アニエス.Vによるジェーン.B
公開 2024/12/02 22:08
最終更新
-
お昼から映画館へ。
アニエス.Vによるジェーン.Bは学生の頃レンタルVHSで観て、うわあ好き…と思ったのだ。あまりに好きでダビングして持っていたけど肝心のVHSデッキがいかれて久しく、新調もできない。
今回このカンフーマスターとアニエス.Vによるジェーン.Bがデジタルリマスターで公開されてとても嬉しかった。何より画面が美しい。
ジェーン・バーキンが語る自己像はどの時代のものも本人に抱く印象とのずれがあって、そこに惹かれる。少女時代の日記を読むといつもひとりぼっちで泣いてると思えば大目立ちでみんなに愛され、彼女の振り幅とは大人になってもまさに子どものそれだ。
二人の対話で「カンフーマスター」はもともとジェーン・バーキンのアイデアだった事がわかる。息子を持った事がなく、男の子という存在への関心と、実際抱いたことのある感情がきっかけだと言う。映画の舞台になった中庭のある、落ち着いた色調だけど装飾であふれた個性的な家は一度見たら忘れられない。
クリアな映像に新たな喜びを感じつつ(ジェーン・バーキンの素肌の美しさ!)、自分の記憶と答え合わせするようにも観た。あのカバンの中身をぶちまける場面、もっと長くなかったっけ?と思う。
シャイヨ宮の広場にしゃがんでカバンをひっくり返すと出てきた中身はくしゃくしゃのメモの切れ端、お札、カード、キーホルダー、スカーフetc…。そこまでは記憶通りだ。しかし、アイデアを書き留めておくメモ。思いついたアイデアをすぐひとに話すからいつの間にか使われてしまう。この場面で、ジェーンがなにもかもひとまとめに突っ込むというのを知ってエルメスが大きなカバンを作ってくれた、と話してなかっただろうか。ぼくはこの場面が好きだったので楽しみにしていたのだけど、まるっと無い。
ぼくの記憶違いだったろうか。
映画はドラマチックなフィクションを挟んだドキュメンタリーで、バラエティに富んだファンムービーだ。ひとりの人間をこれほど魅力的に撮れるのかと興奮してくる。
モチーフの絵画はティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」だ。ジェーンは背景の、背中を向けて長持の中を探す侍女の装いで、撮影のため家族と離れてひとり過ごした30歳の誕生日を語る。
新婚初夜の翌朝の花嫁の着衣を探す侍女とは、ジェーンが中年にさしかかり結婚と出産というイベントから退きつつある事の比喩なのだろうか。でも次のシークエンスでジェーンは中央に描かれたヴィーナスになり、輝くような素肌が大写しになる。
子孫繁栄を寿いで描かれた絵画の、主役のヴィーナスであり、花嫁の支えになる侍女でもある、とは現実のジェーンに対するアニエス・ヴァルダからの熱いリスペクトであり、ラブに思えた。
映画はジェーンの40歳の誕生日、サプライズでスタッフ全員からお祝いされる場面で終わる。
あなたが好きだ、という気持ちが伝わる、いい場面だ。
アニエス.Vによるジェーン.Bは学生の頃レンタルVHSで観て、うわあ好き…と思ったのだ。あまりに好きでダビングして持っていたけど肝心のVHSデッキがいかれて久しく、新調もできない。
今回このカンフーマスターとアニエス.Vによるジェーン.Bがデジタルリマスターで公開されてとても嬉しかった。何より画面が美しい。
ジェーン・バーキンが語る自己像はどの時代のものも本人に抱く印象とのずれがあって、そこに惹かれる。少女時代の日記を読むといつもひとりぼっちで泣いてると思えば大目立ちでみんなに愛され、彼女の振り幅とは大人になってもまさに子どものそれだ。
二人の対話で「カンフーマスター」はもともとジェーン・バーキンのアイデアだった事がわかる。息子を持った事がなく、男の子という存在への関心と、実際抱いたことのある感情がきっかけだと言う。映画の舞台になった中庭のある、落ち着いた色調だけど装飾であふれた個性的な家は一度見たら忘れられない。
クリアな映像に新たな喜びを感じつつ(ジェーン・バーキンの素肌の美しさ!)、自分の記憶と答え合わせするようにも観た。あのカバンの中身をぶちまける場面、もっと長くなかったっけ?と思う。
シャイヨ宮の広場にしゃがんでカバンをひっくり返すと出てきた中身はくしゃくしゃのメモの切れ端、お札、カード、キーホルダー、スカーフetc…。そこまでは記憶通りだ。しかし、アイデアを書き留めておくメモ。思いついたアイデアをすぐひとに話すからいつの間にか使われてしまう。この場面で、ジェーンがなにもかもひとまとめに突っ込むというのを知ってエルメスが大きなカバンを作ってくれた、と話してなかっただろうか。ぼくはこの場面が好きだったので楽しみにしていたのだけど、まるっと無い。
ぼくの記憶違いだったろうか。
映画はドラマチックなフィクションを挟んだドキュメンタリーで、バラエティに富んだファンムービーだ。ひとりの人間をこれほど魅力的に撮れるのかと興奮してくる。
モチーフの絵画はティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」だ。ジェーンは背景の、背中を向けて長持の中を探す侍女の装いで、撮影のため家族と離れてひとり過ごした30歳の誕生日を語る。
新婚初夜の翌朝の花嫁の着衣を探す侍女とは、ジェーンが中年にさしかかり結婚と出産というイベントから退きつつある事の比喩なのだろうか。でも次のシークエンスでジェーンは中央に描かれたヴィーナスになり、輝くような素肌が大写しになる。
子孫繁栄を寿いで描かれた絵画の、主役のヴィーナスであり、花嫁の支えになる侍女でもある、とは現実のジェーンに対するアニエス・ヴァルダからの熱いリスペクトであり、ラブに思えた。
映画はジェーンの40歳の誕生日、サプライズでスタッフ全員からお祝いされる場面で終わる。
あなたが好きだ、という気持ちが伝わる、いい場面だ。