好きな曲のこと
公開 2024/02/21 19:44
最終更新 -
People In The Boxの好きな曲について書こうと思ったけどメチャクチャ長くなりそうなので持ってるCDのなかから一曲ずつえらんで書いてみることにした!→結局長かった

土曜日/待合室 ──「Ghost Apple」より

曜日シリーズを描き始めたころイメソンの話をしてたらこういうアルバムがありますよと教えてもらった。記念すべき出会いの一枚。祝祭感のある水曜日や金曜日、悪夢っぽい火曜日や木曜日を経て、ストンと地べたに足がつくような「土曜日」が特に好きだ。
小説は書き出しが重要で、名作は最初の一文で一気にグッと引きこまれる。「土曜日」もイントロから歌い出しがよくて、Bメロに入るときじぶんも駅のホームで始発を待っている気持になる。明けていく夜の寂しさ、朝の白さがちゃんと見えるのだ。


スルツェイ ──「Family Record」より

ロードムービーが好きだ。じぶんは出不精のくせに、イヤ「だからこそ」なのか、旅をする話が好きなのだ。「Family Record」は曲のタイトルが「場所」の名前になっている。全編を通して旅をしているような一枚だ。
好きな曲が多いので一曲えらぶのは悩んだが、やはり「スルツェイ」は外せない。スルツェイはアイスランドに実在する、いわゆる火山島で、火山と言えば思い出す旅の映画が「氷の接吻」だ。正確には殺人を繰り返す女の逃避行と、それをストーカーする男の話なのだがまあ旅は旅であろう。この話のふたりが最後に行き着くのがアイスランドで…………と記憶していたのだが、火山のイメージがつよかっただけで実際はアラスカだったが似たようなものだ(地元民に怒られる)(スルツェイはたぶん無人島だが)。
前置きが長くなったが、つまり「スルツェイ」はこのアルバムを旅のイメージに結びつける一曲だ。先の「土曜日」で歌い出しがいいという話をしたが、「スルツェイ」の「二度めの朝を迎えたよ」という歌い出しは秀逸だ。「いつ」からかぞえて二度め? いろいろ考えたが、「ここ」に辿り着いてから二度め、なんじゃないかというのが目下の私の考えだ。要するに、不慣れな場所にいるということ。
見知らぬ土地のこころもとなさと、浮き立つ感じ。崖の上から眼下の海を見下ろす、そわそわとした落ち着かなさと昂揚がリアルに感じられる曲だ。


翻訳機 ──「Wall, Window」より

People In The Boxにかぎった話ではないが歌のメッセージ性というものには功罪がある。音楽なんだから、曲がカッコよけりゃ詞なんかどうだっていいのさ、という向きもあろう。しかし「歌」には声が要る。ルルルでもラララでもいいんだが、声はだいたい言葉を生む。言葉の存在感というのはつよくて、それがただの羅列なら「音」と大差ないが、メッセージのつよさによっては無視できない。「曲がカッコよけりゃいいのさ」とは言ってられない状況となる。そこが歌の難しいところだと思う。音と言葉は互いをつぶしあってはいけないんである。
前置きが長いか(俺が怖いか?)
ここまで「Ghost Apple」「Family Record」を聴いてきて、そこにある言葉は概ね「描写」だったが、「翻訳機」の歌い出しは「ぼくはきみの翻訳機になって世界を飛びまわってみたい」だ。突然の意思!
ほかの歌に意思がなかったわけではないが、「翻訳機」は頭から終りまでトッポ並みに意思である。大サビに向かうコーラス、頭打ちのドラムも、すべてが意思だ。これをなんとアルバムの一曲めにお出しされるのでびっくりである。
ところで同時期、ひとに薦められてベネディクトカンバーバッチ主演の「シャーロック」を観ていた。そこでシャーロックの天才的な妹ユーラスの精神が、着陸の仕方が分からず燃料が切れるまで飛びつづける飛行機のなかにある、というような描写がある。
「翻訳機」の終盤に「ぼくが飛ばす飛行機のなか横たわるきみの席はファーストクラス」というフレーズがあり、それがユーラスの飛行機と結びついて、まるで「きみ」が行き先もなく上空を飛びつづけているようなイメージが浮かんだ。
つづく曲はわりと地に足のついた感じの歌が多いが、一曲めにこの「翻訳機」があることで、どこか過去の思い出のような、親密でありながらすでに手を離れたような光景に感じられるのもいい。


はじまりの国 ──「Frog Queen」より

なぜかプレイリストの一曲めに入っているので家を出るとき真っ先にかかる曲で、まさに「いまから行きますよ」という感じだ。この歌を知って以来、何か迷うことがあるときには毎回「行こうかな もどろうかな いっそ踊ろうかな」と唄っているし、まあだいたい踊っている。
ちなみに「Frog Queen」というとカエルの王女という民話を連想するがあまり関係はなさそう。ただアルバム全体として水っぽいというか泥っぽいイメージはあり、水面から出ようかな もどろうかな と迷っているのはこの一曲めだけのようにも思う。


