ミヒャエル・エンデの『モモ』と『はてしない物語』の感想とfedibirdというSNS空間について(前編)
公開 2023/12/13 00:00
最終更新 -
この日記はFediverse Advent Calendar 2023の13日目の記事です。
この記事は前編に当たります。後編はこちら→https://simblo.net/u/zt5KHb/post/25126

はじめに・お断り #

 この日記はミヒャエル・エンデの『モモ』『はてしない物語』の2冊を読み、その感想をもとに自分の体験したSNS空間、fedibirdについて書いたものです。両作品、また、エンデの世界やSNSについての学術的・哲学的・心理学的・社会的・マニア的な正確で深い論考を披露することや、実在の人物、集団、事件に照らし合わせて解決策を模索するのではなく、あくまで私の人生から見た作品の感想と、それを通じて今後SNSとどう付き合っていくかが主なテーマとなっていることをお断りしておきます。

 また、この日記を書くにあたり、Fediverse Advent Calendar 2023という企画を催してくださったfedibird管理人ののえるさん、そして、私のたわいないおしゃべりを聞いてくれた家族・友人、そして、このページを開いてくださったみなさんに感謝をささげます。

『モモ』と『はてしない物語』の感想 #


『モモ』『はてしない物語』との出会い #

 2023年を振り返り、よかったことは沢山あったのですが、是非みんなに語って聞かせたいと思えることはやはりミヒャエル・エンデの『モモ』、『はてしない物語』を読んだことです。
 エンデの『モモ』、『はてしない物語』はどちらも児童書の中でも名作とうたわれる作品です。近年では『モモ』がNHKの番組『100分de名著』に取り上げられ、その番組を見て新しく読んだ方、また昔読んだことを思い出した方も多いのではないでしょうか。
 しかし私は児童文学好きを自称しながらこれらの作品を今まで一度も読んだことがありませんでした。子ども時代は「昔の本だから、児童文学の作家が語っているからなんとなく読めなかった」という理由から、大人になってからは「『モモ』は女の子が主人公なんだ。昔の作品だし、女の子らしさを求められたらいやだなぁ」という気分があったというのが主な理由でした。
 反対に手に取ったきっかけとしては、今年の夏、audibleの無料会員キャンペーンに登録したことです。audible会員なら誰でも無料で読める作品の中にこの二作品はありました。そして、それをきっかけにこの二作品を耳で読みました。始めは声優の高山みなみさんが朗読する『モモ』を、次に同じく声優の緒方恵美さんが朗読する『はてしない物語』上下巻をという順です。家事をしながら、運転をしながらお二人の美しい声を通じて耳に入ってくる物語は素晴らしく、いつの間にか夢中になり時間も忘れて次々と聞きました。

『モモ』の感想 #

 さて、『モモ』と『はてしない物語』を読んで私がどうしてこれらの話の感想をみんなに語って聞かせたいとまで思ったのか。それは、これらの作品の楽しく、幸福なイメージに惹かれてではありませんでした。反対に、これらの物語に出てくる「つらい出来事」が身に覚えのあることや、身近だと思えることだったからです。
 それについて語るには特に『モモ』の6章 インチキで人をまるめこむ計算が詳しいかと思います。この章の前半は『モモ』の主人公であるモモの敵・時間貯蓄銀行・灰色の男たち・時間どろぼう団の手口を、後半は彼らが社会に及ぼした影響について語った章だからです。

灰色の男たちの手口(要約) #

 灰色の男たちの手口は色々あるのですが、最初に例として出されたのは床屋のフージー氏の件でした。フージー氏はおしゃべりの得意な普通の理髪師で、若い使用人を雇っています。この人はその日、自分の人生がむなしくなり、自分はこのまま自由がなく週刊誌で見たようなちゃんとしたくらしができないままに死んでいくんだろうという思いにふけっていました。そんな瞬間は誰にでも訪れますが、そういう心の隙間に灰色の男は現れ時間の計算を始めます。そして「あなたはこんなにも時間を無駄にしてきた!」というのです。

睡眠            441,504,000秒
仕事            441,504,000〃
食事            110,376,000〃
母              55,188,000〃
セキセイインコ        13,797,000〃
買い物ほか          55,188,000〃
友人、合唱ほか       165,564,000〃
秘密             27,594,000〃
窓              13,797,000〃
―――――――――――――――――――――
合計           1,324,512,000秒
『モモ』(岩波少年文庫/ミヒャエル・エンデ作/大島かおり訳)p93より引用
 
