『書く習慣』2024/07/30〜2024/08/01
公開 2024/08/04 13:06
最終更新
2024/08/04 13:07
『書く習慣』雑感 #
ご来訪ありがとうございます。
いよいよ8月。あちこちで夏祭りの話題が出てくる時期です。皆様、いかがお過ごしでしょうか。
昨夜はちょうど近所で町内の夏祭りが開催されていたようで、流れてくる音頭や道を歩く親子連れが微笑ましかったです。
今日は3日分です。
前回に文字数の関係で入らなかった分と、連作に仕上げたのでその区切りが良いところでまとめました。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
個人的テーマ #
前回同様、家族から疎まれ世界的災難で全てを失いながらも正義を貫き強く生きる青年と、自らが聖と邪どちらの存在か不明な別世界の魂を持った少女の二人をテーマに書いております。
できる限り簡潔で繊細な表現を目指してます。
時間軸を統一していないので、片思い、両片思い、両思いと二人の関係性が話によって変わります。ご了承下さい。
『書く習慣』再掲文章 #
2024/07/30《澄んだ瞳》 #
僕は多くの人達の中、教会の席に座っている。結婚式に招待されたのだ。象牙色で統一された礼拝堂の天井には、採光も兼ねた色鮮やかステンドグラス。
乾燥地帯の多い我が国の恵みである雨。ステンドグラスの色は、その後に刺す穏やかな光による虹を象徴している。
荘厳な教会の中は行き過ぎない程度に白い花やリボンが飾られ、静かな中にも明るい空気に包まれていた。
入場した新郎新婦は白地に赤と黒を取り入れた帝国の伝統的な衣装を身にまとい、花婿は太陽を表す金のカフスやタイピン、花嫁は同じく頭上に金のティアラを戴いていた。
儀式も半ばを過ぎ。
壇上で生涯の固い誓いを立てた花嫁と花婿は、向かい合い相手をじっと見つめる。
互いを映すその瞳は、その誓いを表すかのような一点の曇りもない澄んだ眼差し。
花嫁の目から一つ零れた涙は、ステンドグラスを通した色鮮やかな太陽の光を受けて真珠のように輝いた。
そして儀式は終わり、新郎新婦は参列者達から浴びるような祝福の拍手を受けた。
晴れやかな笑顔で祝福を受ける二人の想いは、その瞳と外の青空のように最高に澄み切った物なのだろう。
その美しさに自らの心も澄み渡るようだと、僕も心からの祝福を拍手に乗せた。
いつかきっと、僕もこうして誓いを立てる日が来るのだろう。
それは生涯破られる事の無いよう、強く心に刻んで努めていきたい。
2024/07/31《だから、一人でいたい。》 #
私の隣を歩く彼が不意に立ち止まったかと思うと、私の手を掴み取って囁いた。
「僕は、貴女を大切にしたいと思う。」
赤い夕焼けの光に照らされたその顔は真剣で、その燃えるような瞳は揺らぐ事なく私を見つめていた。
大切に…私を?
その言葉は、私にとってあまりにも大き過ぎた。
もちろん、嬉しい。
けれど、それ以上にこんな言葉を受け取っていいのか。
地面に足が着いている感覚がない。視界が歪む。
その衝撃に声も出せずに立ち竦んでいると、私の手を掴んでいた彼がハッと表情を曇らせその力を抜いた。
「…申し訳ありません…。」
咄嗟に目尻に手をあてて気が付いた。視界の歪みは、自分の涙が原因だった。
瞬間、溢れる涙のように自分の感情が決壊した。
喜び、悲しみ、疑問、嬉しさ、苦悩。
謝らせてしまった申し訳なさ。
それでも私は声が出せず、めちゃくちゃになった感情に背中を押されるままその場を走り去った。
全速力で走り続け息も絶え絶えになった私は、自室に入り、背を向けたままその扉を閉じる。
そして力尽き、ずるずると扉に背を預けへたり込んだ。
彼は追っては来なかった。でも、今はそれでいい。
彼は本来、出会えるはずのない人。
私が偶然、何の因果か分からないけれどこの世界に来れただけ。
しかも、私が闇の者だという彼の疑いは晴れてはいない。にも関わらず、彼は私が人間らしい生活を送れるように気を配ってくれていた。初めから今まで、ずっと。
否が応にも期待してしまう。彼のあの射抜くような眼差しに。
いや、もう何度も射抜かれている。
初めの頃と変わり、最近は何かと笑いかけてくれている。
その笑顔にどれだけ心を射抜かれたか。
一人で動ける時間も増えている。監視なんて名ばかりだと、勘違いしたくなるぐらいに。
ただ一緒に暮らしている。そう思い込みたくなるぐらいに。
だけど、心の一番弱い部分を守ろうとする自分が叫びだす。
本当にそんな期待を抱いてもいいのか?
