『書く習慣』2024/07/21〜2024/07/23
公開 2024/07/25 17:22
最終更新 2024/07/25 17:22

『書く習慣』雑感 #


ご来訪ありがとうございます。
まだ天気が不安定な時期ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は3日分をまとめました。
扱っているテーマの関係上、自分では決して書かないであろうお題などが出されるのは、手強くもありますけど発想の幅が広がります。今回は特にその印象が強いです。

最後まで読んでくださると嬉しいです。

個人的テーマ #


前回同様、家族から疎まれ世界的災難で全てを失いながらも正義を貫き強く生きる青年と、自らが聖と邪どちらの存在か不明な別世界の魂を持った少女の二人をテーマに書いております。
できる限り簡潔で繊細な表現を目指してます。
時間軸を統一していないので、片思い、両片思い、両思いと二人の関係性が話によって変わります。ご了承下さい。

『書く習慣』再掲文章 #


2024/07/21《今一番欲しいもの》 #

それは、ここ連日睡眠時間を削って調整した議題が一段落し、久し振りの休日を過ごしていた時だった。

「これはまた、ぐっすりと…。」

屋内に彼女の姿が見えないと庭に出てみれば、木の根元に座りながら眠りこんでいた。
その木は大きめで豊かに葉を茂らせていて、木陰も広く風通しも良いので、この季節でも涼しく過ごせる一角になっている。
このところは本部からの帰宅時間も遅かったので、彼女も疲労が溜まっていたのだろう。

膝には、『次に来るのはこれ!秋までに欲しいファッション特集』と書かれたページが開かれた雑誌が置いてある。
これを読んでいたら気持ちよくなって眠ってしまった、といったところだろう。

無理に起こすのも忍びないので、起こさないようにそっと隣に座り、ちらりと雑誌のページを見る。
そこにはトーンは押さえ気味ではあるが色彩も豊かな洋服や、紅葉を思わせるゴールド主体のアクセサリーなど様々な物が掲載されていた。
そうか、世の女性はこういう物を好むのか…。

それにしても、確かにこの木陰は気持ちいい。
するりと吹き抜ける風が、太陽による汗をさらりと引かせてくれる。

ふわり靡いた彼女の長い髪が、僕の腕を撫でる。
それがこそばゆくも心地好く。
目を瞑りながら風と共に流れるその髪を楽しんでいた。

==========

…あー、寝ちゃってた。

毎日かなりの残業に自宅持ち込みで大変そうだった彼の仕事も佳境を越えたのか、今日は久々のお休み。
たまには帝都の流行りを見るのもいいかな、と図書館から借りてきた雑誌を庭の木陰で読んでいたら、つい眠り込んでしまった。ここ涼しくて気持ちいいから。

うーん、にしても何か肩が重い…

と、顔を横に向けて私は固まった。肩の重みの正体が見えたから。

かっ、かか彼が私の肩に頭を預けて寝てる!!
うわ、どうしよう顔が近い!っていうか寝顔見られてた、涎垂らしてなかったよね私!?

彼の身体を揺らさないように身体は静、頭の中は嬉しいパニックで動も動、あまりに激しく回転している。

それでもそっと瞑られた目と小さな寝息で分かる。
相当疲れてたんだな。毎日毎晩、あんなにお仕事頑張ってたから。

そんな事を考えてたら、彼の頭が肩からズルっと落ちかけた。
起きるんじゃと驚いたけど、それでも起きる様子はない。

熟睡してるみたい。身体起こしたままじゃ辛いよね。

そうと決めれば、私は雑誌を横に避けてからそうっと慎重に彼の頭を下に降ろしていき、自分の太ももに乗せた。
いわゆる、膝枕というやつです。

…わ、何これ。物凄い心臓ばくばくする。

起こさないようにするのもドキドキしたけど、そんなの全然比べ物にならない。

小さく開いた口元から微かに聞こえる寝息。
伏せられた瞼を縁取る、女の私よりも、ってくらい長くてふさふさの睫毛。
艶のある綺麗な髪。
それでも男性の逞しさを垣間見せる、顎から耳にかけてのライン。
スリムだけど、きっちり筋肉の付いた肩。

自分でこの体勢にしといて何だけど、刺激が強過ぎやしませんか?

…本当に、ただ寝てるだけでも素敵ってどういうことなんでしょ。

荒ぶる心臓を落ち着かせる為に深呼吸しながら、ほんの少しだけ頭を撫でてみる。
あ、凄い、髪の毛サラサラ。
指の間から、するすると零れ落ちてく。

風がさわさわと木の葉をすり抜けて、火照った頬を冷ましてくれる。
木の葉の緑の間から、澄み切った高い夏空の青。

思えば、こんな贅沢はないな。
あなたに触れられるなんて、死んでも叶わないと思ってた。

もう本当に、何にもいらない。彼と二人のこんな穏やかな時間が、私がずっと欲しかったものだから。



2024/07/22《もしもタイムマシンがあったなら》
時を渡る。これは魅力的な響きはあると思う。
例えば、間違ってしまった行動の結果を修正しに過去へ行く。
例えば、今の行動の末に何が起こるかを確かめに未来へ飛ぶ。
色々なことが自由自在に操れる。一見、そんな魅力に溢れてる。

