空も琵琶湖を見習って。
公開 2024/07/11 11:11
最終更新
2024/07/28 01:23

雨と私。 #
まだまだ梅雨明けは先だろうか。これから暑い夏が始まると思うと憂鬱ではあるが、私は梅雨が明けることの方が人一倍嬉しい。どうにかして濡れたくない。そんなの海とプールと風呂と温泉で十分。天気や気圧なんかに気分も体調も左右されたくない。朝起きたら雨が降っていたり、休日の天気が雨予報だったりするとあからさまにテンションが下がる。そのくらい私は、雨と良好な関係を築けていない。他の天気とは仲良くやれている方だと思う。あまり暑すぎたり寒すぎたりするのは考え物ではあるけれども、晴れも曇りも雪も、強風だって別に茶飲み友達くらいにはなれそうだ。だがしかし、雨。おい。ちょっと待ってくれ。そのお茶を君の水分で薄めないでくれ。
想像してみて欲しい。雨が降る中、これを読んで下さっているあなたと私が一人一本傘を差して、10分一緒に歩いたとする。10分後、もしかしたらあなたの足元が少し濡れてしまったかもしれない。申し訳ない。申し訳ないが、あなたの視線を私に向けていただけるだろうか。私は恐らくその7倍は濡れている。別にゲリラ豪雨だとか激しい横殴りの雨だとか、そんなことは関係なく、ただサーサーと降っているだけの雨でそうなる。むしろ濡れていないのは顔周りくらいだろう。エッセイだから嘘はついていない。全く大袈裟ではない。
季節は巡る。 #
大体「四季」と言っているのだから、梅雨なんて入ってこないでほしい。春夏秋冬と言っているのに、しれっと春・梅雨・夏・秋・冬みたいに何食わぬ顔で居座って、そんなのまるで「五季」じゃないか。ただでさえ温暖化で夏の巨大化が叫ばれているのだから、梅雨はその座を春に譲ってやってくれ。頼む。それでも水不足になったら困るのは勿論わかっているから、恵みの雨というのも理解はしている。のだが、降るなら降るで構わないので、私が家の中や室内にいる時だけにしてほしい。約束してほしい。外に出た瞬間に降りやむように、どうにか契約を結ばせてほしい。そのためだったらどうにか頑張って魔法少女にだってなってやるから。
やれることなら。 #
これでも出来る対策はしてきたはずだ。まずは長靴。昔は所謂言葉通りの長靴しかなかったのが、今はレインシューズやレインブーツと呼ばれるような、そこまで長くない、スニーカーのように気軽に履けるタイプの物もあり、私もその中の、少し長いくらいのレインシューズを愛用している。折り畳み傘はどんなに晴れ予報が出ていても毎日必ず持ち歩いている。ただ、どうしても小ぶりになってしまうため、濡れやすいことは否めない。仕方ない。今は徒歩か電車、時々バスで移動しているが、メインが自転車だった頃の名残で合羽も持っている。
そして最重要、傘。大きければ濡れないだろうと期待を込めてかなり大ぶりな物を使っていたこともあれば、逆さ傘と呼ばれる濡れた面が内側に入るため、周囲の物を濡らさずに済む傘を大変便利で好んで使っていたのだが、どこかに置いてきてしまったのか無くしてしまい、ショックでしばらく新しい傘を導入できていないのも事実ではある。
そのようにして万全の対策グッズで身を固めてみたら、ちょっとくらいは雨が降ってもマシな気持ちになるかと思いきや、全くそんなことはなかった。装備品だけやたら豪華なレベル1の勇者とでも言おうか。結局の所、雨が降っていたら濡れたくなくてどこに行くにも億劫なのだから、もういっそ出掛けない方が良いに決まっている。ヒンメルならそうするってマジで。
ビニール傘で見えた世界。 #
「雨で傘差してても普段と同じように歩くから濡れるんじゃない?」と言われたことがある。いや、確かにその通りで、雨が降っていようが傘を差していようがお構いなしに、ずかずかと歩いている。だからといって、それの何が悪いのか。冗談じゃない。こちらはただ歩いているだけなのだから、傘だってちゃんと差しているのだから、「あ、じゃあこちらも気を付けて降りますね」と、雨の方が譲歩してほしいものだ。理不尽だ。そんな中、無くしてしまった逆さ傘の代わりに、取り急ぎのビニール傘で雨の中を歩いてみると、視界が開けて、自分の上空が明るくて、あぁ、これかもしれないなと妙に納得したことがあった。それは、傘にしても合羽にしても長靴にしても、普段の生活を制限されるような、自由さが無くなるような、その息苦しい感覚が雨との関係性を構築できない原因なのかもしれないと考えたのだ。
小学生当時は黄色を強制され、次第に黒か紺か青か緑か、その辺りしか選択肢をくれなくて。歩き易さも動き易さも犠牲にするような対策グッズしか用意してくれなくて。明治大正昭和平成令和と、時代はちゃんと動いてきているはずなのに、一体いつからある代物なのかは知らなくて。いい加減に私を雨から全方位守る、ドラえもんも四次元ポケットから出せないような、最新鋭の最先端の、最強で最高な無敵の、超素敵なワクワクルンルンカラフルハピネス雨具はいつになったら発明されるんだい、セワシくん。
そんなことをただ、たった一本の何の変哲もないビニール傘によって世界が広くなったように思って、これはこれで悪くないなと思って、ふと足元を見る。びしょびしょだ。最悪だ。
さて。 #
そろそろこのくらい苦言を呈しているのだから、空も気持ちが変わってきただろうか。あぁ、泣かないで頼むから。かといって別に怒らせたい訳ではないんだ。わかるだろう?所謂からかうってやつさ。そしたらジョークでこう返してくれよ。「雨水、止めたろか」
ってさ。空も琵琶湖を見習って。
【次回は8月11日(日)に公開予定です】
中西崇将 エッセイ『ハチミツはまだ早い』
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