『書く習慣』2024/07/07〜2024/07/09
公開 2024/07/10 14:08
最終更新
2024/07/10 14:08
『書く習慣』雑感 #
ご来訪ありがとうございます。
ようやく梅雨が来たのかな?という感じの雨マークがポツポツと並ぶ日が続くようになりました。皆様はどうお過ごしでしょうか。
私はそんな中で家族の正念場が一段落しまして、顔を合わせてホッとしたところです。
文章の方はこのような状況もあり、自分の中では若干ですが余裕がなかったように感じられます。
勢いも大事ですが、推敲の余裕は持っていたいですね。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
個人的テーマ #
前回同様、家族から疎まれ世界的災難で全てを失いながらも正義を貫き強く生きる青年と、自らが聖と邪どちらの存在か不明な別世界の魂を持った少女の二人をテーマに書いております。
できる限り簡潔で繊細な表現を目指してます。
時間軸を統一していないので、片思い、両片思い、両思いと二人の関係性が話によって変わります。ご了承下さい。
『書く習慣』再掲文章 #
2024/07/07《七夕》 #
昼間の熱気が残る夏の夜に大きく流れる天の河を見ていると、七夕を思い出す。7月7日に笹の葉を飾り付け、願いを込めた短冊を吊るし、星に祈る。
地方によっては旧暦に大きな吹き流しなどを通り一面に飾る伝統的な一大イベントでもある。
ただ、この帝都には当然そのような日はない。
それでも乳白色の河を見れば、離れて久しい行事が心を過ることもある。
「七夕、かぁ…」
色彩も鮮やかな情景を思い出しぽつりと呟けば、背後から声がした。
「タナバタ、とは何ですか?」
柔らかな声で問いながら、彼がこちらにやってきた。
自然に私の隣に立ち興味深げに聞いてくる彼に、私は答える。
「私のところにあった伝統行事の名前なの。」
すると彼は、ますます興味津々といった様子でこちらを伺ってくる。
新しい事を知るのが好きな彼のこと、その目はきらきらと輝いている。
ならば、と私は牽牛織女伝説について語り始めた。
働き者で休まず仕事を続ける牛飼いと機織り娘を哀れに思った帝が、ある日二人を娶せた。
夫婦になった二人は深い恋に落ち、それまで休まず続けていた仕事を放り出して、毎日ずっと二人で遊び続けた。
二人が仕事を放棄してるので、牛は痩せ衰え、織り機は埃を被り神へ備える白布が尽きてしまった。
それにお怒りになった帝が二人を天の河の両岸に引き離し、年に一度の逢瀬以外は働くようにと二人に告げた。
「それ以来、愛し合う二人は年に一度の七夕の日に白鷺の橋を渡って逢瀬を楽しむという伝説に基いてるの。」
話を締めると、彼は少し目を見開いた表情で私を見ていたと思えば、ぼそっと呟いた。
「それは…そこまで仕事をサボってしまっているのなら自業自得でしょうに…」
あ、やっぱり言うと思った。
真面目で実直な彼の性格ならまあそうなるだろうなと予想はしてた。
サボる、という単語は彼の辞書にはおそらく、いや間違いなく無い。
さっき目を見開いていたのは、牽牛織女のサボりっぷりに呆気に取られてたのね。
「身も蓋も無いけどその通りだと思う…。」
私も苦笑いしながら答える。
多少なら分かるけれど、ずっとサボり続けるのは良くないよね。
でも…
「…ですが…」
彼が真剣な顔でこちらを見ながら、何故か躊躇いがちな声で呟く。
「…二人が離れ難かったというのは、分かる気がします。」
それは、星が瞬くような囁き声で。
私の心が読まれたのかと、心臓をギュッと掴まれて。
夏夜の温い風が、熱くなった頬を冷ますように撫でて通り過ぎていった。
2024/07/08《街の明かり》 #
夏の日差しが降りて夕焼け空が冷めるころ夜空の星達が顔を出す
その空を追うように街の明かりも灯りだす
こんばんは 暗くなってきたね
お疲れ様 今日はありがとう
さようなら また明日会おうね
心通わす声は天の河の微かな星のように
寄り集まって光の帯になる
夜の帳が降りて空が闇に染まるころ
街に明かりが溢れ出す
それは月無し夜の天の河が降りたよう
どうだった? 頑張ったよ
お腹空いた? ご飯は何?