かつて、この世界で少なくとも一人、千年の時を渡る者がいた。
私はそれを擬似的に体験した。
方法は、ある場所で現在か千年前か、行きたい時代のそこの風景を強く思い浮かべるもの。
これには現在と千年前の記憶を鮮明に思い描かなければならない。よって、本来一人の人間が行うのは到底不可能な手段だった。
その人物は、千年前の記憶を移植されたようなものだった。だから、可能だった。

ただ、そもそもこんな事は、ストーリーの展開あればこそ可能な手段だったと思う。
実際、過去の状況を変えた場合、その未来である現在はどのような風景に変化しているか想像も付かない。
ほんの少しの変化を加えただけで、未来は大きく変わる。
特にテクノロジーに手を加えれば、その変化は顕著。それは、元の世界の技術の発展による変化で十分理解した。
だから記憶に頼る時間移動は、実際は不可能と考えたほうがいいと私は思ってる。

そして、もう一つ。
過去の出来事に手を加えれば、当然未来に受け取れるはずの成果も変化する。
単純に考えれば、過去の悪い出来事をなかった事にすれば、今が平穏で幸せなものになる。

でも。それって、その悪い出来事を乗り越えて強くなった人に対して失礼じゃないかな。

たくさんの辛い出来事。辛い記憶。確かに少ないほうがいいかもしれない。
大好きな人が傷付き涙を流すところを見るのも、とても辛いことだから。
それでも、たくさんの傷で精神を美しく研磨し、涙も輝きに変えて強く優しくある人を知っているから。

私はそんな彼を尊敬し、今を必死に生きていきたい。



2024/07/23《花咲いて》
僕達が訪れているのは、温暖湿潤な地域。
今回は、観光の目玉としたいと紹介された植物園に来ていた。特に今の時期は、ちょうど蓮の花が見頃との事。
蓮は夜明けとほぼ同時に開花が始まり、午後には花が萎んでしまうそうなので、前の日は早めに休んで次の日の早朝に備えた。

夜が明けてすぐ宿を出て、植物園内の池のほとりに辿り着く。
池はかなり大きく、地表に顔を出したばかりの太陽に照らされて水面はキラキラと輝いていた。
そして、そこには事前の説明通り、池一面を覆うように鮮やかな緑の丸い葉と、更に少し上にたくさんの薄紅の蕾が広がっていた。

その広大さに見惚れていると、あちこちからほんの微かにカサ、ポン、と音がする。
見れば、ちょうど目の前に外側だけ開いた蓮の蕾があった。

中心部はまだ開いておらず、お互いが重なり合って雄しべと雌しべを守るかのように花弁が閉じられていた。
彼女がそれを指差しながら、反対側の人差し指を立てて、そっと自分の唇に当ててみせた。
僕が頷けば、彼女も頷きかえし、視線を蕾に向ける。

そうして蕾を見つめて何分か経った頃だろうか。

この蕾、もしかして見始めた時よりも丸く膨らんでいる?

そこに気が付いた直後だった。

ポン!

目の前の蕾が、音を立てて花開いた。
丸い薄紅が一瞬で開き、間から薄黄色の雄しべと雌しべが色を添える。
その様は、艶やかでコミカルでもあるのに、敬虔にも思える清廉さで。

初めて見た瞬間に感動して思わず彼女に顔を向ければ、目が合ったと同時ににっこり咲って、胸の高さで拳をグッと握りしめてみせた。

その唐突な行動に不意を突かれ、ポン、カサ、ポン、という音の中、蓮の開花を妨げぬよう声を押し殺して咲ってしまった。

それに気を悪くしたのか、口を真一文字に結び目元を赤らめながらじっと僕の顔を見る彼女に片手を上げて謝罪の意を伝え、また二人で池の蓮に目を向ける。
こんなやり取りの間にも太陽は徐々に水面から離れていき、次々と蓮はその薄紅の花を開いていった。

ここまで日々を咲って暮らせるなど、一年前には想像もしていなかった。
また来年、こうして同じように二人で蓮の花を見に来よう。



最後に #


ここまで読んでくださりありがとうございます。

《今一番欲しいもの》は、決して手に入る筈のないものがすぐ目の前にあると気付いているからこそこの均衡を無意識に崩したくない心境を盛り込みました。
青年は厄災を、少女は大規模災害を経験している事もあり、平和が一番というのもあります。
こちらの作品を優しく美しいと褒めていただけたのは本当に嬉しいです。ありがとうございます。

《もしもタイムマシンがあったなら》は、設定上扱わない物がテーマなので、捻らざるを得ませんでした。
文や映像で色々と扱われている時間遡行ですが、当然得る物と失う物がある筈で。技術もそうですが、その天秤を崩す事も考えたいとは思ってます。

《花咲いて》は、ふと思い付いた蓮を検索して知った事をストレートに書いてみました。
いくつか動画も観たのですが、本当に音を立てて花が開くのです。検索で出るので、是非観ていただきたいです。
そんな感動をこの二人が分け合うならこうなるだろうな、と、あえて会話をさせない方向で構成しました。
音は、蓮の開花のみ。それが活きる文になれたでしょうか。


今回も楽しんでいただけたでしょうか。
それでは、またお会いできますように。
こんにちは。
日々好きな物が多くて嬉しい悩みを拗らせているオタクです。
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