彼は誰に対しても誠実だ。だから今までも無意識で人間扱いされてきたに過ぎない。
ただ表に出していなかった意思表示をしただけで、どうせこれまでと何ら変わらない。
それが証拠に、あの時彼は手を離したじゃないか。
勘違いするな。お前は、彼に愛されているわけではないのだ。
なぜ。なにを。どうして。いつから。どうやって。
大切にしたい。
彼の言葉に、湧き出てくる感情が選り分けられないくらいにぐちゃぐちゃにかき回される。
涙と一緒に次々溢れ出してくる想いは、暮れ泥む空のように光を影へと塗り替えていく。
この空が明ける時には、必ず笑ってみせるから。
頭の中を選り分けて、整理して、空っぽにして。
「昨日はごめんね。」と、いつも通り過ごせるように戻るから。
だからお願い。
今だけは、一人にさせて。
2024/08/01《明日、もし晴れたら》 #
彼女を、泣かせてしまった。
「僕は、貴女を大切にしたいと思う。」
僕は彼女の手を取り、その時の思いを正直に打ち明けた。
衝動的、ではあったと今は自覚している。
らしくもない行動を取ったその時の僕は、全身が熱を帯びたようだった。
頬だけではなく耳まで熱くなり、心臓は早鐘を打っていた。
何故かは、正直分からない。
どうしてそのような心境になったのか。
今までは、闇に魅入られし者として彼女の監視を行っていた。
彼女の他では見られないような髪と瞳の色が、かつて同じように闇の力に触れ色が変化した者に酷似していたからだ。
だから、彼女を帝国に連れて来て、僕の側に置いた。
帝国内なら、彼女が何かを起こしても僕の権限で処理できる。最悪、僕が被害に合えばそこから国内が警戒態勢に入れる。
そう決心していた。
ところが、いざ共に暮らしてみたらどうだ。
帝国の街並みを見て目を輝かせ、港から見える空と海に切なくなるような眼差しを向け、その香りを胸いっぱいに吸い込む。
何をするにも、日常の食事でさえそれは嬉しそうに微笑んで。
移動の際に共に歩けば、初めの頃こそは少し俯きがちではあったが、今は笑顔で語り、僕の話にもしっかり耳を傾けてくれる。
それは、帝国の復興に全力を傾けて色を失いかけていた僕の日常に、優しい光が降り注ぎ色が蘇ったかのようだった。
彼女は、疑いを掛けられたにも関わらず僕を信頼し、心を許してくれている。
あの月の夜、密かに見た光景がそれを示している。
降り注ぐ月の光の中、彼女は僕に命を預けると呟いた。
これ以上はない、絶大な信頼。そして、曇りなき笑顔。
そんな彼女を、僕は大切にしたくなった。
夕日に染まる彼女の笑顔を見て、その気持ちが抑えきれなくなった。
そして衝動に任せて動いてしまった結果、彼女を泣かせてしまった。
僕は、そのまま走り去る彼女を追う事が出来なかった。
そんな資格があるの?
彼女の声の幻が、頭の中で鳴り響いた。
今まで散々疑ってきたのに?
そうか。僕は、拒絶されるのが怖いのか。
今すぐ傍にある暖かさを目前で失なうのが、怖いのか。
例え何者であっても、彼女にこのまま傍にいてほしいのか。
僕は、彼女の手を取っていた自分の掌を見つめて決心した。
何が怖いのか理解出来れば、行動に起こせばいい。
まずは自宅に帰ろう。
彼女が戻っているならば、涙が止まるまでいつまでも待ち続けよう。
彼女に拒絶の意思がなければ。いや、その意思があったとしても。
ひたすら彼女を大切にしよう。僕の心を、行動で示そう。
もし明日、彼女の涙が晴れたなら。
まずはいつもよりもほんの少し特別な食卓を、貴女と一緒に囲みたい。
貴女の負担にならないように、僕は貴女を大切にしたい。
最後に #
ここまで読んでくださりありがとうございます。
《澄んだ瞳》は、シンプルにまとめました。こちらも先日と同様に伝統文化を捏造しました。黄金や結婚衣装の色、ステンドグラスに纏わる話がそれです。神話や伝説が好きなので、この辺りを考えるのは凄く楽しめました。
生まれたての時を除けば、人生で一番気持ちが澄み切る瞬間であろう結婚式。真面目で年若い青年がそれを見てどう感じたかをストレートに表現しました。
《だから、一人でいたい。》は、気が付けば今日も続いた連作の最初の話です。
自分の始めて抱いた気持ちに気付き始めた青年と、幸せを受け取り慣れていないが故に大いなる誤解をしてしまった少女の葛藤がテーマです。
お互い慣れていない事尽くしで足りない事だらけが原因のすれ違いと、拗れた少女の心が伝わればと思います。
《明日、もし晴れたら》は、涙を主軸に据えれば前回見えなかった青年の思いを書けると考えたのがきっかけです。
青年は素直ですが、家庭環境から自分の思いに鈍くなっています。それ故に自分の想いの元に気が付けず言葉で表現をし切れなかった様子を書いてみました。
楽しんでいただけたでしょうか。
それでは、またお会いできますように。