そうなんだ 本当に楽しかったよ
想い通わす声は空を縫い流れる星のように
願いを込めた光の束になる
さあ帰ろう 手を繋いで
他愛のない話をしながら
今日も二人で星を輝かせよう
2024/07/09《私の当たり前》 #
今回の復興予算会議は難航を極めている。あの厄災から3年程経過しているとは言え、まだまだ完全復興には程遠い。綿密な調査の上使途を決定し、各所にきめ細やかな対応が出来るように取り計らうためにも、この質疑応答は重要な場面であった。
だが、今日の質疑は旧皇帝派から、内容は政務に関係ないプライベートなもので、もはや難癖と言っても差し支えないくらいだった。
公私共に後ろ暗いところは全くないと断言できる。しかし、皆に疑念を持たれていては話が円滑に進まないかもしれない。
そう判断し真摯に解答をしていった結果ヒートアップしてしまい、大幅に予定をオーバーしてしまった。
意味のないところで神経を削られた上に予算に関しては全く触れられなかった事もあり、普段に比べて僕の神経はささくれ立っていた。
それでもむやみに怒りを撒き散らしたくはないと深呼吸をして気持ちを鎮め、彼女を迎えたその足で共に自宅へ戻る。
道中も他愛のない話をしながら歩く。
落ち着いて話せているはずだ。普段から公務で慣れ親しんでいる状況だ。感情を隠すなど容易いもの。
そうこうしているうちに玄関に着き、扉を開けて中へ入る。
すると扉を閉めたところで、彼女が少し眉根を寄せた表情で僕の顔を見ながら立ち止まっていた。
「どうしたのですか?」
いつもはスムーズに入っていくのに珍しいものだと聞いてみると、
「あ、ごめんなさい、あの…。」
と、彼女が口ごもりながら聞いてきた。
「…もしかして今日、何か嫌な事がありましたか?」
彼女の言葉は躊躇いがちにぼかしてはいるが、ほぼ確信を得ているような視線を伴っていた。
何故だ。気付かれないように、いつものように行動していた。話せていたはずなのに。
細心の注意を払っていたはずなのに。気付かれまいと。傷付けまいと。
今までの自分がぐらりと揺らぐ。こんな簡単な事も出来なくなったのかと。
「…申し訳ありません。…何か気に触る事でも言ってしまいましたか?」
不安定な足場に立っているような心持ちで確認をする。
僕は、失敗してしまっていたのだろうか。
感情の制御も出来ないなど、国に仕える者として失格ではなかろうか。
誰も、傷付けたくはなかったのに。
酷く動揺し、自分でも分かるくらいに震える声で詫びれば、これまた慌てた様子で彼女は言った。
「いえ!ごめんなさい、そうじゃないです!何も嫌な事言われたりしてませんよ!ただ…」
ただ?
「…何かいつもよりずっと空気がピンと張り詰めたような感じがしたので…何かあったのかな、と…」
少し俯き、落とした声で呟いた。
「ごめんなさい、こんな事言って…」
どんどん声はトーンダウンしていく。
違う、違うんだ。謝らせたかったんじゃない。ただ僕は。
「…驚きました。」
要は勘が働いた、そういう事。
客観的な違いはない、本当に些細な事。
それを捕らえていたのか。捕らえてくれていたのか。
「まさか見抜かれるとは思いませんでした…本当に貴女は凄いですね、当たり前に出来る事じゃないですよ…。」
僕の弱った心を見つけてくれた嬉しさと怒りを隠し通せなかった悔しさが綯い交ぜになった複雑な思いでストレートに感じた事を告げれば、
「…私は、貴方の何事にも誠心誠意を持って冷静に取り組む真摯な姿勢の方が凄いと思います…。」
俯いたまま僕に顔を見せず消え入りそうな声で、彼女は褒めてくれた。
そんな事は当然だと思っていた。
いい加減は許されない。手を抜けば、必ずどこかで過誤になる。
感情に流されれば、いずれ必ず破滅する。
何事も落ち着いて、丁寧に継続してやってこそ価値がある。
僕にとっての当たり前は、彼女からは長所に見える。
彼女にとっての出来て当然は、僕には貴重なものに見える。
昼間の怒りはどこへやら。
僕はそっとかがみ込み、俯く彼女の顔を覗き見る。
耳まで真っ赤にして驚く彼女の表情に、自然と僕の顔は綻んだ。
最後に #
ここまで読んでくださりありがとうございます。
自分の好みのせいか、どうしても内容が二人の両片思いに偏ってしまいます。互いの気持ちには気付いていないけれど間に流れる空気はひたすら優しく柔らかい、それ故の重なる気遣いが好ましいのです。
《七夕》、《私の当たり前》はその好みを全開にしている感じです。
《七夕》は基本に則った内容です。青年の性格なら伝説に対して間違いなくこの感想に着地するな、というところから連想しました。最後の流れはお約束。
ちなみに私の住んでいる地方は特殊な七夕のエリアです。1ヶ月後が七夕です。はい。
《街の明かり》は偶には表現の方向を変えようと挑戦したものです。不勉強なので詩の体裁が整っているか、情景が表現出来ているかが分かりませんが、出来る限りの事はしてみました。
七夕にイメージが重なってもいいように書いてもみました。彼らは毎日の暮らしの1ページではありますが、天の河でのひと時のイメージで。
《私の当たり前》はそれぞれの視点の違いを盛り込みました。
誰かの当たり前は他の人の当たり前ではない。これを個性と呼ぶのでしょうが、切羽詰まっていると特に自分の個性を見失いがちになるので、自戒を込めてまとめました。
互いの当たり前を見つけ合って尊重し合えば、よいスパイラルになりますよね。
楽しんでいただけたでしょうか。
それでは、またお会いできますように。