親愛なるニュートン街の ──「Citizen Soul」より

シンプルにメロディーラインが美しく、それだけで好きな曲なんだが、実は歌に出てくる「りんご飴」に思い入れがある。
Good Dog Happy Menの「Apple Star StoryS」という大好きな歌があり、そのなかにも「りんご飴」が出てくるのだ。その歌のなかの「きみ」はいなくなってしまうのだが、きみがりんご飴をかじって笑っていたお祭りは、いまでもどこか遠くの宇宙でつづいている。そんな歌。
りんご飴ってなんとなく日本のものかと思っていたが発祥はアメリカらしい。アメリカやイギリスで、収穫祭のときに振る舞われていたそうだ。ところで以前「ニュートン」という名前について調べたことがあって、イギリスにはニュートンという名の町があちこちにあるんだって。日本で言う「新田」みたいなものかも知れない。新田は開墾地につけられる地名だ。開墾地→収穫祭→りんご飴、おお上手いことつながった。しかし、この歌のりんご飴は手から落ちてしまう。ニュートンのりんごは落ちるものと決まっているからな。
閑話休題。「りんご飴が手から落ちる」というフレーズが、先の「Apple Star StoryS」と結びついて、お祭りの終りを思わせる。けれど、その前の「五線譜の上を意気揚々と歩いて 無数の足跡は踊りはじめる」というフレーズが伸びやかで、どこかへ自由に散らばっていく音のイメージもある。
ちなみに曲のなかでたぶんヒグラシの声が聴こえているんだが、長いこと外でほんとにヒグラシが鳴いているんだと思いこんでいた。夏の歌なんだ。


海抜0m ──「Bird Hotel」より

とにかくアウトロがよい。私はアウトロのおたくなのである。終りよければすべてよし、という言葉があるが、アウトロよければすべてよし、みたいなとこはある。
海抜0mというのは満潮のときに沈んでしまう場所のことである。スピッツでいうところの「渚」かも知れない。「メテオール」という小説には干潮のとき砂浜に残された生きものを見に行く場面がある。置き去りにされた生きものはたいそうこころ細いだろうと思うシーンだ。この歌の「もういちどそこに行きたいだけ」というのもそんな気持だろうか。


ブリキの夜明け ──「Rabbit Hole」より

ひとつ前の曲「Alice」からこの「ブリキの夜明け」につながる流れが好きすぎて一時期狂ったようにヘビロテしていた。rabbit hole で Alice なんだから不思議の国でまちがいない。「Alice」は「まっさかさまさ」で終っているから、「ブリキの夜明け」は穴から出たあとの夜明けなのだろう。夢から覚めたようなイントロが美しく、いつかひとりでこんな夜明けを見たことがある、という気になってくる。
意外と「不思議な国のアリス」を最後まで読んでいるひとは少ないらしいが、この話はアリスの姉の語りで終っている。つまり「アリス」はもともと夢から覚める話なのだ。「ブリキの夜明け」の「彼女」がアリスなのかどうかは分からないが、「疲れたらいつも彼女は目を閉じる 遠くに雨を降らす」というフレーズとそのあとに鳴るギターに胸を打たれる。夢から覚めたあとにも夢を見ることはでき、それは本人の知らないところで現実になっているかも知れない。
季節のせいもあるのだろうが、これをヘビロテしていた時期、「遠くに雨を降らす」のあとにサアッと雨の音が入っている……と思ったら実際に降っていた、ということが何度かあった。先のヒグラシと逆の状況である。昔のえらいひとは、音楽は生活の音と混じりあって完成すると言ったらしい。


あなたのなかの忘れた海 ──「聖者たち」より

「海へ行こう」という歌は山ほどあるが「山へ行こう」という歌はあまりない。ドリカムくらいだ。と思っていたが、調べてみたらNMB48の「山へ行こう」という歌があるらしい。
People In The Boxの歌には海が多い印象がある。「Family Record」の「マルタ」なんかは深い深い海の底を思わせるアルペジオがとてもいい。先の「ブリキの夜明け」にも「カーブを抜けたら海だ」というフレーズがあり、これは「彼女」が遠くに降らせた雨が流れ着く海、のイメージだ。
この歌のなかの「海」はどうやら悪夢の終る場所、らしい。どこなんだ。山育ちの私にとって、海は何か得体の知れない、人智の及ばぬものである。それが「あなたのなか」にあるのだろうか。あるかも知れない。


装置 ──「Tabula rasa」より

Spotifyでシャッフル再生していたとき、いちばん耳に残っていた曲だったが、公式サイトでCDを買うしかなかったので先に配信されているものから買ったという経緯がある。しかし、いま見たらふつうに配信されていた。なるほどね。
何がいいって韻がいいんだ。歌において、言葉は音のじゃまをしてはいけないのだが、ここでは言葉が音になっている。


螺旋をほどく話 ──「Camera Obscura」より

歌詞を聞き取るのがドへたくそだと自負する私だが、この歌にかんしては「S字カーブよ、さらば」しか聞き取れていない。でも曲が好きだし、韻がいいんだ。「装置」よりもかなり韻の踏みかたにこなれた感がある。
私が音楽を聴くのは九割、車の運転ちゅうだ。だからS字カーブと言えば教習所である。つまりS字カーブよ、さらば……は免許を取れたんだろう。よかった。私は教習所に通っていた時期が人生で三本指に入るくらいしんどかった。
しかし「螺旋をほどく話」とは何の話だ。螺旋と言えばDNAであり、DNAと言えば種、種から連想するS字と言えば成長曲線である。なるほど! なるほど? 成長曲線というのはシンプルに言うとこの世のすべては有限だという話だ。そこにおさらばするというのはつまり……生きものをやめるぞ!!!!! という話かしら。
よく分からないけど曲がカッコいいからいいんだ(結局それなんか〜い)



People In The Boxの話をするのはすべてのCDを聴いたあとにしようと思ってたけどまだまだ先になりそうなのでとりあえず半分くらい。残りのアルバムも早く買おう。
それにしても、ここまで書いて思ったけど音楽の話じゃないな、これ。しかし私は音楽にかぎらず、すべてのものを連想ゲームみたいにつなげて頭のなかに入れてるのであった……音楽の話なんてさ……音楽は語るもんじゃない、聴くもんだって安室ちゃんも言ってたよ(言ってない)
車の運転と犬が好き

他人に話すほどでもなく日記に書くほどでもないメチャクチャどうでもいい話と過去の習作置き場です
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