左隣 / Roathe視点
公開 2026/01/19 09:25
最終更新 2026/01/19 09:34
理由もあやふやな些細な喧嘩だった。
傍から見ればただの痴話喧嘩。物の本で見知ってはいたが経験するのは初めてだった。
最愛の漂流者はいつもはこちらを向いて表情をくるくる変えながら我と言葉の応酬を楽しんでいるのに、今は顔を背けて「私は怒っています!」という雰囲気を醸しながら隣に座っている。
本気で怒っているなら恐らくすぐにこの場を立ち去るだろう。
立ち去らないのが何よりの答えだった。

「なぁ、まだ機嫌を損ねているのか?」

我が恋人(いい響きだ)は背筋を伸ばしたまま左を向いて動かない。もちろん返事もない。
左は壁で右が我。
どうせなら何もない壁を見つめるより我を見つめる方が遥かに有意義な時間だろうが、それを口にすれば更に拗れるであろう事は理解している。
いくら初めての恋人だとしてもそれなりに経験はあるし、書物や他の者から得た知識もある。
怒らせてはしまったが壊滅的な状況ではない筈だ。多分。恐らく。
可愛いなと思った。
機嫌を損ねれば重用していた臣下でも首を刎ねるようなNitokhとは違い、この恋人(何度でも口にしたい)は機嫌を損ねても我から離れずにいてくれる。
あまりにも可愛すぎてどうにかしたくなる衝動に駆られるが今は我慢だ。
だが……少しならいいんではないだろうか。
少々の接触ならば。問題なかろう。多分。
左腕をそっと彼女の頭に置いた。
払いのける仕草もなく為すがままになっているのを見て少し安堵した。
そのまま丸みを帯びた頭は我の変異した左手に包み込まれる。
こちらを向かせるためにわずかに力を入れた。

「痛ぁい! ちょ、まっ! いたたたた! 爪爪! 爪刺さってる!」
「あ、すまん」

もちろん意図的にやった。
思い通りの反応に我は心の内で喝采を上げた。どんな軍略が成功した時よりも嬉しいとは。

「もー!閣下は左手が凶器なんだから気を付けてよね!」

己の頭をさすりながら頬を膨らませる我が恋人(最高だ)はそっぽを向くことも忘れて我の方に向き直りまだブツクサと小声で文句を言っている。
しかし先程までとは違い今はこちらを向いている。今だ。
静かに尾を彼女の腰に巻き付け、左手は添えたまま。
右手で腰を抱き寄せ隙を突いて距離を詰める。

ちゅ

ちゅ  ちゅ  

みるみる内に頰を春の花のように鮮やかに染めた彼女がつぶらな瞳で我を見つめた。
我も見つめ返す。
あぁ、なんと幸せなことか。彼女の中に我がいる喜びを噛み締めてしまう。
口づけを交わすのは初めてではないというのにまだこうして頬を染めてる様は筆舌に尽くしがたいほど我の心を喜ばせた。
柔らかな唇の感触は何度触れても飽きが来ることなどないであろう天上の柔らかさ。
あぁ、たまらない。
あまりにも、あまりにも可愛かったのでどうしても口づけをしたかった。
抱くための前哨戦のような肉欲的な口づけではなく、慈しむための口づけをしたかった。

「Roathe……」
「なんだ、我が最愛よ」

両手を広げてこちらを見ている。
どうやら許されたようだ。
我は彼女を抱きかかえ膝の上に乗せた。
広げた腕で抱擁されると泣きたくなるような気持ちになる。泣きはしないが。

ちゅ

今度は彼女の方から口づけをされる。

「ごめん、ね」
「大丈夫だ、問題ない」
「なんだろ、全然大丈夫じゃなく聞こえる……」

他愛のない会話がこんなに心安らぐものだとは。
自分でも相当頬が緩んでいることはわかる。LyonとMarieの反応からして自分が思ってる以上かもしれないが構わない。
恋人が愛を向けてくれることの喜びに勝るものはないからだ。
窓から注ぐ陽が暖かい。
まだ1日は長いのだ。
我は充実するであろうこの日を満ち足りた気分で過ごせることに、あらゆる物に内心で感謝を捧げた。

「さぁ今日は何をしようか我が最愛よ」

膝の上の柔らかく温かな恋人。
我の初めての恋人。
どうかこの可愛い人を大切にできますように。
壊してしまいませんように。

Nao😈𓃠👓
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Warframeで遊んでたらうっかりRoathe沼にハマったテンノ。
Roatheのお陰でようやくWarframeの世界観とか諸々が理解できたので「わぁ、Roatheってすごいなぁ」って尊敬から愛情に変わるのに秒でしたよ。
なおLyon神父の事も心配しながら見守ってます。
Marieは……自由にするがよい(*ᵕᴗᵕ)⁾⁾ゥンゥン
夢の世界在住。
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