…
2025/10/11 11:11
腕さえしのげば暑さを忘れる。
暑さ寒さも彼岸まで、 #  確か昨年の夏だったはず。タイムラインで『アームカバーを濡らして着けると暑さ対策として良…
2025/09/11 11:11
目指すは『とにかく何もしないホカンス』。
0日目。 #  ホテルでとにかくダラダラしたい。と、漠然と思っていた六月。そしてこれは2025年下半期しいたけ占いの双子…
2025/08/11 11:11
年を取って、歳を重ねて。
また"隣人"に出会えた。 #  先月。今年に入ってから毎週ずっと楽しみにしていたドラマ『続・続・最後から二番目の恋』…
2025/07/11 11:11
紛れもなく、揺るぎなく、初舞台。
二人芝居と一人芝居。 #  昨年書いた脚本『インナーに、タイツ、長袖、長ズボン』は、ゴールデンウィークに実家に帰省…
2025/06/11 11:11
遊びながらは露知らず。
何時間遊んできたんだろう。 #  先日Nintendo Switch 2の購入希望者が220万人の応募があったというニュースがあった。…
2025/05/11 11:11
生きているだけで∞ポイント。
過去のポイ活。 #  「そうだ、ポイ活をしよう。」と思った先月のある日、ポイ活を始めてみた。元々クレジットカードと…
2025/04/11 00:00
学び舎に思いを馳せて。
大学生の時は #  新生活が始まる人も多い、まもなく四月の今日この頃。11日から少し遅れた今回のエッセイは、胸を躍ら…
2025/03/31 23:00
休みの日には『休日』を。
2024年より。 #  2024年が幕を下ろし、2025年の幕が上がった。大型連休とまではいかないが、ある程度まとまった『休日…
2025/02/11 11:11
呟きと共に旅をして。
笑って、解れて。 #  『今日のおにぎり、明日のパン。』の広告配信が終了した。緊張も大いにあったが、自分のタイムラ…
2025/01/11 11:11
明後日の、その先の。
撮影当日。 #  朝。寝坊もせず、体調も問題ない。手早く身支度を済ませ、再度持ち物の確認をする。想定していたよりも…
2024/12/11 11:11
何気ない日にお~いお茶を。
中高の 舞台のお供は お~いお茶 #  この句は、中学生・高校生の頃、演劇部に所属していたことを懐かしんで詠んだ句…
2024/11/11 11:11
右も左もわからない。
右と左。 #  タイトル通り。私は、右と左を判断するのが、かなり苦手だ。利き手はどちらかと尋ねられれば右利きと答えら…
2024/10/11 11:11
通学路はいつだってランウェイ。
今日は水曜日。 #  平日。休日。土日祝休みの働き方をしている訳ではないため、近所の小学校の下校のタイミングで小学生…
2024/09/11 11:11
盛り上がる程に丑三つ時。
やぁ。 #  それはもう突然で、唐突で、当たり前のようにやってきた。いらっしゃい、『書けない』。こいつは脚本を書き続…
2024/08/11 11:11
空も琵琶湖を見習って。
雨と私。 #  まだまだ梅雨明けは先だろうか。これから暑い夏が始まると思うと憂鬱ではあるが、私は梅雨が明けることの方…
2024/07/11 11:11
誰だって針千本を飲まされる泥棒じゃないか。
エッセイを書いてみて。 #  前回。回転しない寿司屋のカウンターで「サーモン」と伝えた、という話を綴った。が、翌日に…
2024/06/11 11:11
もっと見る
タグ
ハチミツはまだ早い(21)
もっと見る