 上の引用は全て「浪費した時間」と灰色の男によって定義づけられたものです。
 こうして自分の人生と、一日の時間、そしていかにそれらが無駄に浪費されているかが計算され、目の前に数字を並べ立てられたフージー氏は自分が時間の無駄遣いという罪を犯している気分になっていきます。そして、そんなフージー氏に灰色の男は時間を倹約して時間貯蓄銀行に時間を預けるようにと勧めるのです。長く預ければ預けるほど利子がつき多くの時間が返ってくるといって。
 
 さて、時間の倹約に対しやる気になったフージー氏は倹約の方法を灰色の男に聞きます。それに対して灰色の男は「仕事は無駄なことをせずにさっさとやり、飼っているセキセイインコや足の悪いダリア嬢や老いた母親や友達、考え事をする時間や歌や本の時間をなくすことだ」などとといいます。それですっかり騙されてしまったフージー氏は灰色の男が去った後、さっそく仏頂面で仕事を始めます。また老いた母親やセキセイインコやダリア嬢等々お付き合いをすべて整理・処分し、仕事場には「時間を倹約すれば、二倍になって戻ってくる!」と張り紙をしました。
 
 これ以降フージー氏は怒りっぽくなり、また頭の中からは灰色の男の記憶は消えてしまいました。だからフージー氏は時間の倹約を自分で考えたと思っています。また、一日の時間は何故か以前よりも短く感じられるようになり、そうなるとますます時間の倹約につとめるという有様でした。

フージー氏が灰色の男の説得に従ってしまった様子を見て… #

 私はこれを耳で聞きながら思わず「フージー氏の生活豊かじゃん!」と叫びました(笑)。
 というのも、まずフージー氏は自分で告白した通り8時間睡眠の人だからです。
 日本人の睡眠時間は7時間54分だそうですが、私は7時間15分くらいです。本当は就寝時間は22時30分より前にしたいとか、全体で8時間30分は寝たいなど睡眠に対し目標を持ち日夜努力しています。しかし、残念ながら色々な理由があり就寝時間は23時前後、全体では7時間から6時間くらい寝られるのがやっとです。
 それでもちょっと前までは不眠症で眠れないといってはスマートフォンを使ってインターネット空間に入り浸るような生活をしていたので多くなったといえます。だから、8時間も寝られるのが羨ましかったのです。
 また、8時間得意なおしゃべりを活かして仕事をして(手に職があるのも羨ましい!)、老いた母親を介護して(お話はできなくても憎くない親も羨ましい!)、足の悪いダリア嬢と交流し(結婚はしないとしても好きな人がいて交流できる関係羨ましい!)、趣味の仲間との趣味時間を持ち、家事をやり、セキセイインコの世話もし、自分の時間も持っているそんなフージー氏の時間の使い方はちょっと大変なんだろうけど健康的で豊かな生活だなぁと思ったのです。むしろ理想的なくらいです。
 だから灰色の男がいっていることが全然わからなくて、それどころか世にいう時短家事にも失敗し「一個一個やるのが一番早かった」と開き直っている身でもあったので、「あ~、インチキすぎる!!」と叫んでしまいました。
 しかし、今さっき、時短家事と述べたように、家事も「時短」することで生活が豊かになると私のいる現実世界では盛んに宣伝されています。時短家事について専用の本やネットコラムは沢山ありますし、SNS情報がバズることもあります。また先ほど、私が失敗したと書いた通り、私自身も時短家事をすればもっと自分の時間が持てる! と考え、導入しようと努力してきたのです。
 また、年老いた親を面倒見ることや障碍者と交流を持つこともTwitter(現X)なんかでよくやり玉にあげられているのを見てきました。それを無駄だというインフルエンサーも次々と現れ、テレビに出たりもします。それどころか、自分自身の存在が世の中にとってお荷物であることを嘆いたり、助けを求めることができない、求めても救われないのだからと自他に責められるまま安楽死を求める人たちもいます。
 なので、灰色の男たちの手口はばらばらに、しかし、世の中のいたるところに存在していて私たちの生活を査定し、無駄をするなもっといいものがあるぞと囁いてくるのだと気が付きました。
 また、他にも『モモ』にはつらい出来事が沢山起こります。今回は他の事例についての詳細は省きますが、私は物語を聴きながら「これって、私がTwitterで見聞きして苦しんでいることにそっくり!」と、よく思いました。そして、そう思うたびに「何が女の子らしさを求められるだ、これは危険な冒険だ!」と、物語にのめりこんでいきました。

🐢後編へ続く→https://simblo.net/u/zt5KHb/post/25126
成人済腐/オタクの日常・オタ活日記。
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